本国の韓国をはじめ、映画祭や映画賞で高い評価を獲得したクライムストーリー。犯罪組織に潜入する警察官が、組織のナンバー2と育んだ絆と職務の間で葛藤するさまを映し出していく。メガホンを取るのは、『悪魔を見た』などの脚本も手掛けてきたパク・フンジョン。『10人の泥棒たち』などのイ・ジョンジェ、『悪いやつら』などのチェ・ミンシクなど、実力派俳優が結集する。緊張感にあふれた語り口もさることながら、男たちの情や信念が激しくぶつかり合う熱いドラマにも魅了される。
あらすじ:韓国で最大の犯罪組織に潜入して8年になる警察官のジャソン(イ・ジョンジェ)。自分と同じ中国系韓国人である組織の?2の、幹部チョン・チョン(ファン・ジョンミン)の信頼を得て、その右腕となったが、いつ潜入捜査がバレルか判らない恐怖の中、警察に戻る日を待ちわびていた。
ある日、組織の会長が急死、勃発する後継者争い。ジャソンの上司カン課長は、その隙に乗じて一気に組織の壊滅を目論み、ジャソンの願いを無視して潜入捜査を継続させ、「新世界」と名付けた作戦を始動させる。
<感想>韓国では470万人を動員し、ハリウッド・リメイクも決定した大ヒット作品。内容は、「インファナル・アフェア」の潜入捜査ものに、「ゴッドファーザー」のファミリー要素を持ち込み、マフィアを描く物語に新たな傑作であります。もちろん邦画の「土竜の唄」と比べ物にならないくらい、極道の世界のサバイバルを残虐な描写で描いている。邦画でいうと、モロ「仁義なき戦い」や「アウトレイジ」のような感じがした。
主人公のジャソンが唯一警察官であることを証明できる人間が、犯罪組織壊滅のためには非常な命令もいとわないカン課長に、中年デブのチェ・ミンシクが演じていて、絶対権力のように父親としての存在感を持っている。対して、ジャソンをブラザーと呼び、彼の苦悩を誰よりも理解するチョン・チョンは“兄貴”そのものであり、裏切ることのない間柄である。
父親のような上司のカン課長への忠誠か、“兄貴”との絆か。予想外のエンディングに、タイトルの意味が重く響き衝撃的で切ないヒューマン・クライム・ストーリーでもある。
巨大犯罪組織に深く潜入した、捜査官の過酷で非情な任務を余すところなく描いて、圧巻の韓国ノワールになっているところがいい。正体は敵でありながらも、肉親のように捜査官を信じ切る次期ボス候補の、?2の、幹部チョン・チョンの姿は、米国マフィアを描いた「フェイク」(97)のアル・パチーノを思わせるが、韓国版のそれはさらにエゲツなく、人間臭いおかしみに満ちていた。
冒頭で行われる拷問シーンで、死にそうになったおじさんの血みどろのクローズアップというゲンナリするショットで開幕して以降、警官とヤクザの両陣営で、ねちっこい悪行がつづいてかなりエグイ感じになってきたところで、心地よく予想を裏切る展開になる。嫌いなものを否定するするものは好きになれる、というような。逆転の鍵になるポジティブな人間関係は、最初っからきちんと描いても良かったかと思う。必ずというくらいに、マフィアは拷問するとセンメント詰めにしてドラム缶に入れ、海に捨てるのだ。
犯罪組織以上に非情で悪らつな警察組織。韓国の犯罪映画の典型がここにあると感じた。本作では、違うある種の頂点を描いて、意外性は薄いが成功しているようだ。ただし、汚職刑事の在り方が王道であり、じりじりと権威を振って攻め寄るカン課長の会話に魅力が欲しいところだ。ジャソンの妻も、カン課長が女を見つけて一緒にさせた。妊婦の奥さん、だがヤクザに連れ去られるところで、流産するとは。私生活も一部始終を報告しろと妻に命令するカン課長。しかし、妊娠して子供を産んでも幸せな家庭が築けるのだろうか。
中でも、幹部チョン・チョンを演じたファン・ジョンミンは、相変わらず素晴らしく、上海を拠点とした韓国のマフィアという勢力の頭を、お調子者として艶やかに彩って上手い。すでに手下に調べさせて、ジャソンが潜入捜査官だと知っていたのに、彼を信じて死にぎわに密かに明かす兄弟愛だ。それにしても、韓国ヤクザには金属バットが似合う。兄貴、チョン・チョンの弔い合戦をする手際のよさに唸る。
潜入捜査官の存在よりも、どちらかというか後継者争いの闘争のほうが凄まじくて、潜入捜査がバレルとかそういったハラハラ感は薄かった。最後が、主人公が選んだのが、ヤクザの頂点に立つことだったとは。彼が後継者争いで、血を見る度に、自分の取るべき道を選んだのだと思う。
演技派俳優、三者三様の人間模様が見事に描かれていて、ゾクゾクするほどの面白さだった。エンドクレジットの後で、若き日のチョン・チョンとジャソンが、上海で仲良く暴力団の所へ殴り込み、成功して出て来る晴れ晴れとした姿が映し出される。
