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万能鑑定士Q −モナ・リザの瞳−★★★.5

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綾瀬はるかと松坂桃李が共演を果たし、松岡圭祐原作のベストセラーミステリー「万能鑑定士Q」シリーズを映画化した本格ミステリー。「万能鑑定士Qの事件簿IX」を基に、天才的な鑑定眼を持つヒロインが世界的傑作絵画モナ・リザに隠された謎に迫る姿を描く。『ノルウェイの森』『ミツコ感覚』などの初音映莉子や、『くじけないで』などの橋本じゅんらが共演。邦画初となるルーヴル美術館での撮影映像はもとより、衝撃の展開に圧倒される。
あらすじ:名画モナ・リザの40年ぶりとなる再来日が決定し、万能鑑定士Qの店主莉子(綾瀬はるか)が臨時学芸員に抜てきされる。莉子は、彼女の密着取材を続行中の雑誌記者悠斗(松坂桃李)と共にパリへと赴き、ルーヴル美術館で実施された採用テストに無事パスする。莉子は同様にテストに受かった美沙(初音映莉子)と一緒に特別講義に出席するが……。

<感想>類まれなる鑑定眼と、ロジカル・シンキングで美術品に隠された秘密を探るヒロインに、綾瀬はるかが熱演しているが、彼女は不思議ちゃんで有名な女優さん。綾瀬さんの天真爛漫でピュアな心眼で、強い感受性を用いた暗記法など、独特な鑑定能力を発揮する役柄にピッタリでした。

原作は読んでいるので、物語が進行する中で、松坂桃李がイギリスから来た貴族の家族に、日本の名所を案内を頼まれ翻弄されて、箱根の湖で溺れかかる少年を助けるシーンとか全て省かれており、時間の都合なんですかね。それでも、雑誌記者としてはクビ寸前の彼が、自費でフランスまで莉子に付いて行くのは、原作ではルーブル美術館が旅費を支払ったようです。

ルーブルでの採用テストも原作と同じで、階段の横にパネルのモナリザを本物と鑑定する莉子と、同様にテストに受かった美沙の二人が臨時学芸員に選ばれるわけですね。
ところが、ルーブルからの学芸員とやらが、莉子と美沙にモナ・リザの真贋の特別講義を行うと軽井沢の別荘で特別講義を行うわけ。もうこの辺から何か変だと気づかなければいけない二人なのだが、実は美沙がモナリザを盗むフランスの窃盗団と恋仲になっていたので、莉子にしてみれば見抜けないわけ。

それにしても、約1カ月近く軽井沢の別荘に缶詰で講習を受けるのは、ちょっとどうかと思う。まんまと窃盗団のワナにハマってしまう莉子。

つまり、真贋を見抜く講習で毎日頭を使い、モナ・リザを守る眼を養う訓練には、目の疲労と脳を消耗させる秘密があったのですね。窃盗団にしてみれば、本物のモナ・リザを見極めた莉子が邪魔なわけで、自分から辞退するのを待っていた。

そして、そのことにやっと気が付いた雑誌記者の松坂桃李が、莉子が沖縄の実家へ帰った事を知り追い掛ける。そして、あの軽井沢の真贋テストのカラクリを教えるのだ。
ところが、一人モナ・リザの臨時学芸員となった美沙が、美術館に保管されているモナ・リザを盗み出して、フランス人の恋人、つまり偽の学芸員だった男に本物のモナ・リザを渡してしまう。

さて、どうやってそのモナ・リザを取り戻すことが出来たのか?・・・これが莉子を演じる綾瀬はるかが、大奮闘するわけ。松坂桃李くんは、窃盗団に捕まりマンションの部屋で、偽物のモナ・リザを燃やす部屋に縛られている。それが、ジタバタしてモナ・リザを倒して結局は火の中へと。私には、原作も読んでいるので、これが偽物だと思って居ました。
しかし、東京美術館の人たちは本物が燃やされたと嘆き悲しみます。燃えても裏を見れば贋作と判るはずなのに。それでも、ずらっと並んだモナ・リザの絵や、ポスターの圧巻さは素晴らしかったです。

ルーブル美術館には4回行きました。全部回るには1日かかると言うところ、自分で好きな絵だけを選んで見れば半日くらいで済みますから。以前は写真撮影が出来たのですが、現在はダメですから、これは15年前くらいに行った時のです。
それでも、ドタバタ喜劇のような展開で最後まで面白く観れました。
2014年劇場鑑賞作品・・・205  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

プリズナーズ ★★★★

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『X-MEN』シリーズ、『レ・ミゼラブル』などのヒュー・ジャックマンが愛する娘を誘拐され、自力で犯人を捕まえようと行動を起こす父親を演じるクライムサスペンス。ヒューのほか、事件を担当する警察官に『ブロークバック・マウンテン』などのジェイク・ギレンホール、容疑者に『リトル・ミス・サンシャイン』などのポール・ダノら実力派俳優陣が顔をそろえる。メガホンを取るのは、『渦』『灼熱の魂』のカナダ人監督ドゥニ・ヴィルヌーヴ。わが子を誘拐され、悲しみや怒りをたたえた父親を演じるヒューの迫真の演技が見どころ。

<感想>冒頭で鹿狩りをするヒュー・ジャックマンと息子の親子が観られる。その後は感謝祭の日の午後、一家4人はすぐ近くにある友人フランクリン(テレンス・ハワード)の家へ行く。一家の主人ケリーは工務店の自営業で、息子の下に6歳になるアナという娘がいる。感謝祭の夕食へ向けて、お土産の鹿肉を料理する女性たち、くつろいだ楽しい時間が経過していく。

その間にヒューの娘のアナが、気にいっている小さな赤いホイッスルを忘れてきたので、取りに行くと言いフランクリンの娘ジョイと、自宅へと向かう。もう、観ていてこの娘二人が誘拐されていなくなることが観客には分かる。
と同時に、その赤い小さなホイッスルが、この映画のどこかで重要な役割を果たすのだと思ってしまった。しかし、どこでどのような役目を果たすかは見当もつかない。今思えばホイッスルは音がするのだから、その音が役に立つのだと確信して観ていた。

少女がいなくなる前から、怪しいキャンピングカーが画面に現れ、娘のアナがしきりに中を覗き込み感心を抱く。この車が誘拐事件に使われるのだろうと思ってしまう。
結局は、その通りだったようで、そのキャンピングカーを運転していた男アレクックスが、容疑者として警察に拘留されるわけ。でも、その男は知的障害者で10歳位のIQだというのだ。
調べた結果拘留の時間が切れて釈放されるアレックスに、ヒューパパは怒りを露わにして掴みかかる。「僕がいた間は、少女たちは泣かなかった」とヒューの耳元で囁く。
これによって、アナの父親はアレックスを誘拐し、父親が住んでいた古い家屋へ拉致監禁して、顔が腫れあがるほど殴り、熱湯による拷問をして娘のいる場所を吐かせる。しかし、いくら痛めつけても「知らない」と拉致があかないのだ。この事態を友人のテレンス・ハワードを連れて来て、拷問を見せつけると、気弱いフランクリンは観て見ぬふりをして出ていく。人間は誰かを救うために第三者へは残酷になれるのだ。
この犯人扱いされるアレックスを、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のポール・ダノが演じているのだが、見事な演技を見せている。それに、もう一人の犯人と思しき青年も現れ、部屋には血だらけの洋服と蛇が入ったケースがたくさん並んでいた。これは、蛇嫌いの私には気持ちが悪いとしか言いようがない。取り調べ室で、その青年が警官の拳銃を奪い自殺してしまう。
刑事ロキを演じるジェイク・ギレンホールも、これまで担当してきた事件は全て解決してきた彼は、必死に捜査をするが、いかんせん今回ばかりは抑え目な演技で「エンド・オブ・ウォッチ」のようにはいかなかったようだ。
それでも、誘拐ものに愚作なしというように、よくできたサスペンスミステリーものです。二転三転しながら最後まで、ハラハラドキドキさせ、楽しく見せてくれる。
「天にめします父よ、我らの罪を許させたまえ」という主の祈りを唱える敬虔なクリスチャンのケリー。宗教と感情の対立が浮かぶ、そして観客には見えていても、登場人物には分からないサスペンス。その二つが物語上大きく機能を果たすのだが、いささかサスペンスを作りだすことに重きを置きすぎ、不自然さが多くなっている。

もどかしさでスリルを作る安易さ、単独で行先も告げない鉄砲玉のような刑事が繰り出す同じ失敗。もっとも問題なのは、犯人の犯行動機と、誘拐被害者を生かす理由が真っ向から対立することだと思う。

父親のヒューが目を付けた犯人のアレックスは、二人の少女を車に乗せておばさんの家へ、メリッサ・レオ演じる伯母さんが実は意外な人物だったというわけ。刑事ロキがそのことを感づいて、家探しをすればもっと早くに少女たちは見つかったのに、それでも生きて帰ってこれたのが幸いである。少女たちに弛緩剤の注射や、痺れ薬を飲ませていたようだ。
最後まで、そのアレックスの家に不審を感じていたヒューが、犯人の叔母さんに拳銃で脅され足を撃たれ、庭の掘った穴に落とされるまで。あの強いイメージのヒューが易々とババァにやられてしまうなんて思ってもいなかった。車を移動する時に、急発進をしてババァにぶつけるとか出来たのに、痺れ薬を飲まされたとはいえ残念でならない。

しかしながら、始めの赤いホイッスルがその穴にあったのが良かった。最後に、娘も救助されて見つかったのに、父親のケラーがいないのだ。冬の凍てつく夜に、刑事ロキがあのババァの家の庭に立っている。そこで、聞こえるか聞こえないかの小さなホイッスルの音に、気付いた瞬間に終わりとなる映画の作り方に、凍える夜の中で刑事が気付いていく場面の構成が、気が利いていてうまい。
2014年劇場鑑賞作品・・・206
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六月燈の三姉妹 ★★★

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鹿児島で和菓子店を営む一家を舞台に、経営不振の店を再建すべく3姉妹が奮起する姿を描いたホームコメディー。大型ショッピング店の台頭に悩む商店街で、3姉妹が店の立て直しに奮闘しながら、家族のあり方を見つめ直す姿をつづる。3姉妹には、次女に吹石一恵、長女に吉田羊、三女に徳永えりがふんし、津田寛治や市毛良枝が共演。監督は、『半落ち』『ツレがうつになりまして。』などの佐々部清。現代の世相を織り込みながら描かれる、互いに協力し合う家族の姿や人々の温かさ、地域の祭りの様子など今も昔も変わらない人間模様に感動する。
あらすじ:鹿児島のとあるシャッター商店街。家族で営む和菓子店のとら屋は、次女の奈美江(吹石一恵)は離婚調停中、長女の静江(吉田羊)は離婚、三女の栄(徳永えり)は婚約破棄をし不倫中で、3姉妹全員が実家に戻ってきていた。一家は店の再建を懸け、地域の祭りである六月燈の夜に新作の和菓子を出そうと考えるも……。

<感想>旧暦の6月から鹿児島で行われるお祭り、六月燈に向けて、再生に奮闘する老舗和菓子屋の姿を描いたドラマ。地方ではいずれも同じように昔と違って不景気のせいなのか、何処もシャッター商店街になっているようで、小さな商店は経営不振で火の車である。
そのように不景気なお話なのに、観終わると幸せになる。地方の実情を踏まえた良質のドラマが、「ご当地映画」から続々と生まれてきている現状についてはもっと注目されていいと思う。
和菓子屋のわけあり三姉妹を的確に描き分けておりいい感じになってます。鹿児島市内を走るチンチン電車に、フェリー乗り場、桜島の白い煙に驚く次女の旦那さん。表面上は静かなドラマだが、秘めたる思いの火花に薩摩を想いました。地元の六月燈の祭りは、初めて知りました。夜に燈籠に灯が燈るとそれは綺麗で、浴衣姿の美人姉妹も綺麗でしたね。

それぞれ、ワケありな美人三姉妹のキャスティングが絶妙です。中でも実際に九州出身である長女の静江を演じた吉田羊の、美しく落ち着いた鹿児島弁の響きに惹かれるものがあります。
それに、彼女たちを束ねる母親役の市毛良枝と、その元旦那役の、西田聖志郎が人間臭くて、駄目なところがまたグットきます。
何ていっても、母親が2度も離婚経験者で、長女がバツイチで、次女が出戻って来たのを嬉しそうに見守り、わざわざ東京から連れ戻しに来た婿さんに、娘はもう離婚したのだから、とっとと帰ってくれと、元旦那と口を揃えて言うのだ。

