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新しき世界 ★★★★

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本国の韓国をはじめ、映画祭や映画賞で高い評価を獲得したクライムストーリー。犯罪組織に潜入する警察官が、組織のナンバー2と育んだ絆と職務の間で葛藤するさまを映し出していく。メガホンを取るのは、『悪魔を見た』などの脚本も手掛けてきたパク・フンジョン。『10人の泥棒たち』などのイ・ジョンジェ、『悪いやつら』などのチェ・ミンシクなど、実力派俳優が結集する。緊張感にあふれた語り口もさることながら、男たちの情や信念が激しくぶつかり合う熱いドラマにも魅了される。
あらすじ:韓国で最大の犯罪組織に潜入して8年になる警察官のジャソン(イ・ジョンジェ)。自分と同じ中国系韓国人である組織の?2の、幹部チョン・チョン(ファン・ジョンミン)の信頼を得て、その右腕となったが、いつ潜入捜査がバレルか判らない恐怖の中、警察に戻る日を待ちわびていた。
ある日、組織の会長が急死、勃発する後継者争い。ジャソンの上司カン課長は、その隙に乗じて一気に組織の壊滅を目論み、ジャソンの願いを無視して潜入捜査を継続させ、「新世界」と名付けた作戦を始動させる。

<感想>韓国では470万人を動員し、ハリウッド・リメイクも決定した大ヒット作品。内容は、「インファナル・アフェア」の潜入捜査ものに、「ゴッドファーザー」のファミリー要素を持ち込み、マフィアを描く物語に新たな傑作であります。もちろん邦画の「土竜の唄」と比べ物にならないくらい、極道の世界のサバイバルを残虐な描写で描いている。邦画でいうと、モロ「仁義なき戦い」や「アウトレイジ」のような感じがした。

主人公のジャソンが唯一警察官であることを証明できる人間が、犯罪組織壊滅のためには非常な命令もいとわないカン課長に、中年デブのチェ・ミンシクが演じていて、絶対権力のように父親としての存在感を持っている。対して、ジャソンをブラザーと呼び、彼の苦悩を誰よりも理解するチョン・チョンは“兄貴”そのものであり、裏切ることのない間柄である。

父親のような上司のカン課長への忠誠か、“兄貴”との絆か。予想外のエンディングに、タイトルの意味が重く響き衝撃的で切ないヒューマン・クライム・ストーリーでもある。
巨大犯罪組織に深く潜入した、捜査官の過酷で非情な任務を余すところなく描いて、圧巻の韓国ノワールになっているところがいい。正体は敵でありながらも、肉親のように捜査官を信じ切る次期ボス候補の、?2の、幹部チョン・チョンの姿は、米国マフィアを描いた「フェイク」(97)のアル・パチーノを思わせるが、韓国版のそれはさらにエゲツなく、人間臭いおかしみに満ちていた。

冒頭で行われる拷問シーンで、死にそうになったおじさんの血みどろのクローズアップというゲンナリするショットで開幕して以降、警官とヤクザの両陣営で、ねちっこい悪行がつづいてかなりエグイ感じになってきたところで、心地よく予想を裏切る展開になる。嫌いなものを否定するするものは好きになれる、というような。逆転の鍵になるポジティブな人間関係は、最初っからきちんと描いても良かったかと思う。必ずというくらいに、マフィアは拷問するとセンメント詰めにしてドラム缶に入れ、海に捨てるのだ。

犯罪組織以上に非情で悪らつな警察組織。韓国の犯罪映画の典型がここにあると感じた。本作では、違うある種の頂点を描いて、意外性は薄いが成功しているようだ。ただし、汚職刑事の在り方が王道であり、じりじりと権威を振って攻め寄るカン課長の会話に魅力が欲しいところだ。ジャソンの妻も、カン課長が女を見つけて一緒にさせた。妊婦の奥さん、だがヤクザに連れ去られるところで、流産するとは。私生活も一部始終を報告しろと妻に命令するカン課長。しかし、妊娠して子供を産んでも幸せな家庭が築けるのだろうか。

中でも、幹部チョン・チョンを演じたファン・ジョンミンは、相変わらず素晴らしく、上海を拠点とした韓国のマフィアという勢力の頭を、お調子者として艶やかに彩って上手い。すでに手下に調べさせて、ジャソンが潜入捜査官だと知っていたのに、彼を信じて死にぎわに密かに明かす兄弟愛だ。それにしても、韓国ヤクザには金属バットが似合う。兄貴、チョン・チョンの弔い合戦をする手際のよさに唸る。

潜入捜査官の存在よりも、どちらかというか後継者争いの闘争のほうが凄まじくて、潜入捜査がバレルとかそういったハラハラ感は薄かった。最後が、主人公が選んだのが、ヤクザの頂点に立つことだったとは。彼が後継者争いで、血を見る度に、自分の取るべき道を選んだのだと思う。
演技派俳優、三者三様の人間模様が見事に描かれていて、ゾクゾクするほどの面白さだった。エンドクレジットの後で、若き日のチョン・チョンとジャソンが、上海で仲良く暴力団の所へ殴り込み、成功して出て来る晴れ晴れとした姿が映し出される。
2014年劇場鑑賞作品・・・105 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング


WOOD JOB!(ウッジョブ) 神去なあなあ日常★★★★

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『ウォーターボーイズ』など数々のヒット作を送り出してきた矢口史靖監督が、人気作家・三浦しをんのベストセラー小説「神去なあなあ日常」を映画化した青春ドラマ。あるきっかけで山奥の村で林業に従事することになった都会育ちの若者が、先輩の厳しい指導や危険と隣り合わせの過酷な林業の現場に悪戦苦闘しながら、村人たちや自然と触れ合い成長していく姿を描く。『ヒミズ』などの染谷将太をはじめ、長澤まさみ、伊藤英明、ベテラン柄本明らが共演する。
<感想>矢口史靖監督作品としては、「ウォーターボーイズ」や、「ロボジー」がお気に入りの映画ですね。しかし、近年の矢口作品などと比べて、明らかな違いの一つは、この生命力のエネルギーでしょう。初期の作品では、世の中を無視して何をやりだすか分からないような、アナーキズムが映画のダイナミズムを刺激していたと思う。だが、本作品には、アナーキズムはもうない。なくなってシンプルになり、より生命力旺盛なバカバカしいダイナミズムが復活している。

この作品は、都会育ちの平野勇気(染谷将太)が大学受験に失敗し、彼女にもフレれてしまい、ふと目に留まった「緑の研修生」のパンフレットの写真に写っている美人(長澤まさみ)の微笑む彼女に釣られて1年間の林業研修に参加することから始まる。
ローカル線に乗り継ぎ降り立ったのは、ケータイの電波も届かない、超が付くくらいのド田舎、神去村。ケータイは無人駅で建てかけてあったビニール傘の水溜まりに落としてパーになる。鹿やら、蛇やら虫だらけの山、同じ人間とは思えないほど狂暴で野性的な先輩のヨキ、「海猿」の伊藤英明が演じていて、浮気性でスケベなこと。この役者さんは何を演じても上手いです。厳しいといっても、山の仕事を舐めると命に関わるという、可愛さ余ってのしごきですからね。奥さんには優香さんが演じていて、子供が欲しいが中々授からないのだ。
命がいくつあっても足りない過酷な林業の現場。高所恐怖症の人には向かない仕事です。耐え切れず逃げ出そうとする勇気だったが、別の男に先を越されてしまった。でも、そこへあのパンフレットの表紙の美人が直紀・長澤まさみがバイクで駅まで送ってくれる。でも、彼は思い直して最終電車に乗らなかった。

そこで、軽いノリで山奥の生活に逃避した彼は、林業の凄さとか山という別世界、村で暮らす人たちに魅せられて次第に変わっていく。
しかし、そこから逃避しようとする度に妨げるものが、・・・という青年の成長の物語だが、この成長が反時代性を帯びていることに、まず心を打たれる。
クライマックスには、大規模なおおやまづみ祭りのシーンから、驚愕のラストが用意されているのには驚く。矢口映画でしかあり得ない強烈なスペクタルを堪能できます。

祭りのシーンをCGなしで撮ったことや、スケールの大きさも見ものですが、泥臭い男性性を、直球で恰好よく撮っている感性には、これは女子にも必見です。ふんどし一つで、裸の男たちの身体から湯気が立ち込めるカットなど、そしていつもはチェンソーで樹を切り落とすのに、昔の儀式にのってナタで何度も切り口を入れ、杭を刺し込み、長いノコギリで両方から息を合わせて引く作業など、見事なものです。
それに、主人公の勇気も仲間に入れてもらった理由が、ファンタジックで美しいシーンがあるんですね。1年に1日だけ山へ登らない山止めの日。子供たちには大人が絶対に火遊びはいかんと、山火事を起こしたら大変なことになる。川辺で焚火をしていた子供たち、しかられてしょぼくれて、一人の男の子が山へ入っていく。

山止めの日なのに、きっと神隠しにあって山で迷子になってしまうと。村人たちが総出で、救急車や消防車もやってきて、捜索に登っていく村人たち。勇気も捜索に加わるも、途中で霧が沸いて来て前が見えなくなる。以前、勇気が山の中で樹を切る仕事をして、昼飯のおにぎりを半分、沢の地蔵にお供えした。誰か人の手が伸びて勇気を、その男の子のところまで連れて行ってくれる。手にはご飯粒が付いていた。でも、勇気の耳たぶにはマムシが食いついていて、気を失ってしまった。そんなことがあって、勇気は村の一員として認められ、祭りにも参加させてもらったというわけ。そうそう、最初の山へ行った時に、誤って足を滑らせて沢まで落ちた時に、ヒルにお尻や股に吸い付かれた事件もありましたね。

その勇気が、この祭りでもやらかしてくれます。大木を村の下にあるしめ縄の大きなもの2つを合体させて、そこへ目がけて、山で切り落とした巨木をまるでジェットコスターみたいに、スロープを作り巨木を落とすわけ。これは五穀豊穣、子孫繁栄を祈願して、子宝が授かるようにという祭りでもあるんですね。その巨木をレールに乗せる時に勇気が足を綱に取られてしまい、仕方なく巨木の上にまたがって落ちてゆくシーン。これは観ないと損ですぞ、これまでに見たことない映像は新鮮でいいですね。

やはり、本作での伊藤英明さんの存在感は、彼が画面に映る度に、映画にエネルギーが充電され、祭りのシーンでも見事な筋肉美に、これだけふんどし姿が似合う役者さんはそうはいないでしょうね。それと、今回は村のお婆ちゃん4人と、元気な子供たちが良かったと思います。子役をたたくシーンも、児童虐待にならないギリギリの勢いで、田舎のお母さんってあんな感じですからね。今は、子供が少ないから、母親も父親もあまり子供をたたかないです。
この映画ではチラシ一枚でさえ身体性を担っており、主人公の親の都会的ゆるさもさりげなく描かれている。一人息子の将来のこととか、それは自分で決断することも大事だと思う。最後の「緑の研修生」のパンフレットの写真が、勇気くんだったのが最高ですよね。主人公の染谷将太くん、幼い顔なので高校生役も難なくこなして、今までと違う演技を見せて貰いました。
2014年劇場鑑賞作品・・・106 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

悪夢ちゃん The夢ovie ★★★

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恩田陸の小説「夢違」を原案にテレビドラマ化されたSF学園ファンタジー「悪夢ちゃん」の続編。睡眠中に他人の潜在意識とリンクし、相手に降り掛かる不運を予知する能力を持つ少女と、彼女の予知夢を解読できる教師がさまざまな事件の解決に当たる姿を描く。ドラマ版に引き続き北川景子が教師を演じ、不思議な能力を持つ少女を木村真那月が好演。転校生をめぐる思いがけない展開や、新たな試練に目がくぎ付け。
あらすじ:ある日、彩未(北川景子)が担任する明恵小学校6年2組に完司(マリウス葉)という謎めいた少年が転校してくる。結衣子(木村真那月)は夢の中で恋に落ちた“少年夢王子”とうり二つの彼に胸をときめかる。やがて完司はクラスの中心人物となり、彼を慕う子どもたちの行動がある事件に発展する。

