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スノーピアサー ★★★★

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『母なる証明』などのポン・ジュノ監督が、フランスのコミック「LE TRANSPERCENEIGE」を原作に放つSF作。新たな氷河期が到来した地球を列車でさまよう数少ない人類の生き残りが、支配層と被支配層に分かれて車内で壮絶な戦いを繰り広げていく。『アベンジャーズ』などのクリス・エヴァンス、『JSA』などのソン・ガンホ、『フィクサー』などのティルダ・スウィントンなど、国際色あふれるキャスティングを敢行。彼らが見せる濃密なストーリー展開に加え、絶望の近未来を具現化した鮮烈なビジュアルにも目を奪われる。
あらすじ:地球温暖化を防ぐべく世界中で散布された薬品CW-7により、氷河期が引き起こされてしまった2031年の地球。生き残ったわずかな人類は1台の列車に乗り込み、深い雪に覆われた極寒の大地を行くあてもなく移動していた。車両前方で一部の富裕層が環境変化以前と変わらぬ優雅な暮らしを送る一方、後方に押し込められて奴隷のような扱いを受ける人々の怒りは爆発寸前に。そんな中、カーティス(クリス・エヴァンス)という男が立ち上がり、仲間と共に富裕層から列車を奪おうと反乱を起こす。

<感想>氷河期に突入した地球で、ただ1か所、人間が生き残る場所は、走り続ける列車だけ。そんな設定だけでショッキングな上、虐げられた最後尾に乗っている貧困層が決起し、富裕層が暮らす列車の前方へ向かって革命を起こす、超スリリングな物語で一瞬たりとも息つくヒマがありません。
ドラム缶を繋ぎ合わせて猛突進し、兵士たちを撃破したり、監獄セクションではセキュリティの達人のナムグン、ソン・ガンホを解放。クロノールというドラッグ中毒で、そのクロノールを固めて爆弾にするアイディアも最高。

扉を開けるたびに現れる兵士たち、そして黒ずくめの殺人マシン軍団。手には斧を持ち、拳銃には弾が入ってない。つまり拳銃を乱射するとガラス窓や壁に穴が開き、そこから冷気が入って来て大事になるからなのだ。
自分たちが食料として配布される黒いプロティンという食べ物。それはゴキブリを粉々にして混ぜ合わせたもの。さらには、窓のある明るい車両に子供たちの教室など、前に行くにつれだんだんと文化的になっていく。

前方車両の目を疑う風景や、それは植物園のような果物、野菜が栽培されている車両とか、魚がたくさん泳いでいる水族館みたいな車両とか、そこでは寿司職人がいて、にぎり寿司を食べさせてくれる。それに、サウナ風呂にシャワー室、バーや踊り放題のディスコクラブ、コカインや薬づけになっている富裕層の人たち。
扉を開けるたびに新たな危機が待っている。いわゆるステージクリアーものみたいな、観客は主人公たちが次の車両へのドアを開けるたびに緊張感が味わえる仕組みになっているのだ。かと思えば戦いの最中に年明けのカウントダウンが始まるってどういうこと。

要所、要所での血なまぐさいバトル、さらには濃密な人間ドラマと、あらゆる要素が絶妙にシンクロしている。
スノーピアサーを開発し、先頭車両で運転をコントロールしている、全車両を統括するウィルフォードのエド・ハリス。貫録十分で、何十年もの間地球を走り続ける列車の動力源は、原子力か?・・・先頭車両の床下に動力源があるのだが、そこには下層階級の小さい子供が働いていた。それにしても、雪崩や、雪の固まりが線路にあるのも平気で突破する列車って、線路の補修だってどうしているのだろう。

考えてみればこの列車は、戦いの場であると同時に、生活の場でもあり、そんな地上にあったすべてをぎゅっと凝縮した世界が、1台の列車内に渦巻いていることの空恐ろしさが、この緩急のリズムによってじりじりと浮かびあがってくるのだが、・・・。ラスト直前には、ある意味、生命の心理をついたとも言える、さらなる恐ろしい事実が明らかとなる。
原作がフランスのコミックということだが、残念なことに日本では未出版だそうで、救いのない悲壮感が漂う終わり方なのだが、実際には二人の生き延びた少年と少女が列車から降りて、雪山で白熊を見るという、希望が湧いてくるような終わり方になっている。

熱演や怪演を見せるのは、各国から集められた実力派キャストたち、貧乏人のリーダー格カーティスにクリス・エヴァンスが、反乱部隊の青年エドガー役には「リトル・ダンサー」の少年だったジェイミー・ベルも良かった。

そして、精神的リーダーにはジョン・ハートが、それに列車を知り尽くしている男にソン・ガンホとその娘には「グエムル〜」でも娘役をしたコ・アソンが演じて、キャラが強烈で申し分ない。それに、もっともインパクトがあったのは、ウィルフォードの右腕として活躍する、メイソンを演じたティルダ・スウィントン。美女のティルダがまさかこんな姿で登場するとは、入歯を外した時には口あんぐりでした。彼女の演技の素晴らしさには恐れ入りました。
2014年劇場鑑賞作品・・・34 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング


オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ ★★★

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『ブロークン・フラワーズ』などのジム・ジャームッシュが、『リミッツ・オブ・コントロール』からおよそ4年ぶりに放つ監督作。何世紀も恋人同士として生きてきた吸血鬼の男女が、突如として現われた女の妹と対峙(たいじ)したことで生じる関係の変化を追い掛けていく。『マイティ・ソー』などのトム・ヒドルストン、ティルダ・スウィントンやミア・ワシコウスカと、実力派俳優が結集。彼らの妙演はもとより、ジャームッシュ監督ならではのユーモラスでシニカルな世界観も堪能できる。
あらすじ:吸血鬼でありながら、どんな弦楽器でも弾くことができるミュージシャンとして活動中のアダム(トム・ヒドルストン)。アンダーグラウンドな音楽シーンに身を置いて人間たちと共存しているが、何かと自己破壊的な言動を取る彼らに対して複雑な思いを抱いていた。そんな中、何世紀も恋人として愛し合ってきた同じ吸血鬼のイヴ(ティルダ・スウィントン)が、アダムが暮らすデトロイトへとやって来る。久々の再会を楽しもうとする二人だが、イヴの妹エヴァ(ミア・ワシコウスカ)が現われる。

<感想>永遠の生きるヴァンパイア、アダムとイヴの愛の物語が詩的に、かつユーモアと共に綴られるのだが、その背景となるのは瀕死の街デトロイトと、時間が止まったかのような街タンジール。いかにも死の匂いがただよってきそうだし、実際に濃厚に匂うような感じもする。と同時に子供のような生命力も感じさせる。
ヴァンパイアというものはそもそも英国文学から生まれたわけだし、吸血鬼のカップルをこんなにもお洒落に描いてしまうなんて、誰にもできる芸当ではないと思う。
いつも皮の手袋をしている、この何ともユニークなヴァンパイア映画のキャスティングが、アダムにトム・ヒルドンが、妻のイヴにはティルダ・スウィントンに、イヴの年老いた元夫のマーロウにジョン・ハートが扮して、この二人は「スノーピアサー」にも出演していた。それに、イヴの妹エヴァに、若きミア・ワシコウスカが扮して、我がまま放題に人間の血を狩っていく。

まぁ、イヴを演じるティルダ・スウィントンは、もはやほとんど普通の人間を演じない人になってしまっているので、彼女の吸血鬼には、奇妙な安定感さえ感じさせる。思えば、実に不思議で魅力的な女優である。

「マイティ・ソー/ダークワールド」でのロキ様こと、トム・ヒドルストンの活躍は大したものでした。今作ではアダムというヴァンパイアで、60年代のロック・ミュージシャン気質を持った男で、ロマンティックで凄くインテリジェントで洗練され、そして非常にミステリアスな男を演じている。
驚くことに、アダムの部屋はオープンリールのテープレコーダー、アナログのミキシング・デスクなど、アナログ機材で溢れていて、おまけに壁にはシェイクスピアからイギー・ポップまで多くの芸術家の肖像画がかかっている。これはみなジャームッシュの好きなもんだったりして?・・。
アダムとイヴの関係は、陰と陽のようで、イヴはアダムを闇の中から救ってくれるような光のような存在。2人はひとつで一対であるような関係にある。全く異なる生き物の二人だからこそ愛し合っている、つまりはヴァンパイアのラブストーリーですね。

それに“ゾンビ”と呼ばれる人間たち、アダムが抱えている悲劇とはゾンビ特有にある存在の無駄ということ。何もせずに、時間を無駄に使い、音楽を作ったり詩を書いたりできるのに、血液をめぐって争ったりする。それをアダムは悲しく思っている。
しかし、彼らは何世紀にも渡って生き続けてきて、たどり着いた現代に、決して満足はしていない様子。人間から吸血するのではなく、人間との共存をはかり、病院へ医者の変装をして血液を金で購入しているのだ。
しかし、イヴの妹がLAからやって来て、自分たちの大事な血液をむさぼるように飲んでしまう。それに、妹のエヴァが、アダムの友達イワンの首に食いついて吸血をしてしまう。その死体の後始末も二人でやらなければならないのだ。
妹をLAに返して、自分たちはアメリカを離れてモロッコのタンジールにやってくる。
だが、そこには、吸血鬼として生き延びていた中世の異端の作家クリストファー・マーロウが、汚染された人間の血を摂取して死の床についている姿があった。

愚かな人間による環境破壊や市場主義に絶望して、アダムとイヴは空腹を感じながら、「体に力が入らなくなった」とついにそのまま滅びていく道を選ぼうとするが、目の前に若い恋人カップルがキスをしているのを見て、二人がその人間に飛び付いたように見えたのだが、・・・もう人間じゃなく、純正カリスマみたいで、かくてヴァンパイアは、映画という虚構の世界の中で、永遠に存在し続けるのであるという。
ヒップな吸血鬼カップルというのは、なかなか新鮮な感じで面白いし、かっこいいと思わせる画も多いしで、廃墟のような夜のデトロイト郊外をドライブするシーンとかも素敵ですよ。
2014年劇場鑑賞作品・・・35 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ニシノユキヒコの恋と冒険 ★★

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真実の愛を求め恋愛遍歴を重ねる男ニシノユキヒコの生きざまを描く、芥川賞作家・川上弘美の連作短編集を映画化したラブストーリー。美男で仕事も順調、女性の扱いもうまい究極のモテ男だが、必ず相手から別れを告げられる主人公を竹野内豊が切なく演じる。メガホンを取るのは、『人のセックスを笑うな』が好評だった井口奈己。ニシノを取り巻く女性たちには尾野真千子、成海璃子、木村文乃、麻生久美子、阿川佐和子ほか豪華女優陣が出演している。

<感想>抜群のルックスと形容しがたい魅力を併せ持ったモテ男、ニシノユキヒコの女性遍歴を綴った恋愛映画だということで、その主人公に竹野内豊さんが演じており、大ファンでもないがこの俳優さんの声がたまらなく好きです。こんな声で口説かれたらって、思い描いてしまいます。
この主人公のニシノユキヒコは、とにかく女性に対して優しいが見返りや快楽は求めない。近づいてくる女性には無私の精神で優しく接し、後に去りゆく彼女に辛い想いをさせるような執着は絶対に見せない男として描かれています。

しかしですよ、この男の行動だけ見ていると、その本質はまったく理解できません。つまり、彼は空っぽなんですよ。ただ女の子たちに奉仕しているだけ。これって、体の良い言い訳でしかない。男は女を誘惑して、肉体関係を持ち飽きてしまい次の女に惚れる。でも別れを自分からは切りださない優柔不断な男でもある。
誰からも嫌悪感を持たれないルックスでありながら、それでいてそのことについては自意識が希薄なわけ。そういう意味では、竹野内豊さんがハマリ役ですね。
でもね、確かにこの映画の主人公の役にぴったりとハマっているんですが、でも何か物足りなさを感じてしまった。

