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スティーラーズ ★★★

「ワイルド・スピード」シリーズのポール・ウォーカーが「ワイルド・バレット」のウェイン・クラマー監督と再びタッグを組み、個性派キャストを起用して贈るハチャメチャ・クライム群像コメディ。田舎町の小さな質屋を中心に、一癖も二癖もある男たちが繰り広げる3つのイカれたエピソードがハイテンションに描かれていく。出演はポール・ウォーカーのほか、ブレンダン・フレイザー、イライジャ・ウッド、ヴィンセント・ドノフリオ、ノーマン・リーダス、マット・ディロン。なお、ポール・ウォーカーは日本での劇場公開を前に、2013年11月、突然の交通事故でこの世を去った。
<感想>この映画もポールの遺作となったのに、劇場へ観賞しに行こうと思っていたのだが、早くも“TSUTAYA”でDVDがレンタルされていた。
質屋へやってきた客たちに訪れる、数奇な運命を描く3件のクライムコメディなのだが、見てみるとタランティーノ作品の中に幾つか似ているような内容。
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一番のりは、ポール・ウォーカーの出番で、ほんの少しだけ。薬物中毒の男ポールが、薬が切れて幻覚症状が出始めているどうしようもない男。原っぱに車を止めて誰かを待っている。そこへ来たのが、質屋へ行き質草に持っていたショットガンを入れて20ドル借りる。その金でガソリンを入れたらしい。そして、もう一人の薬物中毒の男が車でやってきて、そのショットガンを質屋に入れた男を跳ね飛ばしてしまう。どうやら、3人でコカインを持っているスタンリーの所へ強盗に行こうとしていたところらしい。
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その後、二人はスタンリーのところへと、車中でポールはピエロの被り物を、もう一人の男は目出し帽を被って、武器は途中でホーガンを拾ったもの。そのホーガンでスタンリーを脅すつもりだったらしいが、彼はガスマスクを被り、拳銃を用意しており反対に二人は脅されるしまつ。そこで、間違えてホーガンをポールが相棒の男を弓矢で射ってしまう。
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そして、車に轢かれて今にも死にそうな男の所へ、やたらカッコいい男が現れて、通りすがりの者だといい、病院へ連れて行こうかと親切に言ってくれる。復讐をしたいとその男からショットガンを借りて、スタンリーの所へやってくる。その後は、この男がショットガンをぶっ放して、終いにはガスボンベまで撃つから人間どころか家まで吹っ飛んでしまうという落ち。
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2番目は、マッド・ディロン扮するリチャードが新婚旅行中で金がないので、質草に新妻のダイヤの指輪で金を貸してくれ来る。そして、ケースの中にある指輪を見つけ、こいつは最初の妻の指輪で、どうやら6年前に誘拐されたらしい。そこで、犯人らしき男がこの指輪を質草にいれたのなら、その男の住所を教えろと強引に聞き出す。そして、奥さんを帰して自分は指輪を頼りに犯人探しだ。アメリカは失踪者とか多いので警察もあてにはならない。
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これが、何というか猟奇殺人鬼のような、いや誘拐した女たちは殺してはいないのだ。倉庫の中に、犬のゲージの中へ裸で女たちをまるで飼育しているかのように。ピラミッドの形に積み上げた檻の中で、女たちは真っ黒に汚れて本当に飼い主に従順な、まるで洗脳されているのだ。檻の鍵を開けて女たちを外へ出してやるも、逃げるわけでもなくまるでゾンビみたいに一列に並んで後進して、お祭りのところへやってきて、結局はイライジャが迎えに来てまたもや逆戻りというお話。
その飼い犬のように女たちを飼育していたのが、イライジャ・ウッド。「マニアック」でも異常な役を演じていたが、この映画の中でも変態この上ない。その彼を拷問するのが、マッド・ディロン。口に4つの釣り針を刺し込み、壁にその先を結ぶ。おまけに開いた口の中を金槌で叩くという拷問でした。これはちょっと目を逸らしたくなりましたね。
リチャードはどうしたかというと、見つけた最初の妻を車に乗せて帰ろうとするも、奥さんは記憶が曖昧でリチャードのこともあまり覚えていない。それよりも、6年間飼育されていたイライジャの方が大事で、やっと?1になれたのに、檻の中からだされても自由になるのが怖いというか精神分裂気味で、助けてくれた夫を包丁で刺し殺すという。車を運転していたリチャードはびっくりして車を木に激突させ、胸を刺した奥さんも頭を打ち死んでしまう。
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最後のプレスリーの物真似芸人のブレンダン・フレイザーが、質屋へやってきて質草に胸にぶら下げているゴールドのペンダントを200ドルで。そのお金でモミアゲを剃りに床屋へと、ところがドクの店とクックの店と2件隣り合わせである。どっちへ入ろうかと、迷った挙句に、博士=ドクと解釈してドクの店へと、すると客がずらりと座って待っている。こいつらは暇人だからというので、椅子にすわると大事なモミアゲを切られてしまう。それなのに12ドル支払へと言う怖い主人。
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これは隣り合わせて同じ理髪店を商売としていて、町の人たちは、ドク派とクック派に別れているような、笑い話でもある。ブレンダンのプレスリーの物真似は、歌は別人が歌っているような。中年太りのブレンダンがこんな役をして、何か見てられないよね。
最後の落ちは、あの質屋へマッド・ディロンが奥さんに付けてやった指輪が、またもや青年の手に戻り、それを質草にして金40ドルに換えるという終わり方。途中でアメコミが入るので、原作が漫画なのか?・・・喜劇というより悲惨な方が多い。何だか、たくさんの映画を観たような、でも全部とんでもないストーリーで、最後までダラケルことなく観てしまった。
2014年DVD鑑賞作品・・・12 Image may be NSFW.
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ビフォア・ミッドナイト ★★★

イーサン・ホークとジュリー・デルピー主演の『恋人までの距離(ディスタンス)』『ビフォア・サンセット』に続くラブロマンスのその後を描く第3弾。風光明媚(めいび)なギリシャの海辺の街を舞台に、熱烈な恋に落ちて人生を共にするようになった男女のその後の現実を、小気味いい会話を通して映し出す。前2作同様リチャード・リンクレイターが監督を務め、再び主演の二人と強力タッグを組む。恋人から家族になった主人公たちの本音満載の内容が、観る者の共感を呼ぶ。
あらすじ:パリ在住の小説家ジェシー(イーサン・ホーク)と環境運動家のセリーヌ(ジュリー・デルピー)は、双子の娘を伴いギリシャでバカンスを過ごすことにする。同時にシカゴでジェシーの前妻と暮らす息子ハンク(シーマス・デイヴィー=フィッツパトリック)も呼び寄せる。彼らは共に海辺の町で夏休みを過ごした後、ジェシーはハンクを空港まで見送るが……。
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<感想>1作目も2作目も観たのに、忘れてしまった。そして、さらに9年後を描く第3弾である。そのタイトル「ビフォア・ミッドナイト」とはギリシャの空港で、ジェシーが離婚した妻と暮らす息子を見送る場面から幕を開ける。「ママは、パパを嫌っているから会いに来なくていい」と、サバサバした息子に対して、父親風を吹かして空回りなジェシー。
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イーサン・ホークのジェシーが、ユマ・サーマンと離婚しただけにこれは実話かと思わせる哀愁感がたっぷりな登場の見せ方。本当は引き取って息子と一緒に暮らしたいのだが、憔悴しきって空港を後にする彼を待っていたのは、セリーヌです。しかも彼らが車に乗り込むと、後部座席では双子の娘が爆睡中とは。双子ちゃん可愛いよね。
そうか遂に二人は結婚していたのか?・・・安堵感もひとしおであったのに、この二人は車の中で何やら夫婦喧嘩のような、遠慮のない会話が途切れることなく延々と続くのである。
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何の説明もなく、見事に時の流れをリアルに感じさせる二人の会話劇。なんだか知らないが、取り留めのない会話量が増えてきているような気がした。会話には、二人の友人たちも加わって、人生や愛、芸術に文学、カップルやセックスといった話題がユーモアとアイロニーをたっぷり盛って、交わされるのである。
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そんな第3弾で面白く描かれるのが、女は変わるということ。そしていつまでもロマンティックでいたい男の変わらなさ。映画の終盤では、友人たちがプレゼントしてくれたホテルで、二人っきりの夜を過ごす。
まだまだ、お盛んなムードだったのに、ふとしたきっかけで、怒り狂ったセリーヌがおっぱい丸出しで仁王立ち。このどんどんとオヤジ化するセリーヌの造形には、「ニューヨーク、恋人たちの2日間」等の監督として活躍するデルピー自身が色濃く反映されているようですね。とにかく中年になっているお二人さん、身体のラインが出っ張って、垂れてきているしで、イーサンも皺が目立ってオッサン化している。
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殆どのシーンで、ジュリー・デルピーがまくし立てる弁舌で、男勝りな感じがするでもなく、それでも惚れた弱みのジェシーに「どこまでも君を愛す」と言わせて、最終的には夫に降参させるセリーヌに軍配があがる。それでも、お互い惚れている者同士、丁々発止に口喧嘩してみたものの、今更別れるつもりがないことを、観客は観ているのだ。
2014年劇場鑑賞作品・・・47 Image may be NSFW.
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セッションズ ★★★.5