<感想>テレビドラマを少しだけしか見てない。でも、何となく物語の筋が読めて面白かったです。他人に降りかかる災厄を予知夢で見る少女“悪夢ちゃん”と、その夢を解読できる女教師が、周囲で起こる事件を解決していくドラマの劇場版ということですね。女教師に北川景子さん、志岐貴のGACKTさん、発明家の祖父万之介に小日向文世さんと、配役も好きな俳優さんばかりで鑑賞しました。

特に彩未先生の夢王子にGACKTさんというキャスティングはgooですよね。白馬の王子様ならぬペガサスに乗って現れるシーンには、お似合いのカップルですから。それに結衣子の母親が彩未先生らしいし、父親が志岐貴とは、これも良かった。

そして内容はというと、結衣子の学校に転校生渋井完司が現れて、結衣子の夢王子になっていること。いきなりカッターナイフで切り付けるとは。それにしても渋井完司役の、SexyZonenoマリウス葉くんは、ハーフのせいか美少年ですね。確かに結衣子が好きになるのは無理もないし、キスしてとせがむのも分かる気がした。
実はその少年が、クラスの生徒の井上あおいという少女で六角精児の娘が、父親がケーキ屋を倒産させて露天商でパンケーキを売っている。何とか成功させてあげたいと願っているのを、クラスメート全員が彼女の応援をして、店まで持てるようになり大繁盛をする。だが、そのことにヤキモチを焼いたのか、美少年完司がクリームの中に腐った牛乳を入れて、食中毒を起こしてしまう。パンケーキ屋に保健所が入って父親はまたもや窮地に陥り、自殺未遂事件を起こす。

夢の中で、そのパンケーキ屋の食材に鼠がウヨウヨといるところや、父親の六角精児さんが鼠になってしまうなんて場面もあります。彩未先生は、「ハーメルンの笛吹」の事を話して街を荒らしまわる鼠を笛を吹いて誘き出し、川まで鼠を連れだして退治する。
確かにそんなお伽噺はありますが、そういえば完治くんが草笛を吹いて生徒たちを操っていたことが、そういうことなのでは。でも、食べ物屋さんで食中毒は、営業停止とこれからの行く末が暗示られ気の毒です。
そして、その美少年完治の過去が暴かれるシーンでは、やはり予想していた通りだった。完治くんの母親もだらしがないですよ。いくら父親がいないといっても、乱暴な男を家に入れて、喧嘩が絶えないし、子供の前で母親に乱暴する男なんて早くに別れてしまえば良かったのに。親の身勝手で子供の心を傷つかせて、その男の背中をハサミで刺し殺してしまう。背中を刺しただけでは死なないと思うのですが、この映画では死んでしまう。

そこへ、お隣のトラック運転手の佐藤隆太が同情をして、男の死体を埋めてしまい、自分が完治の世話をするといい完治を連れて東京へと。その後、母親は完治の好きな野菜を送り届けて、食卓に並ぶ野菜炒めやサラダなど写真を撮り、母親に送っていたのですね。
子供にしてみれば、かなりショックなことなんですが、その時に一緒に警察へ連れて行き事情を話して、自分の罪を償うように教えるのが母親の役目なのではと思いました。完治くんは、そのことがショックで事件のことを記憶から遠のけてしまったのですね。だからなのか、両親がいる生徒にヤキモチだと思うのですが、そんな意地悪をする悪魔のような少年になってしまったのだと思います。

完治くんの故郷、伊豆下田の灯台で自殺を図ろうとする完治くんに、生徒たちが灯台のしたで見守って自殺をくい止めようとするシーンも良かった。このクラスの生徒たちは、教師の北川景子から結衣子の予知能力のことを知らされていて、何とか悔い止められないかと全面的に協力している本当にいい子たちなんですね。
映画の中では、悪魔のような顔をした鳥に乗った完治くんが度々出てきました。そのことを彩未先生は、“ハルピラフ“と言っていました。何だか内容が、自殺とか、DVとか殺人まで取り上げられて、恐ろしい物語になっているが、それは一応ファンタジーものとして成り立っているわけで、でも、おどろどろしい場面もあるから、子供が見るには考えさせられます。モモクロの歌がサポートしてくれているような、そんな気がしました。

「予知としての悪夢に負けず、未来は自分で変えられる」というメッセージに、それは自分次第だということ。何もしないでダラダラと毎日を過ごしていれば、予知夢じゃないけれど堕落した人間になるし、努力して頑張っている人には明るい未来が開けるっていうことなのね。
2014年劇場鑑賞作品・・・107 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ブルージャスミン ★★★★★

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ウディ・アレン監督がケイト・ブランシェットをヒロインに迎え、サンフランシスコを舞台に転落人生の中でもがき、精神を病んでいく姿を描くドラマ。ニューヨークでセレブ生活を送っていたものの夫も財産も失ったヒロインが妹を頼りにサンフランシスコに引っ越し、再生しようとする過程で、彼女の過去や心の闇を浮き彫りにしていく。実業家である夫をアレック・ボールドウィンが演じるほか、サリー・ホーキンスやピーター・サースガードが共演。シリアスな展開と共に、ケイトの繊細な演技に引き込まれる。

<感想>主演のケイト・ブランシェットが、アカデミー主演女優賞を受賞した作品であり、監督、脚本がウディ・アレンということで、前から絶対に観たいと思ってました。大金持ちから転落して、なお高慢さだけは保持した中年女の不自由な生き様を上手に描いている。いるいる、私の周りにもこういう人って。自分の身に合った生き方をしないと疲れるよね。
破産状態なのに、ファーストクラスに乗り、ファッションも高級品と、身の上と行動が伴っていない。シングルマザーの妹ジンジャーは、現在の恋人で修理工のチリを紹介するが、ジャスミンには武骨なチリと付き合う妹の趣味が理解できない。

姉妹とはいえ、ヒロインは里子だそうで二人は血の繋がりがなく、生き方も正反対だ。セレブ気分が抜けないジャスミンは、リッチな生活に返り咲くことを夢見るが、具体的なプランや基本的な生活能力もない。ネットでインテリアデザイナーの資格を取ろうとするが、パソコン操作を習うために、歯科医の受付のバイトをするものの、下心見え見えのドクターのセクハラから逃げ出す羽目になり、プライドも傷ついて、彼女は精神のバランスを崩していく。

そんなジャスミンは、パーティーで出会ったドワイト(ピーター・サースガード)というエリート男性こそ自分に相応しいと見込んで、でまかせの自己PRで、彼に取り入る。上流階級への復帰を着々と進めるシャスミンだが、思わぬ展開が彼女を待っていたのです。
ジャスミンの不自由な振る舞いを過去と、現在をパッパと切り替え、徹頭徹尾に見せ続ける。素敵な男性と知り合い、再浮上のきっかけを掴みかけた女だが、かねてから彼女に恨みを抱く男と偶然再会したことで、打ち砕かれる。見ていて、打ち砕かれることは予想していたのに、予想どおりの展開が続いたのには驚いた。彼女の高慢なせいではなく、彼女自身の愛と寂しさゆえだったから。

「オークランド」と彼女が地名を口に出した時、声をあげそうになった。悪業の限りをつくしたカンダタが、生涯たった一度だけ、蜘蛛に示した慈悲に似た、たった一度の愛だったのに。その一点を見せるために、過剰な彼女の振る舞いと過去の贅沢と、今のブザマな姿とが周到に描かれていた。その、一度だけの愛の発露で彼女は自滅する。救いのない結末に、傾れこむことをその時点で予感させたのだが、観客はもう観ているだけだった。
とても劇的な素晴らしい映画でした。たとえ、それが暗くて救いがなかろうと、未知の気持ちを感じさせてくれるなら、喜んで暗い気持ちにもなる。もともと授かった名前を変えてまで、今の自分ではない、どこかにある本当の自分を求めるという、ノイローゼでもある。

そのギャップに折り合いを付けられない悲劇。ほぼ会話で進んでいくいつもの感じだが、さすがにウディ・アレン、飽きさせない。そして主人公ジャスミンを中心としたダメ人間の綺麗ごとがどんどん剥がれていく快感。羽振りの良かったころと、落ちぶれた現在とのカットバックもギリギリわかりづらくなく、興味の持続のさせ方はやっぱり上手いと納得させられてしまう。
ああ、やっぱりね、そういうもんだよと納得力で推進するストーリー。最終的な崩壊のエピソードも偶然が作用しすぎとも思えるが、「こういう女なら、遅かれ早かれこういうオチになるんだろうな」という納得が勝ってしまう。
救いはない、自分の不幸が災難、上から降ってきたものではなく、自分に折り合いをつけられない自分自身が招いた自業自得。不可避の道であったことを最後に思い出すジャスミン。ですが、悲惨さを必要以上に深刻に見せない軽み。そして、「そういうもんだね」という、いつものウッディ監督が下す、いつもの結論ですよ。78歳の天才映画作家だって人間ですもの、そうも大傑作ばかりも作っていられない。そんな山や谷を乗り越えてきた、ウッディが、お馴染みの古めのジャズやブルースに乗せて撮った作品ですね。
2014年劇場鑑賞作品・・・108 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ゴール・オブ・ザ・デッド ★

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サッカーとゾンビとを融合させた異色のホラー。謎の薬でゾンビになってしまったサッカー選手がスタジアムへと乱入し、観客たちをゾンビ化させながら強豪たちと壮絶な試合を繰り広げていく。監督は『ザ・ホード -死霊の大群-』のバンジャマン・ロシェと『エイリアンVSヴァネッサ・パラディ』のティエリー・ポワロー。本来サッカー試合の前半戦と後半戦を意識した前後編に分けての上映だったが、ノーカットで1本の作品としてつなげて上映する。

<感想>フランスのゾンビ映画、それもサッカー・ゾンビ映画とはこれいかに?・・・これが、サッカーの試合のように前半戦が「死霊のキックオフ大乱闘編」で、監督は「ザ・ホード -死霊の大群」のバンジャマン・ロシェ。そして後半戦が「地獄の感染ドリブル編」を「エイリアンVSヴァネッサ・パラディ」のティエリー・ポワローが担当して、監督が交代しているというユニークな形式になっていた。

俳優たちも、私には知らない人たちばかりで、う〜んと溜め息交じりの映画になっていた。客も私を混ぜて4人と少ない。これでは、2週間上映がいいところかも。
始めにバスに乗っているサッカー選手たち、パリのサッカーチームが地元組と試合をしにやってきたというわけ。ところが、この試合には因縁があって、大都会のパリへのヘイトがもともと根深いこの町が、今回エキサイトしている理由があったのだ。やっぱり、花の都パリは憧れてきな存在なのだ。
それが、地元の選手だったサムが故郷を捨ててパリへ移籍したというのだ。ただでさえチームの若手選手との確執もあって、辛い想いをしているサムに、地元の人たちから容赦のないブーイングが飛ぶ。

地元のサッカー選手のジャノが、父親のドクター・ベルボー博士のところで暮らしていたが、父親の博士が、所属するチームが試合に勝つため薬品を注射する。ドーピングらしき、もしかして人間じゃなくなる狂暴なウィルス菌なのか。みるみる間に身体がゾンビ化していき、雄叫びをあげてスタジアムへと乱入する。途中で、このバスにゾンビ人間のジャノが追突するも、姿がない。強靭的な肉体になってしまったので、バスごときに追突されても平気なわけ。そして、出会った街の人に白い液体を吐き、まき散らす。その液体を浴びた人間が、ゾンビ化するというわけ。