冒頭のシーンで、人妻と関係を持ち、一緒に付いてきた女の子、ミナミが高校生になった時に目の前に急に風が吹いてきて、幽霊として現れるのがニシノユキヒコなんです。
その前に、松葉つえをついた女性が彼を見つけ、手を上げて名前を呼び、気が付いて車の往来が凄いのに、脇目も振らずに通りの向かいにいる女性まっしぐらに、トラックに撥ねられて死んでしまうわけ。そして幽霊となって、何故だかミナミちゃんのところへ姿を現すんですね。

それから、二人は葬儀会場のニシノユキヒコの実家、豪邸へと行くと、そこで喪服を着た女性阿川佐和子と出会うわけ。その中年のおばさんから、彼の女性遍歴をあれこれと回想劇で聞かされて、映画はその女性遍歴を映し出していきます。その葬儀会場の庭で楽団が演奏しているのですが、とにかく耳障りで下手な演奏聞かせるなと、ニシノユキヒコが素敵なプレイボーイだったのに、下手な楽隊の演奏で興ざめしてしまいました。

回想劇の物語は、一応彼は会社務めしていて、その会社の上司である尾野真千子に優しくして恋愛関係になり、そこへ前に付きあっていた女性の本田翼が、別れたのにしつこくまたもや纏わりついて、元のさやに戻りたいらしく、温泉へ2人で行くんですよ。このシーンはイライラしてハッキリと断ればいいのに、と思ってしまうのに、のらりくらりと彼女が諦めるまで自分からは断りません。

それに、尾野真千子との関係も、社内で昼休みにいちゃいちゃするのはどうか思います。それに、お泊りしないと判ると急に「僕、寂しいな、結婚しようよ」なんて甘えて、どうみても結婚しても浮気はするなぁ、という感じが見え見えでした。こんな男は、結婚には向かない、遊び上手で適当に関係持って、後はポイと別れる。
マンションの隣の部屋のレズらしき成海璃子と木村文乃。始めは成海璃子が猫を探しにやってきて、そのままいつもズルズルといついてしまう。だから、成海璃子が大好きな木村文乃は、ユキヒコにヤキモチを焼き彼女を盗られてしまうんじゃないかと、ユキヒコに対して敵対視している。

でも、成海璃子が酒を飲み過ぎて連れて帰ると、その時に何故か二人は男女の関係になってしまう。これは不思議なことで、木村文乃はレズじゃなかったのか、両党つかいなのか、なんてね。ただ、男にモテなかっただけなのか?・・・理解不能です。

そんな女性遍歴をあれこれ聞いている内に、焼き場へ行く時間が来て阿川佐和子叔母さんが行くというのです。ミナミちゃんは、学校さぼって来てたし、そこへ母親とばったり出くわし、この母娘は一緒に住んでいなくて、ミナミちゃんは父親と暮らしていたんですね。母親は夫と別れ娘を残して、再婚先の男の所へいったようです。
死んだ人の悪口って、あまり言いたくないし、楽しい思い出ばかり甦って来て捨てられてもいい人だったって思いたいじゃない。そういうもんですよ。
原作は読んでいないんですが、お姉さんとのことが省かれているそうで、ユキヒコがどうしてそういう男になったかという鍵がその編にあるそうです。
2014年劇場鑑賞作品・・・36 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

南極物語 ★★★★

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空前の大ヒットを記録した1983年公開の名作ドラマ「南極物語」を、「生きてこそ」・「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズなどの名プロデューサー、フランク・マーシャル監督がリメイクした感動作。
断腸の思いで犬たちと決別しなければならない主人公に『ワイルド・スピード』シリーズの若手俳優ポール・ウォーカーがふんし、極寒の大地で犬たちとの熱い共演を果たしている。仲間と助け合い、過酷な運命にたくましく立ち向かっていく名犬たちの勇姿は必見です。
彼らを置き去りにせざるを得なかった人々の苦悩、もう一度逢いたい、もう一度聞きたいあの声、デズニーがおくる感動の”8匹の犬たち”との新たな感動の物語です。
ストーリー>全米科学財団・南極基地で働くジェリー・シェパード(ポール・ウォーカー)は、超一流の探検ガイドとして知られている。数々の冒険を成功してきた彼の活躍を可能にしたのは、“犬ぞりチーム”の存在だ。

8匹の犬たちとジェリーは強い信頼関係で結ばれていた。南極が雪と氷に覆われる厳しい冬が訪れる。犬たちとの探検も、しばしの休息をむかえるはずだった。
ある日のこと、新しい客であるデイビス・マクラーレン博士(ブルース・グリーンウッド)の依頼により、ジェリーと犬たちは今シーズン最後の探検に出かけることになった。博士の目的は隕石採取で、南極でも最大の難所であるメルボルン山への旅だった。その道行きは困難の連続で、一行は何度も危機的状況に陥るが、ジェリーと犬たちの素晴らしいチームワークで乗り越えていく。
そんな中、脅威的な嵐が急接近しているため、直ちに基地へ戻り、速やかに南極を離れるようにとの指示の無線が届く。急いで基地に向かうジェリー達に予期せぬアクシデントが襲った。誤って足を滑らせた博士が、クレパスに落下し、足を骨折、意識を失ってしまったのだ。重症を負った博士を抱え、やっとの思いで基ポールと犬ぞり地に戻ったジェリーと犬たち。彼らは体力を消耗し、疲れ果てていた。
しかし、今もなお嵐はその勢力を増し続けていた。ジェリーを含めたスタッフは直ちに基地から前面退去せねばならない状況だった。自らも重い凍傷にかかりながらも、犬たちとともに避難することを訴えるジェリー、しかし、小型飛行機では、彼らを乗せることはできない・・・。

すぐに別のチームが犬たち迎えに来る、取り残されるのは、たったの半日だけの予定だと説得され、ジェリーは後ろ髪を引かれる思いで南極を後にした。「必ず戻る」と約束を残て・・・。
凍傷にかかり、丸一日意識を失っていたジェリーが目を覚ましたとき、彼に恐ろしい事実が知らされる。嵐の猛威は益々荒れ狂い、そのために基地は放棄され、犬たちだけが置き去りにされたままだったのだ。
ジェリーの懇願もむなしく、基地から人間を避難させるだけでも精一杯で、犬のために引き返す余裕などなかった。
犬たちは、基地につながれたまま、飛行機が飛び立って行った方角をじっと眺めながら、ジェリーの帰りを待っていた。だが、いくら待ってもあの優しい笑顔は戻ってこない。
1週間がたったある日、ついに犬たちは立ち上がった。首輪と鎖との飽くなき格闘の末、体の自由を手に入れた犬たちは、次々と真冬の南極の大地を歩き始める。しかし、その行く手には想像を絶する過酷な大自然との戦いが待っていた!。

<感想>先日事故で亡くなったポール・ウォーカー主演の映画。この作品はご存知のように、83年製作の日本映画のハリウッド・リメイクです。“あの高倉健の苦渋をハリウッドで出せるのか?、果たして誰があの役をするの?、・・・意外なことにオリジナル版を覚えている日本人が見ても、十二分に楽しめました。
というのもこれ、日本版からインスピレーションを得て、いかにもディズニーっぽい愛と感動に、ちょっと笑いまでコミカルに混ぜて、作り上げた、完全なるフィクション、いいえ、ファンタジーなのですね。
日本版にあったような、リアルな痛みは有りませんが、犬たちのいたいけな姿のおかげで、涙も流れることうけあいです。日本版の、南極の昭和基地で越冬する観測隊員達とは違い、本作の主人公は、超一流の南極ガイドのアメリカ人青年です。設定からして微妙にいまふうですよね。

そして15匹の樺太犬に替わり、8匹のハスキーら、犬ゾリの犬がサバイバルを始める事になります。過酷な自然の中で生き残った犬たち、ご主人様にどんなに会いたかったことでしょうか。日本版をみて流した涙と、アメリカ版で観て流した涙は同じものです。
あの胸を引き裂かれるような思いは、なかったですが、やはりディズニー!!悲しさの中にも明るさを忘れていなかった、ということでしょうか。
あの独特の重い暗さを出す雰囲気は、日本ならではのものですものね。犬たちが消えていくシーンは、本当に辛かった。

映画を観て涙を流すことは良くありますが、一匹目が死ぬ時から涙があふれて止まりませんでした。だって死に方が違いますね。海の中に沈んでしまったりという場面はありませんが、これはこれで、かなり泣けます。
ハリウッド版の犬の死に方、ぜひ観賞してください。思いっ切り泣けますよ。迫力があります、クラバスに堕ちそうになるシーンなんか、・・・氷が割れて海に沈みそうになるところを、犬達が必死に助けるシーンです!!。犬の息づかいまで、耳に残って、途中、びっくりするシーンがありますので覚悟しておいてください。本当に良い映画です、犬を飼ってる人は必ず泣けますね。きっと、犬を嫌いな人も犬が好きになることでしょう。
比べる必要はないと思いますが、どちらも人間と犬たちの間に、繋がれた見えない糸は切っても切れない何かがあるということでしょうか。愛犬家ですので。
2014年DVD鑑賞作品・・・6  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ボビーZ ★★★.5

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この男リアルか?・・・フェイクか?__どん底から這い上がる手段は、たった一つ!
カリフォルニア伝説の男になること!
元海兵隊員のティムは、トラブルだらけの人生で、現在長期服役中の身。塀の中でも問題ばかりを引き起こす彼に、ある麻薬捜査の囮になる話を持ちかける。
それは、かつてカリフォルニアで伝説として語られている男“ボビーZ”に成りすまし、事件解決に協力すること。成功すれば刑は帳消し。
協力することで晴れて“ボビーZ”として自由の身になった彼に、次々に罠と謎が襲いかかる。麻薬王、ギャング、捜査官、そして遂には、本物の“ボビーZ”に追われるハメになり…。
『ワイルド・スピード』『イントゥ・ザ・ブルー』などで全米人気沸騰のクール・ガイ、ポール・ウォーカー主演作。人生大逆転のチャンスを手にした男の奮闘、をアクション満載、マリン・スポーツの醍醐味ふんだんで描く。監督は『2days/トゥー・デイズ』『15ミニッツ』の才人ジョン・ハーツフェルド。
<感想>この映画も若き日のポールのヒット作品です。主人公のカーニーを演じたポール・ウォーカーは、まさに“伝説の男”ボビー・Zを地で行くような素顔の持ち主だ(もちろん、麻薬王ということは除いてだが)。
なによりまず、生まれも育ちも生粋のカリフォルニアっ子であること。さらに、とびきりのクール・ガイであること。そして、出演作が次々のヒット作品となって当然のように億万長者であること。おまけにサーフィンの達人である。
ちなみにオフの日々は、小さな娘、愛犬とともにこよなく愛するマリブの海に抱かれるという理想的な生活を送っている。これって、まさしくポール・ウォーカー=ボビー・Z!だよ。ハリウッド・リメイクの「南極物語」(06)、それに「父親たちの星条旗」(06)、と話題作に連続出演し、今やアメリカ映画を背負って立つイケメン俳優だ。

今回、カーニー役を演じることになって彼が戸惑ったのは、「ボビー・Zに瓜二つのこの主人公が、こともあろうに水もマリン・スポーツも嫌いなのにサーファーのふりをしなければならないという設定には、困惑気味のポールなのだ。
なにしろ、サスペンス・アクション「イントゥ・ザ・ブルー」の主役を張ったほどの“海の申し子”が実は水嫌いのサーファー男に化けるんだから、もうそれだけでも可笑しい。それでも、見事に“偽のボビー・Z”を演じ切ったウォーカーにあっぱれを進呈したいね。
99%オール・ロケ、メキシコのティファナとカリフォルニア州ラグナ・ビーチ周辺で撮影。物語のカーニーは、正当防衛とはいえ、獄中でギャングのリーダーまで殺してしまった。有罪判決を3度も受けた今、このまま一生ムショ暮らしか、ギャングの報復を受けて監獄の露となるかの瀬戸際スレスレ、・・・そんなドツボな人生を送る彼の前に突然現れたのが、非情なDEA(麻薬取締局)の捜査官クルーズ、ローレンス・フィッシュバーンだ。

