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ジャーロ ★★★

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「サスペリア・テルザ 最後の魔女」のダリオ・アルジェント監督による猟奇スリラー。60〜70年代にかけてイタリアで流行した古典作品を現代風にアレンジ、連続殺人鬼と彼を追う警部の姿を描く。出演は「プレデターズ」のエイドリアン・ブロディ、「潜水服は蝶の夢を見る」のエマニュエル・セニエ、「スネーク・フライト」のエルサ・パタキなど。
あらすじ:北イタリアの都市・トリノで、美しい外国人女性ばかりを狙う連続誘拐殺人事件が発生。犯人は改造タクシーを用いて、乗車してきた被害者を秘密の隠れ家に拉致、執拗なまでに拷問を行い、鋭利な刃物で切り苛むという残虐な行為を繰り返していた。
そんなある日、スチュワーデスのリンダ(エマニュエル・セニエ)は、ファッションモデルの妹・セリーヌ(エルサ・パタキ)と共に休日を過ごすためトリノを訪れるが、約束の時間になってもセリーヌは現れない。心配したリンダは地元の警察に出向き、猟奇殺人専門のエンツォ警部(エイドリアン・ブロディ)を紹介される。共に捜査を開始した二人は、事件の被害者が死の間際に残した「彼は黄色い」という不可解な言葉から、謎の殺人鬼“ジャーロ(イエロー)”の正体に迫っていく。暗い過去を持つジャーロはその時の疎外感から、完璧な美貌に激しい憎悪を燃やし、美しい女性をさらっていたのだった……。
<感想>以前にレンタルして観たDVDの記事をアップしているのだが、たいしてファンでもないエイドリアン・ブロディの作品が多い。この作品もそう。この作品はイタリアン・ホラー界の巨匠ダリオ・アルジェントが、60〜70年代にかけてイタリアで流行した古典作品を現代風にアレンジし、より過激な猟奇殺人鬼を描いたサスペンス・ホラーで、劇場未公開作品。
もちろんエイドリアンが主人公で、子供の頃に母親を目の前で殺され、犯人を刺し殺したという眉つばものの、そんな経験があり刑事になるんですね。
そして連続殺人事件を追っていく内に被害者が「彼は黄色い」という言葉が気になりました。よく外国人は日本人のことを「イエロージャップ」と馬鹿にして表現するので、もしかして犯人はアジア系なのかと勘繰りましたが、イタリア語でジャーロ=黄色いというそうです。それがどうやら犯人は病気(黄疸症状)で顔色が黄色かったようですね。
しかし、最初の犠牲者は日本人で、連続殺人鬼は美人しか狙わない。モデルとかね、それも殺す前に被害者の顔を切り裂く卑劣な猟奇殺人鬼。ですから犯行後発見される被害者の遺体をアップされるので、見るに耐えかねるシーンも多々あります。
話はオーソドックスな作りで、美女ばかりを狙って拉致・監禁、そして顔を切り裂いた挙句に殺害・遺棄を繰り返す変態シリアルキラーと、それを追う刑事&妹が拉致された姉という展開。

登場人物は少ないし、犯人も比較的早く顔出しするので、それに犯人はブ男でその容姿のコンプレックスから美人ばかり狙って、顔をナイフで切り裂く異常な人物なのです。
ですから当然ファッションモデルのセリーヌが犯人に狙われるわけで、それを姉がエイドリアンに逮捕するように依頼するのですが、このお姉さん勝気な性格で自分で探すというんですね。
もちろんエイドリアンも猟奇殺人専門の刑事なので張り切って捜査するのですが、それが病院で犯人を追いつめては逃げられ、犯人にもてあそばれているようなそんな感じがしました。
最後だって、セリーヌがまだ生きているのに全然関係ないところ探して、セリーヌは駐車場の車のトランクの中に拉致されていたという最後。トランクの中から外を歩く人にサインを送るのですが気が付いて貰えず、見つけてもらえて助かるのか分からないオチで終わります。
サスペンス・ホラーにはなってますが、全篇ハラハラしながら見てましたが、最後がこれでは情けないですよ。
2014年DVD鑑賞作品・・・4  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

サプライズ ★★.5

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『V/H/S』シリーズや『ABC・オブ・デス』などのホラーで知られる俊英、アダム・ウィンガード監督による戦慄(せんりつ)のスリラー。家族パーティーの最中にアニマルマスクの集団に襲撃される人々の困惑を、テンポよく撮り上げる。最悪の事態に巻き込まれることになった面々を、『パニック・マーケット3D』のシャーニ・ヴィンソンや『コロシノジカン』のニコラス・トゥッチらが熱演。素晴らしいカメラワークで映し出される衝撃のてん末に言葉を失う。
あらすじ: 両親の結婚35周年をみんなで祝福するため、息子のクリスピアン(AJ・ボーウェン)と恋人エリン(シャーニ・ヴィンソン)をはじめ、久しぶりに家族が顔を合わせる。だが、彼らの一家団らんの時間は、ヒツジやキツネやトラのマスクをかぶった集団が押し入ったことにより突如終わりを告げることになる。いきなりの襲撃に誰もがパニック状態に陥るが……。

<感想>各国の映画祭でホラーファンの熱狂的な支持を得たバイオレンス・スリラー。妖しげな動物のお面をかぶった殺人鬼どもが、野中の一軒家(別荘)に押し入ってくる。何のことはない、よくあるパターンのスリラーなのだけれど、あまりの貧弱なプロットに目を疑いますから。ホラー版の「そして誰もいなくなった」かと期待してしまった。

登場人物に共感できないのは構わないけれど、ここまで中身が何もないとは。
羊、狐、タイガーマスクって、スキーマスクより派手でいいって、そんなの何でもいいわよ(苦笑)犯人が、親の財産を目当てに殺し屋3人を雇って襲撃する。それも兄弟で殺し合うなんて、バカも甚だしいったらない。いくら金が欲しいからって、親の財産を当てにして殺してしまうことは許されなく、そんな息子たちを産んでしまった母親が可愛そう。父親の死に方も残酷ですから。

始めっから長男の様子が変だったし、その連れの女の子がまた、強いのなんのと、実は子供の頃からサバイバルキャンプで両親からしごかれたそうで、頭の回転が速くて次から次へと犯人たちを抹殺していく展開は爽快ですから。
真犯人を明かすタイミングが最悪です。早すぎて、その後の展開の意外性が皆無ですからね。

かといって、ギリギリまで遅れていたら、主人公に感情移入できずに終わってしまうと思う。というよりも、この脚本と計画自体があまりにもお粗末すぎるのだ。
何とか面白いところを挙げるのなら、襲撃の武器にボウガンを使ったことか。アニマルマスク集団がボウガンを使うので、怖さが半減してしまった。
では、ひたすらショッキングな秒差yを突き詰めたい試みなのかと思いきや、肝心の絶命の瞬間は見せないという。かえって、フラストレーションが溜まって、そのやり方に何か理由があったとしても分からなかった。

アニマルマスクや家庭用品を武器にしたり、悪ふざけとしか思えない展開をゲーム感覚で楽しめればいいのだろうけれど。最後がね、かなり頑張って強盗集団や兄弟を殺したのに、この殺人計画の首謀者である長男の目を刺し殺すところに、やっと警官が来て、エリンが警官に撃たれてしまう。そして、彼女が玄関に仕掛けていた、ドアを開けると上から斧が落ちてくるのに、警官が見事にひっかかるという最後。
しかし、目的不明の襲撃者の異様さや、スプラッタ描写満載のバイオレンス緊張感はMAXである。でも、拷問シーンのようなユーモアのセンスが気に入らないし、気持ちよく笑えなかったのが残念。
2014年劇場鑑賞作品・・・17 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング


ブランカニエベス ★★★.5

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グリム童話「白雪姫」に、スペイン名物の闘牛をミックスし繰り広げられる個性的なファンタジー。人気闘牛士の娘が邪心を抱く継母にいじめられ続けた後に逃げ出し、その後闘牛士団と巡業の旅に出て才能を開花させていくさまを、モノクロとサイレントを使用し描く。女闘牛士の継母には、『パンズ・ラビリンス』などのマリベル・ベルドゥ。誰もが知っている名作を基に、斬新な発想とスタイリッシュな映像美で創造された本作は、世界各地の映画祭で絶賛された。
あらすじ:人気闘牛士の娘カルメンシータ(ソフィア・オリア)は生後間もなく母を亡くし、その後父が再婚。ところが継母(マリベル・ベルドゥ)は非常に意地が悪く、カルメンシータは継母にひどい目に遭わされながら育った。ある日、継母によって危うく殺されかけた彼女は「こびと闘牛士団」の小人たちによって助けられ、ブランカニエベス(白雪姫)という名で一座と一緒に見世物巡業の旅へと出発する。やがてカルメンシータは、女性闘牛士として才能を開花させていくが……。

<感想>あの「白雪姫」の童話を、かくも綺麗なスペイン映画にアレンジし、めくるめく幻惑に満ちたアダルト・ロマンに脚色したものかと感心しました。モノクロ&サイレントにして、小人の巡回闘牛士団、スペイン音楽にフラメンコと、エキゾチックな仕掛けが満載。

しかも、それらが混乱することなく、見事に結実した一大シンフォニーとなって、スクリーンを飾りつくすのには良かったのですが、・・・。残念ながら物語自体が非常に弱く、前半1時間はありきたりな話が展開して、モノクロで無声映画の形式を取り入れてはいるが、お伽噺の雰囲気と、無声映画にした達成感に甘んじたのか、端端の演出が凡庸になっているのが残念です。

ラスト30分で小人たちが登場し、「闘牛士の白雪姫」となるのも、去年、ターセムの「白雪姫と鏡の女王」で、すでに現代的な編集で、マーシャルアーツを学ぶ白雪姫が輝いていたから、これは分が悪いとしか言いようがない。
それでも、衣装と美術、とくに繊細な刺繍がほどこされたレースやカーテン、そして闘牛士用のケープが作りだす陰影豊かな布の表情には感嘆しましたね。

けれども、これは良くも悪くも表層しかない映画ではないだろうか。カメラは確かにめまぐるしく動くのだけれど、そのすべてが小手先に留まっているのだ。かつての前衛映画にあったショットのぶつかりあいもないし、息を飲むロングテイクもないのだ。
しかも、ラストでの予想不可能な驚きの結末で、メルヘンは実はグロテスクな残酷物語という核心をついているのである。
2014年劇場鑑賞作品・・・18 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

バイロケーション「表」★★★

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自分の近くに出没するもう一人の自分“バイロケーション”に命を狙われるヒロインを、テレビドラマ「シェアハウスの恋人」などの水川あさみが一人二役で演じるホラー。画家になるため奮闘する若い主婦がもう一人の自分に遭遇し、オリジナルよりも凶暴なバイロケーションの存在により命の危険にさらされる姿を描く。
原作は、法条遥による第17回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作品。監督を、『リアル鬼ごっこ』シリーズなどホラー映画を数多く手掛けてきた安里麻里が務める。正反対のキャラクターを演じ分ける水川の演技に注目。
あらすじ:結婚後も画家を夢見て、キャンバスに向かう日々を送る高村忍(水川あさみ)。ある日、スーパーでニセ札使用の容疑を掛けられたことから、見た目はうり二つだが全然違う別人格の“バイロケーション”(通称バイロケ)と呼ばれるもう一人の自分が存在することを知る。さらに、バイロケはオリジナルよりも攻撃的で……。