肝心のサムは試合開始後、早々とレッドカードで退場になりふてくされながらスタジアムを後にするが、入れ違いでゾンビ化したジャノが乱入して大暴れ。スタジアムに入って来ても、観客席に向かって白い液体を吐きまくる。浴びた観客もすぐに感染してゾンビ化して、隣の観客へと吐きまくるので、スタジアムに居た人たちが、あっという間に全員ゾンビになるのは必然ですね。だから、主人公のサムはその足でバーへ行き、ゾンビ集団が来たときにはシャッターを閉めて店に立て籠もって助かる。

中には、クソ生意気なディアゴ選手や、監督、エージェント、地元の取材にきた女性キャスターとかは、直ぐにはゾンビになりません。そして、何故か観客の変な4人組が、最後までゾンビ化しないのが不思議ですね。ゾンビ映画というと、ホラーで怖いというイメージですが、この映画はコメディに作られていて怖くありません。試合が夜ということもあり、画面が暗いので暴れ回るゾンビの選手も、ユニホームで区別するしかなく、試合というよりもおふざけでボールを蹴っているような感じがしました。

そして、丁度真ん中を過ぎたところで、画面が暗くなり後半戦に入るわけです。サッカーのハーフタイムを意識したと思うこの辺が、バカバカしいたらない。
そうそう、チームの監督が、アメリカンフットボールに賭ける鬼コーチと選手たちの熱き生きざまを描いたドラマで、アル・パチーノの名演説でお馴染みの「エニイ・ギブン・サンデー」(99)のパクったようなスピーチをする。

もちろんゾンビバトル描写もありますから、エージェントの男がクンフーの使い手だったり、両手にサッカーの靴をはめて、スパイクでゾンビをパンチするシーンなど。
朝になったら、ゾンビは燃えて消失するのかって、バンパイアじゃないのでそんなことありません。生きている人間たちで、ゾンビを退治するのです。それに、軍がヘリでやってきてゾンビ退治ですから。

何だか街の人たちが、ゾンビ化して死んでしまうのが哀しくなりますよね。4人組がカセットテープにこだわっていたのだが、テープの中身は「憧れのパリを罵倒する言葉だった」
しかし、サムの娘とやらも現れて、元カノとラブラブになるシーンもあり。
エンドロールには、店ごと買い取る金があるとほざいていたサムが、地元のバーの主人になって、ゾンビの従業員を使うシーンが映し出されるも、客の前で白い吐しゃ物をゲーゲー吐きまくるから、食べ物商売には向いてないかもね。
2014年劇場鑑賞作品・・・109 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

フルートベール駅で ★★★.5

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2009年1月1日、22歳の黒人青年が警察官に銃で撃たれて死亡した事件を基に映画化し、映画祭や賞レースを席巻したドラマ。新年を迎えようという12月31日、家族や友人といつもの日常を過ごす青年の姿を描き、突然この世から去った彼の運命の残酷さやはかなさを浮き上がらせる。監督は、本作で長編映画デビューを飾ったライアン・クーグラー。主人公の黒人青年を『クロニクル』などのマイケル・B・ジョーダンが演じ、オスカー受賞者のオクタヴィア・スペンサーが共演。事件の痛ましさや、残された者の憤りと悲しさが胸に突き刺さる。
あらすじ:2009年、新年を迎えたサンフランシスコのフルートベール駅。多くの人が入り乱れるホームで、22歳の黒人青年オスカー・グラント(マイケル・B・ジョーダン)が銃で撃たれてこの世を去る。命を失ったオスカーにとって、母の誕生日を祝い、娘と遊び、家族や友人と過ごしたいつもの日常が、悲しいことに最後の日となってしまった。

<感想>米国で2009年の元旦にサンフランシスコで、実際に起きた白人警官による黒人青年射殺事件のドラマ化です。事件当日の朝から被害者の青年オスカーの日常生活を丁寧に描き、悲劇が起きた社会背景を浮かび上がらせている。フルートベール駅周辺はスラム化しており、ケンカを売られたオスカーは黒人ということだけで警官に銃口を向けられてしまった。

大晦日、娘を保育園に預け、仕事を探し続けるオスカー。残っていたドラッグは処分して、誕生日を迎えた母親のもとへと、「おめでとう」を伝えにいく。

親族一同が集まってのホームパーティを終え、娘をベッドに寝かしつける。オスカーは仲間たちと年越しカウントダウンを楽しみに市街地へと向かった。
帰りの電車の中で、売人時代の商売仇たちと運悪く遭遇する。けんか騒ぎとなり、停車したフルートベール駅に無抵抗のオスカーは警官に取り押さえられ、公然の前で拳銃を向けられる。
数分後、無抵抗な青年は背中から1発、弾丸を撃ち込まれる。その様子は、居合わせた乗客たちによってスマートフォンで撮影され、悲劇は波紋を呼ぶ。

22歳の青年オスカーは定職に就けず、仕方なくドラッグの売人をしていたが、恋人との間にできた4歳の娘のために足を洗い、真っ当な人生を歩むことを誓うのだが。
確かに、オスカーには前科があり、事件の前夜にバイト先もクビになり、妹からも家賃の工面を頼まれ、隠し持っていた大麻を顔見知りの不良に売ることを考える。再就職先が決まらない中、腐らずに家族に懸命に愛情を注ぐ姿にほだされます。まともに生きていくことを選んだはずなのに、オスカーの心の揺れ、いかんともしがたい優しさが丁寧に描かれ、オスカーの前向きで冴えない日常には、完全に共感してしまった。

いかにもサンダンス映画祭で受賞したことが頷ける作品で、アメリカに依然として存在し続ける人種差別を強く告発していると思う。警察に代表される権力と横暴と、それに静かに耐える黒人たちの無念がきっちりと描かれ、極めて感動的です。
ですが、何故に駅に現れた警官隊は白人だけで構成されているのか?・・・警察に黒人警官はいなかったのか。それが無性に心残りで残念でならない。
あまりにも衝撃的な「理不尽な暴力によって奪われた未来」という普遍的なテーマを、鮮やかにドラマ化する傑作ですよね。
泣かせ狙いの過剰なまでの演出を拝し、逆に「俺には幼い娘がいるんだ」と警官に訴えながら絶命したオスカーの無念さが胸に響きます。
2014年劇場鑑賞作品・・・110 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

エヴァの告白 ★★★★

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マリオン・コティヤール、ホアキン・フェニックス、ジェレミー・レナーらが豪華共演を果たした人間ドラマ。より良い人生を求めてアメリカに移住してきた女性が、さまざまな出来事に振り回されながらもたくましく生き抜く姿を映し出す。監督は『アンダーカヴァー』でホアキンと組んだジェームズ・グレイ。社会の裏側で、決して諦めることなく前進するヒロインのりんとした強さが胸を打つ。

<感想>アメリカへ移民しようとした敬虔なカトリック教徒が、なぜに娼婦まで身を落としたのか、・・・?彼女を助けたブルーノは移民の女たちを劇場で踊らせ、売春を斡旋する裏社会の男だったのです。エヴァの美しさに心を奪われた彼は、彼女をものにしようとするが、身持ちの堅い彼女に断られると、一転して売春を強要する。
エヴァも妹の療養に金がいることから、やむなくそれを受け入れていたのだが、やがて移民のための慰問ショーで、マジシャンのオーランド(ジェレミー・レナー)と出会い、彼の求愛に心が揺れる。しかし、オーランドとの従兄弟のブルーノが、嫉妬から思わぬ行動に出る。ただ幸せを求めてやってきたこの国で、怒涛の運命に翻弄されるエヴァ。彼女は教会を訪れ告白を始める、・・・。

この作品の主人公エヴァ役のマリオン・コティヤール、彼女の魅力を最大限に生かすために、すべてが仕組まれているとしても過言ではない。古典的なまでの大メロドラマで、ヒロインはとことん悲劇に翻弄される。そこで、悲劇に耐えるヒロインこそが世界を支配し、男はあくまで脇役でしかない。
ある時は、意志薄弱な二枚目であり、ある時はヒロインを地獄に突き落とす悪魔として登場するか、どちらにしてもヒロインを引き立たせる役割にしか与えられない。
というのも、メロドラマは男の受難のドラマであり、女は勝利のドラマなのだ。悲劇に突き落とされながらも、最後には勝利の雄叫びを上げるヒロインは、まさにドラマの主役的存在感になっている。
ポーランドから姉妹でアメリカに住む親せきを頼って来たものの、妹は結核の疑いで隔離され、エヴァは所持金不足で書類の不備などで入国を拒否されてしまう。そこへ登場するのが、恰幅のいい紳士然とした男、ブルーノだ。

彼は賄賂で係官との繋がりを持っており、事情を知ると素早く行動を起こす。エヴァを舟に乗せると、アジトであるニューヨークの古いアパートにエヴァを連れて行く。
惚れ惚れするような導入部に、暗い抒情を湛えた映像もいいです。何やら胡散臭い男とも見えたブルーノだが、エヴァへの接しかたは中々に紳士的である。対するエヴァは、助けてもらったにもかかわらず、ブルーノへの警戒心を解こうとはしない。
エヴァの過酷な身の上話を聞いたブルーノは、衝動的にエヴァを抱きしめようとするも、ところがエヴァは「やめて、触らないで」と突っ放し、驚いたブルーノは一瞬間をおいて、絞り出すように「恥を知れ」と言った後、「恥を」と一喝する。

彼女に受け入れられずに、自分の想いが伝わらない。まるで舞台演劇を見ているような、二人が画面の両端に思いっきり引き離して、舞台での対立のような生々しさを演出しているのも見ものです。つまり、この演出で際立つのは、エヴァとブルーノの距離の描き方ですね。近づけそうで近づけない男女の距離を、フレームをうまく利用して見事に表現していること。
エヴァと妹が脱出する小舟を、暗い倉庫の窓ガラス越しに捉えて、それを見届けるように倉庫を出ていく瀕死のブルーノの後姿。何たる余情なのだろう。
ポーランド人らしくエヴァは敬虔なカトリック信者だが、生き抜くためには綺麗ごとばかり言っていられない。場末の踊り子から娼婦への転落は、あっという間で、それを嘆き悲しんでいるかというと、そうでもないのが面白い。

ブルーノに身を任せる気はないが、遠ざける気もさらさらない。つかず離れずに苦しみられるのは、ブル−ノの方であり、エヴァは日ごとに強い女になって、身体を売ることすら躊躇しなくなる。
それでも、カトリック信者らしく教会に行き、神父に自分の罪を告白するが、神父に「男とは別れなさい」と説かれると、「地獄に堕ちます」と突っぱねる。地獄に堕ちるとは、ブルーノとは別れないことを意味するのか、どちらにしても、エヴァには戻る道はなくなっているのだ。

罪深い女であることを選んだエヴァだが、魔術師のオーランドが登場すると、彼の純情を装った行為にぐらりとよろめいてしまう。まともに生きることがまだ可能なのだと思ってしまったエヴァの軽はずみに、ブルーノは立ち直れない地獄へと突き落とされる。
まさか、ブルーノとオーランドとの一騎打ちになるとは、一人の愛する女性を巡っての闘いである。オーランドが死亡。ところが、エヴァを疫病神扱いしていた娼婦が、エヴァを殺人犯と供述して警察に追われる身になる。
勝利者には、エヴァがと思っていると、ブルーノはやっぱりエヴァを心底愛していたのですね。その結果、この作品では男のメロドラマと受け取れるようにも感じる。妹を療養所から連れだして解放する。地獄に落とされた2人は、どうにも救われないのだけれど、クライマックスでのマリオンとホアンキンの姿に、涙で曇ってしまうほどの力演は感動的です。
2014年劇場鑑賞作品・・・111 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

百瀬、こっちを向いて。★★★

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作家の乙一が、中田永一という別名義で執筆したベストセラー小説を原作とした青春ロマンス。ひょんなことから、期間限定でカップルを装うことになった高校生の男女が次第に惹(ひ)かれ合っていく姿を見つめる。人気アイドルグループ、ももいろクローバーのメンバーだった早見あかりが初主演を務め、テレビドラマ「チーム・バチスタ2 ジェネラル・ルージュの凱旋」の竹内太郎が共演。思春期の真っただ中にいる者の心情をリアルかつ郷愁的に切り取ったタッチに加え、トレードマークの長い黒髪をバッサリと切った早見の姿にも注目。