彼の名前を全世界的に高めたのは、「マトリックス」(99)シリーズ、そして「アサルト13要塞警察」(05)などに出演している実力俳優だ。
「こちらの条件をクリアすれば、これまでの罪を帳消しにし、自由にして、再起のチャンスをやる」というおいしい話だ。やっと運が向いてきたのかと喜んだのはいいけれど、美味しそうに見えて、マジヤバい話。
しかし、彼には選択肢はなかったのだ。どうしてかと言うと、クルーズの相棒がメキシコ北部随一の麻薬ディーラー、ドン・ワテロ(ヨアキム・デ・アルメイダ)に捕らえられているという。ワテロは、伝説的な麻薬ディーラーでサーボビーフィンの達人であるボビー・Z(ジー)との取引の仲介をしてくれれば、相棒を解放するというのだ。

ところが、ボビー・Zは、数年前に資産を右腕のモンク(ジョシュ・スチュワート)に預けたまま行方をくらましていたが、その後の調べで、すでにタイで死亡しており、それが知れたら相棒の命がやばいとクルーズは打ち明けるのです。
幸いにワテロは、奴、ボビー・Zの顔を良く知らないという、そこで、顔だけはソックリなカーニーに対して、人質解放になるまでボビーになりすますことができたら自由のみを約束するという。もちろん、バレたら一巻の終わりだ。
カーニーはボビー・Zになりすますために、短期集中訓練を受けるが、“見た目”だけではバッチシ!・・・でも不安だ。
信じられないのが、死んでたと思っていた本物のボビー・Zことジェイソン・ルイスがラストで現れるんです。似てないよ、全然、まったくもって、どうせならポール・ウォーカーが二役演じればよかったと思う。断然ポール・ウォーカーのほうがカッコイイ!!
案の定、砂漠の取引現場では作戦失敗、人質となっていた捜査官は銃撃戦に巻き込まれて死亡する最悪の展開だ。

ところが、カーニーはどさくさにまぎれて砂漠を逃れ、ワテロの手下に拾われてボビーの屋敷に連れて行かれ、ワテロの不在の間、ボビー・ZとしてVIP待遇を受ける。
その牧場で、ボビー・Zの元恋人の美女エリザベス(オリヴィア・ワイルド)と、ボビーの息子という6歳の少年キットと知り合う。
彼女に、ドン・ワテロが命を狙っていると警告を受け、父親としての自覚?に目覚めたのか、自分とキットに危険が及んでいると知ったカーニーは、キットと共に屋敷を脱走して、金を預けているモンクを探しにサンディエゴへと向かう。
この場面では、馬を奪って飛び出した後、バイクに乗り換えるところは凄い。
それに、砂漠の岩山での戦いも面白い。砂漠に身を潜め、海兵隊時代に身につけた技を駆使して、追っ手をまき、国境を越えて、サンディエゴ入りする状況はますますヤバくなってくる。

血なまぐさいアクションの数々、銃で頭を吹き飛ばされ脳みそ飛び出るし、車に引きずられる男、銃弾が炸裂、爆弾ボン!次から次と降りかかる火の粉を振り払ってもスカット爽やかなポール・ウォーカー!ハラハラ、ドキドキ感がたまりません。バッタバッタと敵をやっつける様は、まるでスーパーマンだ。
格闘シーンは、空手とボクシングとキック・ボクシングなど総合格闘技の第一人者で、数々の格闘技選手権の選手やチャンプを指導してきたパット・ミレティッチを起用している。これには、ポールもやる気満々!。肘も膝も使い接近戦も多様、エキサイティングで興奮する。
おまけに、ミレティッチが敵方の一人として参加し、マヌケな演技で笑わせる。本当はもの凄く強いのに、あえて道化をかって出てくれたのだ。
そんな一対一の対決シーンや、爆破シーンなどのアクションは豊富だが、先に「ダイハード4.0」とか「ボーン・アルティメイタム」を見ているので、迫力負けはいなめない、残念、やっぱりB級路線かも__。
ラストは、唯一信じられそうなエリザベスとキットへの無垢なる愛と、人生再起動の情熱にようやく目覚めたカーニーは、激しい銃撃戦や一対一のファイトをくぐりぬけ、“本物の自分”と“新たな人生”を獲得するため闘いに挑んでいく、善が悪に打ち勝つというエンディングも中々いいと思う。
原作は、アウトロー小説の売れっ子ドン・ウィンズロウ、この物語は、実は無価値な人間だった伝説の男と、無価値だったのに真の伝説の人物に成長していった男の物語なんだという。
脇役陣に「マトリックス」シリーズで満天下をうならせたローレンス・フィッシュバーン他、“ヤバイ美女”エリザベスには、「カンバセーションズ」のオリヴィア・ワイルド。
さらに「スターダスト」のジェイソン・フレミング、「ロスト」、「キル・ビル」のマイケル・ボウェン、「バットマン」のトレイシー・ウォーターなどなど。もちろん重要な悪役のドン・ワテロ役のヨアキム・デ・アルメイダ、古風なカウボーイ、トラック野郎で雇われ殺し屋のジョンソンを演じたキース・キャラダインというビッグな存在も忘れてはいけない。
2014年DVD鑑賞作品・・・7 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

皇帝と公爵 ★★★

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『クリムト』などで知られる鬼才、故ラウル・ルイスが抱えていた生前最後の企画を実写化した歴史ドラマ。ナポレオンが率いるフランス軍とウェリントン将軍が指揮を執るイギリス・ポルトガル連合軍の激突と、その裏で繰り広げられるさまざまな人間模様を映し出す。ベテランのジョン・マルコヴィッチをはじめ、『さすらいの女神(ディーバ)たち』などのマチュー・アマルリック、フランスの名女優カトリーヌ・ドヌーヴら、きらびやかなキャスト陣が結集。彼らが繰り出す重厚で濃密なストーリーが、ドラマに一層の奥行きと深みを与えている。
あらすじ:1810年、ナポレオンの命令でポルトガル侵攻を目指すフランス軍だったが、集中砲火による制圧に失敗して撤退を余儀なくされる。さらに略奪や破壊を尽くしたために市民から物資補給の協力を得られず、マッセナ元帥(メルヴィル・プポー)は体制の立て直しを図りながら砂漠を敗走する。一方、ウェリントン将軍(ジョン・マルコヴィッチ)が率いるイギリス軍は、1年前からフランス軍撃退のために80キロメートルに及ぶ要塞「トレス線」を建設していた。

<感想>2011年に他界した欧州ではファンの多い鬼才、ラウル・ルイス最後の企画を、妻であるバレリア・サルミエントが監督をした歴史ドラマである。19世紀のナポレオン戦争を背景に、戦地となったポルトガルの民衆の姿を描いている。
皇帝ナポレオンにとっての最大の敵、それはロシアの冬将軍ではなかった。ナポレオンにとっては、海を越えた隣の大英帝国にあってことごとくナポレオンを破り続けたイギリスの将軍ウェリントン、つまり初代ウェリントン公爵こそ最大の宿敵だったのである。

この歴史ドラマは、皇帝ナポレオンの裏をかいて勝利し続けた大英帝国の知将ウェリントンが、ポルトガルの地に仕掛けたナポレオン包囲網ともいうべきウェリントン・ラインをめぐる歴史物語でもある。農民たちを招集して広大な広陵地帯に防護壁を作り、フランス軍を撤退させるべく作戦にでた。

夜明けに、大群を率いたフランス軍のマルボ男爵マチュー・アマルリックは、恐れをなして撤退し、陣地にカカシに軍服を着せていかにもこれから戦うとばかりにする作戦も面白い。立派な歴史絵巻であり、配慮も行き届いているが、何せ大味で、中盤はダレるしそれに画面は暗いときてるし、締まりのない映像につい居眠りをしてしまった。

戦争による惨禍を、考えられる限りすべてぶちこんだといった作品である。しかし、戦争映画というより、戦場でのフランス軍とイギリス軍の戦いの様子はあまり見せない。悲惨な目に遭うのは兵士ばかりではない。銃後の女たちであり子供であり、農民であるというメッセージはよく伝わってると感じた。
女性監督が、この大作を撮りあげたことだけでも凄いことだと思います。キャストの豪華さは半端じゃない。制作パウロ・ブロンコの力も大きいのだろうが、尊敬するルイスのため、彼の作品の常連だったメルヴィル・プポーを始め、マチュー・アマルリック、フランスの名女優カトリーヌ・ドヌーヴ、イザベル・ユベール、キアラ・マストロヤンニら豪華俳優陣が集結。

ミッシェル・ピコリが演じたスイス人の商人がいますが、現在でもそうであるように、スイスはヨーロッパであると同時にそうではない。大邸宅での豪華な晩餐に、この戦争に巻き込まれないのに不思議なきがした。監督は特別にシーンを追加したそうです。
物語は、攻め込んだフランス、迎え撃つイギリス、ポルトガル連合軍の両方の立場を描き分ける。特定の主人公がいない群集劇の難しさを、うまく処理したものである。

特に、戦争映画のなかでも、戦場に行った女性に目をむけたものは、圧倒的に少ないと思う。その意味で、行軍シーンがメインの本作で従軍しながら、婚活にいそしむ英国人の令嬢クラリッサの、キャラクターは印象的ですよね。彼女がさらっとカミングアウトする内容がまた衝撃です。
それに、夫を探して戦場へきたアイルランド人妻のモーリン、夫が戦死したことを聞き埋葬を願い、そこで歌を歌う気丈さ。彼女に惚れるフランス軍の兵隊もいる。しかし、モーリンのお腹には死んだ夫の子が宿っており、せっかくのプロポーズも断ってしまう。
もう一人、夫とはぐれた妻が、自分を探し回る彼をよそに、新しいフランス軍人を見つけてしまう。さらには、戦渦の街で一人傷ついた兵士を匿う気丈な未亡人フィリッパなどなど、それぞれが戦争という望みなどしなかった厄災のなかで、自らの生をまっとうさせる。その強さこそがこの映画の隠された魅力となっているのでしょう。
でも、この映画の中心にあるのは、戦争によって侵略された土地の悲劇と悲惨なんですよね。
2014年劇場鑑賞作品・・・37 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ほとりの朔子 ★★★

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『ヒミズ』などの二階堂ふみを主演に迎え、『歓待』などの深田晃司監督が放つ青春ドラマ。海辺の町を舞台に、受験に失敗したヒロインが過ごす2週間をみずみずしいタッチで描き出す。魅力的な叔母を鶴田真由が演じ、主人公が淡い恋心を抱く相手を『人狼ゲーム』などの太賀が好演。第35回ナント三大陸映画祭グランプリと若い審査員賞をW受賞した味わい深い物語が胸にしみる。
あらすじ:浪人生の朔子(二階堂ふみ)は叔母の海希江(鶴田真由)の提案で、旅に出た伯母(渡辺真起子)の家で2週間過ごすことに。彼女は海希江の幼なじみの兎吉(古舘寛治)やその娘の辰子(杉野希妃)、福島から避難してきたおいの孝史(太賀)らと出会う。のどかな場所で、朔子は仕事に集中する叔母をよそに短い夏休みを満喫していた。

<感想>「ヒミズ」「地獄でなぜ悪い」で悪女的な役を演じている二階堂ふみの、子供から大人への女として目覚めるというか、こうした抑えた演技を見ると、彼女の上手さがよくわかる。それに、叔母の海希江を演じた鶴田真由も、知的で余裕のある大人の女として、新たな魅力を引き出されていると思う。
等身大であろう18歳のヒロインを自然体で演じている、19歳の二階堂ふみがこれまた素晴らしく、水着姿や夏服の肌が露出している色っぽさとか、役どころ的にも非常にレアなのではと感じた。
海辺の田舎町を訪れた朔子の日記形式になっているので、最初はスローテンポがじれったく感じて面白くない。
だが、画面を包み込む柔らかな光がまた美しい。大学受験に失敗した朔子の宙ぶらりんな気持ちや、原発事故の福島から疎開して居場所のない孝司とのやり切れなさに共感した。大人の複雑な人間関係と恋愛模様が、分かってくるにつれてドラマが動き始めるところもいい。