 障害者の性を真正面から取り上げ、数々の映画賞に絡んだ感動のコメディ・ドラマ。実話を基に、重度の障害を持つ男性と、彼の童貞喪失の相手をプロフェッショナルとして引き受けるセックス・セラピストの女性との心の交流を赤裸々にしてユーモラスな筆致で綴る。主演は「ウィンターズ・ボーン」のジョン・ホークス、共演に「恋愛小説家」のヘレン・ハント、「ファーゴ」のウィリアム・H・メイシー。監督は「美女と時計とアブナイお願い」のベン・リューイン。
あらすじ:1988年、米カリフォルニア州バークレー。少年時代に罹ったポリオが原因で首から下が麻痺してしまったマーク。以来、ベッドに寝たきりの人生ながら、みごと大学も卒業し、38歳の今は詩人・ジャーナリストとして活躍していた。そんなある日、彼は新しく雇った若くて美しい介護士アマンダに心奪われる。しかし彼の恋は実ることなく、アマンダは去っていく。
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やがて失意のマークのもとに、障害者のセックスというテーマで原稿依頼が舞い込む。取材の過程でセックス・サロゲート(代理人)の存在を知り、自らもセックス・セラピーを受けてみたいと願うマーク。敬虔なマークの正直すぎる相談に、最初は戸惑いを抱いたブレンダン神父も、彼の純粋な思いを受け止め、真摯にサポートしていく。
こうして期待と不安の中、ついにセックス・サロゲート、シェリルと対面し、彼女と初めての“セッション”に臨むマークだったが…。
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<感想>サンダンス映画祭観客賞に輝いたヒューマンドラマ。少なからず奇異な内容だが、優しさと喜びに満ちた心地のよい映画でした。身体障害者を、始終ベッドの上だけで見せた主演のジョン・ホークスの名演技は、言わずもがなだが、その彼を文字通り心と身体で支えるヘレン・ハントの、少々のことではブレない凛とした演技が光ってます。
ヘレン・ハント演じるセックス代理人の、感情を入り込ませずに性行為をする職業も興味深いですよね。いわゆるコールガールではなく、こういった障害者に対しての女性、男性もいるのかなぁ、そういえば部屋を貸してくれた車いすの女性もいましたね。
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重度の障害者のセックス・セラピストとして登場する垂れ目のヘレン・ハント。でも、おっぱいは余り垂れてなかったよね。笑い皺が実にセクシー、「私脱ぐのに躊躇しないタイプなの」と実にあっけらかんである。女性上位に、顔面騎乗位までしちゃって、モー大変ですから。
物語りの構成自体は基本的に童貞喪失のイニシエーションものだが、全身麻痺の主人公マークが、その話を教会の神父に逐一話して聞かせる展開がこれまたユーモアと取っていいのだろう。
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聞き手の神父のウィリアム・H・メイシーと共に、私たち観客も夢中にさせる言葉の力。彼は詩人なのだ。自分をクールにネタにしながら、相手を武装解除する彼の言葉の優しさ響きに、やがてはセラピストの心が動き出す。毎週1回ぐらいでヘレンに会うのですが、その時に来ていく洋服を新しく買っては選び、コロンまで付けてお洒落するマークの心中たるや穏やかではない様子に応援したくなります。
ヘレンの夫が恋文のような手紙にヤキモチを焼いて、ゴミ箱に一度は捨てられた愛の詩が声になり、言葉と映像が溶け合う瞬間に感動してしまった。
最後の方で、自宅の鉄製の酸素の機械の中に入って眠る時に、突然の停電。誰も傍に付いていなく、急いで友達へ電話するも留守で、後3時間しか酸素ボンベがもたない。もうダメかと思った。それが奇跡で、友達が駆け付け病院へ救急搬送。
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そして、退院の時に、あの美しい介護士アマンダが傍にいて元気づけてくれるそれが縁で彼女と結婚できるとは、49歳でこの世を去ったマークの生涯は心残りこそあれ、実に有意義だったことでしょう。
それにしても実話とはいえ、これは自由と寛容の国アメリカならではのドラマ。セックスに関することだけに、我が国だったらどうだろうと、いろいろ感慨深いですね。身障者について、このように描くことが、果たして可能なのだろうか。
障害者の性は日本でも取り上げられてきたが、2013年6月に鑑賞した、知的障害者の性を描いた「くちづけ」その問題に焦点を合わせつつユーモラスに描いて、なお且つ心理的な葛藤を掘り下げた深さの共存が素晴らしい。
2014年劇場鑑賞作品・・・48 Image may be NSFW.
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ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 ★★★

『ファミリー・ツリー』などのアレクサンダー・ペインがメガホンを取り、頑固な父と息子が旅を通して家族の絆を取り戻す様子を描くロードムービー。大金が当選したという通知を信じる父とそれを怪しむ息子が、モンタナからネブラスカまで車で旅する途中に立ち寄った父の故郷で、父の意外な真実に遭遇しながらつながりを深めていく様子を映し出す。父と息子の役には、『帰郷』などのブルース・ダーンと『最凶家族計画』などのウィル・フォーテ。不器用だけれど憎めないキャラクターや、本作でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞したブルースの演技に魅了される。
あらすじ:100万ドルが当たったという通知を受け取ったウディ(ブルース・ダーン)。それはどう見てもインチキだったが、徒歩でもモンタナからネブラスカまで金を受け取ろうとするウディに息子のデイビッド(ウィル・フォーテ)が付き添うことに。こうして始まった父と息子の4州をまたぐ車での旅。途中、立ち寄った父の故郷で、デイビッドは父の意外な過去を知ることになる。
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<感想>主人公のウディ役を演じたブルース・ダーンが、カンヌ国際映画祭男優賞を受賞した。作品自体も批評家に絶賛されているしで、今年のアカデミー賞にノミネートされている。内容が、常に老いを題材にしたコメディを撮り続けてきたアレクサンダー・ペインが遂にやってくれました。
今までの作品は、「アバウト・シュミット」(02)、「サイドウェイズ」(09)、「ファミリー・ツリー」(11)などですが、今回の映画はモノクロで、舞台は中西部のモンタナ州。息子のデイビッドが家電販売店で働いているのだがまだ独身で、疎遠だった父親が「貴殿に100万ドルを贈呈します」と書かれたネブラスカ州から送られてきたインチキの手紙を本気にして、そのお金を取りに歩いても行くといってきかないのだ。日本では「オレオレ詐欺」が多発したが、最近では、新手のお年より相手の詐欺事件が発生している。
頭がボケて、頑固で人の言うことなんて聞かない。仕方なく息子のデイビッドが仕事を休んでまで、父親と一緒にネブラスカまで1500キロに及ぶドライブへと出かける。きっと、これが最後の親孝行になるかもしれないと。この場合は、お金を騙し取られたということではない。
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ロードムービーというと、車窓に映し出される景色が綺麗なんですが、景色はどちらかと言うと風光明媚というより、ひたすら荒涼とした大地を単調に走るだけ。長いロードムービーなので、途中で父親の故郷へと立ち寄っていく。
そこで、夜に徘徊とでもいうのか、一人で夜道を歩きまわり、部屋へ帰って来たと思ったら、電気もつけないので入口でツマヅキ、額を切ってしまい病院で縫ってしまうほどの怪我をする。本人はそんなに痛がらず、ケロッとしているのだ。息子の方がこのままネブラスカまで行った方がいいのか迷ってしまう。母親へ電話して相談すると、故郷のソーホーへ寄り道して弟の家を訪ねなさいと言う。自分も直ぐに後を追い、そこへ行くからというのだ。
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爺さん、ボケているとはいえ、入歯を線路に落としたというのだ。息子は近所を探しているも見つからず、父親が絶対に線路だというので行くと本当に入歯が見つかった。
ところが、父親は昔から酒飲みで、店を見つけて勝手に入りビールを飲んでいるのだ。そこには父親と同年代くらいの男たちがたむろしていた。息子がトイレに入っている隙に、父親は宝くじに当たったと皆にいふらして、酒場にいた人たちは寄ってたかって何とかおこぼれに預かろうとするのだ。
それに、故郷の父親の弟もボケがきており、不況で息子たちは働かないで家にいてテレビを見ている。だから、ウディ爺さんが本当に宝くじで100万ドル獲得したと勘違いして、何とか分け前にありつこうと必死になって、あの手この手ですり寄って来る。
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人間なんて本当に浅ましい。それに故郷の友達や親戚たちは、みんな老人ばかりでボケが入っているから始末が悪い。娘がローラ・ダーンだと言うのだが、とにかく77歳のブルース・ダーンがいい。セリフなんて何を言っているのか聞き取れないし、そのまま演技しているんだか地でいっているのか見分けが付かない。母役のジューン・スキップのお喋りには閉口してしまった。
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みんな年を取ると、男は無口で何もすることないしボケるのが速いと来てる。女性の方は、口が達者でまだボケていないようなので、煩いくらいに指図をする。その両親を老人ホームへ入れないで面倒を見ている息子が偉い。いくら騙されているといっても信じない頑固親父。でも、そんな父親を見捨てないで最後まで世話をする親孝行の息子に頭が下がる。
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最後に、息子が自分の車を売って父親が欲しがっていたトラックと、空気圧縮機を買って、車の名義を父親にして、故郷の町で運転もさせてやるという優しさが憎いですね。
コメディとなっているが、笑えないのだ。深刻なボケ老人たち、いずれは自分たちもこうなるであろうということを忘れてはならない。そのことを、しっかりと見せつけられた。
2014年劇場鑑賞作品・・・49 Image may be NSFW.
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エレニの帰郷 ★★★★