普通なら、わざわざ東京から寄りを戻しに話合いに来たのに、また元どうりになるように娘を説得するのが親というものだろうに。この家の人たちは、鹿児島気質というのか、あっさりとしており、嫌なものはしょうがないといった調子なのだ。
実家の母親の元旦那も、離婚したのに同居をして店の和菓子職人として働いているし、長女と次女は前の夫との間に生まれた娘で、母親は離婚をした時に長女を引き取り、次女は父親に引き取られたのだ。それが2年前にその父親が亡くなり、次女は母親のいる実家へと度々帰って来るのだ。

三女は、2度目の亭主との間の娘で、どちらかというと上の二人より器量が悪い。それに、父親と喧嘩をして家を出て別に暮らしていて、現在は妻のある男と不倫中なのだ。そのことも、元旦那と母親は気に入らなくて、本当は婿取りをして家を継がせたいのに、思うようににはいかない。
予定調和の家庭劇と言えば、それだけで悪口になりそうだが、元々家庭劇という代物は、おおかた子供たちの成長や結婚、離婚、家出とかで終わるものだった。今までの「東京物語」や「東京家族」もそう、話がうまい具合で終わったからといって、必ずしも面白くないわけではないのだ。

中でも侍女の吹石は、結構ワガママな出戻りで、これが抜群の出来なんですね。姑と上手くいかなくて離婚すると実家へ帰って来た次女の奈美江。
一方では、まだ妻を愛しており連れ戻しに来た旦那さんの津田寛治は、珍しく生真面目な性格で、振り回されっぱなしという展開。つまり、丁度六月燈の祭りのために、新和菓子を作って売り出すという忙しさ、それに店を手伝わされる始末。

六月燈の祭りに出す和菓子の名前に「カルキャン」という、“かるかん”と三姉妹の“キャンディーズ”を引っかけてネーミングした次女の旦那さん。祭りでは完売という売れ売れで、キャンディーズの「暑中お見舞い申し上げます」を歌う三姉妹の艶やかさについ見とれてしまった。

新商品開発という物語が隠し味的に出て来るのだが、残念ながら最後に長女が、自分が作った和菓子と偽り両親に差出し、その陰に本当は三女が、試行錯誤して作った新商品だったということ。晴れて実家に戻って店を継ぐことになる目出度しの展開なのだが、そこに三女の徳永えりを一枚かませるためには、もっと伏線が必要だったはず。
それでも、最後には納まるところに丸く納まっており、和やかな雰囲気で上々の仕上がりになってます。
2014年劇場鑑賞作品・・・207  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

野のなななのか ★★★.5

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『その日のまえに』『この空の花 長岡花火物語』などの大林宣彦が、北海道芦別市を舞台にしたドラマ。92歳で亡くなった家長の葬儀で顔をそろえた一族が、ある女性の来訪を契機に家長の知られざる過去を知る姿を描く。ベテランの品川徹、『赤い月』などの常盤貴子をはじめ、安達祐実、村田雄浩、松重豊ら実力派が結集。日本人の生き方を見つめたストーリーに加え、大林監督ならではのノスタルジックなタッチにも注目。
あらすじ:北海道芦別市で古物商を経営する元病院長の鈴木光男(品川徹)が、3月11日の14時46分に逝去。92年に及ぶ人生の幕を閉じる。告別式と葬儀の準備をするため、鈴木家の親族が故郷である芦別に集結。大学教授の冬樹(村田雄浩)、原発職員の春彦(松重豊)、看護師のカンナ(寺島咲)ら、光男の長男、次男の子どもたちが久々の対面を果たしていると、清水信子(常盤貴子)という女が訪ねてくる。やがて、彼女を通して1945年に起きた旧ソ連の樺太侵攻で光男が体験した出来事を彼らは知る。

<感想>ある男の戦争体験を通して、現代の日本再生の正しき道を示そうとする大林宣彦監督による人間ドラマである。芦別という古里の過去と現在を語る物語でもあるのだ。芦別の町を訪れた少女は、観光案内よろしく炭鉱跡を初めとする観光地を紹介してゆき、それだけならごく当たり前の観光映画とも見えるのだが。
炭鉱の全盛期のように機関車が走り抜ける、ですが同時に炭鉱跡での戦争時の戦死者の遺骨発掘作業も描かれているのだ。現在の中には過去が埋まっており、すべての過去は同時に起こっているというわけ。とにもかくにも、時制の混乱きわまりないのだ。

92歳で死ぬ老人の物語で、樺太での敗戦記を伝える役割だけど、何故か「大震災の3.11」の14時46分で死んでいるのだ。それに爺ちゃんの時計も14時46分で止まっている。この映画の樺太と東日本の大震災は無縁だが、総論としては繋がっているようです。更には、広島、長崎、ビキニ環礁と福島原発とも結びついてゆくのだから。これはそういう、エッセイ・ムービーなのだ。
ですが、過去と現在は同時に起きている。ここには多くの現在が存在する。北海道芦別市で、「星降る文化堂」を経営する元医師、鈴木光男の死から物語が始まる。同居していた孫娘のカンナ。その死を知って訪れるかつて病院で働いていた信子らの前で、光男の過去が明かされていくのだが、その語りは極めて奇妙なものであった。

自制は自由自在に、現在といくつもの過去、第二次世界大戦から現在に至るまでの幾つもの時代を飛び回る。視点人物はくるくると目まぐるしく変わり、信子や光男が一人称でナレーションをする。死の床の光男はその世話をするカンナと会話を交わす。あるいは、初七日の法要の席でかつての友人と語り明かす。死者が回想をしているわけではないし、観客に向かってナレーションとして語られるわけでもないのだ。
時空間もきわめて曖昧な中で、あたかも死者と生者が同じ世界にいるかのように描かれる。やがて語られる光男の終戦時の出来事。青年期を演じる光男とその恋人、いや想い人と言うべきか、綾野というヒロインが画面に並び、一礼をする。観客に向かって芝居は始まりを告げると、死後の光男がナレーターとして事件を語るのである。光男は誰に向かって回想をしているのだろう。そしてこの事件はいったい何時、起こっているのか?・・・それは特別な時間である。

爺ちゃんの恋物語の中で、綾野さんという美人の女性が出て来て、大学の同級生と綾野を同時に好きになり、結局、1945年に爺ちゃんが樺太に行った時に、日本は8月15日に終戦を迎えたのに、北海道では9月5日まで続いていたなんて、知らなかった。樺太を領土とするために旧ソ連軍が攻撃してきて、綾野を旧ソ連軍の兵士が暴行するところを鈴木光男が見つけて、その兵士を殺して綾野も殺してくれと懇願するので殺してしまったというのだが、その綾野に似た看護婦の清水信子が光男が描いていた裸婦像のモデルとなっているようだ。

綾野を演じた安達祐実の美しさと、常盤貴子の美しさが実によく似ているシーンが出て来る。光男は綾野の裸婦像を描きたかったのだが、死んでしまってから現れた信子に、綾野の姿を見つけて重ねて描いているようにもとれた。それと、綾野と信子が好きだった中原中也 の 「山羊の歌」の本と、 更にその中の 「夏の日の歌』」を巧みに引用しているのが印象的でした。

大林映画と言えば、音楽も重要です。最初から最後まで楽団がどんちゃかどんちゃかと、いかにも主人公の一生を祝っているような、49日までは冥途に行かないというから、せめてこの世に居る間でも楽団で賑やかに送ろうというのだろうか。
それに台詞が棒読みのように聞こえ、あれはそういう演出をわざとされているのか、そのおかげで普通よりも早いテンポの台詞でもよく聞き取れました。
気になったのが映像の中で、真っ赤な色彩が目立っているのだ。まずは、電気スタンド、光男が描いた裸婦像の身体に血のような線が、それに風景の道が赤く描かれ、大学教授の冬樹の靴下の赤、曾孫の赤いコートなど、たくさんの赤い色が目立っていた。それは想い人が流した赤い血の色かもしれない。

92歳で死んだお祖父ちゃんと、その下は、その孫の世代と曾孫まで出て来るのだけど、その間のお祖父ちゃんの息子、すなわち孫たちの親は誰も出てこないのだ。何故だかみんな、物語上は都合よく死んでいる。ちょうどそこの時代が団塊の世代に当たるわけで、戦争を語れない世代というわけなのだ。だからなのか、戦争を語るこの映画には出番がないということか。
なななのかとは、「四十九日」のことで、まだ現世で彷徨っていた死者たちが「なななのか」を終えると、決然とその行く先を定める日のことなのだ。しかしだ、亡くなった爺ちゃんだって、冒頭で死んじゃって、以降は登場しないのだろうに。死んだ爺ちゃんだって喋りたいだろうと、結果は出ずっぱりの主演という語り部になっていた。いやはや、長時間の上映に疲れも吹っ飛ぶような、凄まじい映画でした。
2014年劇場鑑賞作品・・・208 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

グランド・ブダペスト・ホテル ★★★★★

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『ダージリン急行』などのウェス・アンダーソン監督が、格式高い高級ホテルを取り仕切るコンシェルジュと、彼を慕うベルボーイが繰り広げる冒険を描いた群像ミステリー。常連客をめぐる殺人事件と遺産争いに巻き込まれた二人が、ホテルの威信のためにヨーロッパ中を駆け巡り事件解明に奔走する。主演のレイフ・ファインズをはじめ、エドワード・ノートン、エイドリアン・ブロディ、ジュード・ロウなど豪華キャストがそろう。

<感想>ウェス・アンダーソンの映画といえば、カラフルでちょっとキッチュでこの上なくせつなくて、心の奥に大切に閉まっておきたくなるようなものが多い。批評家が絶賛するのみならず、彼の作品の中でも最高の興行成績を記録する勢いの新たなるブレイク作品だと思う。
淡いピンクを基調とした映画は、洋菓子のパッケージのような優雅さで、思わずペロリと舐めたくなってしまう。ですが、その目に美味しい映像の中で展開される物語は、これまでにないドキドキのスリラーでもあり、パンチの効いたコメディでもある。

俳優さんの中では、特殊メイクで80代の老婆に扮したティルダ・スウィントンの演技力、「スノーピアサー」でも凄かったですよね。後は、ウィレム・デフォーの殺し屋、黒いレザーに身を包みバイクに乗って悪役を演じているのが気に入りました。

そして、アンダーソンのマジックが随所に散りばめられた、中でもとりわけ遊び心が強く、刑務所の中のレイフ・ファインズが脱獄を企てるところとか、リズム感がよくてヌケがいい。それでいて、ホラーのようなちょん切られた生首が出てきたり、指がぽろっと切れ落ちたり、ギョッとするシーンもあって、ダーク・ファンタジー的な要素も大好きです。

舞台となるのは、ヨーロッパ大陸の東端、旧ズブロフカ共和国の山の上の温泉地、もちろん架空の場所で、かつて栄華を誇ったグランド・ブダペスト・ホテルである。1968年、今はさびれたホテルのオーナー、ゼロは宿泊客の温泉旅行へ来た作家(ジュード・ロウ)に、過去を語り始める。

時は第二次世界大戦開戦の迫った1932年。名物コンシェルジュのグスタヴ・H(レイフ・ファインズ)が、ホテルの上客で愛人でもあったマダムD(ティルダ・スウィントン)が殺されたことでばく大な遺産争いに巻き込まれてしまう。その成り行きを見守るのが、グスタヴにベルボーイとして雇われ、親子のような縁を築くゼロ(トニー・レヴォロリ)だった。

駆け付けたグスタヴには、マダムの遺言により貴重な「少年と林檎」の絵画を譲り受けることになるが、それに納得できない息子のドミトリー(エイドリアン・フロディ)に殴られてしまう。怒ったグスタヴはこっそりと絵画を盗んで持ち帰ることに。だが、ドミトリーにマダムD殺しの犯人にでっち上げられ、ホテルのバックヤード(壁金庫)に絵画を隠した直後、ヘンケルス(エドワード・ノートン)に逮捕されてしまう。だが刑務所の中でも持ち前のおもてなし精神で、牢名主的な囚人の懐に入り込み、囚人仲間と力を合わせて脱獄。出迎えに来たゼロと合流する。

事件後なぜか行方不明となっていたマダムの執事(マチューテ・アマルリック)と弁護士のコヴァックス(ジェフ・ゴールドブラム)は無惨にも殺されていた。グスタヴはゼロと共にヨーロッパ各地を逃避行しながら、コンシェルジュの秘密結社の協力を得て事件解明に挑むのです。そして真犯人の魔の手と警察の捜査網がグスタヴの間近に迫っていた。