2014年劇場鑑賞作品・・・105 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:韓国で最大の犯罪組織に潜入して8年になる警察官のジャソン(イ・ジョンジェ)。自分と同じ中国系韓国人である組織の?2の、幹部チョン・チョン(ファン・ジョンミン)の信頼を得て、その右腕となったが、いつ潜入捜査がバレルか判らない恐怖の中、警察に戻る日を待ちわびていた。
ある日、組織の会長が急死、勃発する後継者争い。ジャソンの上司カン課長は、その隙に乗じて一気に組織の壊滅を目論み、ジャソンの願いを無視して潜入捜査を継続させ、「新世界」と名付けた作戦を始動させる。
<感想>韓国では470万人を動員し、ハリウッド・リメイクも決定した大ヒット作品。内容は、「インファナル・アフェア」の潜入捜査ものに、「ゴッドファーザー」のファミリー要素を持ち込み、マフィアを描く物語に新たな傑作であります。もちろん邦画の「土竜の唄」と比べ物にならないくらい、極道の世界のサバイバルを残虐な描写で描いている。邦画でいうと、モロ「仁義なき戦い」や「アウトレイジ」のような感じがした。
主人公のジャソンが唯一警察官であることを証明できる人間が、犯罪組織壊滅のためには非常な命令もいとわないカン課長に、中年デブのチェ・ミンシクが演じていて、絶対権力のように父親としての存在感を持っている。対して、ジャソンをブラザーと呼び、彼の苦悩を誰よりも理解するチョン・チョンは“兄貴”そのものであり、裏切ることのない間柄である。
父親のような上司のカン課長への忠誠か、“兄貴”との絆か。予想外のエンディングに、タイトルの意味が重く響き衝撃的で切ないヒューマン・クライム・ストーリーでもある。
巨大犯罪組織に深く潜入した、捜査官の過酷で非情な任務を余すところなく描いて、圧巻の韓国ノワールになっているところがいい。正体は敵でありながらも、肉親のように捜査官を信じ切る次期ボス候補の、?2の、幹部チョン・チョンの姿は、米国マフィアを描いた「フェイク」(97)のアル・パチーノを思わせるが、韓国版のそれはさらにエゲツなく、人間臭いおかしみに満ちていた。
冒頭で行われる拷問シーンで、死にそうになったおじさんの血みどろのクローズアップというゲンナリするショットで開幕して以降、警官とヤクザの両陣営で、ねちっこい悪行がつづいてかなりエグイ感じになってきたところで、心地よく予想を裏切る展開になる。嫌いなものを否定するするものは好きになれる、というような。逆転の鍵になるポジティブな人間関係は、最初っからきちんと描いても良かったかと思う。必ずというくらいに、マフィアは拷問するとセンメント詰めにしてドラム缶に入れ、海に捨てるのだ。
犯罪組織以上に非情で悪らつな警察組織。韓国の犯罪映画の典型がここにあると感じた。本作では、違うある種の頂点を描いて、意外性は薄いが成功しているようだ。ただし、汚職刑事の在り方が王道であり、じりじりと権威を振って攻め寄るカン課長の会話に魅力が欲しいところだ。ジャソンの妻も、カン課長が女を見つけて一緒にさせた。妊婦の奥さん、だがヤクザに連れ去られるところで、流産するとは。私生活も一部始終を報告しろと妻に命令するカン課長。しかし、妊娠して子供を産んでも幸せな家庭が築けるのだろうか。
中でも、幹部チョン・チョンを演じたファン・ジョンミンは、相変わらず素晴らしく、上海を拠点とした韓国のマフィアという勢力の頭を、お調子者として艶やかに彩って上手い。すでに手下に調べさせて、ジャソンが潜入捜査官だと知っていたのに、彼を信じて死にぎわに密かに明かす兄弟愛だ。それにしても、韓国ヤクザには金属バットが似合う。兄貴、チョン・チョンの弔い合戦をする手際のよさに唸る。
潜入捜査官の存在よりも、どちらかというか後継者争いの闘争のほうが凄まじくて、潜入捜査がバレルとかそういったハラハラ感は薄かった。最後が、主人公が選んだのが、ヤクザの頂点に立つことだったとは。彼が後継者争いで、血を見る度に、自分の取るべき道を選んだのだと思う。
演技派俳優、三者三様の人間模様が見事に描かれていて、ゾクゾクするほどの面白さだった。エンドクレジットの後で、若き日のチョン・チョンとジャソンが、上海で仲良く暴力団の所へ殴り込み、成功して出て来る晴れ晴れとした姿が映し出される。
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