<感想>ホラー映画とくると、きっと怖いんじゃないの、なんて思うかも知れませんが、この手のホラーは私には全然怖くも何ともありませんでした。自分の近くに出没するもう一人の自分。バイロケーションの出現により存在を脅かされるヒロインの水川あさみが演じて、一人二役に挑戦しているのが見どころ。
物語は、主人公の忍は画家として芽が出ずに苦しんでいたが、5階に住んでいる目の不自由な勝と結婚して幸せを得る忍。バイロケの被害が夫の勝に及ぶのを恐れ、やがて別居を決意する。バイロケには、オリジナルの性格が濃く表れ、オリジナルの大事なものを奪おうとするからだ。

そして、同じ境遇の人々が集まる会で、自分のバイロケに遭遇する忍。鏡にはうり二つのバイロケの姿は写っていないのだ。バイロケに苦しめられる男女3人と、会を主催する男の飯塚が集まっていた。彼らの話が信じられず屋敷を去ろうとすると、目の前に自分のバイロケが現れ、忍はその存在を認めざるを得なくなる。

それに、バイロケ対策を練る日々が続く中、刑事の加納のバイロケが発砲事件を起こす。飯塚たちは加納のバイロケを殺そうとするが、誤ってオリジナルを殺害してしまう。そうすることで、加納のバイロケは消滅してしまうのだ。他のメンバーのバイロケもしだいに凶暴化していき、やがてメンバーの一人が忍のバイロケに関する恐ろしい事実に気付く。

ホラーということで、驚いたのは刑事の加納役を演じた滝藤賢一さん。この俳優さんは、TVの堺雅人さん演じた「半沢直樹」で同期の銀行員だった負け犬を演じた俳優さんを思い出します。目がぎょろっとして細い体で、バイロケに変身する時の目玉が怖かったです。

難病の息子を抱えている酒井若菜も、バイロケに自分の息子を奪い取られまいと必死で守るのだけど、最後に息子から「偽者」と呼ばれて本当に可愛そうだった。まさか、バイロケの自分にナイフで刺殺されるとは。
またもや、「ルームメイト」と同様につじつまが合っているのかどうか、イマイチ判断しにくい仕上がりだが、本作はドッペルゲンガー物の変奏なのだ。素材が映画的で得をしているようだ。

ヨーロピアンテイストな冒頭の部分は、モノクロで教会で子供たちに本を読んでいる女が、いつの間にか双子姉妹のように対になって立っているのだ。ここから話が始まるのかと期待してしまった。
演出的には白と黒、右と左という具合に二者択一が基調で、分かり安いかと思いきや、偽物には偽物なりの心情というものもあるというコンセプトで、物語が混がらかってしまうのが面白い。

主人公が、自身の体験が信じられないなどと悩む回りくどい設定などは別にして、被害者の会で即座に状況を認識することで、自分の実存感も奪われる恐怖劇をじっくりと描く展開に乗せられてしまった。バイロケを殺しても消えるだけで、またもや出て来るのだ。
主人公の最後が、下の階の勝と一緒にいる忍のバイロケが、絵画コンクールで入賞するとは、やっぱりオリジナルの絵描きとしての才能がないと、人生が終わりだと思い本当の忍が自殺する下りで終わるのだが、結末が異なる裏バージョンも、細部を確認したくなって見てしまったが、こちらも捨てがたしで、目ん玉の恐怖演出だけが際立って恐ろしかった。

自分の増殖というのは、どうも現代人の特質らしくて、自分を褒めてあげたいとか、自分にプレゼントとか、そこいら中、自分だらけだ。でも、こういう自己完結ふうな自分認識は、誰に迷惑をかけるわけじゃなし、勝手にどうぞで済むのだが、それがネガティブになると、もう一人の自分なる存在に追い詰められるらしい。自分探しならぬ、自分壊しか、いや自分が怖いのか。
それなりに、サイコホラーふうな展開を持つこの作品は、やはり人物たちに説得力がないのが致命的で、恐怖よりも空回りという印象が強く感じた。
2014年劇場鑑賞作品・・・19  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング


ドッペルゲンガー(ウィキペディア)より検索

オンリー・ゴッド ★★★

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『ドライヴ』で注目を浴びたニコラス・ウィンディング・レフン監督とライアン・ゴズリングが再度手を組んだ異色サスペンス。兄を殺され復讐(ふくしゅう)を果たそうとする弟と、その前に立ちはだかる謎の男との手に汗握る攻防を描写する。究極の悪女を演じるのは『イングリッシュ・ペイシェント』などのクリスティン・スコット・トーマス。ダークな映像美はもとより、複雑に絡み合う人間模様に最後まで翻弄(ほんろう)される。
あらすじ:ビリー(トム・バーク)とジュリアン(ライアン・ゴズリング)兄弟は故郷アメリカから逃げ、タイのバンコクでボクシングジムを経営しながら、その裏でドラッグビジネスに手を染めていた。ある日、兄ビリーが若い娼婦(しょうふ)をなぶり殺しにした末、彼女の父親に殺害される。犯罪組織を仕切る兄弟の母親(クリスティン・スコット・トーマス)がアメリカから急行し……。

<感想>ライアン・ゴズリング目当てで観に行ったので、タイ人のおっさんの刀さばきとかカラオケ聞きに行ったわけじゃないので、がっかりしました。
乾き切ったロサンゼルスからバンコクへと、「ドライヴ」ですごい監督が出てきたと思ったのに、舞台がバンコクなので、湿気のようにねばりついた観終わった後の嫌な“何なんだろう”感がまとわりつく作品。
か弱き母子を救うために闘に身を投じるアウトローの姿を、クールに綴ったヒーロー譚であった「ドライヴ」に対して、今回は、言ってみれば暴力の極北である。言い換えれば観念としての暴力。ガラリと様子が一変するのだ。
「神との対峙」という荘厳なテーマに始まり、台詞を極限までに削ぎ落としたタッチで、妄想がまぎれ込む退廃美の空間とでもいおうか。対象物を中心に据えた構図と、全篇を彩る背景の赤と青の色調といったこだわったビジュアル。う〜ん好き嫌いが有りそうな。

だが、ぐいぐいと引き込まれて、引きずられてしまう。その牽引者となっているのが“神の代理人”となって罪の重さを量り、制裁を下す、元警官のチャン。
演じているのは、タイ人のヴィタヤ・パンスリンガムで、長ドスを背中に隠し、そのため姿勢は常に直立不動である。彼は、剣道の熟練者だそうですよ。
すべてを悟ったような顔で在任を見つめ、どう答えていいか分からない言葉を投げ掛けてくる。マシンガンの弾丸をくぐり抜け、息切れすることなく、どこまでも襲撃者を追いかけて、長刀で腕を断ち切り、胴体をかっさばくのだ。
かと思えば、部下の警官たちを前に、カラオケを熱唱して悦に入る自分本位の男。まさに神変出没という言葉が相応しい。いかにもって感じで、自分だけは神がかりといわんばかりに、とにかく強いのなんの。誰も負ける相手がいない。

だから、せっかくゴズリングのボクシングシーンや、格闘して相手をやっつけるなんて場面は皆無である。

バンコクが舞台だからなのか、娼婦の女たちがぞろりと出て来る。ゴズリングも母親に会わせるために、嘘の婚約者を娼婦の中から選び、黒のスケスケドレスを買い、それを着せて母親に会わせる。母親から、娼婦と見抜かれて落ち込むゴズリング。それにマザコン男か?、決してその娼婦を抱くわけでもない。

その兄弟の母親に扮したクリスティン・スコット・トーマス、いつもなら淑女的な役柄が多いのに、金髪頭にビッチ全開なド派手メイクと、衣装でバッチシ決めて、ファックやらディックやら四文字言葉を吐く姿には、唖然としてしまいますから。こんな母親なんていない方がいいに決まってる。ゴズリンもそう思ったに違いありません。
手下どもに、息子の仇を取るように殺し屋を差し向けるも、反対に油ぶっ掛けたり、串刺しにしたりという暴力描写が凄い、自分の命も危うくなる。その“神の代理人”とやらの刀で、裁きを受ける母親は、さっきまでの剣幕は何処へやら。なすすべもないのだ。次がゴズリンの番で、もう観念したのか両手を差し伸べて、神の裁きを得るのだ。
実は、このジュリアンの役は、ルーク・エヴァンスが急にドタキャンして、ゴズリングが引き受けてくれたそうです。そう思ったら、彼でなくとも良かったのにと感じた。
2014年劇場鑑賞作品・・・20  19  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ゲノムハザード ある天才科学者の5日間 ★★.5

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西島秀俊主演で司城志朗の小説「ゲノムハザード」(小学館文庫刊)を映画化した日韓合作サスペンス。記憶を失った天才科学者の文字通りの“奔走”をノンストップで描いた、スリル満点のエンタテイメントが完成した。
あらすじ:平凡な会社員・石神武人はある日、自宅で妻が殺されているのを発見する。その信じられない衝撃の最中、死んだはずの妻からの電話。そこに現れた警察を名乗る怪しい男たちによる執ような追跡。石神は事態を全く把握できないまま逃げ続け、やがて正体不明の韓国人女性記者(キム・ヒョジン)に出会う。石神は妻の死の真相を解明すべく、記者の協力をあおぎながら、命をかけた逃亡劇に身を投じていく。

<感想>甘さを拝した大人の魅力で大ブレイク中の、西島秀俊主演での理系ミステリー・アクション。「過酷な現場ほど楽しくなる」と語るM系俳優の西島らしく、マンションの屋上から脱出劇など本格的なアクションシーンを、極力スタントに頼ることなく自分の体を張って演じて見せているのに感心しました。
最愛の妻を何者かに殺された平凡な日本人男性が、真相を追求するうちに、実は遺伝子研究をしていた韓国人科学者だったという驚愕の過去が甦り始めるという、予測不可能なストーリーになっている。

「美しき獣」のキム・ソンス監督ら韓国人スタッフによる、日本映画とはひと味違う乾いたタッチの、ハードなアクションシーンが見どころです。「俺の記憶は5日後にすべて消える」と、42歳の西島、魅力満載の逃亡劇、韓国人のオ・ジヌと石神武人の二役を演じる彼は、アクション俳優として覚醒か?・・・。カーチェイスも見ものですよ。

石神を取り巻く2人の女性には、「誰にでも秘密がある」などで知られるキム・ヒョジンが、フリーライターとして記憶喪失の西島を助ける役を、「さよなら渓谷」「そして父になる」の真木よう子が石神の妻役を演じている。そして、研究所の博士佐藤に、伊武雅刀が扮してオ・ジヌが研究していた不老不死薬(アルツハイマーのワクチン)とファイルが欲しくて、ゲノム薬品会社の社長と結託してオ・ジヌを殺そうとする。
日本人の石神は、たまたま伊武雅刀が運転していた車に轢かれて、研究所に運び込まれ、そこへオ・ジヌが入って来て、研究のワクチンを投与され記憶を石神にすり替えられたのだ。本当の石神は、別人の日本人である。