アール・ヌーヴォーに東欧的な厳めしさを加えた万華鏡のような装飾美に加えて、常連俳優のエイドリアン・フロディ、エドワード・ノートン、ティルダ・スウィントン、ビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソンらと、新参組のレイフ・ファインズにシアーシャ・ローナン、マチューテ・アマルリック、ウィレム・デフォー、ジェフ・ゴールドブラム、ハーヴェイ・カイテル、ジュード・ロウ、レア・セドゥ、トム・ウィルキンソン、という面々が揃っています。
中でも、F・マーレイ・エイブラハムが、それぞれ物語の語り部である「若き日の作家」と「老人のゼロ」に扮して、映画に荘厳さを与えているのが印象的です。
これだけ登場人物が多いので、あらあら見たことのアル俳優さんに、この人もあの人もと目が少々ついていけないところもありますが、とにかく物語は難しくないし面白いので、これは世界観を楽しんで欲しい作品ですね。
大勢の有名俳優が交ざった、贅沢なキャストによる3つの時代にまたがるファンタスティックな物語が、ヨーロッパの階級社会をロマンチックに、しかも笑いたっぷりで皮肉っていて、そして心が痛くなるような悲しみも湛える本作は、幻想的とも復讐劇とも言える壮大なスケールで、スリリングな展開を軸にしつつ観る者を魅了させてくれるのが最高でした。
2014年劇場鑑賞作品・・・209 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ダージリン急行
ムーンライズ・キングダム

ポンペイ ★★★.5

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『バイオハザード』シリーズなどのヒットメーカー、ポール・W・S・アンダーソン監督がメガホンを取って放つ歴史アクション大作。『サイレントヒル:リベレーション3D』などのキット・ハリントンを主演に迎え、火山の噴火で埋没した街ポンペイを舞台に、愛する人に全てをささげる主人公の奮闘を描く。ヒロインを『エンジェル ウォーズ』などのエミリー・ブラウニングが好演。一瞬で全てを奪い尽くす自然災害に、果敢に挑む青年の勇気と行動力に胸が詰まる。

あらすじ:西暦79年の古代都市ポンペイ。ブルタニカ(英国)生まれのマイロは腕利きの剣闘士。その腕を見込まれてローマ帝国へと。港町として栄えるポンペイの闘技場で闘うことに。ローマ皇帝の片腕であるコルヴスは、ポンペイへの財政援助を申し出る。コルヴスの目的は、ポンペイきっての美女カッシアを嫁に貰うことだった。
コルヴスは、マイロの両親を殺した憎き仇。コルヴスとカッシアの見守る中、マイロは闘技場で戦い続ける。奴隷戦士マイロ(キット・ハリントン)は、富裕層の商人の令嬢カッシア(エミリー・ブラウニング)と恋仲になるが、彼女にはすでに婚約者がいた。身分違いの恋に悩んだ彼は、自由を得るために街を去ろうとする。
ちょうどその時ベスビオ火山が噴火を始め、マイロは愛する女性を救うために街に舞い戻る。ついには、火山が大噴火。町の人たちは一気に火砕流と津波に飲み込まれてしまう。カッシアを連れて逃げるコルヴスを、マイロが懸命に追い掛ける。

<感想>史実をベースにした、パニック映画に号泣ラヴストーリーを配合した欲張りなSFX歴史大作。舞台となるポンペイは、ローマ帝国時代に商都として栄えたが、ベスビオ火山の噴火によってわずか1日で消滅した実在の古代都市である。運命の日が迫っていることを知らず、死ぬまで戦い続けることを義務づけられている剣闘士マイロと、心優しき令嬢カッシアは出会い、恋の炎を燃やすことに。

令嬢カッシアが見守る闘技場でマイロが死闘を繰り広げる最中、ついに火山が大噴火。火口から流れだしたSFXを駆使した火砕流と、火山弾がポンペイの町に襲い掛かる。
激しいソード・アクションと情熱的なロマンスに、ディザスター映画好きの人はもちろん、「300 スリーハンドレッド」や「グラディエーター」のような娯楽要素をぎっしりと詰め込んだサバイバルドラマに仕立てて魅せているのが良かった。

主人公たちの恋仲を切り裂く性悪元老院コルヴスには、キーファー・サザーランドが、「24」のジャック・バウアー級にしぶとい悪役ぶりで楽しませてくれます。

主演のキット・ハリントはTVシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」で注目された俳優。でも、背が低く筋肉バリバリじゃないし見栄えしないのが惜しい。ポンペイの富豪の娘で、マイロに恋するカッシア役には、「エンジェル ウォーズ」のエミリー・ブラウニングが、その母親にキャリー=アン・モスが演じていて、「サイレントヒル:リベレーション」では教団のボス、クローディアを演じており、学生ヴィンセントにキット・ハリントが演じていたんですね。あの学生がね、剣闘士のマイロ役とは気が付かなかった。
特に目立っていたのは、脇役で剣闘士の黒人俳優アドウェール・アキノエ=アグバエですかね。あと一人倒せば自分は奴隷でも自由になれると信じている、この俳優さん良かったです。

一番の見どころは、コロシアムでの戦闘シーンで、10人位のグラディエーターを鎖で縛り、彼らを相手にローマ軍の兵士が馬に乗って襲い掛かるという卑怯な場面。「300 スリーハンドレッド」のスタント・コーディネーターがアクションを担当し、「グラディエーター」ばりの豪快な健闘シーン。マイロとアティカスが身体を張って一対一、又はマイロ一人で多勢とのバトルが切れ目なく展開する。剣や矛、鎖を駆使した戦いは、軽やかだが重量級のぶつかり合いだ。

このシーン、さすがに主人公のマイロが先頭に立ち、戦略を練りながら兵士たちをなぎ倒すシーンは圧巻でした。
剣闘士が勝利を挙げた中で、大噴火が起きたにも関わらず、コルヴスは花嫁候補のカッシアにこだわるあまり、マイロを亡き者にしようとするが、爆発する火山も怖いが、怒り狂った男のジェラシーも怖いもんです。

そこへ、あの有名なベスビオ火山の大噴火です。始めは地震が起きてコロシアムが崩れ落ちるシーン、そこへ火山弾が降ってくるし、船で逃げようと港へと押し寄せる民衆たち、そこへ大津波が押し寄せてくるという、怒涛の勢いでスリルとロマンが高まっていく王道のエンタメ映画です。

それに、孤高のケルト騎馬民族の生き残りマイロと、聡明な令嬢カッシアの身分違いの恋物語が、カッシアとの政略結婚を目論む悪漢コルヴスの腹黒い陰謀を絡めて展開する。二人は、幾多のハードルにも屈せず、まさしく終盤の大噴火と共に“燃え上がる”2人のロマンスに溜め息がでます。
監督は膨大な資料を基に30もの古代都市セットを建造し、通りの玉石まで忠実に再現して見せている。大噴火のチリや煙も再現、俳優たちは、大量の灰に苦しみながら撮影したそうです。
クライマックスの、ポンペイを1日で消滅させた火山大噴火の終末スペクタルが炸裂する大迫力は圧巻の一言です。天高く噴き上がる黒煙、火口から溢れだすマグマや火山弾、街を飲み込む大津波と火砕流といった自然の猛威を、ド迫力のCGで臨場感たっぷりに描き切っています。
2014年劇場鑑賞作品・・・210映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

300 スリーハンドレッド
サイレントヒル:リベレーション3D
サイレントヒル:リベレーション2D
エンジェル ウォーズ

ポリス・ストーリー/レジェンド ★★★★

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アジアが誇るスーパースター、ジャッキー・チェンが主演を務め、興行的にも大ヒットを記録した人気シリーズ『ポリス・ストーリー』の第6弾。仕事熱心なベテラン刑事と一人娘の確執を発端に、まるで要塞のようなナイトクラブに突如監禁された人々が体験するカオスな状況を映し出す。娘を『7日間の恋人』などのジン・ティエンが演じ、クラブの経営者を『コネクテッド』などのリウ・イエが熱演。決死の肉弾戦はもとより、さまざまな因縁が絡み合う密室劇に絶句する。

あらすじ:仕事熱心で家庭を犠牲にしてきた、古参刑事ジョン(ジャッキー・チェン)は、一人娘ミャオ(ジン・ティエン)に呼び出され、クリスマス時期の北京の繁華街へとやって来る。彼は指定のウー・バーに到着するが、そこは怪しげな雰囲気のナイトクラブだった。父娘は半年ぶりに対面し、ミャオはクラブの経営者で彼女よりかなり年長のウー(リウ・イエ)を恋人だと紹介する。

<感想>ジャッキー・チェン主演「ポリス・ストーリー」シリーズの10年ぶりの新作。前作での「ライジング・ドラゴン」で大掛かりなアクションから引退を発表したジャッキーが、全面をコンクリートに覆われたクラブは要塞と化し、ろう城事件の人質となった刑事に扮して、激しいスタントと肉弾戦を見せてくれます。

これはまるで「96時間」ではなくて「ダイハード」みたいな感じの一人舞台アクションです。ナイトクラブの中で、娘のミャオを助けたいジャッキーは、手足を椅子に縛られ人質となったジャッキー。拳銃を突きつけられ窮地に陥ります。そして、彼女の命と引き換えに犯人から自害するよう迫られます。

娘のミャオは、なんとクラブのオーナーのウーと恋人のような感じで、父親としては大反対なのに、そんな気も知らないで呑気な娘。だが、多くの犯罪者を闘ってきたジャッキーは、昔関わったとある事件でウーから恨まれていたわけ。
そして、刑務所の中にいる犯罪者を差し出せというのだ。この完全防備の男がそうです。その犯罪者とは、薬局へ強盗に入り、そこへ居合わせたウーの妹が強盗に人質に捕られて、今にも首を切られる寸前。そこへジャッキーが駆け付けるも、犯人の目を盗んで自分でその妹はクビをカッターナイフで切って死んでしまう。つまり自殺なんだけど、薬局には精神を病んで薬を買いにやってきたわけ。兄貴のウーは知らなかったのだ。
クラブの客の中にいた人質も、その薬局強盗に立ち会った人たち。ウーいわく何で妹を助けなかったと逆恨みなのだ。

還暦を迎えたジャッキーは、本作ではアクションの派手さではなく、リアルさにこだわったそうです。ウーの部下でムエタイスタイルの打撃格闘技“散打”の本物の王者と、ジャッキーがタイマン勝負。痛みが感じられるハードな戦いを展開する。総合格闘技的なテクニックをジャッキーが多用するのも新鮮ですね。
そして、ビルの屋上からのダイブするシーンなど、これは冒頭で「飛び降りてやる」と叫ぶ自殺志願者と対峙。その男の命を救おうと勢いあまって2人とも高いビルの屋上から落下するシーン。救命マットはあるものの無茶すぎます。

ジャッキー作品ならではの特殊なロケーションを使ったアクションも健在。元工場でパイプが張り巡らされているという設定をいかして、縦横無尽にジャッキーが駆け巡ります。といった身体を張ったスタントは健在ですから。いやはや、ジャッキーのカンフーはもちろん、何でも武器にして闘う姿は、我々の愛するジャッキーアクション満載でした。
それにしても、SWATの隊長さん狙撃や突入という攻撃を主張しまくって、ジャッキーは人質の命を優先と考えて、犯人ウーと交渉しているのを邪魔するんですね。これには参りましたです。最後のNGシーンも良かったです。
2014年劇場鑑賞作品・・・211 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ドラッグ・ウォー 毒戦 ★★★.5

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香港ノワールの鬼才ジョニー・トーの監督50作目で、アジア全域に及ぶ巨大麻薬組織壊滅に挑む中国公安警察の極秘潜入捜査を描いたクライムサスペンス。ジョニー・トー監督作品で脚本を務めてきたワイ・カーファイとヤウ・ナイホイらがタッグを組み、公安警察と組織の壮絶な戦いを通し現代中国の薬物犯罪の内情も映し出す。主演は、『強奪のトライアングル』でも共演しているルイス・クーとスン・ホンレイ。さらにラム・シューやラム・カートンなど、ジョニー・トー作品の常連が共演を果たしている。
あらすじ:中国・津海にある、覚醒剤を密造する工場で爆発が発生。そこから車で逃走したテンミンは衝突事故を起こし、意識不明の状態で病院に搬送される。その病院に居合わせた麻薬捜査官のジャン警部は、テンミンが麻薬組織の重要人物であることを察知。覚醒剤密造には死刑判決が下るため、減刑と引き換えで捜査協力することを要請する。テンミンの情報をもとに潜入捜査が進められるなか、中国全土だけでなく韓国や日本にまで勢力を拡大する麻薬シンジゲートと、その巨大組織を裏で操る“香港の7人衆”の存在が浮かび上がる。