『永遠と一日』などのギリシャの巨匠、テオ・アンゲロプロスの遺作となった、1953年から半世紀に及ぶ男女3人の愛を描く恋愛ドラマ。スターリンの死やベトナム戦争といった出来事を背景に、時代に翻弄(ほんろう)されるヒロインと、彼女が愛をささげる恋人、ヒロインを愛するイスラエル難民の関係を、映画監督であるヒロインの息子の視点でつづる。出演は『ハンター』などのウィレム・デフォー、『ふたりのベロニカ』などのイレーヌ・ジャコブなど。ギリシャからシベリア、さらに世界中を駆け巡るヒロインの激動の運命に圧倒される。
あらすじ:20世紀末、チネチッタ撮影所。映画監督のA(ウィレム・デフォー)は両親の人生を映画にしようとしていた。Aの母エレニ(イレーヌ・ジャコブ)は大学生の頃、秘密警察に逮捕され脱走。ギリシャ難民の町で恋人スピロス(ミシェル・ピッコリ)と再会する。しかし、スターリン死去による混乱で、再び逮捕された二人と、エレニの友人でイスラエル難民のヤコブ(ブルーノ・ガンツ)はシベリア送りになってしまう。
<感想>これは映画内の映画が語る父と母の過去とその映画を撮る監督の今を融合させつつ、いくつもの国境を越えてなお、帰りつくべき場所をを見いだせない人の主題を飽かずにみつめるという。歴史と記憶をめぐる監督の眼の深まりが感じられます。
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ギリシャの風景なの海がまったく現れず、殆どの台詞が英語で語られるという。ローマ、旧ソ連、カザフスタンのテルミタウ、シベリアの流刑地、ベル珍、ハンガリーとオーストラリアの国境、ニューヨーク、カナダのトロント、という7カ国のいくつかの地点にまたがる展開なので、長時間になるのを2時間強という不思議なほど短かった。しかも、その間にめまぐるしく国から国へと、時代から時代へと行き来する。実際のこの映画にはこれまでにないスピード感がそなわっているようだ。
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配役にも主演俳優にギリシャ人は一人もいないのだ。ただしある意味ではこれ以上ないほどの名優を揃えているといって過言ではないだろう。エレニ役は、42歳のイレーヌ・ジャコブ、いよいよもって素晴らしい演技だし、その運命的な恋人スピロスにはミシェル・ピッコリが、83歳にして特有のアクも抜けていて最高。それに、もう一人のエレニを愛する男のヤコブには、67歳のブルーノ・ガンツが、「永遠と一日」の時よりも老いた姿で愛すべきドイツ系ユダヤ人を演じている。
それぞれ2008年当時の年齢だというが、この作品がおよそ半世紀にわたって相前後しつつ展開していく物語の時間が、役者たちの年齢の差とともに、時おり不意に交錯し、1999年に設定されている今と過去とを繋げていく不思議に打たれるからなのである。
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主人公の中年の映画監督、Aは、1953年にシベリアで生まれたエレニとスピロスの子供で、この役を53歳のウィレム・デフォーが演じている。そのAが3歳で生き別れた母親エレニと1974年にトロントで会い、抱き合うシーン。物語の上での21歳という年齢にはとうてい見えない。それどころか服装も髪形も1999年という今のままなので、40代の母親よりは年上に見えたりする。ウィレム・デフォーは、始めからずっと同じ髪形で同じ服、旅もせず“巨匠、テオ・アンゲロプロス歩き”にもかかわらず、ただせかせかと動き回るだけの、今を演じているのだ。出番は多いのに、奇妙に影が薄くとてもアンゲロプロスの分身には見えないし、そこがまた面白くもある。
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物語はスターリンの死の1953年のソ連、ウォーターゲート事件の1974年のニューヨーク、東西の壁の崩壊した1985年のベルリン、といった史実をはさんで進行してゆくが、その度にメーキャップや衣装を変えるのはイレーヌ・ジャコブだけである。ブルーノ・ガンツには多少の変貌が見られるにしても、ミシェル・ピッコリはずっと83歳のままで、だからトロントのバーとベルリンのカフェが連続してしまうワンシーン・ワンショットに戦慄が走るのだ。若い時の場面では別の俳優さんの後姿しかない。
常に現れてくる国境というテーマ、人と人とを隔てるものという主題への答えとして、大きな愛を結末に置いていることにも胸を打たれます。エレニの手紙こそが旅をしているとも言えるでしょう。
母エレニを演じているイレーヌ・ジャコブの声が、それを読み上げるにつれて現出する過去の体験は、ケイタイに付きまとわれているAの日常と好対照をなしている。
つまりは、まさにエレニの「時の塵」を降り積もらせる歴史の中で、愛と郷愁を体現しつづける一人の女性の映画だからなのである。この生身の美しい女性の神話的な使命が最後には、おなじ名前を与えられている幼い孫のエレニに受け渡されることになる。
1999年大晦日のベルリン、ようやく息子のAの家へ辿り着き、二人だけで故郷ギリシャへ旅立とうとしているエレニとスピロスのところへ、ヤコブが訪れる。3人で街を歩き、地下鉄の構内での楽団の演奏にひかれ、ヤコブがエレニを誘って踊り始める。するとエレニは崩れ落ちる。ケイタイでAに連絡をしたスピロスは、孫のエレニが発見されたことを知り、それを聞いたエレニは立ち上がりスピロスと共に去る。残されたヤコブのブルーノ・ガンツが一人で踊るシーンが切ない。
2014年劇場鑑賞作品・・・50  Image may be NSFW.
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過去から来た女 ★★★