喜劇かと思うような、古舘寛治が演じている兎吉が支配人をしているリゾートホテル。そこが、大震災や原発事故のあおりをくらって寂びれてしまい、ラブホテルになっているところ。そこへホテルのオーナーとおぼしき中年のハゲ男が、高校生や中学生を連れ込んで援交よろしく励む姿に、BGMの曲が毎回決まった曲をかけないと励みにならないというバカバカしさ。そこでバイトしている孝史が、中学生を連れ込んだ時に、「こんにちは赤ちゃん」の曲を流して笑いを取るシーン。
それに、叔母の鶴田真由演じている海希江が、東京の大学の教授と不倫をしており、夏休みということで自分が来ているところへ呼び出す。それが、鶴田真由が忙しくて相手にしないので、地元の女子大学生の兎吉の娘の辰子(杉野希妃)と関係を持つハプニングもある。
映画の中で、辰子はもしかして海希江が若き頃に、兎吉と関係を持ち妊娠をして産んだ子供のような口喧嘩のシーンがある。そうすると、大学教授と不倫している海希江は、母親として心穏やかではないだろう。

のどかで美しい風景の中の坂道を切り取り、朔子の人生が平坦でないことを推測させている。地味に静かに、結構なことが起きてゆく。親の田舎へ遊びに行って、身内の秘め事をのアレコレを知ってしまった8月後半のお盆過ぎの夏。そうした郷愁感や、孝史とカケオチごっこみたいな真似をして、大人たちに心配をかける場面もある。
そんな微妙な空気感の醸し方に加えて、田舎と田舎者のいいところと、嫌なところを絶妙な配分でサラッと、べったりと描いていく監督の、心地よくてザワつかせる手腕が見事です。
2014年劇場鑑賞作品・・・38 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

デュエリスト★★★.5

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カン・ドンウォン×ハ・ジウォンの初共演で贈る、宿敵同志の切ないラブストーリー。
朝鮮王朝時代に発生した、国中を揺るがす大規模な偽金事件。果敢な女刑事ナムスンは、偽金の出所を突き止めるべく、捜査を開始する。そんなある日、彼女は鬼の仮面をつけた男と出会い、仮面の下に見せた“悲しい目”に心を奪われてしまう。
しかし、彼は事件の黒幕が仕向けた刺客だった…。敵対する男女が、お互いに愛を感じつつも戦い合っていくさまを描いたイ・ミョンセ監督の意欲作。
いわゆるアクション時代劇にラブストーリーを絡めたものと想いがちだが、本作はそういった括りとは一線を画し、魅惑的映像の羅列で男女の繊細な心理や機微を描出する絢爛かつ壮大な映像詩に仕上がっている。
<物語>朝鮮王朝時代が舞台。当時、国の存亡を危うくするよう大規模な偽金が出回った。この偽金事件を捜査するため女刑事のナムスン(ハ・ジウォン)は、鬼の仮面の男(カン・ドンウォン)の見事な剣の舞に目を奪われる。
剣の舞が終わり、見物人たちの拍手を背に退場した男は、金の仏像の取引をしている男たちを斬りつけ、それを奪って去っていく。ナムスンは男を追って一戦を交えるが、逃げられてしまう。残されたのは仏像に隠されていた偽金用の鋳型と、割れた仮面から覗かせた悲しい瞳。後の情報で、その男は偽金作りの黒幕が差し向けた刺客であることがわかる。
そんな折、二人は再会し、男はナムスンに「驚いたときの君が好きだ」と告げる。一時の幸せな時間を過ごす二人。
黒幕であるソン軍務長官(ソン・ヨンチャン)は、心変わりをしつつあるその男に偽金事件は私利私欲のためではなく、国を再建させるために必要なことだと説く。そうは言っても悪事の片棒を担がされている男は、息子のように育ててくれたソン軍務長官を裏切れない。しかし、悪事をやめナムスンと胸を張って会えるようにもなりたい。その葛藤に悩まされる。捜査も佳境に入り、互いの命をかけた戦いの日がやってくる。

<感想>昨晩からの大雪で旧作品をレンタルしてきた興味のある映画です。始めはあまり期待せずに見始めたのですが、途中からどんどん引き込まれていきました。美しい映像と印象的な使い方の音楽との調和、タンゴを取り入れたアクション等随所に斬新さが感じられます。 久々に映画の醍醐味を味わわせてくれた作品でした。
圧巻は酒宴のシーンでしょうか、芸妓たちの衣裳の鮮やかさ、翻る衣に合わせて展開する巧みな場面展開、そして刺客の見事な剣舞、・・・・本当に息を呑む美しさでした。
そして、とてもせつなく哀しく、胸の痛む愛が描かれています。女性的とも思えるくらい繊細で、美しい動きを見せる悲しい目の刺客と、女っ気のカケラもないような男まさりで、乱暴者の左捕庁のナムスンが、敵対しながら次第に惹かれ合ってゆくのですが、結末がなんともやるせないですね。

この二人の場合は、これしか無かったのだろうと思うと悲しくて、とても胸が痛みました。最後に二人が別れの剣を交わす場面、大変切なくとても美しいです。
雪の降り注ぐ中で・・・「舞いを舞っているようにも、愛を交わしているようにも見えました」本当にその通りの、見応えある場面です。
言葉に出来なかった想い、伝えられなかった気持ちを、最後の最後に二人が剣を交えながら相手にぶつけているんですね。

言葉にする代わりに、ひと振りひと振り、・・・ものすごく切なくて、幻想的な美しい場面で、心に残るシーンです。刺客がナムスンに贈ったものはノリゲといって、韓服(チマチョゴリ)の胸元に飾ったりする伝統的なアクセサリーだそうです。
ソン軍務長官が日本から取り寄せた?日本刀!!そこに刻まれている「夏草や兵どもの夢のあと」劇中の中で長官が二回言いますが、よほど気に入った時世の句とでも思ったのでしょうか??。それと剣舞とでも言うのでしょうか、やけにスローモーションで中だるみがしましたね。
カン・ドンウォン演じる悲しい目の刺客は、台詞が少ない分表情・動きから多くを語り、同じ原作本でありながら『茶母』のチェオクとは全く違ったハ・ジウォンの役作り、アン・ソンギの他の映画とは一味違う演技も楽しめます。不思議な余韻が残る何度も観たくなる作品です。
2014年DVD作品・・・8 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

THE MYTH( 神話)★★★

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世界のカンフー・スター、ジャッキー・チェンと『ファイナル・プロジェクト』のスタンリー・トン監督が手を組んだ歴史武侠アクション大作。ヒロインは韓国No.1女優“キム・ヒソン”「悲しき恋歌」で日本でも大ブレイク!、キム・ヒソンが天女のようなヒロインを熱演し、その美貌で観客を魅了する。その他、レオン・カーフェイ、そしてマリカ・シェラワット、インドでは知らない人がいないと言われるほどの知名度を誇る人気女優と豪華スターが出演している。
<物語>考古学者のジャックは3ヶ月ほど前から同じ夢ばかり見る。それは自分が古代の武将になった夢だ。そして夢の中にはいつも決まって、この世のものとは思えぬ、美しい、ひとりの女性が登場する。いったいこの夢は何なのか。あの女性はどうして、あんなにも悲しそうな顔をしているんだろう......。

今からおよそ2200年の昔。秦(しん)の始皇帝が初めて中国全土を統一した時代。インドのサマンサ皇帝の信頼あつき近衛隊の大将、モンイー将軍は勅命を受け、隣国・朝鮮から迎える新たな妃、ユシュウ姫の警護のため国境へと向かう。
そこへ姫を奪還せんとする朝鮮の武将、チェ将軍率いる軍勢が襲ってくる。チェ将軍はユシュウ姫と言い交わした仲だったのだ。
愛する女が政治の犠牲となって名高き暴君の愛人になることなど到底、納得できるはずもない。チェは剣を抜いてモンイーと切り結ぶ。激しい闘いの末、モンイーはなんとか命拾いをするが、そのとき、ユシュウの乗った馬車が崖から車輪を踏み外して、姫の身は宙へ投げ出される。
モンイーは少しもためらわず、姫を助けるべく千尋の谷底へと身をおどらせる──。2つの時代。2人の男。そして、1つの約束。1つの愛──。2200年の時を超え、いま人類が初めて目にする始皇帝の巨大地下帝国の中で、愛の〈神話〉が解き明かされる!。

<感想>現代と過去が交錯し、やがて1つに結ばれていく壮大なファンタジー仕立てのアクション映画です。秦の時代の将軍モンイーと、現代の考古学者ジャックの2役を演じたジャッキー。
武侠映画は今回が初めてということで、今までのジャッキー映画にはない魅力がぎっしりとつまっています。例えば、3000人のエキストラと500頭の馬を動員して撮影された合戦シーンでは、鮮血が飛神話のジャッキーと女び散り、兵士たちが次々と串刺しになるなど、残酷さが目立ちます。
また、滅多にお目にかかれないジャッキーのラブシーンがあるんです。もちろん、身の回りの道具を自由自在に使いこなしての、爆笑&神業ファイトも健在なので、ジャッキーファンの方は安心してみていられます。

特に命がけの滝へのダイブシーンは、観ているこちらの方が冷や汗もの。とても51歳とは思えないスタントを今回も満喫できます。
合戦シーンなんかも悪くはないのだけれど、ジャッキー・チェンには、やっぱり血しぶきが飛び散る生々しい戦いは似合いませんね。
ジャッキーらしいネズミホイホイ?工場でのコミカルなアクションシーンは、いつものジャッキーに戻っての活躍ぶり・・・このシーンみたいな楽しい笑えるシーンを多く加えて欲しかったですね。共演の韓国の”キム・ヒソン”は本当に綺麗で、衣装・装飾が似合っていて美しい!!お姫様役が似合って良かったです。
特にキムの空を飛んでいるところや、服を脱いでジャッキーを体温で温めているシーンとか、舞いを披露するところはとても綺麗です。

2000年前から現代に到る壮大なスケール愛の物語と、命がけで撮神話とジャッキー影された本物のアクションに息を呑みます。総製作費35億円のビックプロジェクト超大作!・香港、中国、インド、アジアを股にかけ壮大なスケールでロケを敢行。
中国でも最大の国宝的施設、「秦始皇兵馬俑博物館」でもロケを敢行・合戦のシーンでは3,000人のエキストラと500頭の馬を動員・忠実に再現された秦時代の衣装や甲冑など、エキストラ分も含め膨大な数の衣装が製作され豪華絢爛です。
インドの美人女優、マリカ・シェラワットもエキゾチックな顔で綺麗、それにスタイル抜群で踊りも最高ですね。ネズミ捕り工場での、マリカの服が脱げて裸になるシーンも笑えて面白かった。もちろん最後には、お約束のNGシーンのおまけもあるので楽しみにしてね!!
2014年DVD鑑賞作品・・・9映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ビースト・ストーカー/証人★★★.5