<感想>ここ数十年、様々な形での連携を見せながら、合作の動きを加速させてきた中国と香港の映画界。そんな中にあって、あくまでもメイドイン香港たる作品を撮り続けてきたのが、映画ファンのみならず世界のクリエーターからの熱狂的な支持を受ける鬼才ジョニー・トー監督。もちろんトー監督も中国マーケットの重要性は充分に認識しており、頑なに香港にこだわってきたわけではなかったようですね。ネックになっていたのは、やはり中国の「検問の厳しさ」だったようです。
ほとんど完全に香港アクション調の作品になっているので、いったいこれを中国本土の話にした意味合いはどこに行ったのだろう?・・・と、妙に落ち着かない気持ちで見てしまった。せっかく中国本土で制作したのだから、その特徴、特異性を引き出して欲しかったのに。これでは香港アクションと変わるところがない。普通の捜査活劇に終わったのは残念でした。

それにしても、中国公安警察による、巨大麻薬組織への極秘潜入捜査の様子。映画作りにおいて何より自由を求めるトー監督が中国公安の実態に迫る作品を本土で撮ったということなのであろう。さらに出来上がったその作品が、妥協なき全くの、ジョニー・トー映画だったということ。
中国公安麻薬捜査官、ジャン警部率いる捜査チームの命懸けの活躍を描いたもの。だが、これはトー作品、当然、お話は単純な英雄譚におさまるはずもなく、いつものシャープな演出手腕にて、囮を使い架空取引を仕掛ける捜査チームと、麻薬組織との二転三転する心理戦をスリリングに、描き出していくのだが、その過程で、じりじりと浮かび上がってくるものは、中国としてはあまり触れて欲しくないはずの、現代中国社会の闇の深さだと思います。

加えて、アクションの連続でみせてゆく本作の、主にラストを彩る至近距離のガンアクションによる、ひたすら壮絶なその様よ、これはいったい、ここまでやったこれらのどこに、妥協があったというのだろうか。ですが、終盤失速気味になるのがつくづく惜しまれる。
公安当局の制限としては、公安のイメージのため「あまりたくさん死んではいけない」「あまり銃を撃つな」というものがあったそうだが、この仕上がりで妥協したという監督の頭の中には、当初、どんな地獄絵図が渦巻いていたのか、想像するだに恐るべしジョニー・トー監督である。

ですが、中国資本で中国を舞台にぐっとスケールアップして、ロケーションも凝りに凝った本作の衝撃は変わらずでありました。どうしたらこんなに面白い映画が撮れるのか。流麗なキャメラワークと連動するストーリーテリング。音楽のタイミングも美しく、まるで映画全体が一篇のミュージカルナンバーを形成しているkのようだ。派手な部分だけでなく、シガレットケース(仕掛けてあるカメラ)を巡る細やかな駆け引きまでもが面白い。
そして、これでもかこれでもかのアクションと、どんでん返しのスリルと思わぬ隠し玉。毎度お馴染みのモチーフ探しも楽しいです。ラストに死刑と引き換えに潜入捜査に協力したテンミンが、麻薬仲間や警察を銃殺するシーン、そして警察に捕まるテンミンが女々しく懇願する姿が可笑しかった。ただし、年々“哀しみ”が薄れてきているのは残念な気がするかもです。でも、超娯楽快作には違いありませんから。
2014年劇場鑑賞作品・・・212 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング


名探偵ゴッド・アイ ★★★

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香港の鬼才、ジョニー・トー監督が『イエスタデイ、ワンスモア』で組んだアンディ・ラウ、サミー・チェンとタッグを組み、盲目の名探偵の活躍を描くサスペンス。女性が行方不明になった事件をめぐり、あふれる想像力と誰も思い付かないような捜査により事件の真相に迫りゆく盲目の探偵と女刑事の姿を活写する。共演はグォ・タォ、カオ・ユアンユアンに加え、ジョニー・トー監督作品常連のラム・シューも登場。アンディ・ラウが熱演する破天荒な探偵のキャラクターと共に、ジョニー・トー監督らしい予想外の展開に翻弄(ほんろう)される。
あらすじ:目の見えない探偵ジョンストン(アンディ・ラウ)はその類いまれな想像力のおかげで、名探偵ジョンストンと呼ばれていた。以前同僚だった刑事シト(グォ・タォ)の部下で、ジョンストンに憧れを抱く女刑事ホー(サミー・チェン)をアシスタントに、ジョンストンは少女の失踪(しっそう)事件の捜査を開始する。ジョンストンの想像を超えた捜査にホーが振り回される中、事件は大きく発展し……。

<感想>この映画もジョニー・トー監督作品です。それが、先週までミニシアターにて上映していました。すでにDVDレンタルしているのにね。早速借りてきました。アンディ・ラウが盲目の探偵を演じているんですね。白い杖を突きながら路上を歩き、犯人を尾行するという、そんな存在感があり過ぎる尾行に度肝を抜かれます。ですが、どう見ても、盲目には見えないですから。素早いのなんのとさすがに腕は鈍ってません。
スーツを着て少し痩せたアンディの、スタイル抜群に惚れ惚れします。彼は元凄腕の刑事で、現在は犯罪者を見つけてケータイで通報することで、警察から報奨金を得ているのだ。冒頭からスーパーでデブ男を尾行して、洗剤につまずくとすかさず通りがかった人に「これは何ですか」と聞く。すると「パイプ用の浄化剤」と言われそのデブ男の後を付ける。屋上に上がっていくデブ男が、上から下を通る人間にそのパイプ用洗剤をまき散らす。そこへ犯罪組織のシト刑事さんが到着し、お手柄を横取りされてしまう。それに、まだ目が見えていた刑事の頃に片思いだった女、バレエダンサーの女も横取りされてしまっていたのだ。後で判るのだが、その間はまだ片思いのままである。

そんな彼の元に、女刑事ホー(サミー・チェン)が現れ、中学生のときに失踪してしまった友人を探してくれと頼まれる。アンディの捜査方法は、現場第一主義で、そこで犯人の行動を再現し実体験をして、及び心の目で洞察するというものだった。女刑事ホーの家って、豪邸でしたね。
丁度、都合良くホー刑事が手助けをしてくれると勘違い?というか手伝わされて、殺人犯や被害者を演じて実体験として階段を転がり落ちたり、刺青まで入れなくてもいいのに、本当に入れちゃったり。
そして、ホー刑事の友達を探すうちに、たくさんの行方不明の女性たちの捜査もする。タクシーの運転手が怪しいと、この人間は猟奇殺人者で、殺して人肉を喰っていたのが後で判る。そのホー刑事の友達は、上の階に住んでいたメキシコ人の男らしく、その男に惚れてしまった友達のシウマンは、彼がメキシコへ帰る時にクローゼットの中に隠れて密航し、メキシコで里子になって生計を立てその男に近づき結婚。男は香港に帰って来て鉄板焼きの共同経営者になり、友達は妊娠して女の子を産み亡くなってしまう。しかし、その男は別に女がいて不倫騒ぎもある。足の大きな女がその女で、宝石強盗事件の犯人らしいのだ。

まるで、最初っからコメディ映画で、笑いが満載で面白かった。盲目なんて大変なハンディキャップであるにも関わらず、主人公の探偵はくよくよするどころか全く意に介さないのだ。
面白いのが、刑事の時、網膜剥離で失明する前に一目惚れしたタンゴのダンスホールの女性。その女性に4年間告白を待ち続けて、いつの間にか何処かへ行ってしまったのに、またダンスホールに帰って来たその女性に、果敢にアタックするなど、健常者よりもタフなんです。っていうか、“目“見えてるんじゃないの、って感じですから。彼は、彼女の付けている香水の匂いを覚えていたんですね。たまに、盲目者の演技をします。
座頭市が健常者よりも凄腕の検視であるとかウンヌンお話して、事例はたくさんあり五体満足の人間がちょっとしたことでクヨクヨしたり、死にたいなどと考えるのは小賢しいとすら思わされるのだ。

この映画の中でも思い悩んだ女性がたくさん出て来るのだが、彼女たちも苦しんでいるのに元気でアグレッシブルで、この映画にはそんな人たちが出て来る。登場人物全員がみな、刑事も探偵も犯罪者も被害者も超エネルギッシュですから。
この映画から学ぶのは、ハンディキャップや殺人、恋愛の悩みなど語っていながらも元気いっぱいで、殺しても、殺されようが問題じゃないって、観ているこっちが元気をもらえるシッチャカ、メッチャカ映画ですから。
主人公は目が見えないのに、「女はブスでも性格が合うのが一番」というのは嘘ですから。本音は「顔が見えなくても、ブスなんか嫌だ」という結論ですからね。盲目の男性を好きになるのは、やっぱり優しい性格じゃないとダメなんじゃないの。
2014年DVD鑑賞作品・・・41 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ハミングバード ★★★.5

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戦場で犯した罪を背負い身を潜めて生きてきた元特殊部隊の男が、ある出来事を機に復讐(ふくしゅう)の鬼と化していくクライムアクション。イギリス社会の暗部に迫る緊迫感あふれるストーリーを構築したのは、『イースタン・プロミス』などの脚本家で本作が初監督作となるスティーヴン・ナイト。『トランスポーター』シリーズなどで絶大な人気を誇るジェイソン・ステイサムがスタントなしで肉弾アクションを繰り広げるほか、過去にとらわれた主人公の苦悩を体現する。
あらすじ:以前特殊部隊を率いていた元軍曹ジョゼフ(ジェイソン・ステイサム)は、戦場で罪を犯したのをきっかけに、心に傷を抱えながらひっそりと暮らしていた。そんなある日、ただ一人打ち解けていた少女が誘拐されてしまい、彼女を救うためロンドンの暗黒街を突き進む。しかし、最悪な結末を迎え怒りを爆発させた彼は、リベンジを胸に誓い……。

<感想>何故か男泣きを誘う、ジェイソン・ステイサム主演のクライム・アクション映画でした。今回はロンドンでホームレスに身をやつした帰還兵という役どころ。中東で生き地獄を体験した元軍曹ジョゼフは、軍の病院を抜け出し、教会の炊き出しに通う最下層生活を送っていた。戦場からの帰還後は社会に適応できず、ホームレス生活。心を開くことができるのは、ホームレス仲間のイザベルと教会のシスターだけ。

ある日のこと、地回りのチンピラに襲われたジョゼフは、高級アパートの一室に隠れる。アパートの住人はNYに出かけており、彼は一夏をアパートで過ごすことに。ホームレス仲間だった少女が娼婦になった挙句に、客から撲殺されたことを知り、復讐することを決意する。アパートにあった洋服を借りて真面目に働き始める。ですが、夜になり眠ると悪夢が蘇り睡眠を妨げます。

冒頭でのカツラだと思うのですが、暖簾のような長髪には驚きます。その後はいつものハゲ頭でスッキリです。それに、ド派手なアクションを期待すると拍子抜けになりますから、しかしホームレス生活から一変して、高級マンションに忍び込んだジョゼフが、その住人のスーツやお金(キャッシュカードが郵便で来ていた)を引出し、それに高級外車のベンツを乗り回す姿は、つい「トランスポーター」を思い出します。
だが、中華料理店の厨房で働いても働いても中々お金は貯まらず、そこでジョゼフは中国系マフィアの用心棒となり、収入はうなぎ上りになり部屋の冷蔵庫の中に札束を隠す。そして、調べていくうちにホームレスの彼女が娼婦となり、客が上流社会で暮らす犯人であることが分かる。
ある日のこと、コンビニで元妻に出会うのだが、高級スーツに身を包んだ彼を見て、生活が苦しいことを告げ彼に缶詰を投げつける。我が子にも会えず、妻にも苦しい生活をさせてしまい、自分は何をしているのだろうと自問自答するのだが、アル中でホームレスであり、脱走兵の彼が現在しているのは用心棒の様な殺し屋で、自分は戦場では人に言えないようなことをして来た。それに、政府に追われている身で、公には姿を見せることが出来ないのだ。