イランの鬼才アミール・ナデリ監督作「CUT」でも、ボコボコに殴られ肉体を限界まで追いつめた西島だったが、本作ではとにかく走りまくり韓国人のニセ警官の悪人から逃げ回ります。記憶も曖昧で状況も分かってない男が、殺し屋たちに追い掛けられて逃げ切れるわけがない。

記憶をぐしゃぐしゃにされた人物に扮しているとはいえ、西島が繰り出す演技のテンションが半端じゃなく高く、男くさいムードでムキムキの体を見せてしまったら、普通の男という設定なのに、ちょっとアンバランスなところが引っかかる。
冒頭で目の前の妻の死体を見て驚き、そこへ妻からの電話がかかってくる。「実家に帰ってます」と言うのだ。じゃぁ、目の前の女は妻じゃないのか?・・・、このシーンは奇抜で面白いのに、謎めいた人物が次々と登場して、誰がみても警察だという黒服のいかつい男たち、日本人刑事を装うのに、日本語がヨレヨレ過ぎる韓国人キャラ。ニセ警官というのは一目瞭然なのに。

オ・ジヌの奥さんはいったい誰に殺されたのか?・・・これが最後に明かされるのですが、妻は殺されたのではなく、揉みあっている内に突発的な事故で、後頭部を打って死亡したもの。犯人というか、西島が部屋へ入って来た妻の死体を発見した時に、犯人はベランダに隠れていた意外な人です。それに、妻の死体は動かされて、2度目にその部屋に行くと妻の死体はなかった。
ですから、途中からストーリーに付いていけなくて、デザイナーの石神と、韓国人のオ・ジヌが同一人物というのは、理屈としては理解できます。ですが、記憶を上書きするメカニズムが、目に見えないので映画向きのテーマとしては、不向きなような気がした。理解できる人には面白いのでしょうがね。
西島が演じているのは、本当は韓国人の科学者オ・ジヌなのに、観ていると石神の記憶を植え付けられた男、オ・ジヌなのだ。そこがどうみても石神に見えてくる。本当の石神は交通事故死してこの世にいないのに。そのことがしっかりと見えてくるところまでは、西島演じている逃亡者の石神なのだ。

しかし、石神とオ・ジヌは似ても似つかないまったく違う人物。記憶の混濁という設定だったり、ということも関係あるのかもしれないが、細部まで詰められた部分と、ビックリするほど雑な部分とが混在していて、どうにも落ち着かないのも残念。
それと、警察に駆け込まずに、主人公を助けようとする韓国人の女性記者が、特ダネのために主人公の逃亡の手助けをする設定にも無理があり、西島さんの熱演がもったいないですから。
カーアクションや研究施設などのしっかりした撮影なのに、妻との思い出など、ドラマパートの安っぽさの落差にがっかりです。
2014年劇場鑑賞作品・・・21  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

セブン・サイコパス ★★★.5

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『ヒットマンズ・レクイエム』で高い評価を受けたマーティン・マクドナー監督が、コリン・ファレルと再びタッグを組んだクライムコメディー。スランプ中の脚本家が、自分を助けようと奔走する役者によってトラブルに巻き込まれるさまを、ブラックユーモアと共に描く。共演にはベテランのクリストファー・ウォーケン、『月に囚われた男』などのサム・ロックウェル、『メッセンジャー』などのウディ・ハレルソンら豪華キャストがそろう。

あらすじ:脚本家のマーティ(コリン・ファレル)は、新作『セブン・サイコパス』の執筆に行き詰まっていた。彼にアイディアを与えた友人のビリーは、売れない役者業のかたわら、知り合いの爺さん(クリストファー・ウォーケン)と一緒にペットの「拝借業」を営んでいた。要は、飼い主の謝礼金目当ての誘拐ビジネスだが、ある日彼らは凶暴なギャングの愛犬をさらってしまい、命を狙われるハメに。
しかし、恐怖なんてどこ吹く風のビリーは、悩める親友マーティンのために脚本執筆の手助けをしようと、マーティに事前に相談することなく、ネタ集めのためにサイコパス募集の広告を出す。その後、ウサギを持つ殺人犯、犬をこよなく愛するマフィア、殺し屋が集まるのだが……。

<感想>やっと地方でも上映された本作品。この作品と「THEICEMAN/氷の処刑人」は、昨年から楽しみにしていたので鑑賞した。奇妙な味のサスペンスアクション。その奇妙さが、最後まで奇妙なままで終わってしまうところが問題である。
確かに奇想とユーモア溢れた犯罪コメディになっているが、それだけではこの映画の破天荒な魅力は語れない。サイコパスな男についてのストーリーを思いつき、そこから雪だるま式に他のストーリーを幾つか続けていった、と語っているが、まさにその行き当たりばったりの展開が裏目に出て、つまらなくはないが、面白くもないというのが正直の感想。
まぁ、それでもちゃんと、映画の前半で1番から7番までの、サイコパスがテンポよく紹介され、ド派手な血しぶき描写とともに彼らの武勇伝が語られるのがいい。

中でも5番目に出て来るサイコパスの、トム・ウェイツは有名殺人犯ばかりを狙う“シリアルキラー”で、ソディアックは自分が殺ったと豪語している。その他にも、ベトナム戦争で家族を殺された男が渡米して、退役軍人を一人ずつ血祭りに上げるエピソードとか、主人公の脚本に書かれているB級なネタがこれでもかとぶちまけられる。

一見、劇中で多用されるクレジットや、キャラ立ちしすぎた群像劇の騒々しさが、90年代のタランティーノやガイ・リッチーなど、一回り昔な気配を漂わせている感じが印象的です。

犬を偏愛するギャングのボス、ウディ・ハレルソンの設定も少し気恥ずかしいような。だが、映画内の映画を製作する虚構性は機能しているのだ。

サイコパスの中でも、叙情性を感情一杯に表現するクリストファー・ウォーケンが砂漠をさすらう美しさ、コリン・ファレルが常識人に徹し、日常に戻りながらも、もはや昨日の自分には戻れないと、最後に決定的経験を経た落ち着きには、気持ちよくマイペースで落ち付いた演技で良かった。

そして、ニヤニヤと軽薄に笑いながら冗談をいい続けるサム・ロックウェルの、ビリーというキャラクターのステレオタイプな妄想が、脇役ながら常に主役を食いかねないくらい巧すぎて怖いのだ。演技派のサム・ロックウェル恐るべし。赤い目出し帽を被った「ダイヤのジャック」の殺し屋も彼とは、驚きです。
頭の中の妄想は、何回も巡ってもステレオタイプでしかなく、だからそこに絡めとられようが、抜け出せなく結局のところ冗談の印象しかない。登場人物たちのオタク・トークも聞いていて脱力気味で惜しいきがした。

そして、女優陣の出演も、マーティの恋人のカヤ役のアビー・コーニッシュと、ギャングの愛人役、オルガ・キュリレンコをビリーが寝取ってしまうなど、チョイ役で残念です。
この映画の場合スタイルがあるとすれば痛烈なユーモアだから、コメディ、スリラー、ドラマという様々な要素が入った内容です。監督が英国の戯曲家というあたりが、この映画の雰囲気をよく表していると思います。
2014年劇場鑑賞作品・・・22  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

THE ICEMAN 氷の処刑人 ★★★★

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「テイク・シェルター」のマイケル・シャノンが“アイスマン”と呼ばれた実在の殺し屋リチャード・ククリンスキーを演じる衝撃のクライム・ドラマ。周囲には良き家庭人として知られる一方、約20年間で100人以上といわれる殺人に関わった冷酷無比な男の恐るべき二重生活の実態とその心の闇を描き出す。共演はウィノナ・ライダー、ジェームズ・フランコ、レイ・リオッタ、クリス・エヴァンス。監督はこれが長編3作目のアリエル・ヴロメン。
あらすじ:1964年。美しい女性デボラを射止め、子宝にも恵まれたリチャード・ククリンスキー。平穏な日々を送っていた彼だったが、ひょんなことからその度胸を見込まれ、ギャングのロイから殺しの依頼を請け負うようになる。1970年代半ば。殺し屋家業も板に付き、すっかり羽振りも良くなったククリンスキー。妻には為替ディーラーと偽り、家庭では相変わらず良き夫にして、良き父親としての顔を保っていた。そんな中、ロイとの契約関係が破綻し、仕事にあぶれたククリンスキーは、ミスター・フリージーというフリーの殺し屋に近づき、仕事を斡旋してもらうようになるのだったが…。

<感想>実在した暗殺者の凶行を描いた実力サスペンス。なんかアメリカ映画らしい映画が登場したと思った。「殺人」が転職である実在した殺人マシーン、リチャード・ククリンスキー。しかもその職能を生かせる場所は多くなく、失業の危機はもう大変なのだ。更にゴルゴ13と違って家族を強烈に愛しているから、人間としては謎が深まります。

演じるマイケル・シャノンの不気味な怪演に殆ど見惚れてしまった。まずは、水で完敗と言って、ウィノナ・ライダーに不吉だと言われる冒頭部の奇妙な静けさがいい。リチャード・ククリンスキーのキャラクターが、病的とか異常というふうでなく、ごく普通に見える所がこの作品のキモなのかもしれません。とにかく、シャノンの平静さが怖いのだ。冷酷このうえない殺し屋でありながら、家族に対しては完璧に善良な夫であり父親であっただけでなく、神を信じていないのに、娘をカトリック系の私立学校に入れるという矛盾だらけの主人公なのだ。

加えて映画にかかわる主役級の俳優さんたちが脇を固めている。大物マフィアのロイ役のレイ・リオッタが演じ、ククリンスキーに目を付けて、目の前で街の浮浪者の老人を殺せと命じる。これが凄いんですよ。

それに、ジェームズ・ブランコの殺され方の悲惨なんです。彼が殺される前に「オー・ゴット」と言ったがために、「神を信じるなら祈りで俺を止めて見ろ」このシーンは強烈な不快感が残りました。
かくして、水を得た魚のように銃殺に、刺殺、絞殺と臨機応変に殺しまくるククリンスキー。殺せば殺すほど儲かるので、愛する妻には自分の仕事は証券ブローカーだと嘘をついて、立派な家も購入した。
しかし、殺し屋稼業も仕事が無くなり、廃業寸前のところにエヴァンス演じるミスター・フリージーに遭遇し、タッグを組むことになる。彼のシアン化合物を用いて毒殺。死体を冷凍保存した後に遺棄、殺害時期を判別不能にするという技術も学ぶのだが、エヴァンスが殺され、シアン化合物を仕入れる闇取引の男と出会うのだが、その男がまさか潜入捜査官だったとは。

ですが、あえて矛盾だらけのままに描き、派手に作ろうと思えばいくらでも派手にできる題材を、極めて地道にかつ丁寧に映画化していると思う。途中から登場するクリス・エヴァンス演じるアイスクリームの行商人も、シャノンに負けないほど怪演しているのだ。あの、「キャプテン・アメリカ」を演じたエヴァンスがですよ、汚い長髪にヒゲ、垂れたサングラスをかけての、筋肉ムキムキぶりに驚きです。
シャノンとエヴァンスが乗るアイスクリームのバンの不気味な存在感(まさか、シャノンが目撃者の少女を逃がしてしまったのを、エヴァンスが見つけて殺し、冷凍保存している)とか、ラストに登場するネコとかの面白い細部もあり、ノワール感たっぷりの画面が昼間のシーンも含めて中々いい出来であります。
私にとって、マイケル・シャノンは、この1作で忘れられぬ俳優となりました。
2014年劇場鑑賞作品・・・23  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