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「密告・者」の監督&主演コンビ、ダンテ・ラム、ニコラス・ツェーが手掛けたクライム・サスペンス。心に傷を負った刑事、娘を事件によって失った女性検事、2人に復讐を誓う暗殺者の運命が、ある事件をきっかけに複雑に絡み合う。共演は「ラッシュアワー3」のチャン・チンチュー、「コネクテッド」のニック・チョン。
あらすじ:武装した重犯罪者を激しいカーチェイスの末に追い詰めた刑事トン(ニコラス・ツェー)は、逃走する車に銃弾を撃ち込み、身柄を確保する。しかし、その車のトランクには少女の遺体が。トンの発射した銃弾が、中に閉じ込められていた少女の命を奪ってしまったのだ。犯人たちが逃走に使った車は、事件を担当する女性検事アン(チャン・チンチュー)のもので、少女はアンの娘だった。この事故によって心に大きな十字架を背負うトン。
そして事件の3ヵ月後、アンのもう一人の娘リンが、トンの眼の前で何者かに誘拐される。犯人は元ボクシング選手のホン(ニック・チョン)。彼は、病気の妻の高額な治療費のために凄腕の暗殺者として犯罪に手を染めていた。その上、彼自身も失明の危機にあった。そんなホンが犯罪組織から依頼を受けた仕事が、アンのもう一人の娘リンの誘拐だった。組織の目的は、リンの命と引き換えに、裁判で組織に不利となる証拠の隠滅。トンは、責任を感じると同時に3ヵ月前の事故の記憶に苛まれながら、何かに取り憑かれたかのように執拗にホンを追う。
一方、ホンも、トンとアンに復讐しなければならない理由があった。トン、アン、ホン。それぞれ苦悩とトラウマを抱えた3人の運命が複雑に絡み合い、怒涛のクライマックスへと雪崩れ込む。その先に待つのは、哀しくも美しい、数奇と言うには、あまりに残酷な運命……。(作品資料より)

<感想>同じスタッフとキャストによる姉妹編「密告・者」が制作されるきっかけとなったアクション・サスペンス。凶悪犯の車に発砲し、トランクにいた少女を誤って撃って死なせてしまった刑事トン。少女は女性検事の娘だった。
3か月後、検事のもう一人の娘リンが何者かにさらわれる。犯人は検事に裁判で組織に不利になる証拠隠滅要求してくるのだが、・・・。
冒頭のカーチェイス、衝突シーンが圧巻であります。それに緊迫感みなぎる犯人との攻防が見ものです。ニコラス刑事に、チャン検事、誘拐犯のニック、それぞれの事情を抱えた人物背景や葛藤、トラウマがドラマ性を深めていく。

誘拐犯人のニックは眼が片方見えなく、視界が限られているも元ボクシング選手だけあって、凄腕の殺し屋となっていた。妻は全身麻痺で動けなくベッドに寝たきりである。妻を愛しているゆえ、生活のために悪の道に入った男。誘拐した可愛い女の子の面倒を見るのもニックだ。口をふさがれ両手を縛られて、トイレもままならない。だが、この女の子は頭がよく、優しい心の持ちぬしなので、寝たきりの妻にいくらかの安らぎを与える。
ニコラスも送られてきた少女の居場所を見て、窓に映るネオン塔にヒントを得て、香港のビル街を捜して歩く。話にやや強引な部分もあるが、植物人間状態の妻がどうしてそうなったのかが分かり、三者の接点が繋がる切ない余韻に涙がこぼれ、犯人役のニックの好演に同情さえ感じる。まさか、冒頭の事故シーンがこの物語の重要な伏線になろうとは。俳優陣の存在感も十分で見応えがある作品です。
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大統領の執事の涙 ★★★★

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実在したホワイトハウスの黒人執事の人生をモデルにしたドラマ。奴隷から大統領執事となり、7人の大統領に仕えた男の波乱に満ちた軌跡を追う。主演を務める『ラストキング・オブ・スコットランド』などのフォレスト・ウィテカーを筆頭に、ジョン・キューザック、ジェーン・フォンダ、テレンス・ハワードなどの実力派が結集。メガホンを取るのは、『プレシャス』などのリー・ダニエルズ。濃密なドラマとストーリー展開に加え、アメリカ近代史を見つめた壮大な視点にも引き込まれる。
あらすじ:綿花畑で働く奴隷の息子に生まれた黒人、セシル・ゲインズ(フォレスト・ウィテカー)。ホテルのボーイとなって懸命に働き、ホワイトハウスの執事へと抜てきされる。アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソン、フォードなど、歴代の大統領に仕えながら、キューバ危機、ケネディ暗殺、ベトナム戦争といったアメリカの国家的大局を目の当たりにしてきたセシル。その一方で、白人の従者である父親を恥じる長男との衝突をはじめ、彼とその家族もさまざまな荒波にもまれる。

<感想>本作は1950年代のアイゼンハワーから80年代のレーガンまで、ホワイトハウスで7人の大統領に仕えた、ユージン・アレンをモデルにしたフィクションである。実際のユージン・アレンは、トルーマン時代から在職していたそうで、退職後もオバマ大統領の就任時に、ある名誉を授かった人物。
実話の映画化ではないからといって、黒人問題を訴えて大統領を動かしたとか、キューバ危機を止めた影の立役者というような過度な装飾はされてはいない。
本作で大統領執事を務めるセシル・ゲインズをフォレスト・ウィテカー、静かなる男が品格と才覚で、世の中をサバイバルしていくリアルなストーリーである。彼は、大統領執事を務める上で、「見ざる聞かざるで給仕しろ」という上役の言いつけ通り、模範的な執事ぶりを見せるだけ。

キューバ危機、ケネディ暗殺、ベトナム戦争とアメリカが大きく揺れ動いていた時代。歴史の荒波に直面するのは彼の息子たちなのだ。白熱する親子間での思想的対立。父親は「政治には興味がない」というノンポリの態度を表面的に貫き、体制の中枢に居続けるのだが、その根っ子には小さい頃南部で奴隷として育ち、ある出来事で、綿の花畑で自分の父親が白人の主人に射殺されたトラウマがある。

やがて、ホテルのベルボーイにまで出世し、遂にはホワイトハウスからスカウトされる幸運を掴むのだ。ここまでこられたのは、路頭に迷った時に助けてくれた黒人の「2つの顔を持て」という言葉を胸に秘めていたからなのだ。白人たちに向けた顔と、黒人たちへの顔。息子たちが、それぞれの顔を持って戦う中で、セシルもホワイトハウスの中で白人に向けた顔をしながら、静かに戦っているのだ。同僚の黒人たちの昇進昇給を長らく求めていたというわけだ。

しかし、父親の働きで裕福な生活を得た長男のルイスは、大学まで進むインテリとなり日和見主義にしか見えない父親を批判して、公民権運動に参加し、何度も逮捕されて父親を悩ませる。アラバマでKKKに襲撃され、やがてはキング牧師との出逢い、ブラック・パンサー党への参加など、黒人版フォレスト・ガンプのようなアメリカ現代史を体験する。

そして次男は、国家のためにベトナム戦地へと赴くが、戦死してしまう。それに、妻はセシルが仕事に没頭するあまりに、寂しくてアル中気味である。
息子たちとは対照的に、セシルは最高権力者の姿を静かに見つめるだけだった。長男はそんな父親を嫌って、キング牧師に、父は白人に媚びていると告げ口する。しかし、キング牧師は言う、「執事は従属的と言われるが、人種間の憎しみを溶かす戦士なのだ」と。情勢の荒波が家族を翻弄していく様は痛々しいが、その絆の回復には時代の希望も宿っているようでもある。

共演陣では、ロビン・ウィリアムズのアイゼンハワー、ジョン・キューザックのニクソン、アラン・リックマンのレーガンなど歴代大統領の意外な配役も楽しいが、ナンシー・レーガンを演じた、かつての戦う女優、ジェーン・フォンダが円熟の味わいで演じているのも印象深いもんです。それに、幼少時代でのセシルの母親にマライア・キャリーが出ていて、ほんのちょっとだけなのでお見逃しなきよう。
「プレシャス」や「ペーパーボーイ/真夏の引力」と話題作が続くリー・ダニエルズ監督。彼はアフリカ系アメリカ人だが、本作では国家と家族、白人と黒人、父と子を対比させて、自らのアイデンティティに通じる物語を力強く描き出していると思う。
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7番房の奇跡 ★★★.5

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『王になった男』などのリュ・スンリョンが主人公を演じ、突然仲のいい父娘を襲う悲劇と、その後刑務所内で起きる思いがけない奇跡を描く感涙作。あらすじ:模擬国民参加裁判で、弁護側の女性(パク・シネ)は、ある幼女暴行殺人事件のえん罪を晴らすために立ち上がる。当時犯人とされ、死刑が確定したヨング(リュ・スンリョン)は、娘のイェスン(カル・ソウォン)と二人暮らし。彼はかわいい娘のために黄色いランドセルを買ってやろうとしていたが、ランドセルは売れてしまい……。

<感想>韓国映画歴代動員記録第3位をマークした感動作。知的障害を抱えながらも、無実の罪を着せられ服役することになった父親と、6歳のまな娘との深い絆が周りの人々の心まで変えていく過程を回想する。
本作でデビューした名子役カル・ソウォンが幼少時代の娘を演じ、そのかれんさで涙を誘う。あまりにも厳しい現実をユーモアと、優しさと愛情で包み込む物語に感極まります。
現実離れした設定の、催涙映画を見せられてはたまらないと思っていた。そうしたら、現在と過去の交錯も巧みに、主人公の娘や同房だった収監者、刑務所課長らの人生と、時間を実感させる演出に心地よく乗せられてしまった。

まさか“セーラームーン”のランドセルで号泣するとは思っても見なかった。殺人犯に間違われた知的障害者の父親と、良く出来た幼い娘の絆の物語、これは過去篇です。

ただし予想する通りにしか展開せず、かえってもどかしさが残る。娘が模擬裁判で、父親の冤罪を晴らそうとする現在の部分が効果的になっていない。よくよく考えてみれば、そうに決まっているからだ。観客はみな、彼の無実を知っているわけだから。
いくら父娘の無償の愛を描くにしても、話が乱暴で無茶すぎる。その乱暴な話を無理やりに美談に仕立てて、しかも、少女が父親に会うために忍び込む刑務所の、7番房の演出はコメディタッチであり、何やら取って付けたような気がした。
主人公の娘を刑務所内に出し入れするという奇想も、外部が娘に無関心でなければ成立しないので無理があると思うのですが、演出に節度があるようなので観てはいられます。
ズサンな警察、甘い刑務所、涙や奇跡よりも唖然としてしまう父娘もの。このように頻繁に行き来してプレゼントも不自由なく渡せる環境では、クライマックスに泣き場を用意したところで効果が薄れてしまっているような感じがした。まぁ、それでも感動作品としては、囚人や看守との交流と共に活写した韓国の定番でもある、泣かせ映画の力作であります。
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エージェント:ライアン ★★★

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『レッド・オクトーバーを追え!』などの原作で知られる、トム・クランシーの人気小説「ジャック・ライアン」シリーズを新たに実写化したサスペンスアクション。投資銀行員という表向きの顔を持つCIA情報分析アナリストのジャック・ライアンが、世界恐慌勃発を狙う巨大な陰謀に立ち向かう。主演は『スター・トレック』シリーズのクリス・パイン。共演には、監督も務めるケネス・ブラナーに『プライドと偏見』などのキーラ・ナイトレイ、ベテランのケヴィン・コスナーと、実力派が結集する。
<感想>前作から十数年余り、紆余曲折を経てこの新作「ジャック・ライアン生誕30周年記念」に位置づけられるが、奇しくも原作者クランシーは劇場公開を前にして、13年10月1日に急死、映画はクランシー追悼の意も抱えることになってしまった。
新生「エージェント:ライアン」は、経済学博士課程に学ぶ青年ライアンが、CIAに入局し活躍していく、まったくの新シリーズとしてリブートされたもの。ニューフエルドが示したライアン役の条件は、第一にグッド・アクターであること、そして魅力的であること、信頼できる人物で、スマートかつ頭脳派であること。これをクリアし、トム・クランシーにも承認されたのが新進男優のクリス・パインなのだ。

物語の背景は現代、ライアンの大学生時代にNYでの9.11の惨劇、その後にリーマンショック以降に相応しく経済テロを扱い、80年代を生きていたライアンが様々な意味で“いま”という舞台に還って来る。人物造形は原作そのままに、しかも激動の過ぎ去りし国際情勢から解放され、今日の映画リアリズムに沿ったスパイ映画シリーズとして再生するのである。