フランス映画祭2008年オープニング上映作品。 ソフィー・マルソー監督・脚本・主演によるサスペンス・アクション 世界に名高いホテル王が失踪。 捜査をする刑事の前に現れた謎の美女。 それは、30年前に死亡したはずの女優だった。 男と女の欲望が交わった時、封印された過去が動き出した!!
あらすじ:パリ市警のジャックは、ある日ヴィクトリアと名乗る、若く美しい女性から、ホテル経営者失踪事件の調査を依頼される。
謎めいたヴィクトリアに魅了されたジャックは、調査のためホテル・ノルマンディへと向かう。すぐにジャックは、誰も知らない隠し部屋を発見する。そこに残されていたのは、30年前に交通事故によって死亡した、大女優ルーシーの膨大な数の写真。愕然とするジャック-----その女性こそ、紛れもなくヴィクトリアだったのだ。
混乱するジャックの前に警察の手を逃れながら度々現れては、謎を解く鍵を残してゆくヴィクトリア。そして、ジャックは失踪事件の裏に隠されていた、過去の歪んだ愛が生んだ忌まわしい秘密にたどり着く…。(作品資料より)
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<感想>第16回フランス映画祭で、「ドーヴィルに消えた女」の題名で上映されたサスペンス映画だが、何と言っても話題はこの映画祭の団長を務め、現在フランス映画界のトップに君臨する女優ソフィー・マルソーである。主演はもちろん、監督、脚本も兼任したという映画。
かつて80年のデビュー作「ラ・ブーム」の大ヒットでフランスのアイドル女優として日本でも大人気だった彼女が、四半世紀以上を経て、今や貫禄すら漂わせる大女優となり、こうして“一人三役”をこなし、堂々と映画全体を仕切るのだから立派としかいいようがないです。しかし、DVDではタイトルが「ソフィー・マルソーの過去から来た女」で、リリースされています。
物語は、妻を失った痛手による記憶障害などが原因で、署内でも問題児扱いされているパリ市警刑事ジャック(クリストフ・ランバート)の元に、奇妙な失踪事件の調査を依頼しに、ミステリアスな美女(ソフィー)が現れるところから始ります。
やがて、経営者の消えた問題のホテルを捜査すると、隠し部屋の中で、30年前に事故死した女優ルーシーの写真を発見するが、それは調査を依頼してきたあの美女と瓜二つだったのです。
ソフィーの初監督作の「愛を話して」(02年、日本未公開)は、別れる男女を題材にしたシンプルなストーリーだったそうだが、こちらはかなり入り組んだ本格サスペンスで、監督2作目にして、すでに巨匠の風格すら感じるほどである。
主舞台となるホテルは、北のノルマンディ、高級保養地ドーヴィルの4ッ星ホテルが舞台である。時代からとり残されたように佇んでおり、ある意味“陰の主役”とも言えるほどの存在感を醸し出している。一見荒唐無稽な話であるが、ハナシは破綻なく進行していく。ソフィーの原案だそうだが、上手に映画化されていると思いますね。
謎の美女に翻弄されるワケあり男というのは、ヒッチコック映画や、デパルマ映画のソレと同じく、ファム・ファタールものの常套手段だが、その“運命の女”を演じる自分を演出するのは、相当の自信がなければできないはず。“30年前の女優”を演じ、演出するのは、実際に現役の女優である私にしかできないわ・・・と映像で豪語しているかのように思えた。
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黒いサングラスをかけ、いかにもの出で立ちで登場するソフィー。これぞフランス女優魂か!・・・。ちなみに、私生活のパートナーでもあるクリストフ・ランバートをぬけぬけと主演させるのも、フランス映画界の女王だからこそ許されるのでしょうね。
サスペンス映画なので、ネタばらしもほどほどにということで、ヒントは“愛の妄執”とでもいうのでしょうか、謎めいたヴィクトリアに魅了されたジャック。やがてジャックは、失踪事件の裏に隠されていた、忌まわしい秘密にたどり着いて…。
その忌まわしい秘密とは、死んだはずのホテル王とヴィクトリアとの間に出来た子供が、実はルーシーだった。
それも、父親が娘を幼児性愛と言うべきなのか、近親相姦のような映像もあって、ルーシーが自殺未遂でジャックと同じ精神病院へ入院していたということも。
やはりヴィクトリアは、交通事故で死んでいたわけで、瓜二つの女は娘のルーシーでしょう。では何故ジャックに捜査を依頼してきたか?・・・それは、ルーシーがジャックの助けが必要だったから。
しかしながら、序盤はまとまりに欠けるものの、次々と謎が明らかになるにつれて流れがよくなり、結構凝った作りなんだと感心しました。
黒い髪のカツラを被ったり、昔の自分(ソフィー)の写真を壁に貼ったり、自分が出ていた古い雑誌も、今年42歳とは思えぬ美貌を、惜しげもなく披露しているソフィーが、最後にオイシイところを持っていくのはご愛嬌ということでしょうか。
まぁソフィー・マルソーのファンなら、存分に美貌は堪能出来るので、ヒッチコックの作風や、ファム・ファタールが好きな人にお薦めしたい作品ですね。
2014年DVD鑑賞作品・・・13 Image may be NSFW.
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イン・ザ・ダークネス ★★

2010年   アメリカ=フランス=アルゼンチン映画  91分
キャスト:アンバー・ハード、カール・アーバン、オデット・ユーストマン、アドリアナ・バラッサ
あらすじ:アルゼンチンを旅行中、ツアーを抜け出したステファニーとエリーは
サイクリングを楽しんでいた。しかしひょんなことから2人は喧嘩を始め、ステファニーはエリーを置き去りにしてしまう。その後エリーは待ち合わせ場所に一向に現れないのだった。原題:and soon the darkness監督:マルコス・エフロン
<感想>だいぶ前に観た劇場未公開作品。ハリウッド、リメイク作品です。ステファニー役が「ザ・ウォード/監禁病棟」(10)のアンバー・ハード、彼女の魅力が満載しているのでレンタルしたようなもの。エリー役は「アンボーン」(08)のオデット・ユーストマンが演じているクライム・スリラー。内容からして、若い女二人がどうしてこんな危ない場所へ旅行するのか理解できません。
冒頭の映像が暗い納屋みたいな場所に、若い女が縛られて電気ショックを受けているシーン、きっと彼女たちも拉致されてこんな目に遭うのかと思ってしまう。これはサスペンス・ホラー映画だと思うような、そんな感じがぷんぷん匂う。
南米アルゼンチンを旅行中のステファニー(アンバー・ハード)とエリーは、パラグアイにほど近い田舎町で宿を取ります。どうみても二人とも若い女なので、襲って下さい、そして人身売買して下さいと言わんばかり。
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やっぱりうさんくさい街で、前の夜にバーでエリーがハメを外して男に近づく。しつこく追いかけてくる男をステファニーが間一髪で部屋へ引き戻す。それでも尚、しつこくドアをドンドン叩く男、その男をマイケルという男が追い払ってくれた。
ところが次の朝、寝過ごしてバスに乗り遅れる。1日1便のバスだったのにおバカさんだね。仕方がないと、ホテルのおばさんのこの辺の見所を聞き、湖の街ゴーストタウン“ヴィラ・デル・ラゴ”へと自転車に乗って二人はルンルン気分で行く。
滝まで2キロ、自転車止めて滝まで歩く二人。熱いので日光浴しようなんてね、脱ぎます。さすがに若い女優さん二人、水着のビキニ姿が映えていいですよね。そこで少し寝てしまった二人。いくらなんでもちょっと開放的ですよね。誰が観ているか分かんないのに。
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やっぱりね、どうやらその様子を木陰から誰かが見ているような気がするのですが、片方の失恋旅行という名目なのですが、エリーが「気楽に忘れて遊ぼうよ」と、ステファニーの方は「そういっても忘れられないの」と意見が食い違う。
そして、エリーがまだそこに残るという。じゃ、といいつつ、ステファニーが先に自転車を走らせ行ってしまう。でも思いなおしてステファニーがエリーにメールを送る。「ごめん、牛の店でランチ食べるから」と、でも、待っていてもいっこうに来ない彼女。留守電するも通じないし、昨晩助けてもらった男マイケルという男と顔見知りになる。
実は、この男は悪人なのかと思えば、バーでエリーが男を誘って襲われた所を救ってくれた、いい男だったのです。この男の恋人も行方不明になり、自力で探しているとのこと。
ステファニーは、街の保安官に捜索願を頼むも、きっと男を見つけてホテルでも行ってお楽しみ中さ、なんて言ってさ、てんで協力的じゃないのよ。でも、保安官事務所の壁にはたくさんの若い女性の写真が貼ってあるのです。みんな失踪者なのか?
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後で分かるんですが、そうなんですね、この保安官も旅行で来た若い女性を、川の向こう岸のパラグアイへ人身売買する悪い一味の仲間だったのですから。それにみんなスペイン語で、英語が通じないしで困ってしまう。ステファニーがうっかりしてたら、まさか自分の荷物(パスポートやお金)を盗まれてしまうなんて。男を追いかけると、昨晩のエリーが誘った男だった。
次の日、車を借りて昨晩の男を追うステファニー、廃墟と化した街、ヴィラ・デル・ラゴ。そこでマイケルと出会い、俺の恋人もこの辺で失踪した。手分けして探そうなんて言うのだ。こんな辺鄙なところで若い女が一人で、友達のエリーを探すなんて信じられませんから。ところが、その一角にエリーが捕まっていたのですよ。傍に保安官のカルボがいた。
ステファニー、エリーを助けることができるのか?・・・家に帰りたいと泣くエリー。自業自得だと思うわたしですが、そこんところは映画だからね。二人で車のところまで走るのだが、エンジンがかからない。男をエリーが棒切れで殴るのだが、それではすぐに男が元気になると思った。案のじょう追いかけてきた男、車のフロントガラスを石で破り、侵入してくる。運悪く、エリーがそこで頭を打って死んでしまうんですね。その車のダッシュボードに自分たちのパスポートが入っていた。
保安官が人身売買の元締めで、「あのエリーは魅力的な女だったのに、惜しい」と、言いながら、マイケルに「お前の恋人はまだ生きている。そのステファニーと交換だ」なんて言うんですよ。
こんな辺鄙なところへ観光に来たばかりに、酷い目に遭うなんて理不尽なことってある!・・・ステファニーもスタンガンでバリバリと感電されて拷問されるしで、睡眠薬嗅がされてダウンした。
彼女が気が付いたのはボートの中、手を結わえられているのに、男を川の中へと自分も一緒にドボン。さすがにステファニー、女の意地を見せてくれる。川を泳ぎ切り、本当は、彼女って強いんですね。ホテルの主人と悪党どもが集まっている。
彼女のどこにそんな技があったのか考えられませんが、男どもの股間蹴りしたり、ベットの下に潜り込み、見つかるも男の拳銃を取り返し、撃つしでこうでなくちゃね。この映画も女がただ拷問されて、売春させられなんて内容だったらつまらないですよ。
マイケルはてんで当てにならないし、やっぱりマイケルって頭悪すぎる大バカなんですね。これではいつまでたっても彼女を探しだすこと出来ないよ。
ステファニーは助かったからいいものの、エリーは自由奔放で調子のいい女で、犯罪に巻き込まれても自業自得と思ってしまった。主人公のステファニーは、友達を置き去りにしてはいけませんね。若い女が旅先で誘拐されるという報道を見るにつけ、やはりハメを外した女たちが原因でしょう。教訓、ツァー旅行でも、単独行動は絶対にいけませんからね。
2014年DVD鑑賞作品・・・14 Image may be NSFW.
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アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ★★★