楽隊のうさぎ ★★★.5

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引っ込み思案な中学生が吹奏楽部に入部したことから音楽の面白さに目覚める姿を描いた中沢けい原作の小説を、『ゲゲゲの女房』などの鈴木卓爾監督が映画化した青春ドラマ。主演の川崎航星をはじめ46人の生徒役には、舞台となった浜松市在住の子どもを中心に、オーディションにより抜てきした。宮崎将、井浦新、鈴木砂羽などが脇を固める。子どもたちの生き生きとした様子や、ライブ収録で撮影されたクライマックスの演奏会が印象的。
あらすじ:授業が終わったら、早く帰りたいと願う中学1年生の奥田克久(川崎航星)は、ある日、不思議なうさぎを追い掛けたことがきっかけで吹奏楽部に入部。吹奏楽部は練習時間が最も長いクラブだったが、克久は次第に音楽に夢中になっていく。そして定期演奏会に向けて練習に励んできた克久は、ついにその日を迎える。

<感想>街に出て時間が空いていたので鑑賞した。それが意外に良かった。オーディションで選ばれた46人の子供を起用して、中学生の吹奏楽部の部活動を中心に、友達とのいざこざや自分の中の葛藤に悩みながら、成長していく部員たちの姿を丁寧に描いています。

中でも、部活に関心のない主人公少年を吹奏楽部へと誘導する“うさぎ”の存在が謎で、この少年にしか見えないというのも意味ありげなのだが、このうさぎ以外は、かなり誠実でリアルな作品に仕上がっている。

それに中学生たちの表情がいい。この時期にしか見せない表情がうまく捉えられている。児童映画的な邪気のない物語の中で、素人の子供たちが映画の中の時間を、生き生きとして楽器を奏でる。そこから発せられる音に、個性が感じられことに幸せな気分になる。
それに、主人公の無口が尋常じゃなく、あの宮崎将が饒舌に見えるくらいである。もっとも女の子はみんな、お喋りで少年は彼女たちの言葉によって、未知の世界に引き出される感じでもある。

パシリをやらされている少年が、吹奏楽を通じて、自分の居場所、そして自分の声を見つけるまでの物語でもある。たっぷりと時間をかけて、自分の楽器のエキスパートになるのも大変なもの。地域の人たちも吹奏楽好きっていう細部が効いていてこれも良し。
子供たちも演奏を含めてそれぞれに好演しているのもいい。相手の音を良く聴いて、自分の音をどう響かせるかという先生の言葉に、なるほどと感心したり、親たちを殆ど介入させず、部活と子供たちの話だけに絞っているのも、観ていて気持ちが良かった。ラストの演奏にもワクワクですよ。
2014年劇場鑑賞作品・・・24  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

小さいおうち ★★★★

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第143回直木賞を受賞した中島京子の小説を、名匠・山田洋次が実写化したラブストーリー。とある屋敷でお手伝いさんだった親類が残した大学ノートを手にした青年が、そこにつづられていた恋愛模様とその裏に秘められた意外な真実を知る姿をハートウオーミングかつノスタルジックに描き出す。松たか子、黒木華、吉岡秀隆、妻夫木聡、倍賞千恵子ら、実力派やベテランが結集。昭和モダンの建築様式を徹底再現した、舞台となる「小さいおうち」のセットにも目を見張る。
あらすじ:健史(妻夫木聡)の親類であった、タキ(倍賞千恵子)が残した大学ノート。それは晩年の彼女がつづっていた自叙伝であった。昭和11年、田舎から出てきた若き日のタキ(黒木華)は、東京の外れに赤い三角屋根の小さくてモダンな屋敷を構える平井家のお手伝いさんとして働く。そこには、主人である雅樹(片岡孝太郎)と美しい年下の妻・時子(松たか子)、二人の間に生まれた男の子が暮らしていた。穏やかな彼らの生活を見つめていたタキだが、板倉(吉岡秀隆)という青年に時子の心が揺れていることに気付く。

<感想>昭和の始め頃の東京の小さな家で働く女中さんと、その時代の描き方がとても良く出ているので、人物のデッサンがきちんとしているし、ドラマの骨格もしっかりとしていて、安心して観ることができました。
冒頭でのおばあちゃんの葬式から、彼女の部屋を片付けることで日記を発見して、おばあちゃんの歴史を孫たちが辿るという設定が「永遠の0」と良く似ているようですね。タキの古い手紙を見つけて、親類であった妻夫木聡がタキが奉公をしていた家の息子を訪ねるという物語。
そこには、若いころに女中をしていた「小さなおうち」の出来事で、何か秘密があるような、年老いたタキの部屋を訪ねた時に、健史に何やら話したい素振りを見せながら泣き崩れる姿に、そんな悲痛な感銘が込み上げてきます。

戦前の中流家庭の女中奉公の話であるが、タキという中心人物の女中さんが、本当に素直で献身的に働く女性であり、雇い主の夫婦がまた、それに感謝をして、よく言う「家族同様」の人間関係と雇用関係がそこでは成り立っているから、そこにはドラマらしい矛盾や対立などは、何もないように思われる。

ところが、矛盾は意外なところから現れるのですね。タキは主人夫婦に、特に奥様の美しさや人柄の良さに心酔して、あくまでも忠実だが、その忠実さには普通の主従関係のそれを超えたところがあるようだ。
田舎ものの自分と比べて、奥様の立ち居振る舞いや装いなど、本当に憧れの存在であり、その息子が小児麻痺で歩けなくなり、リハビリに励むタキの様子は、奥様に対してのいたわりであり、夫から奥様にそんな子供を産んだという負い目を庇うような頑張りでした。
というか、もうレズビアンのような、憧れが奥様を愛してやまない存在になり、だから奥様が不倫に走ろうとしていることを知った時も、自分の判断でそれを妨害したのである。それが忠義のつもりなのか、いや敬愛する奥様に過ちを犯させたくなかった。
その奥様が、召集令状が届いた不倫相手の板倉の元へと、会いにいくところを玄関先で止め、無理やり手紙を書かせて自分が届けるという役目を果たさなかったのである。
奥様の板倉への想いを知っていながら、手紙の封をしたまま死ぬまで開けなかったタキさんの痛恨の心がこの映画の神髄となっています。

戦時中の日本では、封建社会の道徳が色濃く残っていた時代で、ましてや不義密通なんてことになると本人は重罪となり、夫も息子も、親戚さえも社会からはじき出されてしまいます。ですから、この場合、女中であるタキさんがとった行動は、どうみても懸命な行動で良かったのではないかしら。
だが、この主人夫婦は、それからまもなく空襲の時に入った防空壕で、二人とも死んだと知ってから、タキは深い悔根に捉われる。どうしてかというと、奥様がそんな死に方をするくらいなら、不倫を成就させてあげた方がむしろ良かったのではないか。気の毒なことをしたと。

あの時、奥様が自分に託した愛人、板倉宛への手紙を、相手に渡さなかったという事実が想像されるだけなのであるが、そういうタキの思いを通じて回想された戦時下の恋人たちの悲劇が、この作品に苦い思い出だけでは終わらない悲痛な味わいを残すことになります。
タキが、ちょっと出過ぎた行動は、彼女がこの家に来る前に、やはり女中として働いていた小説家の家の主人から教わった、模範的な召使の有り方についての話の影響であるかのような伏線が、実は張ってあるのだが。この小説家の主人には「東京物語」の橋爪功、吉行和子が夫婦が演じている。

この女中としての若き日のタキには、黒木華が演じており、その行動を、今でも悩んでいる年老いた彼女を演じているのが、倍賞千恵子である。奥様には松たか子さんと3人の女優さんたちの圧巻の演技に、最後までじっくりと見せる作品になっています。
最後に見せた、タキのいつもの優しく温かい表情とは違う深刻な顔、悩んでいるようなせつなく悔やんでいるような、泣き崩れる顔。善も悪もまったく微妙で、タキが善意でやったつもりが、じつは酷いことだったかもしれないという悩みである。
タキの行動は、果たして戦前の封建的な主従関係を超えたものだったのか。身分関係を超えた人間関係が描けているところに、この作品の良さがあるといっていいでしょう。
2014年劇場鑑賞作品・・・25  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ビッグ・ピクチャー ★★.5

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ダグラス・ケネディの同名サスペンス小説を、舞台をフランスに移し替えて映像化。出演はロマン・デュリス、マリナ・フォイスとカトリーヌ・ドヌーブ。パリで弁護士として活躍するポールには、美しい妻サラと二人の娘がいた。ある日ポールは、サラが隣に住む売れない写真家グレゴワールと不倫関係にあることを知る。隣家を訪れたポールは思わずグレゴワールを殴り殺してしまうが、自分の娘を「犯罪者の子供」にしたくないと、グレゴワールに成りすまして生きることを決意。死体を始末し東欧へ飛び立ったポールは、写真家として新聞社と契約し働き始めるのだが…。
<感想>劇場未公開作品。パリで法律事務所を共同経営し、美しい妻のサラと2人の子どもにも恵まれているエリート弁護士のポール。ところがある日、日頃からの疑いが的中して、隣に住む写真家のグレッグと妻のサラが浮気していたことを知ったポールは、ついカッとして彼を殴り殺してしまう。事態の発覚を恐れたポールは、死体を棄てると自分も事故死したことにして、グレッグに成りすまして東欧の地方都市で写真家としていきるのだが、・・・。

とまぁ、あらすじはこうなのだが、主人公・ポールを演じるのは、「タイピスト!」「ハートブレイカー」「ムード・インディゴ うたかたの日々」のロマン・デュリス。ポールのビジネス・パートナー役でフランスの大女優、カトリーヌ・ドヌーヴが出演、豪華に脇を固める。
本作は、ダグラス・ケネディのミステリをフランスで翻訳映画化したものなのですね。殺人を犯してしまった男が、第三者に化けて逃亡する内容だが、死体の処理や自らの死の偽装とか、パスポートの書き換えと。「太陽がいっぱい」の時代ならともかく、情報管理社会の先進国でこんなことが可能なのだろうか。そういう疑問とか、残念なことにストーリー展開に説得力がないのがつまんないですよね。
主人公の行動パターンに疑問が多すぎるし、何かがバレそうになる訳でもないのに、1人で勝手に焦っている描写にサスペンスはありませんですから。
それに、隠遁生活を送らなければならないのに、そもそも裕福な弁護士の上に、趣味の写真の腕前も一流っておかしいでしょうに。そんな彼が、写真家として脚光を浴びるとか、そんなこと笑い話にしかならない。
ここまでくるとミステリーとして観るにはガッカリな気がします。1人の男の逃亡劇を心象風景と共に描いたちょっと変わったロードムービーですよ。しかし、身分を捨てて別人として生きる。つまり妻が浮気した相手で、自分が殺してしまった男として生きるには、アメリカよりもヨーロッパという舞台は効果的だし、過去を失くした男の彷徨いぶりが、寒々とした風景にもハマっていてとてもいい。