さて、どんな人物かというと、頭脳明晰だが、ある種平凡な男であるということ。ジェームズ・ボンドや、ジェイソン・ボーンのようなヒーローではない。天才的なエコノミストで経済危機がいつ訪れるのか予測はできても、それ以外の部分ではエリート育ちの普通の男。だからこそ、そんな彼が何故危険を犯してまでCIAに入るかという動機が肝心になってくる。
そんなわけで、映画の冒頭3分の一は、特に興味深いと思う。ケヴィン・コスナー演じるCIA上官が、ポスト冷戦時代に生きるライアンに対して、使命を果たし国を助けることがいかに意義のあるかということを納得させる。
冷戦以後も世界には様々な対立があるけれど、この映画の場合は、旧帝国アメリカと新興財閥による新帝国ロシア。そして金融界や政治情勢がその境界線を曖昧にしていく。ライアンは経済アナリストとしてそこに関心を持つと同時に、多くの疑問も抱くわけなんですね。

監督のケネス・ブラナー自身も、ライアンの宿敵となるロシアの投資家、ヴィクター役で巧みなロシア語とロシア訛りの英語で悪役を怪演している。キャサリン役のキーラも素晴らしく、今回もその美貌を振りまき、仕事熱心な役回り。ライアンの恋人でもあるキャサリンは、眼科医で賢くて、情熱的な女性。この手にありがちな恐怖におののく女性とは違って、強くて自立している。

彼がキャサリンと出会ったのは、海兵隊員だったころで、アフガニスタンで搭乗していたヘリが襲撃され墜落し、仲間の二人を助けて自分は背骨を折るという重傷を負う。その時にリハビリを担当して心身ともに彼を再生させてくれたのが彼女だった。当時は医学生だったが、立派な眼科医である。
モスクワの投資会社の不穏な動きに気付き、投資会社チェレヴィンの持つアメリカの財政を左右するほどの巨大な外資口座がアクセス不能になっている。
ジャックをCIAに採用した上官ハーパーに事態を報告するが、いつものように現場エージェントを派遣するのではなく、ジャックにモスクワに飛ぶように指令する。現場経験のない、いわばデスクワークの彼が何故?・・・不思議に思いながらモスクワへと入り、行動を開始するのだが、そんな彼に同グループの警護員が襲い掛かってくる。巨漢の黒人でとても力技にはかなわない。しかし、格闘の末に風呂場に追い込んで水責めにして殺してしまう。

ジャックは初めて人を殺した事に動揺して、エージェントのルールすら知らないため、CIA本部に規定違反となる一般回線で連絡。指示を仰ぐしかなかった。指定された公園で、いつの間にかモスクワに来ていたハーパーと出会う。
チェレヴィン・グループの企みが成功すれば、世界は数週間の内に恐慌に陥り、暴動や食糧難で莫大な人数が命を落とすことになるというのだ。
監査の続行を命じたハーパーは、ジャックに拳銃を渡し、エージェントとして働くように指示する。ケヴィン・コスナーの上官役は、海軍の制服が決まっていて素敵ですよね。でも、狙撃手って美味しい役回りじゃん。アクションシーンがあまりないので、年には勝てないってことなのか。
翌日チェレヴィン・グループの代表に面会するが、すでに証拠は隠滅されていた。それに、ホテルには、パリで落ち合うはずの恋人キャサリンが部屋で待っているではないか。しかも、彼女の傍には拳銃が。誰を信用すべきなのか、何が真実なのか、ジャックの孤独な戦いはどのような結末を迎えるのか。

自分の危険な仕事場に恋人が現れ、彼女を危険な目に遭わせることになる。どうみてもお邪魔虫なのだが、キャサリンが機転を利かして、お金好き、女好きな男であるチェレヴィン・グループの代表を誘い出して時間稼ぎをすることに。
ケネス・ブラナーを上手く騙して、その間に彼の会社に潜り込むジャック。
この辺りは、エージェントならお手の物でしょうに、CIAの協力でPCからダウンロードするジャック。しかし、普通だったらPCの中に大事なファイルはしまって置かないはずなのに。それに、警備もユルユルで難なくパスするなんてね。
ケネス・ブラナーが感づいてからが大変な騒ぎで、キャサリンも拉致されるし、でもダイヤの婚約指輪にGPSが付いているし。ここからが、ジャックのアクション開始なんですが、すぐに浮かぶのが、ハリソン・フォードが演じた「パトリオット・ゲーム」、「今そこにある危機」でのアクションシーンの派手だったこと、カーチェイスとかも普通だし何か物足りなさを感じてしまった。
2014年劇場鑑賞作品・・・41 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

愛情は深い海の如く ★★★

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『ナイロビの蜂』『アレクサンドリア』のレイチェル・ワイズ主演。 第70回ゴールデングローブ賞主演女優賞ノミネート&2012年ニューヨーク映画批評家協会賞主演女優賞受賞。
女性が自由を求めて行動することが難しかった第二次世界大戦後のロンドンを背景に、愛されることを求め、官能と苦悩に溺れていく女性を描く傑作ラブ・ストーリー!
2011年/アメリカ・イギリス制作、原題:the deep blue see
あらすじ:第二次世界大戦後のロンドンで、親子ほどに歳の離れた判事の夫と裕福に暮らすヘスター。
夫は優しさも思いやりもあり、へスターのわがままにも終始穏やかであったが、年が離れているが故に情熱的な愛情表現に欠けていた。
そんな中、同世代の元英国空軍パイロット、フレディと偶然出会い、瞬く間に恋に落ちる。フレディへの想いは大きく燃え上がり、激しく愛し合う二人だが、
夫に関係を知られ、へスターは家を出てフレディと暮らすことを選ぶ。
しかしフレディは、戦時中の過酷な経験を引きずり、アルコール中毒であった。些細な事でも怒りを露わにするフレディとの荒れた生活。
ヘスターの思い描いていた“愛の生活"とはまたしても程遠いものであった。愛欲と幸福の狭間で揺れるヘスター。ついに自らの命を絶つことを決意するのだったが…。
<感想>日本未公開作品で、最近メキメキと売れっ子になった「マイティ・ソー」のロキ様ことトム・ヒドルストンと、『オズ はじまりの戦い』のレイチェル・ワイズと共演したラブストーリーもの。
元は、テレンス・ラティガンの手による戯曲で、1955年にヴィヴィアン・リー主演で映画化もされた同名舞台劇がオリジナル作品。男女の愛の切なさ、はかなさを問いかけてくるようなラブロマンス。

最初こそ情熱的に愛しあっていた二人だが、しかし些細なことで喧嘩になった後、フレディが留守の間にヘスターは自殺を図ってしまう。近隣の人々に救われた彼女は、この一件を秘密にしておこうとするが、帰って来たフレディは、自分宛に書かれた彼女の手紙を見つけて、その文面を読み愕然とする。
内容は悲しい物語だが、テレンス・デイヴィス監督による映像の一つ一つが美しく、フレディとヘスターのベッドシーンも繊細で官能美に溢れているなど、大人の作品。
しかも、この作品でゴールデングローブ賞主演女優賞候補となったレイチェル・ワイズの演技が冴え、相手役のトム・ヒドルストンも戦争で心に傷を負ったフレディの、複雑な内面を汲み取るように、見る者をくぎ付けにしています。
経済力はあっても年の離れた夫婦では、若い妻には満たされることができない情熱的な何かが潜んでいる。情熱的に体を求めても、男の方が女の情熱に引いてしまい後ずさりする。
愛することの意味を追い求める女性と、生きることの大切さを肌で知る男の、すれ違う心と心が胸に痛いラブ・ストーリーですね。
確かに、悲恋ものではありますが、ヘスターという女性が、一人の男性フレディを深く愛することで、最後には本当の愛とは何かを見出して終わることが、救いへと繋がっているような気がします。
2014年DVD鑑賞・・・11 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

鑑定士と顔のない依頼人 ★★★★.5

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名匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督が、刺激的な謎をちりばめて紡ぐミステリー。天才鑑定士が姿を見せない女性からの謎めいた鑑定依頼に翻弄(ほんろう)されていくさまを、映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネの音楽に乗せて描く。偏屈な美術鑑定士には、『シャイン』などのジェフリー・ラッシュ。共演には『アップサイドダウン 重力の恋人』などのジム・スタージェス、ベテランのドナルド・サザーランドらが名を連ねる。
あらすじ:天才的な審美眼を誇る美術鑑定士ヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)は、資産家の両親が遺(のこ)した美術品を査定してほしいという依頼を受ける。屋敷を訪ねるも依頼人の女性クレア(シルヴィア・フークス)は決して姿を現さず不信感を抱くヴァージルだったが、歴史的価値を持つ美術品の一部を見つける。その調査と共に依頼人の身辺を探る彼は……。

<感想>ジョゼッペ・トルナトーレ監督らしいストーリー運びを面白く観ながら、どんなふうに収束するのかな、と期待してわくわくしていた。超オタク愛に狂う、卓越した演技力を持つ素晴らしいキャスティングに、素晴らしいロケーション、素晴らしい美術品で魅せる、見せるのである。「2度観たくなる」という宣伝文句もわかる。

アダムとイヴを思わせる男女の彫像の陰から覗いている初老の男ヴァージル、覗かれているのは広場恐怖症の女クレア。美術品のように美しい女は青いバスローブだけを纏っている。割れたガラスを踏んだのか、足の裏に刺さった破片を取ろうとして椅子に腰を掛け、片足を抱え込むように持ち上げ親指を舐める。瞬間、ローブははだけて生々しい股間があらわになる。
女に免疫のない男はあたふたとして、買ったばかりのケータイ電話を落とし音を立ててしまう。急いで逃げるヴァージル。侵入者に気付いた女はパニックを起こして怯える。そして、彼に電話をして助けてくれと泣いてせがむ。ここは非常に印象的なシーンである。
人間不信で潔癖症のヴァージルは天才的な鑑定眼を持ち、世界の美術品を仕切るオークショニア。レストランでも手袋は外さす専用の食器を使う。高級ホテルのような自宅には、隠し部屋がある。

その部屋には無数の肖像画が、名立たる画家たちのミューズであったろう女の顔が、壁一面に飾られ、ヴァージルはここで至福の時を過ごす。このシーンだけでも観る価値はありますね。
モリコーネの曲も女の声のスキャットが無数に重なったもので、まるで肖像画の女たちが歌い、語りかけてくるような錯覚に陥る。そんな孤独な男の人生は、クレアと名乗る若い女の鑑定依頼を受けたことにより、変化し始める。
なかなか姿を見せないクレアへの好奇心と、彼女の屋敷で見つけたお宝(機械人形)への執着から、ヴァージルは深く彼女に関わることになる。

美術品修復の天才ロバートが協力者となり、恋愛指南までされる。巧みなストーリーにのめり込み、次第に気性の不安定なクレアの言動に翻弄され、初めての恋心に振り回される男は、今まで苦労して相棒のボビーとオークションで安く手に入れたコレクションを、失いつつある事態には気付いてはいない。
でも、ずるいですよね、構造が。ジェフリー・ラッシュは不幸や不運が似合う顔なので、もう少し違った形の意外な収束が欲しかったような気がした。修理屋のジム・スタージェスが胡散臭く、結果あまり意外性がなかったのには、やや失望しました。でも、ヒロインのクレア役であるシルヴィア・ホークスの美しいこと。男たちを虜にしてしまう魅力を持っています。

観はじめて早い段階で結末を予測してしまった。と言うのも、クレアの屋敷の向かいにあるカフェで、小さな女が機械人形のように一瞬で数を計算する。その小人女が、じつは伏線のような役割をしている。

最後に明かされる、クレアの本性を、そして相棒のボビーの魂胆も見抜けなかったとは。若い美人の生身の女に心酔し、今までの自分の人生を喪失してしまうとは。
これは、余計なことを考えずに楽しむべきだと実感しました。でもそれを差し引いても、全体的に鈍重な運びで、サスペンスなのか、官能性か、あるいは病的な状態かの、いずれかの表現にもっと切れ味があれば救われるのだけど、お互いの深部に分け入ろうとする試みを、「隠し部屋」なるものに置き換えて表現して伝えようとしているのは面白いですよね。