<感想>冴えない同級生を嘘の恋愛で翻弄する早見あかりの初主演作。彼女のの印象がまだ19歳なのに、学校の屋上で寝そべってミニスカートからパンツ見えるんじゃないかとか、映画館のロビーでノボルが気分が悪くなり、映画を観ないでベンチでノボルに肩をかしてあげる所とか、顔が実に綺麗に撮れているところが大人の女っぽいのだ。
時として後姿から徐々に現れるサマは一種のスペクタルです。顔の輪郭が実に彫刻のように彫が深くて、見事な横顔の鼻と大きな目に唇など、百瀬ならぬ「早見、こっち向いて」と言いたくなる。

このところやたらに多い学園青春ものの定版パターンで、よくもまぁ同じ様な作品が次々と、アキレてしまう。本作も、回想形式にしているが似たようなキャラ設定で、またかと思ってしまう。ノボルが成長して小説家になって、母校に帰って来るシーンから始まり、大人のノボルは向井理が演じている。

偶然出会った神林親子と喫茶店でお茶をするところから始まる。宮崎先輩と結婚して子供が二人いるということで、中村優子が演じている。
お話はここから始まり一気に過去篇へと。つまり、百瀬と先輩の宮崎瞬が一緒に駅に居たところを同級生に目撃されて、噂になってしまった。それを打ち消すようにと、宮崎先輩から頼まれたパットしない相原ノボルが、恋人のフリをするように頼まれる。
百瀬は、男っぽくてサバサバしているところは、まだ少女のような本当の恋を知らないで初恋に憧れているようなところ。クールな一面は持っているけど、他にも様々な要素を持っている女の子。私だったら、他に彼女がいる男は好きにならないし、もし好きになっても諦めてしまう。二番手でもいいから好きな彼の傍にいたいなんてことは考えないですよね。
実はノボルには、宮崎先輩は命の恩人なのだ。宮崎の父親が亡くなった葬式の夜、自転車で土手を走っている時に誤って下へ転落し、脚を怪我して血だらけになり、そこへ宮崎先輩が通りがかって助けてくれたこと。

そういわれても奥手のノボルは、百瀬の言うがままで、図書館でノボルが勉強していると、彼女は恋人のふりをしてノボルの肩に頭を寄せようとする。ところが驚いてノボルは避けてしまう。そして、ノボルの家に行き、母親はびっくりしているのに、ノボルの部屋に行き、ダブルデートに着ていく服をクロ−ゼットの中の、段ボールからベッドの上に洋服をまき散らす。本当にサイテーな女なんですから。
それに、母親がいいですよね。普段おとなしい息子に彼女がいたなんて思ってもいなかったことで、得意のパイナップル入りのカレーライスを御馳走する。これは、ノボルの心の中までズケズケと百瀬は入り込んでしまったようです。これはもう、ノボルの初恋物語じゃないですか。
そして、百瀬が想いを寄せる宮崎先輩と神林徹子、ノボルと百瀬との4人でダブルデートへ。爽やかな青春の一コマに見えるけれど、4人の複雑な感情が交錯する恋愛サスペンス的なシーンでもあります。

デート中の4人は、恋人同士が一緒にボートに乗ると別れるという都市伝説が囁かれる公園の池でボートに乗ることになり、「宮崎と百瀬」、「神林とノボル」という組み合わせで乗ることを提案する神林先輩。彼女は、ノボルと百瀬は偽装カップルだということを気付いていたのかも。だから、帰りのバスの中で、宮崎にほうずきを手渡す。
ほおずきの花言葉は:心の平安、 不思議、私を誘って下さい、頼りない、半信半疑、欺瞞、 偽り。
花言葉を巡るミステリーというコンセプトが設定されているのだが、語り口に芸がなくこっちには伝わってこないのだ。ああ、そうなのって感じかな。
それに、子供っぽい百瀬に対して、神林徹子はすでに淡い口紅を塗っており、百瀬はリップなのだ。着ている洋服も神林は、呉服問屋のお嬢様で素敵なワンピースなのに、百瀬は兄弟が多い公団住宅に住んでいるから、シャツにミニスカートという普通の高校生って感じ。

ラストの朝日が昇る直前のシーンで、ダブルデートで百瀬もノボルも、ボロボロに傷ついてしまう。百瀬の家を訪ねたノボルと川の土手で、百瀬が「もう恋人ごっこの嘘は止めよう」と言う場面で、百瀬が涙を流して口を利かなくなり背中を向ける。ノボルが百瀬に、自分が好きになってしまったことを告白したい衝動にかられるシーン。タイトルどおりの「百瀬、こっちを向いて。」ですよね。演技はまだまだ未熟でも、早見あかりの存在は、魅力的だけにこれからに期待したいものです。
2014年劇場鑑賞作品・・・112 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

青天の霹靂 ★★★★.5

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作家や俳優としても活躍する人気お笑い芸人の劇団ひとりが書き下ろした小説を、自らメガホンを取って実写化したヒューマンドラマ。40年前にタイムスリップした売れないマジシャンが、同じマジシャンであった若き日の父とコンビを組み、自身の出生をはじめとする家族の秘密を知る。『探偵はBARにいる』シリーズなどの大泉洋が不思議な体験をする主人公を快演し、その両親にふんする劇団ひとり、『GO』などの柴咲コウが物語を盛り上げる。涙と笑いに満ちた物語に加え、4か月の練習を経て臨んだ大泉洋のマジックシーンにも目を見張る。
あらすじ:場末のマジックバーで働く、さえないマジシャンの轟晴夫(大泉洋)。ある日、彼は10年以上も関係を絶っていた父親・正太郎(劇団ひとり)がホームレスになった果てに死んだのを知る。父が住んでいたダンボールハウスを訪れ、惨めな日々を生きる自分との姿を重ね合わせて涙する晴夫。すると、突如として青空を割って光る稲妻が彼を直撃する。目を覚ますや、40年前にタイムスリップしたことにがくぜんとする晴夫。さまよった果てに足を踏み入れた浅草ホールで、マジシャンだった父と助手を務める母(柴咲コウ)と出会い……。

<感想>タレント・俳優、小説家「陰日向に咲く」など幅広く活躍する劇団ひとりが、原作、脚本、監督、出演などひとり4役での初監督作です。自身の2作目の著作を基に、生まれる前の時代にタイムスリップしたマジシャンが、「生きる理由」を見出す姿を描いている。主人公晴夫には大泉洋が、雷門ホールの支配人役に風間杜夫が、母親の悦子には柴咲コウを迎えて、劇団ひとりは父親という設定で、心にしみいる笑いと涙の人間ドラマに仕上げています。

時を超えて出会った息子と若き日の両親と言うと、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を思い出します。それにタイムスリップした40年前と言えば昭和48年代ですよね。まるで「ALWAYS三丁目の夕日」のような1973年の浅草の活気を、長野県上田市に再現したリアリティには本当に驚いた。

物語は、かつては自分を「特別な存在」だと思っていた晴夫だったが、今では四畳半の古いアパート住まい。TVで人気上昇中の後輩の活躍を眺めながら、場末のバーでしがないマジックを披露する毎日で、平凡に生きることさえ難しい現実を痛感する。

昭和48年に飛ばされた晴夫は、母親と知らずに悦子という若い女と舞台に上がり、謎のインド人ペペとして、まだ当時は知られていなかったスプーン曲げを披露する。さらに、チンこと正太郎(晴夫の父親)とコンビを組むことで人気を博し、人生で初めて満たされた日々を味わう。

マジシャン役の大泉洋さん、ノースタントでマジックの練習に明け暮れ、冒頭から観客の目を釘付けにするシーンでは、拍手喝采です。それと、父親の劇団ひとりと一緒に舞台でロープ芸を披露するシーンでは、大泉が結んだロープを難なく解くも、父親の劇団ひとりの首にロープを巻き、それを紐解くのが首にしっかりと巻き付き苦しくて取れない。それが観客に受けて大笑いを取るシーンもある。それから、トランプの芸や、鳩を出す芸、ワインを何本も出す芸、最後に泣かせるのが、白い紙の薔薇の花が宙に浮き、本物の赤い薔薇に変えるシーンには、涙が出てしょうがなかった。

自分の出生の秘密が解き明かされ、今まで母親は自分を捨てて家を出て行ったと聞かされていたのに、まさか自分の命と引き換えに、晴夫を産んだことが分かり、これも実に胸につまされて泣けます。

だが、現実離れした設定の今作に優れたヒューマンドラマとしての、リアリティとユーモアを与えているのは、間違いなく主人公役を演じた大泉洋の、運命に翻弄されればされるほど輝く、演技を超えた存在感だと思います。
かつて、「水曜どうでしょう」で、サイコロの目に自らの旅路を翻弄されて、自らの運命をパスポートと共にがっちりと握られ、愚痴とボヤキしか出ないシチュエーションに置かれながら、他でもないその飾りっけなさに、やられっぷりで、観る者を魅了してきた大泉洋の存在感が厚いです。

「探偵はBARにいる」でのクールなマイトガイ感じや、「清州会議」での豊臣秀吉の怪演など、表現のレンジを格段に広げてきた彼だが、40年前の世界への「タイムスリップ=旅」に否応なく連れ出された晴夫の運命に、かくも深く感情移入させ得る役者は、やはり大泉洋しかいないと思った。
俳優である大泉洋と人間の大泉洋が、最大限に体現されているという点では、これまでの彼の主演映画の中では一番のハマリ役だと確信しました。それに、劇団ひとりの才能が開花した作品でもあると言っていいでしょう。
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グランドピアノ 狙われた黒鍵 ★★★

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『ロード・オブ・ザ・リング』などのイライジャ・ウッドを主演に迎え、コンサートの舞台で孤軍奮闘する天才ピアニストの姿を描くサスペンスドラマ。約5年ぶりに戻ってきたステージ恐怖症のピアニストが、謎の狙撃手に難曲をミスなしで完奏するよう脅迫されながらも必死で相手に食らいつく姿を活写する。声だけで主人公を操る男を、『推理作家ポー 最期の5日間』などのジョン・キューザックが好演。観客が注視する中、水面下で展開する緊迫感あふれる駆け引きに熱狂する。
あらすじ:世界屈指の若き天才ピアニストのトム(イライジャ・ウッド)は、およそ5年ぶりの復帰公演のためシカゴ空港に降り立つ。彼は人気女優の妻エマ(ケリー・ビシェ)に励まされながら、今は亡き恩師の追悼コンサートへの参加を決めたものの、すぐに後悔し始める。トムは観客で満席のホールを前に尻込みするが、勇気を奮い立たせてステージへと上がり……。

<感想>イライジャ・ウッド主演によるサスペンスドラマである。天才ピアニストの演奏会に、射殺の脅迫が絡むサスペンスドラマと言うので、期待したのだが、出演当日どころか、コンサート間際にシカゴに飛行機で着いたという天才ピアニストのイライジャが、オヘア空港から迎えに来たリムジンの中で、慌ただしく舞台用の衣装に着替えをするというところからしてシラケムードでした。もうこれで、お話に乗れなくなってしまうのだ。
5年ぶりの大舞台という設定なのに、それに、狙撃者の脅迫なるものも、もっときっちりと描いて緊張感を盛り上げて欲しかったと思います。