贅沢なのは、主人公の勤めている弁護士事務所のオーナーが、カトリーヌ・ドヌーヴってどういうこと。それも、自分は会社を辞めて全部ポールに譲るというのだから。弁護士ならいくらでも自分が殺人を犯したことを、正当防衛とかで無罪にできるでしょうに。それを無駄にして、逃亡劇をしてバレそうになると、また他の地へと逃げるとは。
原題の「自分の人生を生きたかった男」という映画のタイトルが示すとおり、主人公ポールは、妻の不倫相手を殺してしまった後、その男になりすまして、子供のころからの憧れだった写真家として新たな人生を送り始める・・・。
何となく「太陽がいっぱい」を彷彿とさせるサスペンスフルなノワールタッチの傑作ミステリーに仕上がっている。
主人公が最後にとった行動が、写真の個展を開き脚光を浴びて、NYでも個展を開かないかというオーナーからの誘いを断って、一人南米へ逃亡するエピソードが、悪徳密航をする船で唐突な尻切れな最後には、この先どうなることやら?・・・という不穏なオチで締め括っているのがミステリーなのかもしれないですね。
2014年DVD鑑賞作品・・・5  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

グリフィン家のウエディングノート ★★★

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ロバート・デ・ニーロ、キャサリン・ハイグルなど豪華キャストが出演し、10年ぶりに集結した家族の結婚式でのドタバタを描くコメディードラマ。奔放な父親を中心にオープンだが実はそれぞれに秘密を隠し持つ一家が、最も幸せで神聖なはずの結婚式でエッチなネタ全開の無礼講を繰り広げる。メガホンを取るのは、『最高の人生の見つけ方』で脚本を手掛けたジャスティン・ザッカム。ダイアン・キートンやスーザン・サランドン、ロビン・ウィリアムズも共演を果たした実力派の出演陣による丁々発止のやり取りに笑いが止まらない。
あらすじ:型破りな彫刻家のドン(ロバート・デ・ニーロ)をはじめ、家族中がオープンなグリフィン一家。養子である次男アレハンドロ(ベン・バーンズ)の結婚式に実の母親が訪れることになり、信心深い彼女の手前、ドンは離婚したエリー(ダイアン・キートン)と共に結婚式限定で夫婦を装うことに。しかし、グリフィン家の面々が隠し持つ秘密が次々と露呈。せっかくの計画が見事に崩れてしまい……。

<感想>なんとまぁ、ロバート・デ・ニーロ、ダイアン・キートン、スーザン・サランドン、アマンダ・セイフライド、キャサリン・ハイグル、ベン・バーンズに神父役のロビン・ウィリアムズと、超豪華スターが一堂に集結する結婚式騒動曲です。それに、デ・ニーロらオスカー俳優たちがまさかの下ネタギャグに挑んでおり、驚かされます。

息子が結婚することになり、自由奔放な芸術家のドンが、結婚式限定で別れた妻のエリーと元サヤ収まることになるわけ。それは結婚式参加者たちへの世間体からの緊急措置だったのだが、どういうわけか、元夫婦の焼けぼっくいに火が点いてしまい、結婚式は大波乱の模様になってしまう。家族それぞれが、隠していた秘密が次々と明らかになり、大騒ぎに。

つまり、ドンには元妻の友人だったビービー、スーザン・サランドンが、ドンと出来てしまい結局は夫婦は離婚ということになる。その後は、屋敷に入り込み事実上の夫婦生活を送っていたサランドンが、世間体から家を追い出されるということに。それで、黙って引き下がる女ではないサランドンは、結婚式の給仕役で結婚式に登場するんですね。
その他にも、長女のライラのキャサリン・ハイグルが、子供が出来ないという不妊が理由で夫と険悪ムードになってイライラしっぱなし。長男のジャレッドは、大病院に勤める医師だが、理想の女性を求めるあまりに、30歳を目の前にしてまだ童貞。結婚式に来ていた、養子で弟のアレハンドロの妹に惹かれてしまう。

その妹はコロンビア生まれで、男と見たらすぐに誘惑してベッドインという軽い女。長男の童貞を守るために、実母のエリーがその妹に入れ知恵してうまく収めるが、最後にはやっぱりいい仲になってしまう。そして、長女のライラも、妊娠していたなんて自分で知らなかったとはね。夫婦円満の解決は、夫を電話で呼び出して妊娠の報告をすることです。

花嫁のメリッサは、教会で式を挙げたいのに、婚約者のアレハンドロに信仰心がないことから、神父の講習を受けることに。この花嫁の両親も脱税疑惑で問題を抱えている。
結婚式前って、両家がそろって食事会があったり、宿泊先の手配とか結婚式会場も新郎新婦のどちらかの家の庭で挙げるのよね。それはそれで、華やかで楽しいし、信仰する宗教が違えば嵐の予感がするわ。超めんどくさいと思うけれど、両家の親族が顔合わせをする場だと割り切ればいいんですから。

エッチと汚物ネタが満載だけど、「最高の人生の見つけ方」の脚本を手掛けたジャスティン・ザッカム監督なので、ラストではまるっと大団円に収まるのです。
でも、最後に花嫁、花婿よりも、デ・ニーロとスーザン・サランドンの結婚式もあって、少し目立ちすぎじゃない、なんて思いましたね。
2014年劇場鑑賞作品・・・26  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

もうひとりの息子 ★★★.5

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いまなお根深い対立が続くイスラエルとパレスチナの問題を背景に、それぞれの家族の間で子どもの取り違え事件が発生したら、という衝撃的な題材で描き出す感動の家族ドラマ。子どもの誕生から18年目にあまりにも残酷な事実を突きつけられた憎しみ合う2つの家族の動揺と、幾多の葛藤を重ねながら辿る選択への道のりをリアルな筆致で描き出す。監督は本作が長編3作目となるフランス人女性、ロレーヌ・レヴィ。2012年の東京国際映画祭では、みごとグランプリと最優秀監督賞の2冠に輝いた。
あらすじ:テルアビブに暮らすフランス系イスラエル人家族の18歳になる息子ヨセフ。ある日、兵役検査で両親の実の子ではないことが判明する。18年前、湾岸戦争の混乱の中、病院で別の赤ん坊と取り違えられていたのだ。しかも相手は高い壁の向こうに暮らすパレスチナ人夫婦の息子ヤシンだった。最初は事実を受け止めきれず激しく動揺するヨセフとヤシン、そしてそれぞれの家族たちだったが…。

<感想>イスラエル人夫婦とパレスチナ人夫婦の赤ん坊が、病院で取り違えられ、それが18年後にわかった、という話である。子供が取り違えられる話は、幾度も映画化されてきたが、取り違えがパレスチナ人とイスラエル人の間でおこったとなっては、普通に考えても丸く収まるなどありえそうにない。
宗教や言語、文化の異なる家庭で育ち、ある日突然「自分とは何者なのか?」という同じ問いに直面する2人の青年たち。
イスラエルのテルアビブに暮らすヨセフは、軍人の父と医師の母、妹との4人暮らし。両親がフランス系であるため、ヘブライ語だけでなく、家の中ではフランス語もつかっている。音楽が好きでミュージシャンになることを夢見ている彼は、兵役に就くために受けた検査で、自分が両親から生まれるはずのない血液型であることを知る。

一方、彼と取り違えられ、ヨルダン川西岸地区で育ったヤシンの母親はアラビア語だが、両親や兄、妹と離れて親戚の住むパリで学び、大学入学資格を得たばかりという設定。ヨセフ役を「リトル・ランボーズ」のジュール・シトリュク、ヤシン役をベルギー出身、若手俳優マハディ・ザハビが演じている。
ヨセフは、愛情あふれる、どちらかと言うと少し過保護な家庭で育って、まだ思春期を抜け切れていないキャラクターで、身体的にもちょっと子供っぽいあどけなさが抜けない感じの青年。
ヤシンは、早くから家族と離れて暮らし、パリに住んで学校に通い、バカンスだけ帰って来るという。社会生活に一歩足を踏み入れている大人の雰囲気のする青年です。そうした違いが、観ている側にもすぐに分かっていいですね。
ヨセフとヤシンが取り違えられていた、という事実は、それぞれに彼らを愛していた家族にも同様を与え、父親たちが自体を中々受け入れられない一方で、母親たちはすぐに自分たちがすべきことを理解して、手を取り合います。これは、女性が持っている特性だと思われます。大地に根ざし、真実に近く、人生に対しても本能ですぐに感じ取ることができる。母親ともなれば一層に、それが強まり、子供の為に自分を投げ出すことも可能でしょう。

アラブ人とユダヤ人という複雑な状況の子供を取り違え、二つの家族を個々の社会のメタファーにして、父、母、兄、妹と、それぞれに託す構成と名演が驚異的で、今の日本の姿にも重なっていく。まさに、昨年のカンヌ映画祭コンペ部門で見事に審査員賞を受賞「そして父になる」に匹敵するようでした。
18歳のヤシンとヨセフ。思いもよらない事実を受けいれていく1カ月。18歳という年齢はまだ、か弱くもろい年代で、本当の意味でのアイデンティティをようやく築き始めたところだと思います。取り違えという出来事がおこることによって、そんな年齢にある青年たちの、築きかけてきたアイデンティティが崩壊し、ゼロから作り直していかなければならないなんて。
ヨセフとヤシンの2人は、相手が生きてきた場所や家族を知るために、検問所を抜けてそれぞれの家を訪問して、出会いを重ねながら少しずつ親しくなっていく。そして、何よりも大切なのは当事者と言う眼が、想像するだけに胸がつぶれそうな苦悩を抱えつつ、最良の解決を目指して歩み出す。このお話を客観的にきちんとまとめているのに感心しました。

イスラエルとパレスチナという非常に近い存在でありながら、戦争をしている場所を背景とするこの物語に希望もメッセージはあるのだろうか?・・・。もっともホットな政治問題を、このような角度から捉えたことにも凄いと思った。未来は、若者に託していくものだと静かに語るレヴィ監督。当事者の声が聞こえる社会が、自立した社会だと再確認する。
女性監督のレヴィはフランス人だが、ユダヤ人でもあるのだ。この映画の公平さと監督の誠実さに感心しながらも、イスラエルとパレスチナの現実の難しさを改めて感じさせられました。
2014年劇場鑑賞作品・・・27  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

マイティ・ソー /ダーク・ワールド(3D)★★★★.5

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<感想>「アベンジャーズ」での地球を守った最強の7人チームの中心メンバーとして、同作でも存在感を示したマイティ・ソーが、2作目の冠作品をひっさげて、稲光と轟音をとどろかせながら地球へと舞い戻って来た。
主人公のソーを演じるのは、これが当たり役となりスターダムへと駆け上がったクリス・ヘムズワーズ。ブロンドの髪をなびかせ、彫刻的とも言える肉体美を惜しげもなく披露して、アベンジャーズ最強の男を再再演している。
ところが、ソーの義弟にして宿敵でもあるロキは、地球を混乱に陥れながらも、NYでの戦いに敗れてソーによってアスガルドへ連行された彼は、禁固刑に処せられ、地下の牢獄へと。