ホームレスの面倒を見るシスターのクリスティナは、子供の頃体育の教師に性的な悪戯をされて、教師をナイフで刺しその後、更生のためにシスターとなる。彼女にスーツ姿の写真を撮ってもらい、それを娘に送るためにと。このシーンは微笑ましいです。写真はやっぱり笑わないとね。
戦場からの帰還兵の多くが、ホームレスとなる厳しい現実をドラマ化したもので、義理と人情の狭間で揺れる主人公をジェイソン・ステイサムがストイックに演じているのがいい。しかし、映画ですから、ホームレスのイザベルを殺した男をパーティ会場で見つけて、屋上から体を押して殺してしまう所は残酷でもあります。
ちょっと笑えるのが、写真の展示会に行くシスターとジョゼフ、そこに展示されている写真が全部モノクロの男のシンボルなんです。つまり展示会の写真家が、ジョゼフが仮住まいをしている部屋の住人が写真家だったということ。

そして良かったのが、この二人のラブロマンスもあり、ジョゼフは彼女にシスターの制服を脱いで、真っ赤なドレスを着て貰おうとプレゼントするんですね。それが、メガネを外して化粧をし、赤いドレス姿のアガタ・ブゼクは綺麗でしたね。二人が恋に落ちるのが分かります。しかし、クリスティナは遠いアフリカへと行くことを決意していたのですね。
最後に、ジョゼフが警官に見つかり追われるところでお終いなのですが、捕まって欲しくないと願わずにいられません。マンションの冷蔵庫に隠していた大金をカバンに詰めて、ホームレスにピザと飲み物を差し入れして、妻と娘には働いて貯めた金と写真を渡す、心優しい父親の姿に目頭が熱くなりますから。
2014年劇場鑑賞作品・・・213 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング


ハミングバードとは、ボーイング社が軍事目的で開発した無人偵察機のこと。軍を脱走したジョゼフは、常に無人偵察機に見張られている恐怖に怯えている。つまり、悪夢でうなされて、ハチドリがジョゼフ自身の周りを飛び回っているイメージに憑りつかれている状態を表しています。彼にとっては“死神”を意味しているのだ。

フェイシズ ★★★

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連続殺人犯の顔を目撃しながらも、人の顔が判別できない相貌失認に陥ってしまった女性の姿を描くサスペンス・スリラー。
監督・脚本は「ブラッディ・マロリー」のジュリアン・マニャ。出演は「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」のミラ・ジョヴォヴィッチ、「RED レッド」のジュリアン・マクマホン、「赤ずきん」のマイケル・シャンクス。
あらすじ:ニューヨーク・イーストサイドを騒がす、女性ばかりを狙った5件の殺人事件。殺してレイプしたあとは泣く、というそのシリアルキラーに名付けられたあだ名は“涙のジャック”。
手がかりは一切なく、迷宮入りしかけていた頃、6件目の犯行が起こる。目撃者は小学校の教師、アンナ・マーチャント(ミラ・ジョヴォヴィッチ)。彼女はエリートの恋人プライス(マイケル・シャンクス)と順風満帆な生活を送り、結婚を目前に控えていたが、ある日突然、人生が一変してしまう。

親友のフランシーン(サラ・ウェイン・キャリーズ)、ニナとバーで飲んだ帰路途中に、“涙のジャック”が被害者を惨殺する現場を目撃。震えながらも、声を押し殺し逃げようとするアンナだったが、その瞬間、携帯が無情にも鳴り響く。
アンナは必死に逃げるが“涙のジャック”に捕まり、ナイフで切りつけられ、川に落とされる。
アンナが目を覚ましたのは病室だった。1週間昏睡状態に陥っていた彼女の目の前に3人の見知らぬ人間がいた。3人は、恋人のプライス、親友のフランシーンとニナだと名乗るが、アンナにはわからない。
彼女は一命を取り留めるも、橋から落ちたときのショックで相貌失認<人の顔が判別できない症状>になってしまったのだ。目撃したはずの犯人の顔がまったく思い出せないアンナは、事件の担当刑事ケレスト(ジュリアン・マクマホン)やプロファイラーのラニヨン(デヴィッド・アトラクチ)に協力するため、ランゲンカンプ医師(マリアンヌ・フェイスフル)の治療を受けて、必死に記憶を呼び起こそうとするが、捜査は一向に進まない。家族や恋人の顔がわからないことから、ますます混乱状態に陥っていくアンナ。そんな彼女に“涙のジャック”の影が忍び寄ってくる。やがて、7人目、8人目の被害者が発見された……。 (作品資料より)

<感想>だいぶ前に観たのですが、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演のサスペンス・スリラーです。怖いですね、夜道の一人歩きは気を付けましょうね。友人の殺人事件を目撃してしまい、その後に犯人に追いかけられ転んではずみに頭を打ち付けて川へ転落してしまう。気が付いた病院で、相貌失認<人の顔が判別できない症状>と診断される。目撃したはずの犯人の顔がまったく思い出せないアンナは、事件の担当刑事ケレストにも分からないというしかない。
自分の顔さえも鏡を見て、今鏡に写っている顔がすぐさま違う別人の顔に変貌するのだ。恋人のプライスにも失礼なことを言ってしまう。そんな時に、またもや冷酷な殺人鬼が街へ姿を現す。目撃証人なのに、顔を判別できないもどかしさが彼女をイラつかせる。
彼女が人間を識別する方法として、着ている服とかネクタイ、特徴的な仕草などで、それを手帳にメモって見ては比較して判別している。
これでは、その人が毎日同じ服装しているわけではないので、特徴だって何人も同じ仕草することがあるし、髪形とか手帳に事細かく描いてあるのには感心しました。

まさか、犯人が実は犯罪心理分析官だとは思ってもいないことで、同僚の刑事たちだってまさかと信じていない分けで、どちらかというと恋人か、それとも刑事のケレストなのかと、でも刑事はミラを好きになって執拗に擁護するし、自分の故郷の島へミラを連れていくし、最後にミラが襲われて顔を見て思い出すシーンには、背筋が凍る思いでした。

親切に優しくしてくれるケレスト刑事、ある時口髭を剃って現れるんですね、これにはちょっと犯人なのではと、驚きました。
でも最後のシーンで、アンナの病気が良くなっているようで、その島で暮らして生徒たちの顔を判別できるようになっているのと、刑事と結婚して娘が生まれて幸せそうなので良かったのではないかしらね。
いつもアクション女優としてのミラを見慣れているので、たまにはこういったどこか精神状態が不安定な役もミラにはいいのではないかしら。今年の秋にもまた「バイオハザード」あるのかなぁ〜、きっと観に行くけど。
2014年DVD鑑賞作品・・・42 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

夫のポール・W・S・アンダーソンが大作映画「ポンペイ」を撮ったので「バイオハザード」の第6弾はまだ手つかずのようですね。

2012年9月14日公開
バイオハザードV:リトリビューション3D

エージェント・ハミルトン ★★.5

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2012年、スウェーデン発、苦悩する孤高のヒーローの悲哀が込められたスパイ3部作の1作目。監督、キャスリン・ウィンドフェルト。原作はヤン・ギィユー。出演:「未来へ生きる君たちへ」のミカエル・パーシュブラント他。
あらすじ:特別諜報員のハミルトンは、故国スウェーデンのミサイルを、テロリストに密輸しているロシア人マフィアの正体を暴き、アジトに潜入。

ある日、彼らはアフガニスタン国境付近での武器取引中に、謎の武装集団に襲撃される。ハミルトンを除く全員が殺害され、ミサイルも奪われてしまう。
同じころ、エチオピアであるスウェーデン人技術者が、何者かに誘拐される。ハミルトンは、2つの事件に関係する謎のテロ組織を追跡するが、・・・。

<感想>スウェーデンで大ヒットしたベストセラー小説を基にした、スパイアクション3部作の1作目である。シリーズもので劇場公開作品なんですね。地方にはこなかった。それでも、DVDで十分だと思います。だって、「007」には適いっこありませんからね。
タイトルに「祖国を愛した男」と付いている。国益のため命がけの戦いを運命づけられた、苦悩する孤高のヒーローの悲哀が込められたダークでサスペンスフルな作風が最高だと。これは最近の「007」シリーズに似ているとも言えなくないんですが、やっぱりダニエル・グレイグほどスマートでかっこよくないし、主演のミカエル・パーシュブラントって見るからにオジサンですよね。
世界の紛争地域を絡めた壮大な物語のようで、結果的にかなりドメスティックな話に落ち着くので、言ってしまうと地味でスケールは小さいのが残念です。
話の展開もスリルに乏しく、プロットはかなり雑。だから銃撃戦などアクションシーンはそれなりに見せてくれるが、内容が薄っぺらのような感じがして入り込みづらい世界を見せるのが難。
だが、一番驚愕したのが、ハミルトンが寝ている最中に、背後に立った恋人を反射的にナイフで殺してしまう。つまり襲われたと思ったのでしょう。寝ている女も安全とは限らないもの。彼女の喉からはドクドクと鮮血が流れ出すシーン、ここはスウェーデン映画らしくグロくてオカルトホラーみたいでした。
彼女は敵でもないし、普通にハミルトンを愛していた女だったのですよ。しかしながら、ハミルトンはそのトラウマを抱えながらも、そのわりには平然と任務を遂行しているところ。2作目以降で活きてくる伏線なのかもしれないが、ラストの姿勢も含めて釈然としないところで評価が下りますね。
2014年DVD鑑賞作品・・・43 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ザ・デット /ナチスと女暗殺者 ★★★

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元ナチスの戦犯捜索に人生を賭けた“モサド"の数奇な運命をスリリングに描いた珠玉のスパイ・サスペンス&スリラー!
あらすじ:1965年、第二次世界大戦後中に強制収容所で残酷な人体実験を行っていたナチス戦犯のライナー医師を拘束するという極秘ミッションの為、イスラエルのモサド諜報員、ラヘル、ズヴィ、エフドの3人が東ベルリンに送り込まれた。
彼らによってライナーは捕まるが、拘束中に逃亡を図られてしまう。
しかし、3人は拘束中に脱出を図った戦犯を射殺したと発表、祖国イスラエルに帰国し英雄視されていた。
それから30年後。死んだはずの医師が、ウクライナで生きているという小さな地方新聞の記事を目にする。慌てた3人の元諜報員は、実は偽りであった“報告"を工作しようと再び動き出す―。(作品資料より)

<感想>モサド工作員の30年間の苦闘を描いた劇場未公開作品。この映画は2012年8月にDVD発売している「ペイド・バック」のオリジナル版である。それでも、「ペイド・バック」の方が出演者が、ヘレン・ミレンにサム・ワーシントンの他ジェシカ・チャステインに、キアラン・ハインズ、マートン・ソーカスなど有名な俳優が出演しており、やはりリメイクの方が数段見応え十分だと思いました。
意外や間髪入れずにオリジナル版がリリースされることになって鑑賞。だが、無名の俳優が出演しているイスラエル映画が、こうやって見られるだけでも有難いことですよね。

やはりリメイクと同じで、産婦人科医として潜伏していたナチスの戦犯ライナーを捕えるため、ベルリンに到着。しかし、ライナーのところへ女スパイのラヘルが不妊治療のため来院して、ライナーを眠らせて心臓発作と偽り、救急車に乗ったズヴィ、エフドの男スパイが自分たちのアパートへ拉致する。
すぐにでもイスラエルへ連行しようとするも、中々手筈が上手く行かずに日にちが過ぎていく。イライラした2人の男は喧嘩をして出ていくし、一人取り残されたラヘルに、ライナーが襲い掛かり顔の頬に切り傷を負わせて逃走してしまう。ところが、3人は口裏を合わせて、ライナーを射殺したと嘘の報告をし、英雄としてイスラヘルへ帰る。
そして30年後、初老となったラヘルの元に、ライナーが生きているという知らせが届き、3人だけの秘密を守り抜くために、最後のミッションに向かうラヘル。
これはさすがにハリウッドで、2012年に「ペイド・バック」としてリメイクされるだけのことはある。アクションもサスペンスもパワーアップされているリメイク版に比べると、どうしても地味な仕上がりになっているが、そのシンプルさがかえって構成の巧みさを浮かび上がらせていると思う。

ショッキングなオープニングを用意しつつ、序盤で種明かしをしてから謎解きに入ったリメイクも味わいがあったのだが、本作を予備知識なしで先に観ていたら、かなり印象は変わっていたに違いない。ただ、それを差し引いても手堅い演出によってエンタテインメントの水準を軽くクリアしているのは驚きだ。
それとリメイク版のルックは、きちんと本作ものを受け継いでいたことも分かり、役者に目を向けると、リメイク版の主人公の若き頃に扮したジェシカ・チャスティンと30年後の主人公ヘレン・ミレンの2人のキャスティングが役にぴったりで良かった気がした。