それに、ベーゼンドルファー社の通常にはない鍵盤のあるグランドピアノ、恩師が所有していた特別のピアノが舞台に搬送されて置いてある。そのピアノを弾く奏者は、亡くなった恩師と可愛がられていた弟子のトムの二人だけというのだ。スナイパーからのメッセージが、楽譜に赤く記されているのを目にする。
恩師のパトリック・ゴーダルーが作曲した「ラ・シンケッテ」、演奏不可能とされる難曲を、演奏をやめると殺されるという、それに一度でも間違って弾いたなら殺すという、殺し屋の赤いレーザーポインターが自分のピアノを弾く手に赤くマークされる。
謎とスリル「どうだと言わんばかりの、かつてないアイデアだろう」という製作側の興奮と鼻息が伝わってくる91分間。そこに音楽への敬意や歓びはあまりな、感じが残念なところだったりしました。

当然、膨大なお金に絡む犯罪ですが、いや別にこんなリスクの高い方法を取らずともと、身も蓋もないことをついつい思って見てしまった。つまり、その難曲の最後の方の章節を間違えることなく弾くと、グランドピアノに仕掛けられている隠し金庫の鍵が開くという。今は亡き恩師の残した莫大なる財産が隠されているということ。それを悪党たちが狙撃者を雇い、トムにしか弾けない難曲を間違いなく弾きこなせと脅迫する。止めれば綺麗な女優の奥さんを殺すと言うのだ。

映画の中では、キューザックが演じるスナイパーがイヤホンでトムに指示を出すため、姿を見せないスナイパーの声がジョン・キューザックということが分かる。
しかしですよ、有り得ないことにピアノ奏者のトムが、何度もオーケストラの演奏中に席を抜け出したり、ピアノを演奏しながらイヤホンマイク越しで犯人に罵声を浴びせるし、スマホをいじるわで、友達にメールでスナイパーに狙われていることを知らせるも、殺し屋の仲間が劇場の警備員として入っており、その友達はあっさりと殺されてしまった。

それに、ピアノを弾きながら目を観客席に向けて、スナイパーを探したりするトム。観客もピアノ奏者のトムが席を立っていなくなるのを不審がるのだ。
最後の方になってスナイパーのジョン・キューザックが姿を現して、イライジャと揉みあいになり舞台の上から二人とも落下してしまう。問題のグランドピアノの上に落ちたキューザックは即死で、イライジャは足の骨折で助かったのだ。
運送屋がピアノをトラックの荷台に積み、イライジャが問題の最後の章節を引き始めると、ピアノの中にある秘密の金庫の鍵が開く。下へかがんで覗いてみるイライジャの顔でラストです。リアリズムで考えたらツッコミどころだらけで、というよりも、どうみてもオカシなお話なのだが、ファンタジー性が微妙に加味されているようです。何となくヒッチコック的な世界だと思えば楽しめるかも。
実際にカメラワークやギミックにも、ヒッチコック的ケレン味が目白押しでしたから。それでも全編に及び、好きなピアノ演奏がバックで流れるのが良かったです。
2014年劇場鑑賞作品・・・116 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

トランジット ★★★★

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史上最強のタッグが放つノンストップ・アクション。手に汗を握るクライムアクション・スリラーがTSUTAYA限定でレンタル開始。2011年、アメリカ。監督はアントニオ・ネグレ。
制作は、「ダイ・ハード」「マトリックス」の大ヒットシリーズを生んできた、ジョエル・シルバー。家族を救って男になれ、元詐欺師、決死の大爆走!「TSUTAYA」 PBの最新作で劇場未公開作品。アクション・スリラー映画となっていたが、予測不可能なノンストップ・スリラー、これはお得なDVDレンタルでした。
だいぶ前にレンタルしたのですが、今回「大脱出」で刑務所の所長を演じたジム・カヴィーゼル、「シン・レッド・ライン」、「アンノウン」「パッション」にも出ていた彼が、主演を務める体当たりのアクション劇です。
物語は、ジム・カヴィーゼル演じる仮釈放中の男ネイトは、妻と二人の息子とファミリーカーでキャンプ地へ向かっていた。だが、途中で現金輸送車の強奪事件に巻き込まれる。4人組の犯人グループに追いまわされる羽目になってしまう。
と、紹介すると極悪な男たちが、善良なファミリーを追いまわすだけのシンプルな展開を想像するかもしれない。だが、お話はそう簡単には進まないのである。不動産詐欺で捕まり、仮釈放中の男が家族と絆を取り戻すためにキャンプ地に向かっていた。
だが、現金輸送車を強奪した犯人たちが、現金と拳銃を持っているため検問に見つかる。それで、その犯人の中の女が、家族のファミリーカーの屋根の上に荷物を積んでいるのを見つけ、その中に強奪した現金400万ドル(4億)を積みこむ。
検問を難なく通り過ぎ、犯人たちは現金の入ったカバンを取り戻そうと、家族の車を追い掛け始めるのだが、まさか車の上にそんなものが乗っているとは気づかず、カーチェイスが始まり家族の車だけが、警察のスピード違反で捕まり夫が逮捕される。家族はモーテルに泊まるも悪党に襲われ、奥さんがトイレに立て篭もり警察へ通報。それで夫は釈放されるのだが、一難去ってまたもや一難。

妻が車の上にある荷物を調べると、そこには大金400万ドルの札束があり、妻はまた夫が悪事を働いたと勘違いをして、夫と現金を残して車で立ち去ってしまう。
それからが、この男は沼の中を思いカバンを引きずって、ワニが生息している危険地帯。大きな朽ち果てた木の穴にカバンを隠し、自分だけ道路へ出るも、犯人の車が妻たちの車に追い付き現金を出せと脅迫。
夫と共に置いてきたというと、後戻りして夫を見つけるも、現金と引き換えに家族を渡すというが、行ってみると木の穴にはすでに現金はなく、その沼に住み込んでいる男が持ち去ったのだ。
それからが悪党どもから、家族を守るために男が俄然張り切るのだが、意外と弱いのだ。悪党にナタで手の指を切られ、鎖でぶんぶん振り回すも、反対に鎖を悪人に取られて首を絞められるしまつ。
沼の小屋に行くも、その住人も悪党たちの襲撃で撃たれて死亡。その小屋に立て篭もった奥さんの方が、悪党に向かってライフルを発砲したり、札束に油をかけて燃やしたりと勇敢に見えた。息子二人も応戦。悪党と銃撃戦の凄さには半端ない。もうこれって劇場で公開してもいいくらいスリリングで見応えある。
犯人グループの間でも仲間割れがあったりして、夫婦の関係にも暗い過去があったり、状況を把握していない警察が途中で乱入して来たりするので、先の展開がまったくもって読めず、予想外のアクション・シーンが、ほぼノンストップで待ちうけているのだ。
最後の最後まで目が離せないハラハラ、ドキドキ感が最高です。ラストの悪人と言うと、仲間の女が脚を骨折しているので邪魔になったのか後ろを向かせて銃で撃つ。そして、夫が小屋の前で闘うのだが、悪党の運も尽きたのか、床に転がった際に後頭部を床から出ていたクギで打つというあっけない最後だった。
奥さんのマリエルには「テキサス・チェンソービギニング」のディオラ・ベアード、マレック役に「トロン・レガシー」のジェームズ・ブレインが熱演しております。
最先端のCGをふんだんに使ったハリウッド超大作アクションももちろんいいけれど、やっぱりたまには、タフでソリッドなB級スリラー映画の良作も見たいですよね。という気分の時こそ是非ご覧ください。期待外れだという思う貴方に、絶対に損はさせませんから。
2014年DVD鑑賞作品・・・39 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング


unknown/アンノウン

マンデラ 自由への長い道 ★★★.5

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2013年12月5日に逝去した元南アフリカ大統領、ネルソン・マンデラの「自由への長い道 ネルソン・マンデラ自伝」を実写化した伝記ドラマ。人種隔離政策アパルトヘイトに挑む闘士から大統領となった彼が歩んだ波瀾(はらん)万丈の人生を、重厚なタッチで映し出していく。メガホンを取るのは、『ブーリン家の姉妹』などのジャスティン・チャドウィック。『パシフィック・リム』などのイドリス・エルバが、マンデラを熱演。実際にマンデラと親交の深かったU2のボノが作品のために書き下ろした主題歌も聴きもの。
あらすじ:人種隔離政策アパルトヘイトによって、白人たちが優位に立ち、黒人たちが迫害されていた、南アフリカ共和国。弁護士として働いていたネルソン・マンデラ(イドリス・エルバ)は、そんな差別や偏見が当然のように存在している状況に疑問と怒りを感じられずにはいられなかった。その思いを強くするあまり、彼は反アパルトヘイトを訴えた政治活動に身を投じていくが、それと同時に当局から目を付けられるように。活動は熱を帯び、ついには国家反逆罪で逮捕され、終身刑という重い判決を下されてしまう。

<感想>人種差別撤廃にその人生を捧げ、ノーベル平和賞を受賞した第8代南アフリカ共和国大統領、ネルソン・マンデラ。彼の壮絶な全人生を描いた伝記映画であります。若い頃から反アパルトヘイトの活動家だったプロデューサーのアナント・シン。映画製作を通じて人種差別撤廃を訴えてきた彼は、ネルソン・マンデラについての映画を作る事は、長い間の夢だったそうです。
マンデラ本人も、彼の活動を知っていて、マンデラが獄中にいる時から、文通が始まったとのこと。実際にマンデラと逢ったのは、1990年、釈放されてから2週間後のこと。とてもユーモアのある方で、映画を作りたいと言うと、「私の人生を描いた映画なんて誰が観たいのかな?」なんて言いながらも快く引き受けてくれたそうです。
自伝が発刊されてから約20年、映画化にこれほどまで時間がかかった理由は、子供時代から大統領就任前の波乱に満ちた人生を、2時間余りの映画の中に収めるための脚本作りに膨大な時間を費やしたためだと言うのだ。
記憶にあるのは「インビクタス/負けざる者たち」(09)や「マンデラの名もなき看守」(07)といった人生の一部にフォーカスした作品。あるいはドキュメンタリーなど、これまでマンデラを描いた作品は数多くあります。

しかし、この映画は、彼の全人生を描いているのだ。子供時代をどういう村で過ごしたのか、最初の結婚生活の破綻により何を学んだのか。そういったことはすべて、世界中の人に知られ「ネルソン・マンデラ」になるまでに必要な要素だったからだ。とりわけ、二番目の妻ウィニーとの熱烈なラブストーリーを物語の軸に据えていること。
貧しい村に育ったマンデラは、成人して弁護士になった。だが、人種隔離政策アパルトヘイトによって白人たちが優位に立ち、黒人たちが迫害されている状況に疑問と怒りを感じ、マンデラは反アパルトヘイト運動に身を投じていくが、ついには当局から過激な活動に目をつけられ、国家反逆罪で逮捕、終身刑という判決を下される。
その後、27年間の収監の途中で先妻との間にできた息子の死、解放されたネルソン・マンデラは、人種差別運動のアイコンとなり、第8代南アフリカ共和国大統領に就任するのである。
この作品のユニークさは、世界的英雄となったマンデラのプライベートな部分にまで踏み込みこんでいることである。聖人のイメージが強い彼だが、実は人間っぽい部分もあり、女性関係では生涯に3度の結婚も経験。

とりわけ、18歳年下で二番目の妻ウィニーとのラブストーリーは、とてもパワフルでエモ−ショナルだと感じました。この二人の真実の愛は、同時に悲劇でもあったのですね。激しい恋に落ちて結婚した二人ですが、2人の娘を持ち、4年目でマンデラは収監されてしまう。
その後、20年以上も二人は一緒に暮らしていないわけで、自由な身になりウィニーに再会したマンデラは、映画の中の台詞にもありますが「愛していた彼女はいなくなってしまった」ことに気付くのですね。ウィニーが彼を愛するあまりに、彼を釈放さえたいがために、女闘志家として目覚めて民衆を率いる力を供えてしまったこと。長女もそうでしたね。それに、男がいるということも。