かつて、我が子を裸一貫で地球に放逐した父王のオーディン、アンソニー・ホプキンスが威厳たっぷりに、まだまだ息子には王位を譲らぬと演じて見せる。だが、アスガルドには未曾有の危機が迫っていた。それは5000年前、オーディンのそのまた父親が倒して封印したダーク・エルフのマキレスが復活したのである。
ミッドガルドこと地球に、アスガルドを含む9つの世界をまとめて滅ぼすことができるという恐るべき暗黒の物質「エーテル」を求めて動き始めたやつら。マルキスの部下がパワーアップして巨大化した怪物が攻めてくる。

それに、地球で重力の研究をしていたジェーンにエーテルが接触して、体内に取り込んでしまう。ソーは何かを感じて地球へと降りるのだが、ジェーンにひっぱたかれてしまう。しかし、ジェーンの体が闇の「エーテル」で力が増大して、警官たちを吹っ飛ばしてしまうのだ。
宿主の生体エネルギーを取り込み強大化するという暗黒の物質エーテル。このままでは彼女の命が危ない。そうこうするうちに、マレキスの軍勢がバリアを破って急襲してくる。反撃するも敵のエーテルの力に適わずアスガルドは崩壊の一歩手前に追い詰められる。

だが、マレキスとの強大な力と互角に渡り合うには、ロキと組むほかないと決意したソーに、共闘を打診される。義兄の賭けとも言える申し出に応えるが、邪神の異名をとるロキの真意たるや、「何?、彼は自分や兄も変装させる魔術師みたいな力があるのだ。」これには驚かされましたね。
「そうきたか」という展開が待っているんですよ。今回のロキ役のトム・ヒドルストン、泣きの見せ場もあるので、ご注目あれ。悪役なれど憎めぬ存在感があるのに、ファンになってしまった。

「アベンジャーズ」戦いの後から始まる、今回の物語。雷神、みたび降臨!__最強の戦士であるソーにとっても、闇の力を駆使する“最恐”の敵ダークエルフが出現する。さらには、地球での重力の異変や、愛するジェーンの究極の試練、さらに宿敵だったロキとの結託と、予想外の展開に、ラストの一瞬まで目が離せません。ソーがロンドンで地下鉄に乗るシーンで、イカツイ筋肉美に乗客の女が胸に触ってうっとりって、笑えますから。
前作以上に神の国アスガルドの荘厳な風景には圧倒されるうえ、「パシフィック・リム」の司令官だったイドリス・エルバが、アスガルドの門番のヘイムダムで大活躍。
時空を自在に駆け巡る豪快アクションに呆気にとられ、要所では「アベンジャーズ」仲間の思わぬ登場(キャプテン・アメリカの彼がカメオ出演)など、笑いのエッセンスもたっぷりで、娯楽アクション映画の王道を極めた見事な仕上がりになっています。
オマケの映像があるので、是非、エンドロールの最後まで帰らないでご覧ください。
2014年劇場鑑賞作品・・・28  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

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ラッシュ/プライドと友情 ★★★★★

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F1レーサー、ニキ・ラウダとジェームス・ハントが壮絶なタイトル争いを繰り広げたドラマを映画化。事故で大けがを負いながらもシーズン中に復帰したラウダと、性格もドライビングスタイルも正反対なハントの死闘とライバル関係を、臨場感あふれるレースシーンと共に描く。監督は、『ビューティフル・マインド』などの名匠ロン・ハワード。陽気なハントをクリス・ヘムズワース、冷静沈着なラウダをダニエル・ブリュールが演じる。
あらすじ:性格もレーススタイルも相反するF1レーサー、ニキ・ラウダ(ダニエル・ブリュール)とジェームス・ハント(クリス・ヘムズワース)が激しい首位争いを繰り広げていた1976年。ランキング1位だったラウダはドイツ大会で大事故に遭遇し、深いけがを負う。復活は無理だと思われたがわずか6週間でレースに復帰し、日本の富士スピードウェイでのシリーズ最後のレースに臨む。

<感想>最先端のテクノロジーが凝縮されたマシンを、世界最高峰のドライバーが駆ける、究極のモーター・スポーツ、“F1”。死亡事故が多発していた70年代のF1界で、計算し尽くしたドライビングで勝利を重ねたオーストリア出身の、ニキ・ラウダ。
彼は走るコンピューターの異名をとる理論派というだけに、マシンの構造を熟知し、セットアップもサーキットごとにこだわり、メカニックにも妥協を許さず厳しい要求を突きつける。だから、沈着冷静な走りでレース展開は手堅い。ニキを演じたのは、最近では「みんなで一緒に暮らしたら」に出ていたダニエル・ブリュールが、事故後の本人そっくりの激似の特殊メイクを施しての熱演です。
一方、ワイルドな走り方とロック・スターのような生き方で、人気を集めた英国人ジャームス・ハント。生まれも育ちも性格も正反対、顔を見合わせれば互いにののしりあう宿敵同士である。このハントは、良家のお坊ちゃんでF1界ではプレイボーイとして有名。レース直前に何故か緊張するのか吐く癖があります。それに、酒、薬、女と超人的なスケコマシで、カリスマレーサーを自然体で演じたのが、「マイティ・ソー」の金髪ロン毛の、筋肉マッチョなクリス・ヘムズワースと、どちらもハマリ役です。

本作は、「アポロ13」など実話ドラマに定評のあるロン・ハワード監督が、彼らがマイナーリーグのFクラスから、F1レーサーへとのし上がるまでのプロセル、高性能の車体を手に入れるために有名なスポンサーと契約しようと奮闘する姿まで、克明に描くシナリオの構成も見事です。そんな好対照をなす2人の争いに焦点を当てたヒューマン・ドラマになっている。

世界が注目した両者の対決は、1976年8月のドイツGPで起きた「ニュルブルクリンクの悪夢」で、ニキ・ラウダを襲った壮絶なクラッシュによって、衝撃的な結末を迎えたかのように思えた。しかし、2人の戦いはそう簡単には終わらなかった。
生き急ぐ男たちの祭典、F1グランプリ史上に残る「世紀のバトル」を描いた史上最速バトルが勃発。スピードと勝利の快感に取り憑かれた男たちの真剣勝負を、エネルギッシュに撮っているのだ。

カーレースの醍醐味といえばクラッシュ・シーンだが、マシンに座ったまま首チョンパされた死体とか、脚のスネがまっぷたつに折れて骨が飛び出したまま運ばれるレーサーなど、生々しい残虐描写が堂々と描かれている。もちろん、ニキがクラッシュした場面も映されます。燃え盛る車体、脱出できないくらい体がぴったりと挟まった状態で、身動きが出来ない。ただ助けを待つばかり。

この映像はショックでした。担架で病院へ運ばれるも、あの世への世界を彷徨い、奇跡的に助かったニキ。頭から顔にかけての火傷の痕が生々しくて観ていられない。それに、車体から発生した毒ガスを吸い込んだため、肺の火傷だ。その治療方法は、口から金属管を通して肺の中の膿を吸引する痛々しさは、とても観ていられません。
それでも、事故から42日後に、イタリアGPでニキが驚異的な回復力と精神力でレースに復帰を果たすのである。顔にはまだ生々しい火傷の傷跡を残した姿で、マスコミの前に現れる。
彼の最後のレースは、日本GP、富士スピードウェイで、大雨の降る悪天候での走行。このレースを決行するか否かは、レーサーの挙手で決めるんですね。走りたいというレーサーたちの意気込みで、行われる生と死の境目でのレース。
要所のレースシーンでは、ドライバー目線の映像で、未知のスピードを臨場体験します。
疾走する映像と、耳をつんざくような排気音のもたらす高揚感は、劇場で体感しないと勿体ないですから。リアルな臨場感たっぷりで、興奮度マックスでした。

この映画を観て、以前鑑賞したF1ドライバーの、「アイルトン・セナ/音速の彼方へ」(10)を思い出しましたね。イケメン”セナ”の映像をまた観たくなりました。
2014年劇場鑑賞作品・・・29  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング


ウルフ・オブ・ウォールストリート ★★★.5

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巨匠マーティン・スコセッシと、ディカプリオが5度目のコンビを組んだ、ヤバネタ満載の伝記ドラマである。デカプリオが演じるのは、ジョーダン・ベルフォートなる実在の人物で、ウォール街での証券詐欺で若くして巨万の富を築いた、最低にして最高のカリスマ。現代の下克上とも言える出世劇から地獄に一直線の急降下まで、破天荒な生きざまをシニカルな笑いを交えて描き出す。
熱演が過ぎて燃え尽きた、ディカプリオの俳優休業宣言まで飛び出した注目の神髄に、マネーゲームには付きものの“数字”から迫る。
26歳で証券会社を設立し、年収4900万ドルを稼ぐようになったジョーダンは、常識外れな金遣いの粗さで世間を驚かせる。全てを手に入れ「ウォール街のウルフ」と呼ばれるようになったジョーダンだったが、その行く末には想像を絶する破滅が待ち受けていた。
ジョーダン自身による回顧録「ウォール街狂乱日記 『狼』と呼ばれた私のヤバすぎる人生」(早川書房刊)を映画化。共演にジョナ・ヒル、マシュー・マコノヒー、マーゴット・ロビーら。

<感想>ワル賢いやり口で瞬く間に億万長者に。成金男の栄光と挫折、ハリウッド版ホリエモンなのか?・・・ディカプリオと言えば、常に眉間に皺を寄せて、演じる役も暗めな人物ばかり。だが、この映画ではでしゃばりっぱなしだし、女も金もドラッグも大好きな傲慢な人物。
憧れのウォール街証券マンなった途端、1987年のブラック・マンデーの大暴落で解雇。転んでもタダで起きないと、リスキーだが手数料が高いペニー株を、優良株に見せかけて売りつける詐欺まがいの商法で荒稼ぎ。

郊外のボロいガレージから始めた会社が、右肩上がりで急成長。経済誌に特集記事が載ったおかげもあってか、入社希望の若者が殺到する。地元の友達数人で始めた会社が、あっという間に800人を擁する一大金融詐欺集団に。
22歳で金融界入りしたジョーダンが初日に教わったのは、「営業の電話は1日500件かけろ」あることないことをまくし立て、相手を納得させる営業トーク術を、メソッド化し、部下に教え込む。暴落すると判っているゴミ証券を売りつける相手は、金持ちに限定。だって、貧しい人を助けたいから・・・ではなくて、純粋に儲かるから。立派な社名と事務所があれば金持ちなんてチョロいもの。
能力のある人間が儲けて何が悪い。という弱肉強食の精神と、カリスマ的なスピーチで野心溢れる部下を鼓舞。さらには、ドラッグOK、社内セックスOK、の楽しい職場づくりを実践する。

唯一無二のパートナー、ドニー・エイゾフをジョナ・ヒルが演じて、野心溢れるジョーダンに惚れこみ、ファミレス店員からジョーダンの右腕に転身。仕事でも乱痴気騒ぎでも最高の相棒になる。
そして、ジョーダンがパーティで出会ったセクシー美女ナオミ。セレブ志向に強く、ジョーダンの下積み時代を支えた妻を蹴落として、本妻の座に収まる2人目の妻ナオミにはマーゴット・ロビーが。金が目当ての結婚、子供が産まれても破天荒な生活をする夫に愛想をつかす。