過激なセックスと暴力描写が災いして『発情アニマル』という邦題でポルノ映画扱いされた1978年製作のカルト・ムービーを、現代的なテイストでリメイクしたリベンジ・バイオレンス。野獣のような男たちに何度もレイプされ肉体も精神も踏みにじられた美人小説家が、復讐(ふくしゅう)の鬼と化して残忍な手口でじっくりと報復していく姿を描く。レイプされた後、圧倒的にタフになった主人公が繰り出す、痛みと苦しみの復讐(ふくしゅう)方法に絶句。
<感想>レンタルして鑑賞したのですが、WOWOWシネマでも鑑賞。実際に起きたレイプ事件をベースに、被害者の女が男たちに復讐をしていく壮絶な体験を描いた作品。女一人で森の奥の別荘、一軒家を借りて小説を書こうとやってきたお気楽な女。どう考えても若い女一人で寂しい森の奥の一軒家に住むなんてことは、何があってもおかしくないわけで、始めっからレイプされるか殺されるのが、当たり前のようなそんな映画です。
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この主人公のジェニファーが4人くらいの男どもに乱暴され強姦されるシーンが過激です。それからやっとの思いで逃げたのに、保安官に出会うも、その男も同じ悪仲間で、一緒になって女を強姦しまくります。もう見ていて可哀そうというより悲惨で、なんで一人でこんなところへ泊まったのか、この女の自業自得と言える物語です。
森へ逃げるも、また男たちに捕まり、泥水を飲まされ、またもや強姦という残虐さ、その一部始終をビデオで撮っている悪趣味な男たち。女は素っ裸になって川の所まで来て、川へ飛び込み姿を消します。女が川に飛び込んでから、保安官の指示のもと男どもは、川の中や周辺を探しまくりますが見つからず時が経ってしまいます。その後、女の持ち物を燃やし、車も処分して何もなかったようにするのですが、ビデオカメラに一部始終を撮ったフイルムが残されてあったのですね。
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不思議なのが、それから突然現れて、強姦した男どもに仕返しの復讐をするのですが、こんな体でよく川から助かり生き延びて、何処でどうして元気になり復讐を考えたのかが描かれていません。復讐劇が凄いんです。あのTVで有名になった「半澤直樹」の十倍返しどころか100倍返しのように、よく女一人で出来たと思うくらい壮絶な殺し方をします。
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男の中に頭の弱い自閉症の男が森の中で、あの女の幻覚を見ます。この男たちは働いてないのか、森の中で昼間っからビールを飲んで、あの女が一人づつ男を始末していく過程がホラー、というよりまるで「ソウ」映画の拷問シーンを見ているような錯覚を覚えました。
知恵遅れのマシューは、女の声が聞こえ2階へ上がるも階段を踏み外して小屋に運ばれる。そこへあのジェニファーが現れる。男ども3人を血祭りにして殺すシーンは、自分が強姦された通りの辱めを一人づつ、殺していきます。川の傍にいた男二人、デブには獣のカニバサミを、それを見ている男をこん棒で殴る。そして小屋に運び浴槽の上に縛り付け、こん棒で足を叩き、浴槽には劇薬(塩酸)を入れその中へ顔を付けて溺れ死。顔が酸でただれて行く様子が見られる。
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カニバサミのワナにかかったデブ男は、口のなかにネズミの死骸を入れられ、瞼に釣り針を引っかけて樹に巻きつけられる。魚の内臓を顔に塗りたくられ、そこへカラスがやってきて目ん玉をほじくるという残酷さ。それを一部始終ビデオカメラで撮影という、自分がされたことへの仕返しだ。
死んだ鳥を投げつけられビビりまくり、「腰ぬけども目が」といいながら拳銃をぶっ放す男。その男も簡単に棒っきれで叩かれて、素っ裸にされ歯をペンチで抜かれ、舌までちぎられ「私の恋人よ」と拳銃を口に突っ込み、最後はハサミで股間を切り取られ、絶叫するシーン。見えなかったけど残酷だ。
一番悲惨なのが、保安官。娘の新しい先生が家庭訪問に来ていると電話があり、自宅へ行くとその先生はあのジェニファーだった。奥さんに知れても困るし、娘も公園に連れて行かれ、初めて自分の娘を殺される恐怖を味わう。
後半から異様なほどの迫力を持った、壮絶なバイオレンスが展開する復讐劇は、過激さと恐怖、それから書くのも恐ろしい保安官に対する拷問シーンと、引き金を引くマシューが殺人犯となる、ラストが良く出来ているのが最高。こういう作品は見慣れているとは言え、余りにも惨い内容で、これではDVDスルーでもおかしくないでしょう。最近、これの続編がレンタルされているとのこと、借りてきてみるか。
2014年DVD鑑賞作品・・・15 Image may be NSFW.
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ホビット 竜に奪われた王国 ★★★★★

『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの60年前を舞台にしたJ・R・R・トールキンの冒険小説を実写映画化した『ホビット』3部作の第2章。邪悪な竜に奪われたドワーフの王国を取り戻す旅に出たホビット族の青年ビルボ・バギンズら一行を待ち受ける過酷な運命を、壮大なスケールで描く。マーティン・フリーマン、イアン・マッケランら前作からの続投組に加え、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどのオーランド・ブルームもレゴラス役で再登場。伝説の邪竜スマウグの声を、ベネディクト・カンバーバッチが担当する。
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<感想>「ロード・オブ・ザ・リング」の前日譚を描く「ホビット」シリーズだが、1作目の「思いがけない冒険」(12)は、ややもすると不安なスタートだったように思えた。出だしの展開がスローすぎて、なにせドワーフの宴会が30分続くのだからして、3時間近くあるわりには、どこが山場なのかよく分からない映画だった。だが、今作の第2章は、そんな不安を吹き飛ばすくらいの会心作に仕上がっていた。前作とは大違いで、ここには理屈抜きのエンターテインメントがわんさか詰め込まれている。
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物理の法則を無視して、快感のためだけにデザインされたアクションが満載なのである。はなれ山に向かうため、闇の森に踏み込んだビルボとドワーフ族のトーリンらは、エルフの道を辿るも、闇の森にかかった迷いの魔法に惑わされ、全員が大蜘蛛に捕まってしまう。一人道を探すため木の上に登っていたビルボは魔法の効果が弱く、エルフの剣で蜘蛛の糸を切って戦いドワーフたちを助ける。この巨大な蜘蛛との格闘シーンも、ワラワラと出て来るキモさにはさすがに参った。
それに、巨大な熊に変身できるビヨルン、あまりイケてないし出番が少ない。この監督の作る巨大モンスターが、ハマった時の破壊力は、やはり本当に凄まじいと思う。
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「ロード・オブ・ザ・リング」の3部作のレゴラスを演じたオーランド・ブルームが復活し、弓矢、剣裁きなどで大活躍。愛するエルフのタウリエルが、ドワーフの男キーリに惚れているのを見て、三角関係ロマンスに悩む“萌えキャラ“担当になっているのも愉快である。
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勇気ある男のホビット族のビルボの活躍は、あの”リング“で姿が消えるのを利用して、窮地に陥るドワーフの13人を助けるシーンが盛りだくさんある。中でもエルフに捕まったドワーフたちを、姿を消して牢屋の鍵を奪い助けだし、その後、酒樽にドワーフを入れて急流下りは最高ですから。川の両サイドから、ボルグ率いるオーク軍団が襲いかかってくるし、さらにはレゴラス率いるエルフも戦いに加わる。川を下る樽の中のドワーフ、滝に呑まれるしで、ビルボの機転で13人のドワーフが助かったのだ。
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湖の町エスガロスを経て、目的地のはなれ山に辿り着いたトーリンとビルボたちは、秘密の入り口探しに右往左往する。そこでもビルボの機転で、鍵穴が見つかる。そして、一人偵察に向かったビルボが、ドワーフ族の宮殿の地下の財宝の山の中で眠っていた巨大な邪竜スマウグを起こしてしまう。
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口先三寸でスマウグの追求をかわそうとするも、狡猾なスマウグはいたぶるようにビルボを追い詰めていく。指輪の力で逃げ出したビルボと合流したトーリンは、ドワーフならではの戦術でスマウグと闘う。地下にある精錬所で、火を起こして、これはわざと怒らせてスマウグに火を吐かせる。この場面も見ものですね。ドワーフの大きな黄金の像が、溶けて崩れてスマウグに降りかかる。
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潜んでいるドラゴン、スマウグと対峙するシーンもその“リング”が大活躍して、悪魔のごとくに大暴れするシーンでは、文字通りに桁外れの破壊力と、スマウグの声を担当した、ベネディクト・カンバーバッチの貫録たるや、お腹のそこから響く声で大奮闘。低音の声を出し過ぎて吐血したとか、お大事に。ドワーフたちの復讐の手伝いを見事に成し遂げる。
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忘れてならないのが、闇の森の入り口で一行と別れたガンダルフは、緑のラダガストと共に、世界に迫る危険の正体を探る旅に出る。幽鬼の墓で明らかになる敵の存在。確かめようと、遂に危険な山城に踏み込んだガンダルフは、魔法の結界を打ち破り、ネクロマンサー(死人遣い)の正体を知るが、同時に最大の危機に陥る。それは敵のワナであり、ガンダルフの最強の敵と対決することになる。魔法の杖で地面を叩き山城の中を行く、勇敢な灰色の魔法使いガンダルフ。演じたイアン・マッケランの元気なことといったらない。
これは、80年前に書いたトールキンの原作にはそんな話はない。でも、妙に遠慮しすぎてた1作目に比べると、このくらいの妄想には観客も大いに愉快に観賞できると言うもの。最後の終わり方が意外だったので、早く「五軍の戦い」が待ち遠しく、早く続きが見たいと思った。
2014年劇場鑑賞作品・・・51 Image may be NSFW.
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家路 ★★★★