ウィニーがあまりにも変わってしまったのかもしれないし、マンデラが会えない間に、彼の頭の中で彼女のイメージを膨らまし過ぎたのかもしれませんね。いずれにしても、自由を得るという最大の勝利の瞬間に、人生で最も大切なものを彼は失ってしまったのですね。これ以上の悲劇があるでしょうか。
しかしながら、27年間という長い歳月で、憎しみを捨て思慮を深めていったマンデラに対して、外の世界で迫害され、夫を救い出すために武力闘争へと傾いていった妻のウィニー。すべては夫への愛ゆえなのに、二人の溝がどんどん広がってしまう運命の皮肉が、あまりにも切ないですね。
彼が最終的に辿り着いた結論は、闘うのではなく「許す」ことを学ぶ姿勢だったのです。敵の立場や心境も理解しようと努めること。それなくしては、あらゆる人種が共存できる平和な世界が実現することはあり得ないと思うようになったことです。
どんな人に対しても分け隔てなく同じように敬意をもって接すること、それが海外の要人でも、ホテルのドアマンでも。彼をネルソン・マンデラとしてたらしめている資質ですが、これも27年間の時を経て形成されたと思うと皮肉ですが、・・・。享年95歳、世界の平和の象徴であり英雄であるネルソン・マンデラ氏に合掌。

インビクタス/負けざる者たち」(09)

マンデラの名もなき看守」(07)

2014年劇場鑑賞作品・・・117 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

オー!ファーザー ★★★

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重力ピエロ」「ゴールデンスランバー」などの人気作家・伊坂幸太郎の小説を基にしたサスペンスコメディー。父親を名乗る4人の男と暮らす男子高校生の風変わりな日常と、彼が巻き込まれた監禁事件のてん末を映し出していく。監督は『SHAKE HANDS』などの藤井道人。『偉大なる、しゅららぼん』などの岡田将生が主演を務め、その脇を佐野史郎や村上淳らが固める。父親たちの珍妙なやり取りだけでなく、家族のあり方を見つめた温かなテーマにも注目。
あらすじ:大学教師の悟(佐野史郎)、ギャンブラーの鷹(河原雅彦)、体育教師である勲(宮川大輔)、元ホストの葵(村上淳)と父親を自称する男4人と同居する高校生の由紀夫(岡田将生)。何かと干渉してくる父親たちをわずらわしいと感じてしまう中、彼は何者かに監禁されてしまう。悟、鷹、勲、葵は、一致団結して由紀夫を救出しようとするが……。

<感想>井坂原作作品に出演するのが3本目だという岡田将生。1989年生まれだから25歳になるのに、何故か高校生役が似合う。いつまでもお坊ちゃんらしさが抜けないのか、今作品での岡田くんもなにげにオトナシイ主人公が、不登校の小宮山を訪ねて事件に巻き込まれ拉致されてしまう。

拉致された主人公の由紀夫には4人の父親がおり、彼らが子供時代に由紀夫の誘拐を心配して、当時の脱獄ドラマを真似て、電線を伝って脱出する訓練をするシーンもあり、これが本当に実行することになるとは。しかしですよ、何よりも魅力的なのは、4人の父親のキャラクターなんですね。一婦多夫なんて羨ましい限り!!よほど魅力的なお母さんなんでしょう。
井坂ミステリーの魅力は、バラバラに見える伏線がラストで見事に収束される痛快さにあると思う。今回も御多分に漏れず、由紀夫の周りで起こる様々な出来事の点と点が、最終的に線で結ばれ、驚きの結末に辿り着くわけ。
原作は読んでいませんが、母親は出張中とのことで最後まで出て来ません。その代わり4人の個性溢れる父親が一緒に住み、朝食、夕食を一緒に囲み1日に起きたことを全てお話すると言う和やかさ。夕食後はマージャンをして、殆ど由紀夫が勝というアットホームな毎日が描かれる。

由紀夫が初めて家に女の子を連れて来るという事件的なことも含めて、あれこれと4人の父親が品定めをし、母親が留守がちなので家の中は、元ホストの葵が主夫をこなしている。宿題だって大学教師の悟が教えてくれるし、スポーツは、体育教師である勲がキャッチボール、サッカーとかで遊んでくれる。

由紀夫の友人関係も親である4人が把握しており、柄本明さん演じる街の顔役である富田林が営むゲーセンで、ある男のカバンがすり替えられる現場を目撃する由紀夫。そのことに興味を持ち好奇心から犯人を追い掛ける由紀夫。怖いもの知らずの由紀夫、バスの中でトラブルメーカーの中学の同級生、鱒二と出会う。
テレビでは、地元の知事選挙が行われるために、立候補者が赤羽と、白石で紅白合戦と称される知事選が佳境にさしかかる中、あのカバンすり替え事件がこの選挙と関係があることが判明。

不登校の小宮山のマンションを訪ねる由紀夫が、そのまま拉致され家に帰らない。そのことから4人の父親が不信に思い動き出すのである。物語自体はさして痛快なアクションと、スリル満点なサスペンスなんてものはあまりなく、最後の方で拉致された由紀夫が、マンションでケータイに葵から連絡があり、つい「お父さん」と、今まで口にしたことのない救援信号を発するのだ。

つまり、小宮山くんのマンションの向かいにある部屋に、知事選挙の白石の愛人が住んでいて、小宮山の部屋にいた中年男女は、娘が不可解な心中事件を起こしたことで仇をとろうと、白石が来たところを殺し屋が射殺するということらしい。つまり巻き添えに遭ったということだ。

これが始まりで、4人が動きだし、一番頭のいい大学教師の悟がテレビのクイズ番組に出て、応援の3人の父親が手旗信号で「明日の朝、10時に窓を開けておけ」と、由紀夫に伝達する。
確かに、殺し屋が一人いて拳銃を持っており、1発だけ弾丸が撃ち込まれるが、由紀夫たち人質には怪我人は出なかった。ラストの救出作戦も、3人が「13日の金曜日」のジェイソンみたいなホッケーマスクを付けて、殴り込んでくると言う勇ましさ。子供時代に話していた電線を伝って下のワゴンカーへ降りるという。何ともユニークな4人の父親たちの連携プレイである。
2014年劇場鑑賞作品・・・118 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

光にふれる ★★★.5

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台湾出身の盲目のピアニスト、ホアン・ユィシアンの実話を基に描く感動作。全盲ながらも類いまれなピアノの才能を持つ青年と、ダンサーを志す女性の出会いを通して、お互いに夢に向かって奮闘する姿をみずみずしいタッチで描き出す。ホアン・ユィシアン自身が主演を務め、相手役を台湾の女優サンドリーナ・ピンナが好演。さまざまな困難を乗り越え、母の愛や友情に包まれて羽ばたく主人公の姿に勇気をもらう。
あらすじ:生まれたときから目が見えないユィシアン(ホアン・ユィシアン)は、台中で花農家を経営する両親と幼い妹と一緒に生活していた。ピアノの才能に恵まれた彼は台北の大学に進学が決まり、母親(リー・リエ)の運転する軽トラックで大学の寮に向かう。視覚障害者を初めて受け入れた大学では、ユィシアンの移動を日直のクラスメートが手助けすることが決まり……。

<感想>台中で静かな田舎の風景の中、両親が農作業をする傍らで、山道の奥を見つめる兄と小さな妹。「誰がやってくるか、どっちが先に当てるか競争しよう」と、ほどなくしてバイクの音がする。その音に、瞬時に誰のバイクか当てる兄と、負けたことを悔しがる妹がいた。
多分いつもこうして当てっこして遊んでいたのだろう。兄は目が不自由なこと、その分聴覚が優れていることで、更にはユィシアンの台北の音大に旅立つその日の、家族との別れの辛さまでもさりげなく伝える冒頭のシーン。

盲目の天才ピアニストの実話に基づく感動作との、ふれこみから簡単には感動しないと、身構えて観ていました。一気に画面に引き寄せられる。この映画は、チャン・ロンジーによる短編「光にふれる」に、感銘を受けたウォン・カーウァイがプロデューサーとして名乗りをあげ、短編をさらに深めて長篇として仕上げたもの。

その物語は、ユィシアンの大学生活を描く過程でも通して変わらず、不安や戸惑いに揺れながらも、周囲の人々とのかかわりによって徐々に自立していく姿を、細やかに、かつ自然に映し出していく。

柔かい画調が、作品世界の優しい感触をうまく盛り上げている。ピアノ演奏に才能を見せる、目の不自由な若者ユィシアン本人を主人公に、飲料水配達の仕事をしながらダンサーを志す、
サンドリーナ・ピンナと親しくなっていくプロセスが描かれていて、フランスの血を半分受け継いでいるというピンナの雰囲気も、この作品に都会的な気分をもたらしているようですね。
感動秘話というよりは、コミカルなシーンやオタク学生たちの胸が熱くなる友情もあり、可愛いらしいカレッジ青春ものとして楽しく観れました。

音楽の力、ホアン・ユィシアンの演奏に心揺さぶられ静かに涙が頬を伝うとは。
最後の音楽コンテストと、ダンスのオーディションが、もうちょっと盛り上がると、もっと良かったのに。

日本にも盲目の天才ピアニストで辻井伸行さんがいます。彼のアメリカでの賞には本当に努力が実って良かったと思いました。ホアン・ユィシアンとどこか似ているようですね。
辻井さんは映画の「神様のカルテ」の、作曲家としてもみずみずしい才能を発揮している音楽家でもあります。彼の演奏するどの曲も、清々しく、音色がいきいきとしたピアノ演奏には驚かされます。ときに優しく、ときに力強く、一歩引いた感じの演奏がいいですね。

2014年劇場鑑賞作品・・・119 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ジャッカス/クソジジイのアメリカ横断チン道中 ★

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メンバーたちが体を張った過激なパフォーマンスを繰り広げ、一般人を笑わせたり憤慨させ、アメリカのみならず世界中で人気を博すシリーズの劇場版。メンバーのジョニー・ノックスヴィルふんする86歳の男が8歳の生意気な孫を連れ、アメリカを横断しながら大暴れする。監督は、『ジャッカス3D』なども手掛けてきたジェフ・トレメイン。孫の目の前で、はたまた孫と共に、スーパーで万引きをしたり美少女コンテストに出場したり、いたずらの限りを尽くす迷コンビの珍道中に衝撃を受けること請け合い。
あらすじ:アーヴィング(ジョニー・ノックスヴィル)は、86歳のエッチなじいさん。8歳の孫ビリーの父親を捜すために、二人はアメリカ横断の旅に出ることに。スーパーで万引き、結婚式のシャンパンタワーを崩壊、美少女コンテストで孫に下品なダンスをさせるなど、二人が過激で破天荒な行動で波乱を巻き起こす。

<感想>昨年10月のアメリカ公開時に興行収入1位を獲得したという、オバカで、破廉恥で、下ネタ満載のドッキリ、悪ふざけの作品です。主役のジャッカスを演じるジョニー・ノックスヴィルは、前にも「ジャッカス・ザ・ムービー」で演じていたノックスヴィルが、今度はフィクションを加えた内容。特殊メイクでヨボヨボのお爺ちゃんに変身、メイクを担当したのが「ダークマン」のメイクをやっていたトニー・ガードナー。
42歳の彼が、余りにも見事な老けメイクに、破天荒な老人がイタズラをしてドッキリをやる行為に、皆が騙され呆気に取られるシーンが続出ですから。

冒頭のシーンでは、爺ちゃんが病院の待合室で待っているところへ、医師が現れ妻の死を告げる。それを聞いていた隣の老夫人が、気の毒にと思って居ると何気に老人は立ち上がり、これでワシは自由になった。これから女とじゃんじゃん遊びハメを外せると大喜びだ。驚き呆れかえる待合室の人たちといった具合に、この爺ちゃんが素人さんたち相手に、常識をフライングしたイタズラを次々と仕掛ける、ドッキリ映画である。
物語は、ロードムービーで、娘が薬物中毒で刑務所に入り、その子供、孫を連れて父親のところへ送り届けるために、アメリカを車で横断するという。それに亡くなった奥さんの遺体を、車のトランクの中へ入れての珍道中だ。どうやら、葬儀の最中に娘が孫を連れて来て、葬儀がメチャクチャになり追い出されたらしい。