そして、ちょっとの出演でしたが、ジョーダンが最初に就職をした会社のやり手な上司で、金儲けの極意や、昼間っから酒とドラッグをたしなむライフ・スタイルを伝授したマーク・ハンナにマシュー・マコノヒーが演じて、彼のゴリラふうの胸を叩いて歌うウフォ、ウフォが最高。

そして、ジョーダンの会社のCFOを務める短気な父親役にロブ・ライナーが、ジョン・ファブローは、証券会社の企業弁護士役で出演している。それに、スパイク・ジョーンズは、ジョーダンに株売買を指南するブローカー役で出演。
それでも、稼いだ金は湯水のように使え、ディナー1回100万、200万円は当たり前。週末はプールつきの大邸宅で贅沢なパーティ三昧。フォーカス誌に「金持ちから盗んで自分とその部下に与える、ロビン・フッドのよう」と形容される始末。マイヘリコプターで移動し、元はココ・シャネル所有だった170フィートのクルーザーで航海へと。地中海を巡航し、嵐の中を突っ込む航海で沈没しても気にしないって男って。

積み上げられた札束に囲まれて、女の体に札束を貼り付けてセックスにふけるし、投資家を欺きつづけるジョーダンに、証券取引委員会とFBIの捜査のメスが入るも、クルーザーに来たFBI捜査官に対して、ロブスターを投げ捨て、札びらを投げつける無礼な行動にはゲンナリします。
マネーロンダリングのためにスイス銀行に隠し金を妻の叔母さん名義で預金、これがFBIに決定的な証拠をつかまれる原因になったというのだ。覚せい剤、薬物使用は毎日で、FBIが屋敷に事情徴収に来たときは、ドニーが持ってきたドラッグが期限切れの古い薬で効き目が遅く、大量に飲んでしまい全身マヒ状態での演技が、這いずり回って階段を転げ落ち、車で酔っ払い運転のような、このシーンはさすがのレオ様ですぞ。
主人公のジョーダンの行動は実際にはもっともっと凄いもので、これでもかなりトーンを抑えているそうで、この映画で描かれている状況はあくまでも深刻なのだが、側面から眺める喜劇にもなっている。観客をその渦中に引きずり込んで、仰天する程に不条理な登場人物たちの行動を見せているといっていいでしょう。
2014年劇場鑑賞作品・・・29  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

アメリカン・ハッスル ★★★.5

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1970年代後半のアメリカを揺るがした政治家などの収賄スキャンダル、アブスキャム事件を題材にしたサスペンスドラマ。自由と引き換えに、FBIが仕掛ける悪徳政治家検挙を狙ったおとり捜査に協力させられる詐欺師たちの姿を、スリリングに映し出していく。メガホンを取るのは、『世界にひとつのプレイブック』などのデヴィッド・O・ラッセル。『ザ・ファイター』などのクリスチャン・ベイルを筆頭に、ブラッドリー・クーパー、エイミー・アダムス、ジェニファー・ローレンスら、実力派スターが結集してクセのある登場人物たちを熱演する。

<感想>騙す側よりも騙される方がいい。映画に求める究極のところはそれだけだと言っていいでしょう。気持ちよく騙して欲しいのだ。冒頭での1978年4月28日のニューヨーク・プラザ。クリスチャン・ベイル演じる詐欺師アーヴィンが、鏡の前でウィッグを付けて丹念に髪を19分けに撫でつけているのが可笑しくて笑ってしまう。愛人シドニーに扮しているエイミー・アダムスがFBI捜査官のリッチーに扮しているブラッドリー・クーパーとやってくる。

リッチーがアーヴィンの頭に触って髪形を乱すと、シドニーが叫ぶのだ。「それだけはダメ、すごく時間がかかるの」と、この何てことない冒頭からして異様におかしいのだ。まさに漫才トリオよろしく絶妙な間合いで、この変な髪形をいじり倒す。この人誰?って、よく見るとクリスチャン・ベイルなのだ。中年太りで腹が出ているし、ハゲ隠しのウィッグといやはや、この俳優さんは「ザ・ファイター」でも髪の毛も歯も抜いてげっそりと体重落としたのに、完璧な成りきり演技をしないとダメなのね。
逮捕された2人なのだが、結局はFBI捜査官リッチーの提案で、盗品や贋作で引っ掛ける詐欺師のアーヴィンとシドニーを、「詐欺師仲間を売れば無罪放免にしてやる」と、取引を持ち掛けてきた。逃亡しようと言うシドニーを振り切って、囮捜査に協力させることになる。

それがとんでもない計画で、実在しないアラブの大富豪をエサにしたアーヴィンの計略にまんまと引っかかる詐欺師たち。だが詐欺師の一人が、カムデン市長のカーマインがアトランティック・シティにカジノを建設するための裏金を必要としているとの情報を得て、FBI捜査官のリッチーは作戦を変更して「カーマインとカジノ利権に群がる議員を全員逮捕してやる」と暴走するのである。
ターゲットはカジノ利権に群がるカーマイン市長ら政治家たち。これが最近良く出て来るジェレミー・レナーが、髪の毛をリーゼントにセットして、街にカジノ建設をとやっきとなる。

一方、アーヴィンは詐欺目的で近づいた市長と意気投合してしまう。それに、アーヴィンの浮気を知って作戦をぶち壊そうとする本妻のロザリン。アーヴィンの妻は、デヴィッド・O・ラッセル監督と前作の『世界にひとつのプレイブック』でも組んだジェニファー・ローレンスである。これがまた、ウィングスの曲で踊り狂うシーンなど、ネジの外れた怪演を見せてくれる。エイミーとジェニファー二人の女優魂に火がついたような、妖艶な色気たっぷりなドレス姿で競って楽しいです。

カジノの会場となる歴史のある場所では、ロバート・デ・ニーロがイタリア、マフィアの親分の役で貫録十分です。ラストが本当の見どころなんですね。マフィアの親分にFBIのリッチーを会わせるために弁護士事務所へ行く。ところが本人が用事があって来られないと、弁護士が私が全権を任せられているからといい、FBI捜査官のリッチーが200万ドルをマフィアの親分の口座に送金するようにと、これは上手く騙されましたね。FBIから送金されたお金って、税金ですよね。さすがの天才詐欺師アーヴィンとシドニーの2人に、今回はFBIも上手にやられましたね。
1979年に上院議員と下院議員7人が有罪判決を受けてアメリカを揺るがした「アブスキャム事件」を基にした本作では、詐欺師がFBIの作戦の陣頭指揮を取るという、前代未聞のこのミッション。「俺は騙される側より、騙す方でいたい」と豪語するアーヴィンたちの騙し合いが描かれている。
監督は、作戦そのものよりも人間の感情を人為的に操作する「詐欺」という行為に興味を抱いたのだろう。その結果、愛や憎しみ、友情といった感情に振り回される登場人物を描いた人間ドラマになっているようだ。
今回も70年代のヒットナンバーの絶妙な使い方に、ついニヤリとしてしまう。ビー・ジーズの「傷心の日々」、レッド・ツェッペリンの「グッド・タイムズ・バッド・タイムズ」など、ラッセル監督の選曲センスは完璧でした。
2014年劇場鑑賞作品・・・30  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

コールド・ウォー 香港警察 二つの正義★★★★

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繁華街で起きたテロ・警官誘拐事件をきっかけに、香港警察内部の昇進をめぐる争いや陰謀渦巻く汚職の実態が明らかになっていくサスペンスアクション。予測不能のドラマが展開する本作は、香港でヒットし、第32回香港電影金像奨の主要9部門での受賞を果たした。レオン・カーフェイとアーロン・クォックを主演に、名優アンディ・ラウをはじめ、アーリフ・リー、ラム・カートンなど、ベテランから若手まで多彩な演者がそろう。
<感想>昨年10月に公開になり地方では上映されないと諦めかけていた。遅まきながら1月末に上映された。香港映画に新たな潮流があるのを如実に感じる1本。スタイリッシュとテンポの良さがウリの、韓国版とは一味もふた味も違う、これぞ香港警察物の醍醐味である。

物語は、香港で有名な繁華街モンコックで未明に起きた市街地爆破事件。時を同じく別の場所では暴走者を追跡していた5人の警官が車両ごと行方不明になる。あまりのタイミングに2つの事件に関連性を感じた当局は、現場たたき上げで顔面も含めイケイケ副長官であるリーは、海外出張中の警察長官の代理として全指揮権を掌握。
ところが、警察官が巨額の資金を投じた最新のシステムや、まったく機能しないGPSに疑問を感じ、内通者の存在が疑われる。それどころか消えた5人の警官の1人は、なんとリーの一人息子であるジョーが含まれていることも判明。
リーはこの事件をテロ認定し、レベル2の非常事態宣言を発令、香港警察の威信にかけて勤務時間延長し、休みを返上などなど、超絶ブラックな体制敷き、「コールド・ウォー(寒戦)」と名付けた作戦を遂行するのであった。

香港警察行動班副長官リーにはレオン・カーフェイと、その息子ジョーにはエディ・ポンが、そしてリーと次期長官の座を争う保安管理班副長官ラウには、アーロン・クォックが、部署が違うこの2人が引くぐらい揉めますから。

流れが、中小零細企業ばりの独裁と私情まみれのこの作戦に、労働基準局の如くもう一人の副長官ラウが異議を唱えます。泥にまみれて現在の地位を獲得した現場主義のリーに対して、エリート育ちで、冷静な判断力と分析力だけでなく、昔の床屋のポスターのような端正なリーゼント髪形で、イケメンの若きラウことアーロン・クォック。
時期長官と噂されるこの2人の対立を、圧倒的演技と緻密な構成で表現しグッと観客を引き込むんですよ。
ところがこの段階ではまだまだ物語は前半部分で、ここから数々のトリックや裏切り、渦巻く陰謀、その中で死んでいく同僚たち、いったい誰がこの事件の首謀者なのか?・・・。最後まで読めない展開にのめり込んで行き、あっという間に過ぎて行く102分。

まず何よりも、下手なギャグや無駄口が一切ないのがいいですよね。テロ誘拐事件に警察内部の暗闇を絡ませ、二転三転するトリッキーでスリリングなドラマに魅了されます。
血相を変えた男がBMWをドリフトさせつつ、高速道路を飛ばし、ハンドルを切り損ねて激突すると、車が前後まっぷたつにパカっと割れてしまい大破する。
カーチェイスから銃撃戦、過剰なサービスを盛り込んだ特殊部隊VSテロリストのド派手なドンパチなど、アクションもかなりの力のいれよう。それに、サスペンスパートでは、身代金輸送時のテロの狡猾さには、思わず生唾を飲むくらいの恐怖が。

そんな具合に画面のはしばしからサービス精神が噴出しつづける怒涛の刑事映画になっている。きっちり、カーアクションやド派手な爆破シーンも見せつつ、大部分は裏工作や汚職疑惑をめぐるディベート劇である。意外なほど会話シーンが多く、その内容も誰を口説いて味方につけるかの人心把握術や、職務の遂行を描いた大人のドラマになっている。だから、全篇を通して、愛だの恋だのと甘い恋愛劇はありませんから。

しかし、緩急の緩がゼロなので、その強引なほどの急展開のおかげで、辻褄の合わないツッコミどころがいくつか発生するのだが、そこは観客へのサービスが満載ということで目をつぶっておこうではないか。
特別出演として、話の分かる偉い人としてアンディ・ラウが顔をだしています。