だが、こちらオリジナル版の主人公である2人のラヘルも中々で、作戦を遂行する産婦人科での診察や、2人のスパイの男と恋仲にになり関係を持つシーンで、全裸になるネタ・ガーティの熱演も評価したい。それに、様々な経験を感じさせながらも、概に現役を退いているギラ・アルマゴールおばさんの存在感。いずれも本作の大きな魅力となってます。リメイク版ではヘレン・ミレンが演じている。
「ペイド・バック」を未見な方で、本作のオリジナルに興味をもった方は、是非このオリジナルから見て欲しいですね。物語は同じだが、細かい描写が変更されています。それを見比べるのもいいでしょう。
2014年DVD鑑賞作品・・・44 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ノア 約束の舟 ★★★.5

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旧約聖書の創世記に記された「ノアの箱舟」の物語を実写化した大作。大洪水による世界滅亡を知らされた男ノアとその家族が、ある重大な使命を全うしようと巨大な箱舟の建造に乗り出していく。メガホンを取るのは、『ブラック・スワン』などの鬼才ダーレン・アロノフスキー。ノアにふんするラッセル・クロウを筆頭に、ジェニファー・コネリー、アンソニー・ホプキンスら、実力派スターが共演する。壮大な物語はもちろん、大洪水の描写にも息をのんでしまう。

<感想>日本人の多くにとって、旧約聖書は馴染みが薄いというのが本音ですよね。以前の映画で「十戒」や「天地創造」を観たことがある人たちには、そのビジョンやビジュアルが印象に残って、イメージが定着していると思います。
この映画では、従来の宗教的な映画と違って、神様を偶像として登場させていません。つまり、旧約聖書では主なる神は“世界”つまりあらゆるものを創った存在で、我々はその“世界”の内に存在するものの一つなんです。

この物語は、聖書の創世記の中でも初期に起こっている出来事で、神の予言で大洪水が起こるシーンに、聖書に記されている通りに箱舟の大きさ高さ13m、幅約22m、長さ約133mと実際に実物大のセットを建造したというから、さすがにダーレン・アロノフスキー監督の手腕とこだわりに驚きます。普通だったら一部をセットで作り、CGIで処理するのが最近の傾向なのに。ロング・アイランドのオイスター湾にあるブランティング・フィールズ・アーボリータム州立公園で5か月に渡って組み立てられ、実物の3分の1に当たる約52m分の箱舟が作り上げられたというのだ。

それに何よりも、神の啓示を受け、憑りつかれたように巨大な箱舟を建造するノアには、ラッセル・クロウが扮して少々デブっていて貫録ついて、いかにも頑固親父的な役柄にぴったりでした。箱舟が出来上がり大嵐が来て、大勢の人間が押し寄せてくるシーンでは、まるで「グラディエーター」のような迫力がありましたね。

物語は、アダムとイヴの時代から十世代後。アダムの三番目の息子セトの子孫であるノアが、幼い頃に父と弟を殺したカインの末裔トバル・カイン(レイ・ウィンストン)に殺されたが、何とかその場を逃れ妻のナーマ(ジェニファー・コネリー)と3人の息子、長男セム(ダグラス・ブース)次男ハム(ローガン・ラーマン)、三男のヤフェトと平穏な暮らしをしていた。だが、ある夜、眠りの中で造物主のお告げを目にする。悪行に染まった人類を滅ぼすため、世界は洪水に見舞われるというのだ。人間以外の生物を救うという自らの使命に目覚めたノアは、相談のために祖父メトシェラ(アンソニー・ホプキンス)のいる山に向かう。
途中で、腹に傷を負った少女イラ(エマ・ワトソン)を救い、祖父の元に着いたノアたちは、祖父からエデンの園の種を渡される。その種を蒔くとたちまち樹木が生え揃い森になる。ノアはその木材を材料に箱舟の建造に取りかかる。手伝うのは「番人」と呼ばれる堕天使たちも、始めはノアを敵視していたがやがてはノアを手伝ってくれるようになる。

いやはやさすがにデカイ建造物に驚き、始めに鳥たちがツガイでたくさん飛んできて、次は動物たちもかってにツガイで乗り込んでくるのだ。大嫌いな爬虫類の蛇までもがにょろにょろ来るのにびっくり。
それに、カインが率いる悪人どもが箱舟を狙って襲ってくるのを防御する「番人」たち。岩でできた巨大ロボットのようだ。ノアのために神が創ったのだろう。彼らは最後は光となって還っていくわけで、唯一神様の使いとして現れる存在なんですね。

それにしても、ノアの息子たち3人である。長男セムには子供の産めないイラという女がいるのだが、祖父のホプキンスがイラの腹を触って奇跡をおこし子供が産める体にしてくれたのだ。次男のハムは自分で女を見つけようと森の中へ行き、気に入った女を見つけるも帰り道で動物の罠に足を取られてしまう。助けようともがくもダメで、父親のノアに懇願するも洪水が押し寄せてくる前触れで、神のお告げには動物たちツガイを箱舟に乗せて救えという啓示を必死に守り、次男の女を助けることはなかった。これが後で、箱舟に押し入ったカインを見つけた次男が、父親に報告せずに裏切ることになる。

そして、長男にも至難が起こる。それはイラのお腹の子供が男の子ならいいと。女の子なら、その場で殺してしまうという残酷な父親なのだ。要するに新たな世界には、人類は存在するべきではないという造物主の意志だからというのだ。
それが、生まれてきたのは、双子の女の子で母親になったイラは、どうしても殺すというなら双子を抱いて心中しようと箱舟の上で決心したようなそぶり。母親の慈悲と長男セムの願いがノアに聞き届いたのか、双子の女の子は死なずにすんだのだ。あぁ、ノアも愛に満ちているんだと感情移入させるところが甘いと言えばそうですよね。

そして、神から選ばれた人間であるノアでさえ使命に縛られるあまり壊れていく。雨が降りやまぬ箱舟の中で、酒を飲んで裸で寝ているとは。洪水の中で閉ざされて薄暗い箱舟で、騙し合い憎み合う家族の姿は、ただただ重苦しく見える。次男のハムが腹いせにカインの言うことを聞き、獣を殺してノアをおびき寄せる。人間に備わっている邪心みたいな悪い部分を含めて人間だから、そこに感情移入して観る映画なのかもしれません。二人の取っ組み合いは、やはりノアに勝算ありということなのか。
一番の見どころは、記録破りの大洪水のシーンですね。通常の雨のシーンの3倍の雨を降らせて視覚化した豪雨と大洪水のシーンは飛んでもなく迫力ありました。箱舟の中に入った動物たちや鳥などは、薬草で眠らせられていました。そして、7日間の大雨が止み、鳥が新緑の芽がついた枝を加えてきた。新大陸が見え虹が綺麗です。ですが、新しい世界が訪れても彼らは迷い続けるのだ。

堕落した人間を地上から消し去るという神の宣告を受けたノアだったが、果たして人類に未来はあるのか?・・・滅びに向かうというのがノアの神からの啓示だったはず。新しい命に対してはノアは手を下せなかったわけで、神に背く行為とも言えます。けれども、そもそも神の意志というのは、ノアが勝手に思ったことなわけで、神の意志に関係なくそこに至ったということ。
それにしても人類が栄える日が来るのかは謎のままで終わる。美しい映像やアクションにも息を呑むが、創世記の壮大なストーリーの中で描かれる人間の生々しい姿こそが、心を揺さぶり続ける。
2014年劇場鑑賞作品・・・214 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

チョコレートドーナツ ★★★★

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1970年代アメリカの実話を基に、母親に見捨てられたダウン症の少年と一緒に暮らすため、司法や周囲の偏見と闘うゲイカップルの姿を描いた人間ドラマ。ゲイであるがゆえに法の壁に阻まれる苦悩を、テレビドラマ「グッド・ワイフ」シリーズなどアラン・カミングと、『LOOPER/ルーパー』などのギャレット・ディラハントが熱演する。メガホンを取るのは、『17歳のカルテ』などのトラヴィス・ファイン。血のつながりはなくとも、少年を守るため奔走する主人公たちの無償の愛が胸を打つ。
あらすじ:1979年カリフォルニア、歌手を目指しているショーダンサーのルディ(アラン・カミング)と弁護士のポール(ギャレット・ディラハント)はゲイカップル。 母親に見捨てられたダウン症の少年マルコ(アイザック・レイヴァ)と出会った二人は彼を保護し、一緒に暮らすうちに家族のような愛情が芽生えていく。 しかし、ルディとポールがゲイカップルだということで法律と世間の偏見に阻まれ、マルコと引き離されてしまう。

<感想>ゲイのカップルと、ダウン症の少年による疑似家族の深い愛情を、実話を基に描いているドラマである。これは前から絶対に観たいと思っていました。やっと東北にも上映できて嬉しいです。
泣ける映画だとは聞いてましたが、本当にダウン症のマルコ少年が可愛そうで、可愛そうで涙が止まらなかった。1970年代末のアメリカで実際にあったお話を下敷きにしているそうだが、なかなか感動的なドラマになってました。

この物語を成立させるためには、1979年まで遡らねばならなかったのですね。偏見に満ちた時代で、ゲイのカップルがダウン症の子供を引き取り育てるという、特殊な話を普遍的な愛として描こうとしているようなのだが、・・・。
そこへの違和感を語るのは難しいのだが、ホームムーヴィーの絵に描いたような幸せの情景の、裏側にあったかもしれない日常の生活。少なくとも、1年間は三人の同居生活が続いたわけだから、マルコの誕生日のケーキのローソク消しに、きっと初めての海だったろうと想像する海辺でのフィルム、自分のためのおもちゃが並んだ棚を前に、物も言えず立ち尽くすマルコ。自分の部屋をもらって本当に嬉しそうで、寝るときにはおやすみの物語を聞きながら、それはマルコ少年が魔法使いだというお話でした。

薬物所持で捕まった母親の元から、ルディとポールのゲイカップルの部屋に引き取られた彼は、生まれて初めて自分の居場所を与えられた歓びに涙することしかできなかった。その肩を優しく抱き寄せ、ポールに目配せをするルディとの背中のツーショットの何という温かさ。
控えめに揺れながら見守る手持ちカメラは、いつ失われるかも分からない三人の生活の危ういさを捉えている。

この時代のゲイに対する偏見と誤解に、強く抗議した作品に違いないと思います。しかし、その奥には、子供を育てることとはどういうことなのか、人を愛するとはどういうことなのかということを、時代を超越した普遍的なテーマがひっそりと横たわっているようです。

俳優でもあるトラヴィス・ファインの脚本、演出は見事だし、歌うショーダンサーのアラン・カミングがまた素晴らしいし、ダウン症のマルコを演じたアイザック・レイヴァも良かった。
2014年劇場鑑賞作品・・・215 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

私の男 ★★★

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直木賞作家・桜庭一樹によるベストセラー小説を、『海炭市叙景』などの熊切和嘉監督が映画化。流氷に閉ざされた北海道と東京を舞台に、孤児となった少女と彼女を引き取ることになった男の禁断の関係を描き出す。互いに秘密を抱え寄り添うように生きる父と娘には、浅野忠信と二階堂ふみがふんするほか、高良健吾、藤竜也らが共演。時代の移り変わりに合わせてフィルムとデジタルを駆使し、北海道の雄大な自然を捉えた映像にため息が出る。

<感想>原作読みました。主人公の花に二階堂ふみという役柄は体当たりで演じているようで、高校生の制服も似合うし、父親の浅野忠信とのセックスだって動に行ったものでした。ですので、R15指定ということで、二階堂ふみの下着姿はもちろん、激しく絡み合いそのシーンでは血の雨が降るという濃厚なラブシーンです。

子供時代の子役の女の子も、奥尻島の震災で津波を経験し、両親と妹を亡くして孤児となった。そこへ、親戚の叔父さんという腐野淳悟が引き取るというのだ。10歳の子供にとっては、地獄を見たような津波の海の中でもがき苦しみ、自力で這い上がって避難所で母親の遺体を見て、自分は生き残ってこれからどうなるのだろうと、不安になる。そこへ若い青年が親戚だと言って自分を引き取ってくれる。それまで涙一つ溢さなかった花が、紋別までの車の中で堪えていた悲しみを声を上げて泣くシーン。もう絶対に一人ではないという安心が眠りを誘う。

そして、紋別編では主演の二階堂ふみが18歳になるのを待って撮影されたという、近親相姦の濡れ場である。花にしてみれば、腐野淳悟は自分の親であると共に恋人でもあるのだ。初めての男で、誰にも渡したくない自分だけの男。海上保安官の仕事をしている腐野淳悟の社宅で、花は養女として育てられ、二人の関係は禁断の近親相姦なのですね。