テレビドキュメンタリーを中心に活躍し、ギャラクシー大賞を筆頭にさまざまな賞を獲得してきた久保田直がメガホンを取ったヒューマンドラマ。東日本大震災によって故郷を失ってしまった家族が、さまざまな試練を乗り越えながらも絆を強めていく姿を追い掛けていく。『マイ・バック・ページ』などの松山ケンイチ、『共喰い』などの田中裕子、『今日子と修一の場合』などの安藤サクラら、実力派が共演する。自然や家族を深く見つめたテーマ性に加えて、オールロケを敢行して捉えられた福島の緑あふれる風景も見もの。
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<感想>物語の舞台は2011年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故でまき散らされた放射能物質によって、強制退去に処せられた福島県の山村を舞台にしている。ロケーションには旧緊急時避難準備区域の川地村が選ばれ、俳優への綿密な方言指導によって、その土地に暮らしていたある家族の物語がリアルに描かれている。
園子温監督の「希望の国」では防護服に身を包み、みるみる数値の上がるガイガーカウンターに叫びながら20キロ圏内に向かう。「フタバから遠く離れて」では避難先の場所からの声が。
人が暮らしてきた町がある日、無人になる。その静かな恐ろしさを原発事故後、私たちは報道などの映像を通して目にしてきたのだが、人がいないだけで、家や自然はそのままである。そんな不思議で不条理で、絶望的ともいえる光景のなかに、防護服を着ることもなく土を耕す人がいるとしたら。
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ここでは、コメという主題を全篇につらぬきながら、一つの大きな選択を選ぶ青年をフィクションの中に配置する。強制退去の処された放射線量の高い故郷の村に帰り、認知症を発生した母親と共に野を耕し、コメを作りながら緑のなかで生きると言うこと。その優しくはない選択は、松山ケンイチ演じる青年に託された。それがこの映画の表明であり、こんな生き方があってもいい、と映画は語ってくれる。
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冒頭からしたたるような緑の樹木と田園風景が視界に広がってくる。この染み入るような新緑は、ラストまで「家路」という作品の大きなイメージとして目に焼き付く。その主人公の母親を演じた田中裕子の演技が自然でとてもいい。「共喰い」では戦争で手首を失い、義手を付けた手で魚をサバクたくましい母親を演じ、対照的に「はじまりのみち」では、脳卒中で倒れ身動きができない母親を演じた。その時息子の加瀬亮の背中におんぶした田中裕子、この作品の中でも松山ケンイチに背負われて、山の緑の中を歩くシーンが印象的でした。
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狭い仮設住宅に住んでいる4人家族。土地を奪われ、生活の糧(農業)を奪われ、毎日狭い仮設住宅のトイレの前に座り込んでいる。長男の総一を演じた内野聖陽は、どこにもはけ口のない状態の苦しさというものを、本当に現地の人の苦しみを代弁するかのような役回りでした。
そんな夫の代わりに、妻の安藤サクラがデリヘリをして働いている。義母の田中裕子には、弁当屋で働いていると嘘をついているのだ。孫娘の世話をしている義母。
買い物から帰る田中裕子と孫娘、同じような仮設住宅が並ぶ光景に、立ちすくむシーンがある。意気消沈と困惑、今までの畑を耕し野菜を作り、コメを作る毎日だったのに。農作業もないこの生活に、よるべなさと狂気がないまぜとなり、いつしか田中裕子の表情にはボケという認知症が忍び寄ってくる。
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放射能汚染の土地、国からの立ち入り禁止命令、自分の土地に足を踏み入れられない苛立ちを何処へぶつけたらいいのだろう。長男総一の同級生が、放射能汚染の自分の田んぼの土をトラックに積んで、捨てに行く途中で自殺をしてしまった。誰にも届かない心の叫びを感じ取る。
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けれども中学の同級生、山中崇が松山ケンイチに告げるように、その選択はおそらく「ゆっくりと自殺するようなもの」なのであり、これからどのような健康被害が出るかは、今なお未知数なのである。人が避難して放置されるには、あまりにも美しい緑と共に、その選択を理想化することは、今福島で起きている現実と離れたところでこの映画を観ている人たちに、映画はそのことの重さと残酷に薄情に、あるいはセンセーショナルに、描いても過ぎることはなかったのだろう。そこには、故郷が帰れない場所になってしまった家族が選択した、ある再生の形が提示されている。
本当に被災という現実を記録することであるのか、目に見えない放射性物質の脅威をどのように現実として記録できるのか?・・・そこに生きる人々へと向けられた、あるいは放射性物質が降り注ぐ村の美しい緑へとカメラは向けられていく。フィクションの向こうに、実在する福島と、くつがえせない現実があるのだ。
そのリアルさを求めようとすればするほど、けれども現実はするすると手の平からこぼれ落ちてゆく。この作品から導かれた正直な感想は、そのようなものだった。悲しく厳しい現実に対して、フィクションとしてのドラマが向き合うには、まだまだ難しい状況がつづいている、そう感じざるを得ないと思った。
2014年劇場鑑賞作品・・・52 Image may be NSFW.
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魔女の宅急便 ★★★