「ニュー・シネマ・パラダイス」のジョゼッペ・トルナトーレ監督が、初のデジタル撮影に挑んだ。音楽はお馴染みの、エンニオ・モリコーネの音楽で彩られている。
ラスト、プラハのクレアが言っていたカフェ、“ナイト&デイ”だが、機械仕掛けの古時計がたくさん展示しているカフェで、「たとえ何が起きようとも、あなたを愛しているわ」というクレアの言葉は真実であったと思いたいに違いないのだ。
覗き見る対象物だったものに、身も心も投げ打ってしまう愚かで幸せなヴァージル。こういう作品は語り口の手練手管が大事なので、私はもっとお洒落にと、思ったのだが、それは間違いであって、通俗とも言える展開と収め方が良かったのかもしれませんね。
2014年劇場鑑賞作品・・・41 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

土竜(モグラ)の唄 潜入捜査官 REIJI ★★★.5

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高橋のぼるの人気コミックを、三池崇史監督、宮藤官九郎脚本のタッグで実写映画化したアクションコメディー。交番勤務の巡査が暴力団組織を壊滅させるべく潜入捜査を命じられ、さまざまなピンチを乗り越え任務を果たそうとする姿を描く。主演は、三池組初となる生田斗真。彼を取り巻くキャラクターには堤真一、仲里依紗、山田孝之、岡村隆史、上地雄輔らがふんし、原作の世界観そのままの強烈なインパクトを放つ。
あらすじ:正義感は強いものの警察署きっての問題児の巡査・菊川玲二(生田斗真)は、上司からクビと言われてしまう。しかし、内実は関東一の広域暴力団・数寄矢会の轟周宝(岩城滉一)を逮捕するため、モグラこと潜入捜査官になれという命令だった。偶然にも傘下の阿湖義組若頭・日浦匡也(堤真一)と親交を深めた玲二は、数々の試練に見舞われながら轟に近づいていく。
<感想>今年一発目の三池崇史監督の新作は、Vシネマ時代の復活を思わせる快作。コテコテすぎて映像化は不可能と思われていた、現在38巻まで刊行中の高橋のぼるの同名原作(小学館「週刊ビッグコミックススピリッツ」連載中)を、宮藤官九郎の脚本で映画化した本作。

正義感は人一倍強いがスケベで破天荒な警官が、クビと引き換えに潜入捜査官となって、合成麻薬の密売ルートを暴くために、広域指定暴力団に潜入し、幹部へ接近するために組織内で出世していくという物語。
まぁ、これだけならよくある潜入捜査ものにすぎないが、ヤクザ、歌舞伎町は新宿黒社会、チャイナ、マフィア戦争を初めとする数々の作品で描いてきた三池監督だけに、メジャー映画でおなじネタを拡大映画化するだけでは終わらないはず。まったく異なる表現で描かれるのに注目ですね。

街並みの背景はCGで作り込まれ、虚構の世界であることが強調されている。こうした虚構性の強調が、生田斗真と義兄弟の契りを交わすクレイジーパピヨン役の堤真一や、凝ったメイクで派手なアクションを見せる猫沢の岡村隆史という、浮いてしまいそうなキャラをハマリ役にしている。
それと、忘れてならないのが、数奇矢会の月原を演じているキレキレの頭脳を持つエリートヤクザの山田孝之、全身豹がら入れ墨男の上地雄輔や、組長の大杉漣など迫力ある演技合戦で白熱している。

冒頭で原作通りの、菊川玲二が素っ裸で車のボンネットに縛りつけられて、市街地を走り回るシーンがあるが、ジャニーズきっての美形キャラでもある生田斗真主演で、きっちり実写化して見せているのはお見事と言って過言ではない。
日本最大の暴力団、数奇矢会に潜入するも、「面白くなけりゃ、ヤクザじゃない」が持論の若頭日浦に気に入られ、武闘派ヤクザとして鳴らしていく。

見どころは、生田の常識破りの馬鹿っぷりと、それに負けじとド派手さを競う会う堤真一、山田孝之、チビハゲこと岡村隆史らの役作り。パピヨンというだけあって、衣装に蝶々の刺繍がほどこされている派手さ。数寄矢会の轟周宝を演じている岩城滉一の貫録には、惚れ惚れしますから。
闇カジノに潜入した彼は、対立している蜂乃巣会の猫沢を相手に暴れまわり、日浦に気に入られ義兄弟の杯を呑み干して、あろうことかその杯をバリバリと噛み砕いて食べてしまった。

数奇矢会と蜂乃巣会の抗争がいよいよ激化し、猫沢は玲二を付け狙う。玲二をかばい両脚に銃弾を浴びせられ重傷。日浦がヤクザとして再起不能に、と思っていたら、両脚に機械仕掛けの義足をつけて不死鳥のように甦る。
さらには、生田斗真と仲里依紗との濃厚なベッドシーンは、童貞キャラとしておおいに笑わせる。コメディタッチで脱力系ギャグシーンに仕上げてあるので、笑いが込み上げてきます。
中でも、遠藤憲一と、吹越満、皆川猿時の上司の3人が歌う「モグラの掟」は強烈すぎて観終わってからもうなされそうです。
2014年劇場鑑賞作品・・・42 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

麦子さんと ★★★.5

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『純喫茶磯辺』『さんかく』など独特なセンスで注目を浴びる吉田恵輔監督が、構想に7年かけたハートフル・ドラマ。納骨のため亡き母の故郷を訪れたヒロインが、町の人々との交流を経て母の知られざる一面に触れ、それまでとは違う母に対する思いを抱いていく。声優を夢見るオタク女子の主人公に、連続テレビ小説「梅ちゃん先生」が好評だった堀北真希がふんし、兄役に『探偵はBARにいる』シリーズの松田龍平、二人の母をベテラン余貴美子が演じる。
あらすじ:声優を目指して奮闘中の麦子(堀北真希)が、兄・憲男(松田龍平)と暮らすところに、かつて二人を捨てた母・彩子(余貴美子)が戻ってくるが、間もなく病のために、帰らぬ人となる。麦子は、納骨のため母がかつて青春を謳歌(おうか)した田舎を訪れると、町の人気者だった彩子に似ている麦子の登場に町の人々は活気づく。そんな彼らと交流するうちに、麦子は自分の知らない母の一面を垣間見ることになり……。

<感想>格別に何がどうした、というのではないけれども、吉田作品の人物たちは、みなどこか“やましげ”である。「机のなかみ」「純喫茶磯辺」「ばしゃ馬さんとビッグマウス」の彼や彼女たち。誰もが小さなズルしたり、隠しごとで話が転がって、亡き母の若き日と出会うことになる。
だが、日常的なディテールの達者さに比べ、ドラマの核となる部分は今回も曖昧で、それが物足りなく感じた。ズルズルと話が進んで、何となく収まって、日本人的なのだが。

この作品では、堀北が娘と若き日の母親の一人二役を演じていて、だから「同じ」ではなく「似ている」だけのはずだが、画面では過剰なまでに同一感を強調しているのだ。また、部分的ながらオリジナルのアニメを作っちゃう、という発想も楽しい。アニヲタと田舎町のアイドルを演じる堀北真希の魅力満載だが、この女優さんの素の部分が前者のキャラに近いんじゃないかと思わせてくれるところもいい。
長年音信不通だったは母親が、突然現れてからの騒動を始め、しかし不仲のままで母親は死んでしまう。だから、一緒に数日間過ごした日々は、母親に対して毒舌を吐き捨て、なんて乱暴な娘、感じの悪い教養のない娘だと思ってしまった。そう感じたのは、娘もそうだが、松田龍平演じる義理の兄である憲男も口が悪いのだ。ババァと吐き捨てるように言う。

母親は、自分たち子供を捨てて出て行ってしまい10年間音信不通だというのだが、毎月生活費を15万円も仕送りしてもらっているのに、なんて礼儀の知らない親不孝ものの子供たち。女が一人でラブホテルの掃除婦、スナックでのアルバイトなど、かけもちで働き子供たちにお金を送金する。体を悪くするのは当たり前だ。きっと病院へは行っていないのだろう。自分の死期が迫っているのを感じ取り、我が子の傍で幾日かでも一緒に過ごしたいと思ったに違いない。亡き母親の遺骨を持って、故郷まで納骨に行く娘。その若き母を知る故郷の人々を通して、母を描く間接話法が効果的で良かったですね。
80年代のアイドルに田舎町とくれば、朝ドラと比較する声もあろうが、本作の方が圧倒的に素晴らしい。これは堀北真希の代表作になると思う。生き別れの母との再会、死という王道の母子ものを、吉田監督が撮れば、安易な母子の和解を拒否して、母親の死も感傷が入り込む隙を与えないほど呆気なく描かれている。
若き母とうり二つだと故郷の人々が言う。母は歌手になりたくて親の反対を押し切って上京。だが、世間は甘くなかった。子供のいる男と結婚をして、娘の麦子を産む。その後、結婚生活はうまくいかなくて離婚してしまう。

母親の余貴美子、田舎町の麻生祐未ほか女優陣が総じていいです。故郷の同級生でタクシーの運転手の温水さん、そしてとどめの聖子ちゃんメロディ、最後まで引っ張る「赤いスイートピー」が流れる瞬間に、思わず涙がじんわりと滲みます。
2014年劇場鑑賞作品・・・43 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

キック・アス/ジャスティス・フォーエバー★★★

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美少女暗殺者を演じたクロエ・グレース・モレッツが注目を浴びた前作の続編として、キック・アス、ヒット・ガールらがヒーロー軍団を結成し悪党と戦うアクション。前作でマフィアの父親を殺されたレッド・ミストが悪党マザー・ファッカーを名乗り、キック・アスやヒット・ガールのもとへ次々と刺客を送り込む。前作の監督マシュー・ヴォーンは製作に回り、新鋭のジェフ・ワドロウが監督。アーロン・テイラー=ジョンソン、クロエのほか、ジム・キャリーがヒーロー軍団のリーダーとして登場する。より過激になったバイオレンスシーンの数々に注目。
あらすじ:キック・アスことデイヴ(アーロン・テイラー=ジョンソン)と、ヒット・ガールのミンディ(クロエ・グレース・モレッツ)は普通の日々を送っていた。ところがそんなある日、デイヴは元ギャングで運動家のスターズ・アンド・ストライプス大佐(ジム・キャリー)とスーパーヒーロー軍団“ジャスティス・フォーエバー”を結成。そこへ、レッド・ミスト(クリストファー・ミンツ=プラッセ)が父親を殺害された恨みを晴らそうと、刺客と共に乗り込んできて……。

<感想>前作の「キック・アス」では、アメコミ・ファンのニコラス・ケイジの大熱演を楽しむつもりだったが、拳銃を持ったロリータのクロエちゃんに目が釘付けになってしまった。紫のウィッグにアイマスクでヒット・ガールに変身すれば、キレのいいアクションでスクリーンをさらいまくる。
クロエちゃんの肉体の曲線、丸みが甘ったるいほどに醸し出す稀に見る狸顔の美少女。ミンディが街中での闘いから大急ぎで家へ帰るシーンなどで、愛車のドゥカティですっ飛ばすシーンが、でもクロエちゃんは無免許だから実際には運転していないのだ。
ヒット・ガールの活躍では、街中でのファイトで、前作の長刀に加えてヌンチャクも駆使。疾走中のライトバンの屋根にしがみつき、超絶のアクションを披露する。最強の敵マザー・ロシアとのタイマン勝負になだれ込むクライマックでは、やられっぱなし状態から、アドレナリン注射で猛反撃にでるクロエちゃんに萌え!