フィクションなのだが、その道中でやりまくる数々の悪戯やドッキリはすべてガチ、という塩梅だ。そうするとどうなるのかって、たちの悪い感じになっているので、こういう手合いの映画を好む人には受けるかもしれませんが、私にはどうも前に観た「ムービー43」と同じく引いてしまって笑えなかった。館内には客のまばらで、笑っている人はいないのだ。アメリカ人には受けるのだろうが、日本人好みではない。

内容も、もの凄くえげつなくて、下ネタ満載で、マーケットでパンにハムとかその場で食べ始めて証拠を失くせばいいとか、レストランでは食事の最中にオナラの連発、それに最後は中身が出てきたと壁に○○チをぶちまける始末。公共の施設で、小さい孫を連れて、こういった行いはどうかと思います。
エンドクレジットで、民間人の前でこういう無礼な態度は、いくらボケ老人だと偽っても許されません。監督さんとか謝ってましたが笑えませんから。
いくらか微笑ましい映像は、孫を使ったナンパとか、遊戯用の子供の乗り物がぶっ飛ぶ所、それに「リトル・ミス・サンシャイン」の真似なのか美少女コンテストに男の孫が参加して、化粧が上手いのか金髪カツラと、ピンクのドレスが似合っていてダンスを踊るシーンなどが良かった。

父親に引き渡すシーンも、ジーンときちゃったけれど、父親は児童手当が目的で引き取るのが見え見えで、その場所へ児童愛護協会の面々がいたのが良かった。でも、いくら人形でも婆ちゃんの遺体を、川に捨てるのはどうかと思う。
何だか、普通の人たちがみんなデブデブで、太った人ばかり出ているのが笑いを取るためなの、太っている人たちは騙しやすいからなのか。
孫を演じた少年は、「ザ・ファイター」でクリスチャン・ベールの少年時代を演じたジャクソン・ニコルくん、実に芸達者でふてぶてしく演じていて、主演のノックスヴィルを喰っていたように見えました。末恐ろしいガキです。
2014年劇場鑑賞作品・・・200 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング


セインツ 約束の果て ★★★

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1970年代のアメリカはテキサスを舞台に、強盗と妊娠した女性、彼女に恋焦がれる保安官の3人の愛と運命を壮大な自然と共に描くドラマ。一人で娘を育てる女性に、『ドラゴン・タトゥーの女』などのルーニー・マーラ、女性の身代わりとなり刑務所に送られた男性を『ジェシー・ジェームズの暗殺』などのケイシー・アフレック、保安官を『パンドラム』などのベン・フォスターが演じる。監督を務めるのは、本作が長編2作目となるデヴィッド・ロウリー。3人の男女の静かにかつ熱く交錯する思いの行方が胸を締め付ける。
あらすじ:ルース(ルーニー・マーラ)が妊娠し、一緒に窃盗などを繰り返してきたボブ(ケイシー・アフレック)とルースはこれを最後にしようと銀行を襲うも、ルースが拳銃で放った弾丸が保安官パトリック(ベン・フォスター)に当たってしまう。そこでボブは、ルースの身代わりとなり投降し刑務所へ。4年後、娘を育てるルースのもとに、ボブが脱獄したとの知らせが入る。そのころボブは危険を冒し、ルースのもとへ向かっていた。

<感想>ベン・アフレックの弟でもあるケイシー・アフレックのファンです。あのしゃがれ声が痺れます。今回は人間味溢れる小悪党を演じているのもいい。それにルーニー・マーラが、気丈で一途な妻役を悲哀たっぷりに演じているのだ。
その彼女を愛してしまう保安官に、ベン・フォスターといった名優たちが、現代版「俺たちに明日はない」のような、アメリカン・ニューシネマの匂いを放っている。
広大なテキサスの田舎町を舞台に、詩情豊かな映像で綴った、埃っぽくてロマンに満ちたクライムドラマになっている。

登場人物がみんな、芯に誠実な心を持っている。破滅的な愛は、すなわち命がけであり、たとえ着地点が予測不可能でも、それが美しく感動的に物語を織りなしていく。
ボブが脱獄をした後に、あの銃撃戦のあった農場へと向かいます。その廃墟のような農場の天井裏に住み着き、樹の下に埋めていた金を掘り当てて、妻とまだ見ぬ娘と3人で何処か遠くへ逃げようと計画していたようです。

「誓う愛」の物語、愛ゆえに男は脱獄し、死にもの狂いで2人の元へと向かう。しかし、保安官や彼に恨みを持つ殺し屋がボブを執拗に追跡していたのである。
女は子供を守る母親となる。時代も状況も、垂れこめる雲のような独特の撮影と相まって不思議な色を帯びて、寄る辺なき人々を包み込みます。柔かい自然光を生かした撮影が素晴らしいですね。

ルーニー・マーラを愛する男3人たちの想いが、交錯していく。説明抜きで物語がドンドンと進んでいくのが気持ちよく、一方では、登場人物が口ずさむ誌のようなセリフの美しさに陶酔させられる。ですが、主人公3人の他の人たちのことがあまり説明されていないのが難点です。ボブを追い掛ける殺し屋も、元保安官の隣人スケリットは、ボブとルースの育ての親のような存在なのかなぁ、と想像するだけ。
極めて独特な肌触りの映画であり、キース・キャラダインの登場に、いささか我を忘れかけて、頼れる隣人を寡黙に演じ切るキースの男気にも痺れます。それに、彼は唄も歌うんですね。彼の歌う主題歌も美しく深い余韻を残してくれて良かったです。
2014年劇場鑑賞作品・・・201 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

超能力者  ★★★

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目で人を操る超能力のために過去に傷を持つ男と、その力が及ばない孤独な男の対決を描くSFアクション。監督は、本作が監督第1作となるキム・ミンソク。出演は、「チョン・ウチ 時空道士」のカン・ドンウォン、「高地戦」のコ・ス。第16回ロサンゼルス国際映画祭、第25回福岡アジア映画祭ほか多数の映画祭に出品。
あらすじ:天涯孤独のギュナム(コ・ス)は、親友のボバとアルと共に廃車工場で働き、貧しいながら明るい未来を信じていた。しかし事故で入院し、工場を解雇されてしまう。退院したギュナムは求人欄で見つけた、胡散臭いが人のいい店主(ピョン・ヒボン)と、その美しい娘ヨンスク(チョン・ウンチェ)が営む質屋ユートピアで働き始める。
もう1人の男(カン・ドンウォン)は、ソウルのホテルを転々としながら他人とかかわりを持たずに、誰からもその名前を呼ばれることもなく生きていた。彼は、まなざしだけで人を操ることができる能力を持ち、その力ゆえに母親を守ろうとして父親を殺し、母親から殺されかけた過去を持っていた。彼は、必要最小限の金を手に入れるためだけにその力を使う。(作品資料より)

<感想>今回、藤原竜也主演での「MONSTERZ モンスターズ」が公開されるので、カン・ドンウォン主演のオリジナル版をDVDで鑑賞。
幼いころからエスパーだと知っていて、母親を殴る父親を自分の持っている超能力で洗脳し、操り、父親が自分の手で首を絞め自殺するシーン。その男の子が大きくなり、金融業を襲って金を巻き上げ生活の資金として暮らしていたのだ。

普通は、こういう超能力者は、軍事関係に扱われるのが多いのだが、この作品はちょいと違うのだ。だからなのか、ここで出てくる悪人の超能力者は名前がない。自分の力を誇示して、その力に満足し悪の道をひたすら進む男。もう一人は、この悪人に遭うまでは、自分が持っている超能力を知らないでいた男だ。この天涯孤独のギュナムを演じているのが、日本では山田孝之である。
始めは廃車工場で働くギュナムと、国が違うガーナ生まれのボバと、トルコ生まれのアルとの掛け合い漫才みたいな、面白いジョークが飛び交ってまさか、こんなオカルト映画みたいだとは思わなかった。
この二人の友人が殺される最後まで、実に楽しい会話劇というか、国の違う友人が廃品の中から見つけた物で武器を発明したり、主人公のギュナムの人生を描いているようでもあったのに。

この主人公ギュナムが、廃車工場をクビになり、次に選んだ金融業の店へ強盗に入るまでは、さほど事件も起きなかったのだ。その金貸し業の親父も善い人で、娘も美人だ。そこへあの悪人が強盗に入ったものだから、信じられない光景が映ります。確かに超能力者というと、催眠術で相手を眠らせて誘導尋問とかする、そんな生易しいもんではありませんから。
店主の親父を持ちあげ、首を吊らせて死なせ、天井に上がったギュナムを見つけ、執拗に殺そうとするも、彼にはその超能力は効かなかったのだ。

とにかく、アフロヘアーで目ばかりギョロギョロして、いかにも頭が狂ったようなそぶりの超能力者のカン・ドンウォンが印象的ですね。反対に、そんな自分の超能力を絶対に悪に利用しようと思ってない真人間の操れない男にコ・スが、本当に善い人だとばかりに、少しばかり間抜けなところもある性格の持ち主を演じて好印象ですね。
でも、カン・ドンウォンが超能力を使うシーンが多くて、人間がまるで「だるまさんがころんだ」の遊びでもしているかのような、立ち止まって動かない場面が多くてつまらない。この超能力は赤ん坊には効かないんですから。
地下鉄のホームで、超能力を使いホームに電車を待っている人間を停止させるわけ。そしてギュナムを困らせようと赤ん坊をホームに向かって投げ捨てる。列車が入って来る。間一髪のところで、ギュナムが赤ん坊をキャッチするも、彼は大怪我をしてしまう。
それにギュナムが、その男に拳銃で撃たれるし、怪我なんて日常茶飯事で、最後は屋上からその悪人と抱き合いながら落下するシーン。

この名前のない男も、どういうわけか車の事故でも怪我しないし、超能力者で不死身の身体なのか?・・・なんて思ってしまった。そんな悪人でも、友達もなく孤独な男だったんですね。自分の力に悩んでいたとはね。母親を殺そうと拳銃を突きつけるも、殺せなかったしね。
ですが、最後はやはり韓国映画ですね、こんなオカルト映画みたいな作品でもハッピーエンドで終わらせるあたりは、さすがです。
2014年DVD鑑賞作品・・・40 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

MONSTERZ モンスターズ ★★★

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見るだけで他人を思い通りに操作できる特殊能力を持つ男と、その能力が唯一通じない男の激闘を描く韓国発アクションサスペンス『超能力者』をリメイク。『リング』『クロユリ団地』などの中田秀夫監督がメガホンを取り、互いに呪われた宿命を背負い、閉塞感漂う社会で葛藤する人間同士の対決が展開していく。主演は、本作が初共演となる藤原竜也と山田孝之。オリジナル版とは異なる日本版ならではのラストに衝撃を受ける。
あらすじ:対象を見ることで他人を自由に操れる超能力を持つ男(藤原竜也)は、その能力ゆえに孤独と絶望の人生を歩んできた。ある日、自分の能力が一切通じない田中終一(山田孝之)に出会ってしまった男は、動揺のあまり誤って終一の大切な人を殺してしまう。復讐(ふくしゅう)を果たそうと決めた終一と、自分の秘密を知る唯一の人間を狙う男が壮絶な戦いを繰り広げていく。

<感想>世界を操れるほどの超能力を持っていながら、世界から孤立した男の話というアイデアはいいのですが、オリジナルとは少し違って描かれていました。
まず主人公が名前の無い超能力者の男で、藤原竜也が演じており、藤原が操れない男に山田孝之が演じてます。韓国版では、どちらかというと山田孝之が演じていた田中終一が主人公で、名前の無いカン・ドンウォンが演じた、藤原君の方が脇役といった感じですかね。