宮崎駿によってアニメ化もされた、角野栄子の名作児童文学を原作にしたファンタジードラマ。一人前の魔女になるための修行として、知らない町で1年間生活する13歳の少女キキがさまざまな出来事を通して成長するさまを見つめる。監督は、『呪怨』シリーズの清水崇。キキを演じるのは、オーディションで選出され、角野も太鼓判を押したという新星・小芝風花。尾野真千子、宮沢りえ、筒井道隆といった豪華な顔ぶれの共演陣はもとより、原作の世界観を再現した美術や衣装にも注目。
あらすじ:魔女の家系である少女キキ(小芝風花)は、13歳になったのを機に魔女になるための修行をすることに。それは見知らぬ町で、1年間だけ生活するというものだった。黒猫ジジと空飛ぶホウキに乗って旅に出た彼女は、海辺の町コリコへとたどり着く。やがて、パン屋の女主人おソノ(尾野真千子)の家に居候し、宅急便屋を開業する。つらい出来事があっても、母コキリ(宮沢りえ)に言われた笑顔を忘れずに働く中、空を飛びたいと願う少年とんぼ(広田亮平)と出会う。
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<感想>85年に児童文学として産声をあげ、89年には宮崎駿監督の手でアニメーション映画となり大ヒットした。それが実写化されると聞いた時には、どうしてもアニメの鮮烈なイメージが強すぎて、実写版が再現ドラマのような印象がした記憶がある。
ところがである、リアルなのに、まるで絵本に飛び込んだみたいな世界観のもと、魔女となることを夢見るキキの物語に魅了された。ほうきで空を飛ぶシーンでは、ワーヤーとCGを駆使したキキの飛行シーンが見られ、ほうきにまたがりグラッ、フワリと身体が持ち上がる浮遊感や、風を切る爽快感もとても自然でいい。風を感じて眼下の風景に息を飲む、空飛ぶ気持ちが体感できる。
キキの両親には、宮沢リエさん、父親には筒井道隆さんと、出番少ないですから。
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キキが修行の場に選んだコリコの町は、瀬戸内海の小豆島がロケ地。海に囲まれて緑があふれ、街並みはカラフルで郷愁漂う東洋の島。ファンタジックな雰囲気に包まれ、魔女の存在をすんなり受け入れる人々のおおらかさも魅力で、キキが直感で決めたのも納得できる世界。この町にキキがドラマチックな数々の出会いをもたらしていく。
それに、グーチョキパン屋のおソノさんが優しくキキの面倒を見てくれる。そこで始めたほうきに乗って荷物を届ける「魔女の宅急便」を開業。アニメにはなかった物語として、魔女に対する世間的通念を悪用して、荷物じゃなく呪を運ばせたと、人々に信じ込ませたりするような下劣な人間が登場する。
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呪を運ぶ魔女と忌み嫌われ、キキは失意から飛ぶ力を失ってしまう。その場面はほうきで飛んでいる時に、急に落下していくキキ。黒ネコのジジも乗っていたのに何処かへ行ってしまった。果たして彼女は、無事に修行を達成できるのか。
傷ついたり、ひざを擦りむいたりしながらも、修行に励むキキの奮闘や苦悩が、演じている新星・小芝風花という生身の肉体を通してリアルに伝わってきます。
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空を飛ぶ夢に挑み続ける少年、とんぼの広田亮平。人力飛行機のテストで負傷したところをキキに助けられ仲良くなる。それに、自転車に乗れなかったキキを、後ろから押して練習させる。
呪を運ぶ魔女として嫌われ、運んだ荷物が全部返品されてくるのにはガッカリだよね。それでも、めげずに何とか呪をぬぐおうと奮闘するキキに応援したくなります。呪いなんて、監督らしさが出ていていいのだが、しかし、歌を失ったディーヴァが再起して、少女を歌声で勇気づけるクライマックス。これが何か押し付けまがしく感じて、これがなくても魔女の少女は自力でどうにかするんじゃないかと思ったのにね。
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始めに着地をした動物園には、カバの親子がいて、子供が尻尾をライオンに咬まれたと大騒ぎ。このカバの子供が最後の方で、病気になり離れ島までキキが運んで連れて行く場面では、暴風の中、方向も分からないし、キキのほうきで運ぶにはかなり重量オーバーで、それでも頑張って無事離れ島まで届けるキキの姿に感動します。出番が少ない医師には、浅野忠信さんでした。
それでも、アニメとは一味もふた味も違う、リアルな少女が届けてくれる心地よい感動がありますよ。
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りんごのうかの少女 ★

『ウルトラミラクルラブストーリー』などで知られる青森県出身の横浜聡子が監督と脚本を務め、反抗期の少女を取り巻く家族を描く中編。弘前のりんご農家を舞台に、反目する母娘の姿を通して思春期の焦燥感を全編津軽弁で描写する。『ミステリー・トレイン』で共演した永瀬正敏と工藤夕貴が夫婦を演じ、青森のご当地アイドル「りんご娘」のときが娘を好演。ユーモアを交えながら展開する鮮烈な物語に引き込まれる。
あらすじ:青森県弘前市の岩木山麓でりんご農園を経営する三上家の14歳の娘りん子(とき(りんご娘))は、中学にも通わず家出ばかりしている。母の真弓(工藤夕貴)は口うるさい祖母に文句を言われながらも、ぐうたらな夫の玉男(永瀬正敏)の代わりに必死で働いていた。りん子の誕生日を控えたある晩、玉男が娘のプレゼントにとリボンを飾った馬を引いて帰る。
<感想>青森県弘前市が中心となって制作したご当地映画は昔からあるが、地方発の映画がそのことを超えてゆくあり方は、面白い映画の場合、話はどうでもよくなることと無関係ではないだろう。
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白人男性がこちらを見すえて、津軽三味線をベンベンと弾きまくるオープニングにハッとさせられ、観ている側が???マークになろうが、お構いなしで繰り出される津軽弁に驚いた。ですが、家族や田舎な地元から遠くへ離れたい少女のウダウダという、ありがちな物語でもある。少女が手にするポリタンク、着ている赤い服、履いているヒールなど、やたらと赤を強調しているようだが、彼女の頬っぺたの赤だけで十分だと思いました。
弘前のりんご園を舞台に反抗期の少女と家族の関係を描いているが、そんなこと以上に画面の突拍子もなさに驚かされる。母親の工藤夕貴が、夜に建てつけの悪い戸をガタピシと開けると、馬がぬっと顔を出す。
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亭主の永瀬正敏がその馬に乗ってリンゴ畑を進んで、リンゴをもぎ取りお前も食うかと馬に差し出すやいなや、落馬してしまい斜面を転げて、次の瞬間というか場面が葬式のロングショットになる。
その父親を娘がリンゴ畑で想うシーンでは、主演のリンゴ娘ときが歩き回る姿と、よちよち歩きの幼子が、永瀬正敏から歩行を教わる姿とが、同一画面の中に同時に描かれるのである。
何だか意表をつく描写が続く。しかも台詞は津軽弁で、意味不明のところも多く、だから観客はただ唖然として見守って、突飛な画面を楽しむしかなく、実際、次々と出て来るイメージは奔放さに溢れているのだ。
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青森出身の横浜聡子監督が、青森の風土や津軽弁にこだわるのは当然だし、それが個性だと思うのだが、出身者でなければ分からない表現には戸惑いがある。
その勢いの前では、反抗期の娘を中心とした話など、どうでもよくなり映画はイメージの連続体として展開していく。
しかし、映画を引っ張っていく主人公りん子の感情や屈折した心理描写が不十分なので、大切なりんごの樹に火を放つ行為が唐突な印象は拭えない。42分という尺の中で、2時間もの作品と同じように論じることはできないが、未完成作品のラッシュを見たような中途半端な気分が残りました。
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前に観た「奇跡のリンゴ」では、無農薬でりんごを育てるという。何度も害虫に食べられ失敗しては、諦めないで無農薬のりんごを育てる夫婦と娘の立派さと、リンゴの花の満開に努力が実ったことに感動した思いがあるので、この映画は別ものだと、比較してはならないと自分に言い聞かせました。
2014年劇場鑑賞作品・・・54 Image may be NSFW.
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鉄くず拾いの物語 ★★★.5