犯人はすぐに分かるが、近年の香港映画で経済クライムサスペンスなどが増えた、質の安定を感じる作品になっていると思う。それに、カッコ良すぎるのが、叩きあげの副部長を演じたレオン・カーフェイの、頭を剃った怪優ぶりと情感も秀逸ですね。

今更ながら、香港の夜景の空撮は息を飲むほどに美しい。だいぶ前になるが、香港に旅行した時に見た、ヴィクトリア・ピークの夜景の美しさを想いだしました。
2014年劇場鑑賞作品・・・31 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

抱きしめたい −真実の物語−★★★.5

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壮絶な交通事故に遭い、左半身と記憶能力に後遺症が残りながらも明るく生きるヒロインと彼女を愛する青年とのはかない運命を、実話を基に描く感動のラブストーリー。多くの障壁を乗り越えて結ばれた二人が幸せをつかみながらも、過酷な運命を背負っていく様子を映し出す。主演は、『パラダイス・キス』などの北川景子と『県庁おもてなし課』などの錦戸亮。上地雄輔や斎藤工、國村隼、風吹ジュンなどが脇を固める。監督は、『黄泉がえり』『どろろ』などの塩田明彦。真冬の北海道・網走の白銀の世界で繰り広げられる純愛に心が締め付けられる。
あらすじ:交通事故で奇跡的に助かったものの、左半身と記憶能力に後遺症が残ったつかさ(北川景子)。そんな過酷な状況でも明るく前向きなつかさに、タクシードライバーの雅己(錦戸亮)は一生愛すると誓う。多くの障壁を乗り越えて結ばれ、小さな命を授かり、幸せの絶頂というそのとき。二人にとってつら過ぎる運命が待ち受けていた。

<感想>テレビのドキュメンタリーを見ました。高校生の時、交通事故で意識不明の重体となり、植物状態と告げられた。その後奇跡的に意識を取り戻すも足の後遺症と、頭を強く打った事による記憶障害もあり、身体障害者として一生涯暮らすことになる。その後大学を卒業して、カウンセラーとして施設で働く事になる。
こういう難病ものとか、身体障害者との恋愛物語は、どうにかして泣かせようとしている脚本に、素直に泣けないもどかしさを良く感じてしまいます。それが、この作品のヒロインのつかささん、とにかく彼女の生き方に感動しました。普通だったら、家の中でくすぶって一生そのまま生涯を終わる人だっているのにと。

でも違うんですね。負けず嫌いというか、障害者なのに一人暮らしをして明るく毎日を暮している。それには、ヘルパーさんや、お母さんの手助けが必要なのだが、それでも自分一人で背一杯出来るだけのことは自分でやり通すこと。
ボッチャというスポーツも、パラリンピック公式種目になっているらしく、身障者たちで体を動かしてボールを投げて、真ん中の白いボールに当てる。ルールは、何か良く判りませんがカーリングに似ているような気がしました。
二人が知り合った場所も、屋内のコートをバスケットと、ボッチャの練習場所が申込みをしたのに、ダブルブッキングしたみたいで、言い争いもあるが、それでも半分ずつ使おうという提案でほっとしました。その後、彼女のことを雅巳が気になって家まで送り届けることに。
もう、きっと雅巳はこの時、つかさに一目惚れしてしまったのでしょう。そうに違いありませんね。

それからは、何度か食事に行ったり、お茶を飲んだり、遊園地の回転木馬に乗りたいというつかさを連れて行くのですが、障害者は乗せられないと断られる。雅巳という付き添いがいても、何かあったら困るので規則で乗せられないというのだ。
ちょっとがっかりしたつかさを元気づけようと、「矢切の渡し」を歌う雅巳。“つれて逃げてよ、ついておいでよ”と錦戸亮さんの恥ずかしそうな歌声が、真に迫っていてよかったです。それでも、遊園地の優しい友達が、夜に終わった遊園地で、内緒で乗せて上げるというサプライズもありました。その時にファースト・キスかなぁ、二人が上がったり下がったりする回転木馬でキスをするシーンは、微笑ましくって見ていて応援したくなりました。
それに夫となる雅巳さんのなんて優しい、思いやりのある人なんだということ。いつも嫌がりもせずに、移動するときにひょいとつかさを抱き上げて、愛情に満ちた姿に観ているこちらにも幸せが伝わってきます。

結婚することになり、雅巳の両親のところへつかさを連れて行くと、父親の國村隼さんが何も言わずに立ち上がり外へと出ていく。反対なのは見て取れるのだが、「孫の顔も見れないじゃないか」と身障者の嫁さんに不満を言う。しかし、二人が愛し合っている事を知り、一緒に住むことになり、まもなくつかさが妊娠をして、突然二人の部屋へやって来て、子供の名前選びの本を置いていく。それからというものは結婚式のこと、籍を入れ婚姻届を出すことなど忙しい毎日が過ぎていくのです。

両親にとっては、孫の顔が見れると大喜び。でも、それには彼女の体に負担がかかり、子供を産むということは普通の女性でも大変なことなので、心配しながら見守るしかありませんでした。
結婚式の北川景子さんの晴れ姿は本当に綺麗で、つかささん本人とそっくりのウェディングドレス姿で、バージンロードを母親の風吹ジュンさんと車いすで歩き、皆が祝福してくれる。

お腹の子供が男の子でも女の子でもどちらでもいいようにと、和実(なごみ)とつけたこと。男の子が産まれ、やはり体に無理がかかって、その後に急に亡くなってしまうとは。泣き崩れる錦戸くんの背中を、なでて慰めてあげたかった。そのくらい、悲しみが辛く子供が授かってすごく嬉しかったのに、あまりのショックに立ち直れないのじゃないかと心配してしまった。
本当のつかささんと、演じた北川景子さん、つかさが鼻をくしゅとさせるしぐさが良く似ているので驚きました。最後にその結婚式のビデオを映してくれるので、最後までご覧ください。
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MIA ミア ★★

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テレビドラマ「ゴシップガール」などに出演し、本作で映画初出演を果たした新星ソフィア・ブラック=デリアがヒロインを体当たりで演じるアクション。両親を殺害された主人公が復讐(ふくしゅう)を誓い、自ら激しい戦いの現場に身を投じる姿を活写する。彼女の手助けをする傭兵(ようへい)を『ローン・レンジャー』などのジェームズ・フレインが熱演。テロ組織に命を狙われながらも生き抜くために必死でサバイバルする女性のタフさと勇気に脱帽。
<感想>シアーシャ・ローナン主演の「ハンナ」みたいな、バイオレンス・アクション・ムービーかと思っていた。まったくもって違いますから。両親が押し入ってきた強盗に殺される。ところが、家に押し入った強盗がテロリストだというのだ。そういえば冒頭でミアの母親がアフガニスタンのワハーン回廊で、男の子と遊んでいたところへ、アメリカ軍と思われる戦闘機からミサイルが発射されて、テロリスト、カリドの息子が殺されてしまう。どうやら母親は、カリドの家のお手伝いをしていたようだ。
そこから、何年かして今の暮らしをしている母親、どうして両親がテロリストに殺されなければならなかったのか。ミアと妹は屋根伝いに逃げて助かるも、ミアは気を失ってしまう。そして病院へと、妹は孤児院らしきところへ連れて行かれ、そこが一番安全だというのだ。

とにかく、普通の大学生の女の子が、悪党と闘う姿には応援したくなります。悪党がキッチンへ追いかけてきた時に、ガスコンロに火を点けて悪党の顔を焼いてしまう機転の速さには驚きですから。
それで、病院で目が覚めるとオリビアと名乗るMI6の諜報部員がいて、あなたを守って上げるというのだ。妹は一緒にいると危険なので、別の場所へ匿っているというの。それに、ミアに傭兵のサイモンというボディガードが付く。

それからは、自分の名前をスー・ウォーカーと替えて、格闘技や拳銃の使い方、それに、拳銃がなくてもそこいらに武器となるものがあれば、ペンで耳の下を突くとか、タオルで首を絞めるとかを教えられる。そこへ至るまでは、ミアはまったく何もしないで、ピザを食べ寝てはテレビを見て過ごしていた。サイモンが、両親の復讐をしたくないのかと言うが、どうして警察が犯人を捕まえないのと、何かが不思議でならない。後でその全てが分かるんですよ。

その隠れ屋にも、テロリストの追ってが来る。ミアはベランダ伝いに逃げて、自分の部屋へ戻る。しかし、まだ部屋にはテロリストたちがいて、バスタブの中へ隠れるが、サイモンに電話するも運転中でダメ。すると気が付いてすぐに電話を掛けてきた。それが犯人に聞こえてしまいあわててそこから逃げる。
あわやという寸前に、サイモンが助けに来てくれて車で逃げる。

どうやらMI6は、カリドの娘らしきミアを囮にして敵陣へ乗り込み、テロリストのカリドを逮捕したいらしいのだ。ミアの腕にGPSを埋め込み、カモフラージュだといってタトゥーを貼る。
そして、案の定ミアは捕まってしまうが、そいつらは身代金目的で誘拐したらしい。ミアが自分はカリドの娘だと言うと、DMA検査をされて、やはりカリドの娘だということが分かった。カリドの使用人として働いていた母親が、カリドにレイプされて生まれた子供がミアだということ。その時も、ミアはCDを半分に割り、武器にするようにと隠す。

テロリストの父親、カリドとご対面なのだが、実は父親は悪い人ではなかった。自分の娘がいることを喜んでくれ、母親が殺されたことに、カリドは20年前に死んでいると思っていたのだ。それに、カリドは石油の発掘権を持っており、その発掘権を狙って、カリドを殺そうとしている悪党たちがいるのだ。
その悪党が、実はミアを助けてくれたオリビアだった。それに、ミアがガスコンロで火傷をさせたディガーの手下の男もいる。赤い車で逃げようとするも、後部座席に爆弾が仕掛けられていて、二人とも死んでしまう。父親のカリドは自分が犠牲になればと、ミアを逃げしてやる。腕のGPSがアダとなり、ミアが腕からGPSを取り出すシーンは、「石ころで、これでは傷口が膿んでしまう」あのCD半分の方が取るのに樂だったのにと、これは痛そうでした。

そして、ラストは石油の採掘工場での乱闘騒ぎ、ミアは部屋に閉じ込められ、周りは火の海状態。サイモンは胸を撃たれて床に転がっているし、オリビアは採掘権を売りさばいた男を拳銃で撃ち殺し、飛行機で逃げる。それを追いかけるミア、飛び乗り運転席へと行くも、ナイフを取り上げられる。だが、すかさずオリビアがナイフを取り上げる。だが、拳銃でミアも腕を撃たれてしまう。
それで、くじけるミアではない、俄然奮起してオリビアをパンチで殴り彼女のの首を絞めつける。正義の味方、サイモンの活躍はあまりパットしなくて、救急車を呼んで病院へ。しかし、大学生のミアに扮した新星ソフィア・ブラック=デリアが、どうみても悪党相手に勝つなんてこと、未だに信じられません。

サイモン役のジェームズ・フレインも、プロの傭兵のわりには弱いんだから。ラストは、ミアが妹を迎えに行き、その足でカナダ・バンクーバーへと、まさか、サイモンとミアが恋仲になったというの?・・・。
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