それに、韓国のお国柄っていうか、実際の政治状況もあって、「シュリ」、「JSA」など、双方で対立する映画が多い傾向があるようです。ですから、日本を舞台に置き換えることで、文化背景などが変わってくるので難しさはあると思います。
そして、ポリスアクションの部分も、日本の映画では考えられない笑いの要素が入っているし、大掛かりなカースタントを日本でやるのも中々難しいですよね。

その代りと言っちゃなんですが、超能力に操られたリアルな集団描写が凄いです。このシーンでは、3000人のエキストラに協力してもらったそうです。まるで、ゾンビ映画のようでした。藤原くんの超能力に操られて、その場に人間が立ち止り、時間が停まった感じを役者さんたちが演じていて上手かったと思います。
息詰まるようなハードでサスペンスな展開のなかで描かれるなかで、山田孝之の運送会社の友達で、落合モトキ演じるゲイの親友の存在は、コミカルな描写の数々が笑いを誘ってくれるのだ。一見、意外かもしれないが、これが物語の緩急を生み出して良かった。

「何故、何のために生まれてきたのか」を追求していくと、オリジナルでは文学的で哲学的な主題の作品なので、そこを徹底的に描くと映画じたいが重くなってしまうようです。
その名前のない超能力の男だけでなく、田中終一も両親と弟を交通事故で亡くして天涯孤独なのだ。唯一、子供のころの事故で自分一人助かったことを知っている刑事に、松重さんが演じているも、最後の方で藤原に殺されてしまう。

二人の共通している天涯孤独みたいな、世界から孤立する恐怖感みたいなものを持っている。
ですが、山田孝之が演じた田中は、そんな恐怖を秘めながらも仲間と汗を流して働き、約束を果たすことで生きることを実感する。もう一方の名前のない男の藤原の部屋は、超能力で他人を銀行強盗に仕立てて金を奪い、贅沢な暮らしをしている。
劇中で二人が言う台詞で、「ただ自分は死ぬまで生きるだけだ」とありますが、藤原と山田では違う意味合いを持っていると思います。

そして、ヒロインの石原さとみ演じる叶絵が、田中と恋愛関係になると思ったのだが違ってましたね。藤原の超能力に操られて、父親を窓から背中を押して自殺に見せかけ、山田の背中を包丁で刺し、何回かスタンガンで殺そうとする。
藤原の超能力で操れない山田が、母親が赤ん坊を捨てるところを、ダイブして落ちる赤ん坊を拾い上げ自分は重症を負うのだが、普通の人間ではないので驚くほど完治が速いのだ。ベンチや植木の入ったスタンドを山田めがけて投げるも、下にいる山田に当たってしまい死んだような気がする。だが、不死身の男なのだ。その一方で、超能力の男は片足を失い、手の平まで失っていき、身体も弱っていく。
ですが、オリジナルと違ってはいるが、主人公の藤原と山田の関係性も、敵以上のものを醸し出しているようにも取れた。二人が抱き合って落ちていくシーンでも、一瞬ドキッとしたんですが、田中が下になってかばっているんですね。
他にもクライマックスでの劇場の4階席から、藤原の超能力で操られた観客が真っ逆さまに飛び降りて死ぬのも、リアルな集団描写が凄かった。
出会ってはいけない二人が出会ってしまった。運命で結びつけられた二人に見えてくるから不思議ですよね。
2014年劇場鑑賞作品・・・202 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ぼくたちの家族 ★★★

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映画化もされた「ひゃくはち」の作家・早見和真の小説を、『舟を編む』などの石井裕也監督が映画化した人間ドラマ。母親の突然の病気をきっかけに、それまでバラバラだった家族に隠されていたさまざまな問題が噴出し、その後関係を見つめ直し家族が再生していくさまを描く。妻夫木聡と池松壮亮が、責任感の強い長男と家族に対して素直になれない弟という正反対の兄弟役で初共演。彼らの両親を、ベテランの原田美枝子と長塚京三が演じる。
あらすじ:重度の物忘れにより病院で検査を受けた玲子(原田美枝子)は、末期の脳腫瘍で余命1週間と宣告される。そして認知症のような状態になった玲子は、それまで話すことのなかった家族への本音をぶちまけ、長男・浩介(妻夫木聡)、次男・俊平(池松壮亮)、夫・克明(長塚京三)はうろたえてしまう。やがて経済破綻や家庭内不信など、ごく普通の家族に隠されていた問題が明るみに出てきて……。

<感想>冒頭のシーンで、駅から歩いて家に向かう母、原田美枝子が通る住宅街が、あれっ、て思わず自分の住んでいる地元に似ているのに驚いた。自分の地元で撮影したのではなく、日本中どこにでもある住宅街を自分の地元そのままだと感じさせる、そういう撮影ができるのがこの監督なのだ、ということなのですね。
息子二人は家を出て、郊外の実家は夫婦2人だけ。その母親が脳腫瘍で余命1週間と宣告される。小さな会社を経営しているが、その内情は火の車である父親。母親が消費者ローンに多額の借金をしている。

母親が入院し、父の会社は経営難、入院費と実家のローンのしわ寄せが長男のところへ。だが、出産を控えた嫁には実家の窮状が言い出せない。切羽詰った長男は、どうやって切り抜けるのか、気を紛らわすために、思わずキャバ嬢にメールをする。人間誰しも息抜きが必要です、キャバ嬢と一晩遊ぶのぐらいは見逃して、なんて流暢なこと言っていいのか。今回はあまり笑顔のない役を妻夫木聡が演じています。

次男、俊平に池松壮亮が大学留年が確定的で、母親に小遣いを「せびってばかりいた。追い詰められた長男と次男は、恥や外聞をかなぐり捨てて本音とぶつかっていくことに。
父親はショックのあまりに気が動転して、意識が混沌としている母親は「お父さんは頼りにならない」と本音を吐く。平凡だと思っていた家族は、崩壊の危機に瀕していたのだ。

母親を救うために、長男と次男でセカンドオピニオンを求めることに。家族がお互いのエゴをぶつけ合う中、自分たちが何をすべきかを見つめ直していく。家族の絆が強まって、再生していく過程が何だか同じような作品見たことあるあると、感じてしまった。「家族もの」「余命もの」である。イコールお涙ちょうだいな映画だと思われそうだが、この作品は、そんなイメージなところにまでは陥っていない。しっかりと苦いし、重いし、リアルなのだ。

親の介護に、実家のローン、嫁一家との金銭関係など、なるべくなら目をそらしたいリアルな問題に対し、石井監督は直球勝負で挑んでいる。
みんないい人たちじゃないし、それぞれにダメ人間だし、特に「借金で大変」という点においては理由(次男の金のむしん、お父さんがハワイに旅行と)に同情の余地がないのである。というあたりの描き方が、それでも出口を探そうとあがく彼らにリアリティを与えているのだと思う。
特に最後の前向きな感じの表し方は、絶妙だと思いました。やっぱり長男の妻夫木聡さん、一番頼りになりますからね。シリアスな内容ながら、後味は心地いいです。
2014年劇場鑑賞作品・・・203 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

X-MEN:フューチャー&パスト★★★★

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未来から過去へと送り込まれたウルヴァリンや、超人的パワーを持つX-MENのメンバーが、二つの時代を舞台に地球の危機を救うべく戦いを繰り広げるSFアクション。ブライアン・シンガーが『X-MEN2』以来の監督として復活し、ウルヴァリン役のヒュー・ジャックマンをはじめ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、ハル・ベリーなど豪華俳優陣が競演。プロフェッサーXと宿敵マグニートーの共闘、過去へ向かうウルヴァリン、X-MENの集結など、過去と未来で複雑に絡み合うストーリーと壮絶なアクションに期待が高まる。

<感想>時空を超え新旧メンバーが共演という、まさに“オールスターX−MEN”と呼ぶにふさわしい顔ぶれが戦う敵は、原作コミックでも人気のミュータントせん減用巨大ロボット軍団、センチネルである。ウルヴァリンを主役に据えた2作目を含め、シリーズ7作目となる本作は、物語の背景は2023年と1973年。最大の敵“センチネル”の出現によって地球滅亡のカウントダウンが迫る中、未来と過去が交錯した信じがたいバトルが展開される。
ウルヴァリンはどうやって時を超えるのか、プロフェッサーXとマグニートーの共闘の行方は、そして新旧のミュータントたちはセンチネルの暴走による地球壊滅を阻止することができるのか?・・・今回は、監督に復帰した映画シリーズの生みの親、ブライアン・シンガーの手によって新たな段階へと突入する。

エレン・ペイジ演じるキティ・ブライトの手によって、ウルヴァリンの魂を過去に送り込むタイムトリップ方法もユニークです。魂だけで時空を超え、自身の肉体に宿った彼は、ミュータントたちの力を結集し、センチネル完成を阻止しようとする。
ウルヴァリンの身体の全骨格に、超金属アダマンチウムが移植されたのは1980年代だから、この時代はまだ固い骨が飛び出て来るのと、不死身の身体ですね。ウルブァリンの魂は、パワーの減退で何度か未来へと戻ろうとする。しかし、過去を完全に変えなければ、未来で迫りくるセンチネルの攻撃を防げない。ここで緊迫のタイムリミットを体感します。
ミュータントを抹殺するために開発されたバイオメカニカル・ロボットのセンチネル、それは恐るべき進化を遂げ、ミュータントのDNAを感知し、攻撃するようにプログラミング。2023年では、大軍で猛攻撃し、ついには人類にも牙を剥く。能力を駆使して抗戦するX−MENだが、敵の総攻撃を受けて全滅の危機に直面する。

プロフェッサーXは、天才科学者ボリバー・トラスクがミスティークのDNAを取り込んでセンチネル開発に成功する1973年に、ウルヴァリンの魂を送り、歴史を変えようと動き出します。

この時代にはミスティークの存在が、若きチャールズことプロフェッサーXと、マグニートことエリックと恋敵としての話も面白いですね。ミスティークにはジェニファー・ローレンスが演じて、あらゆる人間に姿を変えて活躍。彼女がニクソン大統領にまで化けてしまうのだから驚きです。普段は身体に青いボディペイントを塗ったような感じで、スタイル抜群の彼女としてはハマリ役でした。

それに、ほんのちょっとですが、ウルヴァリンが愛してしまったジーンにも出会うことができます。まだ若かった怒りが増幅すると青い獣人に変身するビーストが、1973年代でさびれたエグゼビア・スクールを管理してました。
ミュータントを人類にとって脅威と考える天才科学者ボリバーが、つくり出した人型戦闘マシン軍団で、2023年の進化型は敵であるミュータントの特殊能力を中和する性能を備えており、腕の形状などを自在に変えることもできるので、X−MENが束になって叶わない、センチネルの強さがヤバすぎです。

1973年では金属ロボットの外見だったので、マグニートが鉄道のレールをセンチネルの中へ取り込み、センチネルを操って防いだ。しかし、2023年にはミスティークふうの皮膚に進化し、X−MENからの攻撃をそのまま自分のパワーに変換。まさに空前の戦いが展開されます。ストームのハル・ベリーは、2023年の戦いでセンチネルの攻撃を阻止していましたね。

過去篇ではミスティークやマグニートの能力が、前作と比較にならないレベルで行使され、新キャラのパワーも激しく炸裂してます。特にクイックシルバーが、一瞬で多数の敵を倒す超スロー映像シーンが面白い。ペンタゴンにある事件に関与した疑いで、10年間拘束されていたマグニートことエリック救出のために参加する。
この時代のケネディ暗殺、ベトナム戦争などを通して、ミュータントを敵と見なす勢力が拡大。科学者ボリバー・トラスクのセンチネル開発に繋がっていくことに。実際の歴史ともリンクして、実はテーマも深いですから。

時空を超えるのはウルヴァリンの魂だけですが、何故か過去のプロフェッサーXが、未来の自分と対面。理由は単純なタイムトリップではないのだ?このシーンは、物語りの重要なポイントなので映画をご覧くださいませ。
2013年劇場鑑賞作品・・・204 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

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