つまり、腐野淳悟が両親に死に別れて中学3年生の時に孤児となり、花の家へ半年間、居候している内に花の母親と肉体関係となり、妊娠して花を産むことに。その後は、腐野淳悟は遠縁でもある大塩の世話で高校生となり海上保安官になる。しかし、その間も友人に頼んで自分の娘の写真を撮って送ってもらっていたのだ。つまりは、16歳で父親になった淳悟は、娘の成長を楽しみにしていたということ。

高校生役の二階堂ふみは制服が似合っていて、紋別の生活が本当に楽しくて仕方がないという感じに映っている。花が自分の方から性に目覚めて、父親であることを知っても、自分から身体を求めるのだから、幼児性虐待とはまた違った展開なのだ。つまりは、女性の方が性に目覚めて、父親にセックスを求めるわけ。

父親の淳悟も初めは戸惑ったものの、娘を愛するあまりに体の関係を持ってしまったのだろう。それに、花を引き取る前に淳悟の恋人だった小町とは、結婚するつもりだったのに、花が邪魔をしては小町にヤキモチを焼かせて、でも、モデル出身の河井青葉と浅野忠信の激しいベッドシーンは見応えあります。娘と毎日のように肉体関係を持つようになると自然に小町とは縁遠くなる。
花も小町のことは知っていて、絶対に自分の父親=男は渡さないとばかりに、誕生日のプレゼントのダイヤのピアスを見せびらかす。高校生とは思えない花の身体つきと、魔性の女の匂いが身体から充満しているように見えた。その近親相姦がついに、孤児となった幼い花のことを心配していた遠縁でもある大塩(藤竜也)の爺さんの目に入ってしまう。

腐野淳悟が仕事で家を空けた時に、花にそのことを「獣のすることだ」と「今なら間に合う、早く家を出て私のところへ来なさい」と説教する。花には絶対に淳悟が必要であり、世間の目なんて関係ない。近親相姦だってどうでもいいのだ。大塩の爺さんを流氷の上に乗せて沖まで流してしまう。結局は死んで見つかったのだが。そのことを淳悟に話すと「そうか分かった」というばかり。大塩の爺さんに面倒を見て貰っていた警察官の田岡は、爺さんの死を不信に思っている。
淳悟は、花を連れて東京に引っ越して、タクシーの運転手として働き、花を短大まで教育し、花は企業の受付係として働く。そこへ、北海道から刑事の田岡がやって来て、淳悟に花のメガネを渡して、彼女が大塩の爺さんを殺した犯人だと言う。それからは、口封じに田岡を殺すしかないとばかりに、首に包丁で刺し殺す。花が帰って来て、それを見て「お父さんも人殺しね」と呟く。

それでも、花は仕事先で金持ちのぼんぼんの高良健吾と仲良くなるのですね。少ししか出番がなく、別に彼でなくとも良かったのにね。酔った花を家までタクシーで送り届け、ゴミ屋敷のような花の家。家の中は薄暗く、布団が積み上げられている。原作では、殺した田岡をビニール袋に包んで押入れに隠したとありましたが、映画ではどう始末したのか描かれてません。
物語は、原作だと冒頭で花が結婚することになり、たった一人の親戚として養父の腐野淳悟に出席して欲しいと、花嫁姿の花が時間が迫るなか淳悟の来るのを待っている。そして、時制を遡るかたちで綴っていく原作とは違った構成で展開していきます。
それにしてもラストの3年間、家を出た花が綺麗に化粧をしてドレスを着て、美しく変身した娘を、父親である腐野淳悟がみすぼらしくも一応礼服を着て、足元はサンダル履きという格好で駆けつける。そして、テーブルに座ると花は微笑むように淳悟を見つめ、テーブルの下では足のつま先が淳悟の股間を触っているのだ。
だが、夫となる男は高良健吾ではなかった。まだまだ彼女は、結婚しても父親ではなく男として淳悟を求めているのである。この映画は、二階堂ふみの迫真の演技で見せているような、下手をすればエログロにも見えてしまう濃厚な濡れ場シーンを、大胆にも演じてアダルト路線へ転向かとも取れる演技は、ご立派としか言えない。
2014年劇場鑑賞作品・・・216 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

春を背負って ★★★

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日本映画界を代表する名カメラマンであり初監督作『劔岳 点の記』が絶賛された木村大作による人間ドラマ。笹本稜平の小説を原作に、これまでの生活を捨て亡き父が遺(のこ)した山小屋を継いだ青年と、それぞれに居場所を求め小屋に集う人々との交流や家族の絆を描く。山での暮らしや父を知る人々と接するうちに成長していく主人公を、松山ケンイチが熱演。共演には蒼井優、小林薫、豊川悦司ら実力派がそろう。立山連峰で長期ロケを行い山々の光景を映し出した映像は圧巻。
あらすじ:立山連峰で暮らしてきた長嶺亨(松山ケンイチ)は、山小屋を経営する厳しい父・勇夫(小林薫)に反発し都会で暮らしていたが、父が亡くなったため帰郷する。そこで気丈に振る舞う母やその姿を見つめる山の仲間、遭難寸前で父に救われ今は山小屋で働く高澤愛(蒼井優)らと接するうち、組織の歯車として働く今の生活を捨て山小屋を継ぐと決める。

<感想>木村大作監督の『劔岳 点の記』は未見ですのでレンタルして鑑賞します。それで、2作目となるのも立山最高峰の大汝山(3150m)での撮影と山頂付近にある山小屋大汝休憩所を、菫小屋と見立ててロケをしている。
物語もさることながら、日本映画界を代表する名キャメラマンである監督なので、何と言っても四季の移り変わりの立山最高峰の、大汝山の美しい風景美であろう。冬の厳しい雪景色と室堂の雪の壁(これは黒部ダム旅行に行ったときに、室堂の雪の壁を見学しました)春には花が咲き、新緑が綺麗。それに秋になると朱色のナナカマドだと思うのですが、山一面に紅葉してそれは見事です。時おり顔を見せる雷鳥も夏毛には茶色で、冬には真っ白になる保護色でこれも名物ですね。

始めに、父親と子供の頃に登る大汝山。まだ雪深く春には遠い。一歩一歩と足を踏みしめて登る幼い亨と父親の勇夫。山小屋に着くと小屋の中は冷凍庫のように凍り付いており、父親にしてみれば好きな山登りと救助も兼ねて山小屋を営むのだろう。それは、目にも輝く朝日のご来光とか、雲海の流れ、夏の間は、山小屋で暮らす父親に対して息子の亨にしてみれば、山に対する感動とかは無いのだろう。

都会で株のトレーダーとして、スーツ姿で働く息子の元に父親の急死の知らせが来る。葬式の後に山小屋をどうするのか聞かれる息子だが、答えがすぐには出てこないのだ。母親にしてみれば無理に山小屋を継ぐことは無いというのだ。檀ふみさんの母親は、優しさに満ちたそんな演技でした。それでも、亡くなった父親と一緒に働いていた山男の吾郎さんと、愛ちゃんにしてみれば、そのまま父親の意志を継いで息子にやって欲しいのだ。

願いが通じたのか、吾郎さんと段ボールに入った食料を菫小屋まで背負って登る二人。ただの山登りとは違って、肩にかかる重量たるや、それに頂上近くには絶壁のような岩山がそびえており、ロッククライミングのような角度を荷物を背負って登る苦労は大変なことですね。

山男の悟朗さんには、豊川悦司さんが演じていて、エベレスト登山の時に頂上まで登れず、そこへ白い鶴が飛んできて軽々と頂上を超えていったという話をする。そして、山岳救助隊の吉田栄作さん、久しぶりに観ました。

亨も山小屋生活に慣れてきて、山小屋に個室を作ろうと計画するも、学生さんの滑落事故とか、悟朗さんが脳溢血で倒れ、3時間以内に病院へ運ばないと後遺症もしくは死の恐れもあるというのだ。

クライマックスの松山が豊川を背負って下山するシーンでは、雪の山を見事に松山が、豊川を背負って歩いているのに驚く。

それに、愛ちゃんを演じる蒼井優の明るい性格に癒され、最後にはプロポーズをするシーンもあり、ほんわかムードで良かった。山を愛する人たち、山岳救助隊のことは、小栗旬さん演じる「岳」で、大変な仕事だと感じて、「山を甘く見てはいけない、山を舐めるなよ」って、自分だけ一人で気楽に山登りしていると思ったら大間違いですから。
2014年劇場鑑賞作品・・・217 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

岳―ガク

ザ・ホスト 美しき侵略者 ★★.5

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『トワイライト』シリーズの原作者ステファニー・メイヤーのベストセラー小説を基にしたSFアクション。人間の意識と体を乗っ取る知的生命体ソウルに侵略され、人類が絶体絶命のピンチにひんした近未来が描かれる。日本でもヒットを記録した『TIME/タイム』などのアンドリュー・ニコルが監督を務め、ソウルに寄生されながら人間の魂も宿したヒロインの苦悩を、『つぐない』などのシアーシャ・ローナンが体現する。『ラブリーボーン』などのジェイク・アベル、『赤ずきん』などのマックス・アイアンズ、実力派ダイアン・クルーガーらが共演。
あらすじ:近未来、地球に知的生命体ソウルが襲来。彼らは人間に寄生して宿主の意識を奪い、一方逃げ延びた人類は反撃のタイミングを計りつつ潜伏していた。その中の一人であるメラニー(シアーシャ・ローナン)もソウルの餌食になってしまうが、消えるはずの意識が消えず一つの体に人類とソウルの二つの魂が宿ってしまう。

<感想>作者は「トワイライト」のステファニー・メイヤー。戦争も飢餓もない近未来の地球。人類の大半が地球外知的生命体“ソウル”に肉体と意識を乗っ取られた世界を舞台に、両方の魂を宿した少女の葛藤と、彼女がもたらす変革を描いている。
SF映画なんですが、舞台が地球のグランドキャニオンらしく、砂漠と化した地球とありますが、岩山の洞窟の中で生き残った人間が、太陽光をガラスの反射板で取りこんで、麦や野菜を作り暮らしているわけ。洞窟の地下水を飲み水にしてね。

主人公のメラニー役のシアーシャ・ローナンは、かなり大人びて綺麗だし、「ビザンチウム」でも綺麗でしたが、今回は、キスをするシーンが結構あるので、中々上手いといいうかラブシーンも素敵でした。大人の女に成長しました。

彼女が捕まってしまい、首から銀色の触手のような形態を挿入され“ソウル”に寄生されてしまう。ですが、体内に残るメラニーの強い意識が、ワンダと名乗る寄生されたシアーシャが、表に出て来るのですが、心の中でのメラニーとの葛藤シーンがあまり巧くないように見えた。時々、メラニーがいなくなるというか、存在しないようなのが変なのだ。一つの体にメラニーと“ソウル”のワンダと、二つの魂が宿ってしまう。

体内に残るメラニーの強い意識に動かされたワンダが、監視者シーカー(ダイアン・クルーガー)の目を盗んで、監禁されていた部屋から脱出。それから車を奪って砂漠へと逃走するも、事故で車が大破してしまう。それから砂漠をトボトボと歩き、水がないので脱水状態で気を失う。

救ってくれたのが、洞窟で生活をする人間の反逆者たち。メラニーの叔父であるウィリアム・ハートが主導者のような感じがした。そこには、メラニーの元恋人のマックス・アイアンズと弟のジェイミーもいた。それに、ワンダの方に好意を持つイアン役のキェーク・エーベルが。

とにかく地球外知的生命体に乗っ取られた人間の方が多いという設定で、銀色の触手のような形態で宇宙を彷徨い、他の生物に寄生。性質は理性的で、秩序ある世界の構築を望む平和主義者である。ですが、女監視者シーカーはワンダの意識内の葛藤を察知し、執拗に追跡する。
ソウルの男たちや女性たちは白いスーツ姿で働き、女性としては、監視者シーカーのダイアン・クルーガーが白いパンツスーツ。他の男たちは、人間を捉えては“ソウル”を注入して意識を乗っ取るというやり方なのだが、彼女は、拳銃で人間を殺しまたは、味方の男たちも拳銃で撃ち殺すのだ。かなり性格が独裁者的で支配力がある。こういう馬鹿な女は、最後に首から“ソウル”を抜かれて元の人間に戻るという仕掛けがある。

