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紙の月 ★★★

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銀行勤めの平凡な主婦が引き起こした大金横領事件のてん末を描いた、『八日目の蝉』の原作などで知られる直木賞作家・角田光代の長編小説を映画化。まっとうな人生を歩んでいた主婦が若い男性との出会いをきっかけに運命を狂わせ、矛盾と葛藤を抱えながら犯罪に手を染めていく。監督は、『桐島、部活やめるってよ』などの吉田大八。年下の恋人との快楽におぼれ転落していくヒロインの心の闇を、宮沢りえが体現する。
あらすじ:バブルがはじけて間もない1994年、銀行の契約社員として働く平凡な主婦・梅澤梨花(宮沢りえ)は綿密な仕事への取り組みや周囲への気配りが好意的に評価され、上司や顧客から信頼されるようになる。一方、自分に関心のない夫との関係にむなしさを抱く中、年下の大学生・光太と出会い不倫関係に陥っていく。彼と逢瀬を重ねていくうちに金銭感覚がまひしてしまった梨花は、顧客の預金を使い始めてしまい……。

<感想>宮沢りえ扮する主婦が、年下の男との恋に溺れ、加速度的に暴走していく姿を描いたサスペンスである。原作小説も読んでいますが、殆ど同じ構成の展開なので違和感ありません。最後が少し違っていたような感じがしました。
主人公の女学生時代が合間に入るのも同じようで、カトリック系の学校での中で、梨花が恩師の教えに従い、貧しい国の子供たちへの寄付。周囲が寄付を止めるなか、彼女は父親の財布から5万円を盗み寄付額を増していった。
そういった行為にも、父親とかが子供の金銭感覚を見ていないふうが、大人になってからも、他人の財布の金も自分の金のように悪びれずに感じて盗んでしまうという。そういった行為も、子供の内から芽生えることで、両親も学校の先生も、子供にお金の有難みを植え付けるうえでも、教えなければならないと思う。

私には、梨花に対して自分が破滅への道を選んだことに共鳴するということは決してありません。自分が稼いだお金に満足して、そのお金で自分に見合った生活をする。上を見たらキリがありませんからね。他人の財布の中身まで気にしても始まりませんし、自分で意志をしっかりと持ち、やってはいけないことを、後から埋め合わせをすればいい、などという安易な考えは人間の浅知恵というもの。
平凡な主婦が一億円の横領事件を起こし、そのお金を若い男に貢ぎ、自分もブランド品などを買いまくり、高級ホテルでその若い男との情事にふける行為などなんて、自分には絶対に起こり得ることはないと断言できます。ですから、この映画を観ているうち、とてもこの主人公の梨花に共感とかできるはずもなく、嫌悪感さえ抱いてしまう。びくびくして生活する彼女に、絶対にバレる日が来るはずだからと。

確かに、結婚生活なんてみなさん夢のような幸せな暮らしをしていると思っているのでしょうか。そういう夫婦もいるでしょうが、殆どの女性はこの梨花さんと同じように夫に対して不満を持ち、転勤にも付いていくのも嫌だと言い切ってしまう自分もいる。そういう意味では同感なのですが、子供がいないというところでは、夫側にも責任があるようで一概に妻を責めることはできません。
だからといって、夫が夜の営みを嫌がるからといって若い男にうつつをぬかすなんてことはあり得ませんから。自制する心がないからそういった行動に跳ね返ってしまうのでしょう。映画の中での梨花の若い男にむしゃぶりつく様が哀れでなりません。後先を考えずに欲望に走り、最後に自分がどうなるのかも考えずに末恐ろしい女です。
それにしても、この主人公が空虚感に捉われるのは、生い立ちから始まっているのでしょう。両親の愛が不足しているのかもしれないし、学校での友達関係や先生との交流も。ですから、主人公が何に飢えて、何に喘いでいるのかが良く分かりません。

小説では、自分の勤める銀行から一億円を横領するに至る契約社員、梅澤梨花の顛末と、彼女と少なからずも縁を持つ人々との回想で構成されています。梨花は子供を欲しながらも、それについて夫と深く話し合うことが出来ずに、タイムリミットを迎える焦りや、妻に向かって事あるごとに経済的な優位性を示す夫の態度が描かれている。
横領の事の発端が、裕福な顧客である独り暮らしの老人の孫である大学生の光太(不倫をする若い男)に、その祖父である老人から託された200万円を流用する。梨花がどうしてそんなに若い男に惹かれていったのかが描かれていないのが残念。何だか、暇と欲求を持て余した中年女が、若い男との蜜月を金で買った、というお決まりの話になっているようなそんな感じがしてならない。

しかし、映画の中での中年の女を演じたのが宮沢りえであるからして、美しく端正な顔に宿る年相応のやつれ女の色香を感じてしまった。その若い男との逢瀬の中で、自分の年齢を隠すような38000円の化粧品が、十数万のレストラン代となり、数百万円のホテル代と変わり、1000万円代のBMWの車をプレゼントするまでに跳ね上がっていく。
梨花が騙し取るのは金に困っていない裕福な老人たちであり、彼女が助けるのはか弱い若者なのだ。もはや梨花はどこに向かって浪費しているのか、自分自身を見失っていく。銀行の定期預金証をかってに自分でPCで偽造し、コピーする。印章までもコピー。夜なべしてせっせと偽造する彼女の憐れさ。

その梨花の変化に薄々気付いている人物に、小林聡美演じる隅より子の存在がある。「私はお金が何処からきて、どこに行くのかに興味がある」と、梨花に言う。しかし、梨花が金で男を買ったという恋愛映画の枠を超え、日本人の金というものの観念に問いかける色彩を帯びてくるのだ。ある女の空虚感をはるかに越えた点では、この映画は面白いが、どこかで小説どうりに、ただ女が金で恋を買う話に留まって欲しかったような気もした。

ラストで、梨花が日本を出てバンコクへと旅に出て、そこで学生時代に援助をした顔に傷のある男を見つける。自分が寄付をした子供が大きくなって生活をしているのを見て安心したのか、自分はそうやって逃げ失せてもいいのだろうか、罪を償わないで、自分本位に好きなように自由になりたかっただけではすまされないと思うのだが。
2014年劇場鑑賞作品・・・345 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング


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