今回は、前作で父親をキック・アスに殺されたレッドミストが、復讐のためにマザーファッカー(最低野郎)って酷い名前の悪党になって、ジョン・レグイザモと組んで悪の組織を作る話と、キック・アスがジム・キャリー扮するストライプス大佐が率いる自警団に入る話に、そしてヒット・ガールことミンディが普通の女の子になろうとする3つの話が同時進行する。
ミンディが、学校のセレブ同級生の女王様グループに入らないかと誘われるのですが、それがアイドルグループのビデオ見てキャーキャー言ったり、お化粧したりするんだけど、実はそれが犯罪者との闘いよりもずっと過酷な世界だってことが分かってくるんですね。でも、体に染みつい暗殺者の習性で授業中にキレキレのダンスを披露して、彼女らの反感を買ってしまう。

ミンディは高校の勝ち組の女の子たちのイジメと直面するんだけど、ヒット・ガールだから泣き寝入りはしない。父親から譲り受けた道具(スタンガンのような電気ショック棒)でビリビリすれば、女の子たちはゲーゲー吐きまくりって、これって超汚いですから。その後は、ヒット・ガールが少女から女に成長する過程も描かれている。一方、キック・アスはミンディから特訓を受けて体型も筋肉モリモリの強い男に変身。

「アンナ・カレーニナ」でキーラ・ナイトレイ演じる政府高官の妻と、不倫する相手役、青年将校ヴロンスキーを演じたアーロン・テイラー=ジョンソン。ここでは、真のヒーローを目指し、ミンディの特訓のおかげで暗殺スキルを注入。ストーリーでの実地訓練では大ピンチに陥ったキック・アス。そこへ、ヒット・ガールが助太刀して、チンピラどもを血祭りに挙げてしまう。いつもミンディと一緒にいるから、「このロリコン」って、彼女にも嫌われちゃう。

そこで、ジム・キャリー演じるスターズ・アンド・ストライブスという自警団活動と、正義のヒーローチーム「ジャスティス・フォーエバー」を結成。一緒に活動するんだけれど、この男が何とも怖い。星条旗から名前をとって、軍服を着た愛国者でキリスト教信者で、汚い言葉を使うとメチャクチャ怒る。売春をさせられているアジア系の女の子を助けたり、明らかにいいことしているんだけど、正義を言い訳に暴力衝動を満足させているように見えるからね。でも、最後の方で殺されてしまうんだよね。

そして、マザーファッカー役のクリストファー・ミンツ=プラッセが凄く頑張っている。しかし、母親が日焼けマシーンで感電死という、それをやったのはレッド・ミスト。相変わらず変な衣装(母親が持っていたSM衣装)を着て、父親の仇を討つために世界中から凄腕を集めてくる。中にはロシアから来たバケモンみたいに強い女がいて、彼女にマザーロシアって名前を付ける。元KGBの囚人で圧倒的なパワーを誇る。オルガ・カーカリナが演じているが、最初はオカマちゃんかと思ったくらい男に見えた。

それにマザーファッカーは、金持ちのボンボンだからアジトには水槽置いて、人食いザメ飼っているのも、悪のボスとして見栄っぱり。そのサメの餌食になるのは、キック・アスなの?・・・最後の方での2人の一騎打ちでは、ガラス張りの天井から落ちていくクリストファーが、サメの餌食になることは想像してたけどね(苦笑)
これって、お笑いの落ちなのよね、でも帰らないでエンドロールの最後まで観ていると、オマケの映像があって、生きているクリストファーの姿が観られるよ。
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ハリケーンアワー ★★★★

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『ワイルド・スピード』シリーズなどのポール・ウォーカーが主演を務め、生まれたばかりのわが子を守ろうとする父親を熱演したサバイバルドラマ。巨大ハリケーンに襲われ機能停止状態の病院に残った父親が、生命維持装置なしでは生きられない娘のために必死で生き抜こうとする姿を描く。彼の妻を『ラストスタンド』などのジェネシス・ロドリゲスが好演。助けを待ちながら、さまざまな知恵と勇気を振り絞って奮闘する主人公の姿が胸を打つ。

<感想>昨年、交通事故で亡くなったポール・ウォーカー。まだまだいけるのに、残念でならない。この作品は、日本では未公開だったに違いない。そう思えるくらいポールファンだったら観に行くだろうな映画。それにしても、今週で終わりだというのに、観客は私を入れて2人とはもったいない話だ。
この作品の内容が、実にポールの一人芝居のような、有名な2005年8月、ニューオーリンズでの、大型ハリケーンカトリーナが接近しつつある病院で遭遇する災難とでも言おうか、妻が妊娠をして早産のために救急病院へ行き、そこで妻は亡くなり、娘が未熟児ということで生命維持装置の中に。

そこで、あいにくのハリケーンに遭遇、患者や面会人、医師、看護師などは病院から緊急避難をして、自分一人と生まれたばかりの生命維持装置の中の娘だけという事態に陥る。途中に、回想劇として妻との出会いとかが挿入されます。
それもハリケーンで病院の中が停電になり、生命維持装置の電源を確保しなければならず、探しにいくも手動装置の自家発電機だけ。それでもいいと重い発電機を背負って持ってくるも、手動で3分しかバッテリー装置が持たないのだ。
それに、栄養の点滴も必要だし、探しに行き娘のオレンジ色の袋を見つけて持ってくる。
暫くの間は、3分間手動で電源を確保し、その間に食料とか探して来る。地下の食堂に一人いた職員にサラミを少し分けてもらい、後は4階の自販機でコーラとか飲み物を調達する。それもまだ電気が付いていた時に済ましていたのでよかった。
3分ごとに手動で回すので、眠ることが出来ない。腕時計のタイムスイッチが命綱。生命維持装置の中の娘に話かけて、娘の名前を妻の名前にして呼ぶ。父親として守るべき小さな命を、自分の命にかけても。体力勝負ですよ、3分於きに手動で回すって。

次の朝に外へと言って見る。すると救急車が停まっていて、運転席の無線機で救助を要請するも、繋がらず直ぐに3分のタイムオーバー。引き返して手動で回す発電機。救助のヘリの音が、急いで屋上へと駆け付けるも、向かいのビルの屋上にもたくさんの人々が手を振っていた。
救われたのは、犬、それも救助犬のシェパードだ。誰もいないはずの病院内で犬の鳴き声がする。足にロープが絡まって動けないのだ。その犬を助けたら、ポールのいる部屋へやってきた。どうやらお腹を空かせているようで、サラミを分けてやる。だが、いいことばかりではない。運悪くそこへ泥棒が入って来て、わずかな食料を強奪していく。殺されないだけましということか。

しかし、今度は2人連れでやってきた。それもライフル持って。闘わなければ娘の命も自分の命も危ない。相手の首を絞めて殺し、もう一人の強盗と格闘してライフルを奪い取り撃ち殺してしまう。これは、みなさんがどう取るかは判断に任せてと、・・・私は仕方がなかったと思う。3分間の手動発電機を回し、それも次第に時間が短くなっていき、最後には動かなくなってしまう。そう考えると、2人の強盗を縛ってそこへ置いておくのは、危険極まりない。それに、看護師のおばさんも点滴を持って来たのに、銃で撃たれて殺されていた。よく一人で水の中を来てくれたのに、こういう災害の時は、人間は暴徒かして助け合い精神なんて何処かえ失ってしまうのだろう。

そして、別の発電機を探しに1階へ行くも、暗闇の中やっと探したのに、水の中に半分浸かっていたせいか、ショートして自分も感電してしまい気を失う。
もうすべては神頼みだ。精根も尽き果たして意識が朦朧としていると、救助の助けが来る。あの救急車での無線機の信号でやってきたのだ。娘も生命維持装置を外してやり、自力で呼吸すれば助かるのだが、・・・奇跡が、赤ん坊の泣き声がする。感無量でした。

もう殆ど、病院の中でポール一人で奮闘しているのだが、停電になり真っ暗の中、外は暴風が吹き荒れて、もしかしたら誰も助けに来てくれないと思うと本当に心細くなり、死を感じるのだろう。東北地方大震災で、大津波の被害を受けて、寒い中3日間瓦礫の中で助かった人がいたのをニュースで聞き、人間って最後まで生きる希望を失わないこと。絶対に救助がくることを信じて、・・・。
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母の身終い ★★★.5

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不治の病に冒され究極の選択を決心した母親と、その息子の絆を描いた人間ドラマ。『愛されるために、ここにいる』のステファヌ・ブリゼ監督がメガホンを取り、長年にわたって折り合いが悪く、互いにきちんと向き合ったことがない母と息子が過ごす最後の時間を静かに紡ぐ。尊厳死を望む母親の決断に苦悩する息子役に、『すべて彼女のために』などのヴァンサン・ランドン、厳格な母親を舞台でも活躍する『人生は長く静かな河』のエレーヌ・ヴァンサンが演じる。
あらすじ:麻薬密売が原因で服役していた中年男アラン(ヴァンサン・ランドン)は、出所後年老いた母親イヴェット(エレーヌ・ヴァンサン)が一人で暮らす家に身を寄せる。しかし再就職も思うようにいかず、昔から確執のある母と何かと衝突してばかりいた。そんなある日、アランは母親が末期の脳腫瘍に冒され死期が近く、スイスの施設で尊厳死を実行しようとしていることを知る。

<感想>この映画は、尊厳死という最も今日的なテーマを含む、最も古典的な親と子の話である。全く色合いは違うけれども、今年のアカデミー賞外国語賞を取った「愛、アムール」を想起させます。
人生の最期を迎える老女を通して、人とその愛について問いかける、フランスの新鋭ステファヌ・ブリゼによる人間ドラマ。
脳腫瘍の老齢の母親のところに、人生に失敗した中年の息子が身を寄せる。残された時間を共有する二人の繊細な演技を、カメラはシンプルに切り取って行く。二人のカットで切り返すスタイルが、「自殺幇助協会」の男女が訪れる場面では、彼らを挟んでテーブルの両端で向かい合う母子の穏やかなパンで、交互にフレームに入れていく手法。

長年こじれていた親子関係が、どちらかの死に直面したからといって、その日から急に修復できるわけでもない。残酷なようで、実に身につまされるシチュエイションである。子供にとって、自分の意思を持ち始めて来ると、親というものがうっとうしくなるものだ。それも中学生くらいになると、さらにそれが強くなってくる。親子の絆と良くいうけれど、それは親子の確執の始まりなのかもしれませんね。

だから、目の前にリミットが迫っているというのに、不器用すぎるやり方でしか歩み寄れないのだ。不器用すぎて、愛犬の命まで危険にさらすなんて、中々ハードコアですね。ですが、彼らにとっては、一つ一つが、言葉を介さないコミュニケーションとなり得ていたのではないでしょうか。無言の車中でも会話は成立していたと思うのだが。
ここでは、日常の行為が、とてつもなく観客の胸をかきむしる。とりわけ、犬に食べさせる料理を、淡々と作る場面。省略にも物語にも、逃げない映画の中での恐ろしいことといったらない。

いい歳をしてまともな仕事にもつけない息子に、母親は苛立ちを募らせる。息子はあれこれと小うるさく言う母親が疎ましい存在にしか思えない。母と子がいがみ合いながらも、内心では相手を想いやっているというシンプルでクールな物語です。
アランはボウリング場で出会ったクレメンという女性と深い仲になるが、二度目に会った時、職業を聞かれて口ごもり、気まずくなり別れる。むしゃくしゃした日々を過ごすアランは、母親と大喧嘩したあげく仕事も辞めてしまう。

映画は、世の中にこんなシステムがあるのかという事実を教えてくれる。演出もそっけないほどに淡々と進んでいき、ラストは襲撃的にやってくる。
しかし、母子の心理に深入りしない分、味わい深い感じがした。自分らしい最後、母親のイヴェットを演じたエレーヌ・ヴァンサンが、身を持って映画の中で示しています。役者たちがまたいいんですよ。それにしても、ラストの「自殺幇助協会」というNPOは、スイスに実在するそうで、無知な私には衝撃的でした。
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