銀色の未来カーにヘリコプター、バイクと、ソウル集団の緊迫した追跡サスペンスが展開する。といっても人類対エイリアンに乗っ取られた人間との戦いは、それほどに残酷なシーンはありません。

どちらかというと、身体は一つで、二つの魂を持つシアーシャが、二人の男と恋仲になりラブシーンの展開の方がメーンですね。ややっこしいですが、一つのボディの中に二人の人格がありまして、頭の中で二人が会話するシーンが多いです。それが、どっちの人格がしゃべっているのか混乱してしまう。

つまりは、映画の中では観客を混乱させる原因を作ってしまったわけ。ただし、唯一判りやすいのは、“ソウル”に身体を乗っ取られた人間の目の瞳孔が、シルバーに光り輝く事ですね。「光る眼」ほど怖くありませんから。
洞窟の畑で麦を刈り取る作業中に、弟が足に鎌で切ってケガをしてしまう。傷口からバイ菌が入り、高熱にウナされる弟。助けるには、“ソウル”の病院へ潜入して、未来の治癒の薬を盗んでくること。メラニーが自分の手首を切り、額も切り病院へと、エイリアンの傷薬はスプレーのみ。それを盗んで急いで弟の元へと、直ぐにスプレーするとあっという間に傷口が綺麗になるって、嘘みたいですから。その時に、触手を入れる銀色のケースも盗んできます。

最後には、シアーシャが死ぬ覚悟で手術して、メラニーとワンダの二人の女性が誕生するということになるのには驚きですから。それに、手術で分離した“ソウル”のワンダ役には、「ポンペイ」でヒロインを演じたエミリー・ブラウニングが扮しているそうです。どっちかというと、二人とも髪形や服装を変えてシアーシャが演じればよかったのにね。
2014年劇場鑑賞作品・・・218 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ニード・フォー・スピード ★★★★

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世界的な人気レーシングカーゲームを原案にしたカーアクション。天才レーサーが自分を裏切り陥れたかつての相棒に復讐(ふくしゅう)すべく、危険な公道レースに挑む。『ネイビーシールズ』などのスコット・ウォーが監督を務め、フォード・マスタングやランボルギーニなど世界のスーパーカーが多数登場し迫力のレースシーンが展開。テレビドラマ「ブレイキング・バッド」シリーズなどのアーロン・ポールを筆頭に、『17歳の肖像』などのドミニク・クーパーらが共演する。
<感想>日本では1994年に発売されたゲームソフトで、日本でのタイトルは「オーバードライブン」が原作。「ワイルドスピード」が面白かったので、自分ではレーシングカーや、高級外車なんて手が届かないので映画の中で楽しむのにはゴキゲンな映画でした。

でも、気になったのは公道でのカーレースですね。改造したフォード・マスタングのシルバーに青色の線が入ってカッコいい。それに時速370キロの体感が出来るとあっては、ハラハラもんです。何しろ公道ですから普通車も走っていることで、そこをするするとヌッて、驚いた車が急ブレーキ踏んで横転やらスピンして、出動したパトカーも横転して気の毒ですよ。それでも、結末に、「絶対に真似はしないで下さい」の断り書きがあったので、まぁ、素人にはあのドライビング・テクニックは無理だけどね。

それでも、次々と登場する超一流メーカーのランボルギーニ、マクラーレン、ブガッティといったドリームカーが飛び出してきます。交通法を度外視したスーパーカー同士のレースとクラッシュには、ドキドキさせられます。中でも、冒頭のレースでトビーが乗り込み、ポルシェやBMWを蹴散らして見せる、グラン・トリノ1969、紺色の車体が一番好きですね。
最後にお断りのメッセージが、全部スタントマンが運転し、監督も親子二代でスタントマンとして活躍したというスコット・ウォー監督。CGなしでの撮影に挑んでいるのだ。

物語は、性悪ドライバーのディーノが持ち込んできた、マスタングを改造して、金持ちに売りつけようというもの。破産寸前のトビーは仕方なく引き受ける。
改造マスタングは無事に感性し、高額で売買されたのだが、ディーノが「レースに買ったら、俺の分まで報酬を支払う」というのだ。

うまい話にはキオツケロってね、金持ちボンボンのディーノが、自分の車スェーデン生まれの超絶スピードカー、ケーニグセグ・アゲーラRを3台提供し、公道を最高速度440キロも出せると言われる車で勝負する。これには、ディーノが悪知恵を計画していて、金欲しさに乗ったトビーが悪いのだ。

赤、黄色、白と3台のケーニグセグ・アゲーラRが飛び出す。赤にはディーノが乗り、黄色には弟分のピートが乗り、白にはトビーが乗った。公道レースの危険は承知のとおり。先頭をきるトビーの後ろにピートの黄色が見えた。一番後ろのディーノが黄色い車にぶつける。スピンして崖下に堕ちていくピートの車。酷いのがそれからである。3台で競争していたのに、ぶつけた張本人ディーノがシラバックれて自分はそこにはいなかった。2台でレースをしていたと、罪をトビーになすりつけ、トビーは刑務所へ。

仮出所したトビーは、ディーノが出る公道レースでの復讐を誓うのだが、今いる場所がNY、から大陸横断して西海岸のレース開催地まで。トビーとカー・ブローカーの仲介人ジュリア(イモージェン・ブーツ)と改造車のマスタングで飛ばす飛ばす。
ところが、途中でディーノの仲間の邪魔が入ったり、警察のヘリやパトカーに追われて、50メートルジャンプや、ヘリで釣り上げてもらったり、挙句にはトラックに追突されて大破してしまう。どうする、ここまで来て、レースは明日なのに。セスナや軍隊のヘリまで操縦する黒人俳優さんは、誰なの?・・・上空からカーナビしてくれるので助かるけど。

それが、上手い具合になんとかなるんですよ。トビーの元カノがピートの姉で、ディーノの恋人に転向した。だが、ディーノの弟への仕打ちを知り、あの時ディーノが乗っていた赤いケーニグセグ・アゲーラRを探し当てる。その車があれば、トビーの汚名も晴れて、レースに勝てば賞金も入りピートへのはなむけにもなる。
というわけで、これは期待してなかったのに、驚くほどのかっこいい車とスピード体感に、ドラマ性もあり面白かったです。とにかくトビー役のアーロン・ポールは、キューピー顔であまりパットしないが、ゴール付近でクラッシュしたランボルギーに乗っているディーノを助ける場面に、男気がいいのに感心しました。
2014年劇場鑑賞作品・・・219  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

300 〜帝国の進撃〜★★★.5

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フランク・ミラーのグラフィックノベルを実写化したヒットアクション『300 <スリーハンドレッド>』の続編。前作で命を散らしたスパルタのレオニダス王に代わってペルシャ軍に挑む、アテナイのテミストクレス将軍と彼が率いる兵士たちの激闘を活写する。メガホンを取るのは、『賢く生きる恋のレシピ』のノーム・ムーロ。『L.A. ギャング ストーリー』などのサリヴァン・ステイプルトン、『パーフェクト・センス』などのエヴァ・グリーンらが出演。壮絶な肉弾戦はもちろん、戦う男たちの絆をめぐるドラマにも注目。

<感想>わずか300人のスパルタ軍VS100万人のペルシャ帝国の死闘を描き、07年に大ヒットした歴史アクション巨編「300 <スリーハンドレッド>」。かなりハードで見ごたえがあり、そのビジュアルの良さ、アクションシーンの格好良さに痺れ、映像もモノクロに真っ赤な血の色が印象的でした。

スパルタの兵士たちの台詞がこれでもかというくらいに恰好良かった。やたらもったいぶったスローモーション映像や、いかにも劇画チックなセリフ、「これが、スパルタだぁ〜」的な、一時期パロディのネタにされまくっていたけれど、逆に言えばそれだけ多くの人々に愛されたことの証明でもあるのだろう。当時としては完全にやられたと思いましたね。

物語は、スパルタのレオニダス王が精鋭300人で100万人のペルシア軍と戦っていたころ、ペルシア帝国はギリシアにさらなる侵攻を開始する。彼の遺志を継ぐようにしてアテナイのテミストクレス将軍(サリヴァン・ステイプルトン)は、パン屋、陶工、詩人といった一般市民から成るギリシャ連合軍を率いて、その3倍の数のペルシャ帝国に立ち向かっていく。
ギリシアへの増悪を燃やすペルシア海軍の女傑アルテミシアが、勇敢で知的なテミストクレス将軍を味方に付けようと直接交渉してくる。だが、交渉は決裂し、ギリシャの壊滅を目論むペルシア帝国軍と、援軍を持つギリシア連合軍は、荒れ狂う大海原で最終決戦を迎える。

本作はあれから7年ぶりに登場した続編。監督はCM界で活躍してきたノーム・ムーロを抜擢し、「海」がメインの戦場となるほど、新機軸もいろいろと容易されているようだ。正直、1作目を超えるビジュアル的な衝撃はないのだけれど、前作の監督だったザック・スナイダーがハードルを上げ過ぎてしまった面もあるので、仕方がないと言ってしまえばそうだろう。
やはり本作の見どころは、前作同様に戦士たちの肉体美でしょう。キャストは食事と激しい運動で筋トレに努力して見事なプロポーションですから。二刀流の立ち回りで見せるエヴァ・グリーンの迫真の演技もトレーニングの賜物ですね。それに、前作と大きく違うのは、戦いの舞台が荒涼とした大地からエーゲ海に変わっていること。兵力では敵に勝ち目がないギリシア軍が、洋上でどう戦うのか?、その知恵と戦術に注目。
両国の違いを衣装や、美術で表現し、すべてが質素なギリシアに対して、ペルシアは艦隊も不気味な重油を積んだ鋼鉄のタンカーであり、背中に重油のタンクを背負い、海を泳いでギリシア軍の船へと迫ってくる。重油を積んだタンカーからは、ドクドクとホースで重油が海へ流され、それに火を放つと瞬く間に炎の海と化し、船は燃えて沈み兵士たちも海へ飛び込むも炎に包まれることになる。これによりギリシア軍は壊滅的な打撃を受ける。

それでも、前作でのあの300人のスパルタ軍の、勇敢なる戦いぶりには当然及ばないのだ。前作でのスパルタ兵の筋肉美とパンツにあの赤いマントの色が、スクリーンに映えて印象的でした。それなのに、今回は何故か青のマントですからね。しかし、アクションシーンに関しては完全に前作を上回ってると思います。CGのクオリティも凄いし、若干やり過ぎのようで、最後の方はアニメのように見えました。グロさも前作よりエグいですし、でもストーリー自体は前作を超えていない。

それよりもキャストが、前作のレオニダスのジェラルド・バトラーに比べると、今回のサリヴァン・ステイプルトンは、カリスマ性も異常性も足りない気がする。何故かというと、最強のスパルタ兵という設定が良かったので、それにキャストが乗り移っていた気がした。

その代りに本作では、ペルシャ王クセルクセスの過去が明らかになる。何故神王になり、ギリシア征服に燃えるのかが判明する。王子時代は人間らしい一面を持っていたが、父王がマラトンの戦いで勇者テミストクレスの弓で重症を負わせられ、侵攻を退けた。そこへ、ギリシアへの私的な復讐に燃えるアルテミシアが一計を案じて、王の息の根を止めて王子のクセルクセスを神王に祭り上げ、より強大な軍を作り上げた。

ですが、今回は飛んでもない秘密兵器がある。その兵器とはフランス人女優のエヴァ・グリーンである。彼女が演じるキャラは、少女時代にギリシャ人に集団レイプされ奴隷となるも、復讐の鬼と化した残忍な女戦士アルテミシアに生まれ変わる。物語のポジション的には悪役ですが、あまりにも鬼気迫るキレっぷりなので、途中からはずっと彼女のことを応援してしまったくらいだ。荒れ狂う嵐の中、アルテミシアを味方にしようと誘惑をする場面、船上でのフルヌードになってのSEXシーンとかもあって、これがまたいろんな意味ですごすぎ。色っぽいというよりは、魔女のような狂った女にしか見えませんでした。

戦いの舞台は荒涼とした大地から、生き物のように激しくうねりを上げる大海。本作が描くのは、ペルシャ戦争最大のクライマックスともいわれる、“サミラス海戦”である。勇者テミストクレス将軍が指揮をとるギリシャ連合軍と、凶悪な女戦士アルテミシア率いる、兵士3倍のペルシャ海軍が大激戦。
前作同様に鍛え抜かれた肉体美と、スケールの大きなド迫力のアクションシーン、パワーアップした最先端の映像でより立体的で見応えがありました。
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