『ノー・マンズ・ランド』などで知られるダニス・タノヴィッチ監督が、ロマ族の一家の実話を基に描く感動作。ボスニア・ヘルツェゴビナを舞台に、緊急掻爬(そうは)手術が必要にもかかわらず、保険証がなく高額の治療費が払えないために手術を拒否される家族の苦難をドキュメンタリータッチで描き出す。出演者は実際その当事者であるナジフ・ムジチとセナダ・アリマノヴィッチ。第63回ベルリン国際映画祭で3冠に輝いた、真実の物語に心揺さぶられる。
あらすじ:ロマ族のナジフ(ナジフ・ムジチ)とセナダ(セナダ・アリマノヴィッチ)夫妻は、2人の幼い娘と共にボスニア・ヘルツェゴビナの小さな村で生活している。ナジフは拾った鉄くずを売る仕事で生活費を稼いでおり、彼らは家族4人で貧しいながらも幸せな日々を送っていた。ある日、彼が仕事から戻ると妊娠中のセナダが激しい腹痛でうずくまっていて……。
<感想>ドキュメンタリー・ドラマのもつ説得力、メッセージの力強さ、人物の存在感を証明した傑作です。狭い室内で幼い姉妹が戯れている。母親らしき女が台所でお湯を沸かし、帰宅した男とテーブルにすわって一服し、その男に、「薪がない」と言う。男は無言のまま、雪がうっすらと降り積もった外へ出て、のこぎりと斧を手に近くの林の中ごろで、手ごろな木を切りに出かける。
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事実を本人たちに再現させ手持ちカメラで撮影した作品である。その良い所は、意外性に満ち、説得力に溢れる細部。奥さんのでぶっと太った肉付き、二の腕の入れ墨。夫の仕事帰りのウォッカ一杯、薪割りの手つき、くたびれた赤い乗用車の手入れ。
ボスニアに住むロマ族の家族。本人たちによる実話再現で、映画的スケールの話ではないけれど、当事者にとってまさに命に関わる、保険にも入れないゆえの医療問題を描いている。
集落に住む夫婦ナジフとセナダ。つましいながらも穏やかな彼らの日常は、セナダが流産し、手術が必要となりながらも、保険証がないゆえに高額な費用を請求されるという事態に直面し、暗転する。
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セナダを助けてくれと懇願するナジフを、医者や看護師は杓子定規にしか取り合わない。車でわざわざ町中の病院を訪れたにもかかかわらず、二人はそのまま自分たちの集落へ戻るしかなく、翌日は、痛みを訴えるセナダを連れて再び病院を訪れても、結果は変わらない。
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むろんロマ族の人々は、社会的には底辺の暮らしを強いられている。セナダが手術をしてもらえないのも、ロマ族だからというより貧しいからなのだ。映画の後半でも、彼らが料金を払えずにいたために電気を止められる。しかし、その事実に直面したナジフは、タバコを吹かしながらしばし座り込んだ後、意を決したように立ち上がり、弟や仲間を呼び、街の中心部から離れたところに住んでいる彼らにとっては、必需品に違いない自分の車を解体して鉄くずにして売り払い、電気代とセナダの薬代を捻出すると宣言するのだ。
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そして、黙々と車の解体をおこなった結果、電気代の支払いも済み、電力会社の職員たちが電気の復旧工事に訪れるという。恨み言を言うでもなく、彼らと握手をかわす男たち。雪の降りしきる中、電柱に上り工事をする職員の姿も監督は丁寧にカメラに収める。
この場面での、車の解体と電気の復旧工事という二つの出来事が映画の中で結びつき、人々の行為がひたすらキャメラに収めるという。それゆえに見る者の胸に迫ってくるに違いない。
あの土地で暮らすロマの集落ばかりでなく、煙突が立ち並ぶ町中の景色も荒廃して見える。その風景の中でナジフたちが鉄くずとともに拾い上げる物は、疎外された生に秘められたかすかな輝きなのかもしれない。
前半に斧が執拗に映されるのは、医者の脳天をかち割るための布石と期待する、観客の心理が報われることもないのに。何故か引っかかるのだ。
ボスニアのあの内戦のときの方が、まだ良かったと漏らす夫の本音から、この土地で生活することの厳しさがうかがい知れる。それにしても、まったく素人の本人たちを使って、こんな作品が9日間で作られるなんて、映画の不思議さを改めて知らされた。
2014年劇場鑑賞作品・・・55  Image may be NSFW.
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オーガストウォーズ ★★★★

『ウォンテッド』を手掛けたロシアのスタジオがVFXを担当し、2008年に実際に起きたロシアとグルジアの紛争をテーマに描くSF戦闘スペクタクル。戦地に残る息子を救うため、激戦地へと乗り込むシングルマザーの奮闘と共に巨大ロボットも飛び出す驚異のバトルを映し出す。監督を務めるのは、ロシアの俊英ジャニック・フェイジエフ。ロシア軍の全面協力による実際の兵器を使用した迫力の戦闘シーンや、親子の情に触れる物語に心奪われる。
あらすじ:2008年8月8日。5歳のチョーマ(アルチョム・ファディエフ)は、別居中の父親に会うため単身モスクワから南オセチアを訪れていた。久々の対面もつかの間、突然侵攻してきたグルジア軍の攻撃により父親は亡くなってしまう。一方、母のクセーニア(スヴェトラーナ・イワノーワ)は、チョーマが戦闘の最中に一人取り残されたことを知り、南オセチアへと向かう。
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<感想>これは映画館のデカいスクリーンで観たかった。戦車やトラックが精巧なCGでロボットに変形するその場面、これは完全に「トランスフォーマー」だよね。T72旧ソビエト主力戦車が変形するシーンのインパクトたるや、なんとカッコいいことか。そして、それ以上に目を引いたのが、劇中に登場するロシア軍の戦闘機シーンです。
これは、ハリウッドの戦闘シーンとは違うと、本物だぞってね。結論から言えば、これは南オセチア紛争の渦中に正体不明の機械生命体が現れ、ロシア軍の兵器を片っ端からロボットに変形させ、超絶バトルを繰り返す作品に違いないって。本作の舞台はロシア南部で、グルジアと国境を接する紛争地帯。カメラは、その最前線地帯に取り残された子供を連れ戻そうとする母親のクセーニアとともに、戦場に入り込んで行くのです。
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巨大ロボットの役割というか、そんな妄想シーンというか、紛争に巻き込まれた少年が、辛すぎて空想の世界に逃げるしかない。彼の大好きなロボットが出て来るのが面白いです。壮絶な戦闘が、空想癖のある少年に立ちはだかる、その瞬間、父親がチョーマには正義のロボットに見える。「大丈夫、俺に任せろ」ってウィンクする。でも、次の瞬間、戦車から砲弾がドーンと発射されて、ロボットと祖父ちゃん、婆ちゃんが粉々になってしまう。
それに、凄く残酷なシーンでは、砲弾が獣型ロボに変形する演出がニクイですよね。そして、激戦地区に取り残された少年を、モスクワにいる母親が救出しようとするのがメインストーリーになっているんです。母親は、息子を離婚した父親に預けて、再婚しようと銀行員の彼氏とソチへ旅行に行こうとしていたんです。TVのニュースで、グルジア軍が南オセチアへ侵攻してきた。
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実はこの映画、2008年8月8日に起こった南オセチア紛争を舞台にした実録映画でもあるんですね。グルジア軍の侵略をしった母親は大慌てで、息子が危ないことを知り、急いで息子を助けにバスに乗るのですが、そのバス乗客に死亡フラグ立ちまくりで、誘導ミサイルが直撃するシーンで、文字通り吹っ飛びます。
運転席を破壊されたバスが、暴走しながら真っ二つに裂けていく映像は凄まじかった。でも、腕とか怪我するけど奇跡的に助かった母親は、息子を助けるために南オセチアの家を目指すわけ。ここから映画は、「トゥモロー・ワールド」の市街戦なみの戦闘シーンが約1時間半続きます。もうロシア兵器が満載!
携帯電話の映像でチョーマが流れ弾に当たって怪我をしている事を知り、敵のいる場所で車を盗んでやっとの思いで辿り着く。倒れている息子に声をかけると、チョーマには母親がロボットに見える、これは泣かせるシーンであります。
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その後、車で逃げて、グルジア軍の戦車が近づいてきて、少年にはそれが大きなボスのロボットに見えて、もうダメかと思った。そこへロシア軍の戦闘機が来てミサイルを発射、ロボットは粉々になってしまう。子供って、現実が辛いと楽しいことを空想するんですよね、だから、現実と空想世界の違いをもっと描いて欲しかったです。
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それに激戦地帯では、ロシア軍の若き偵察部隊の兵士と母親クセーニアの恋愛もあって、「誰かうちの子知りませんか」と、弾丸やロケット弾が飛び交う戦場で、母親をロシア軍兵士たちが、ボディーガード部隊を結成するんです。ここまでハードな女性の一人旅を今まで観たことがない。最後はもちろんハッピーエンドですから。
それにしても、この映画は、1本で戦争映画とロボ映画を楽しめる豪華な作りになっているし、実際に起きた南オセチア紛争をあまり記憶の薄れていない時期に映画化したのが凄いですね。
2014年DVD鑑賞作品・・・16 Image may be NSFW.
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ミッドナイト・ガイズ ★★★.5

アル・パチーノ、クリストファー・ウォーケン、アラン・アーキンというアカデミー賞受賞経験を持つ名優が共演したクライムドラマ。長年の刑期を終えて出所した老ギャングと、組織から彼を殺す密命を下された旧友が最後の夜をハメを外して過ごすさまを描く。俳優、製作などをさまざまな作品で担当してきたフィッシャー・スティーヴンス、主題歌をジョン・ボン・ジョヴィが担当。友情と忠義の間で揺れ動く男たちの生きざまが胸に迫る。
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<感想>まずはアル・パチーノ御大。還暦オヤジの琴線に触れる“若くないアウトロー”の一席である。28年ぶりにシャバに出たパチーノを唯一待っていたのは昔の親友、殺しの指令を秘めたクリストファー・ウォーケンだ。
出所する場面を冒頭で見ることが出来る。金網フェンスのドアまで、刑務所の係員一人に送られ、グッド・ラックの一言を受け取って、彼は出所する。このグッド・ラックは、「頑張れよ」と字幕に出る。
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親友の出所を出迎えたウォーケンは、明日の朝10時までにパチーノを殺せと、その地域の悪事や犯罪の元締めのような男から、厳命されている。28年前、パチーノやウォーケンがおこなった強奪の現場に、その元締めの息子も参加していた。息子は犯罪現場の緊張に耐え切れずにパニックをお越して、いきなり銃を乱射し始める。現場は銃撃戦となり、その時パチーノが撃った弾の一つが元締めの息子を即死させたのである。
両雄との同い年のせいか、息がぴったりである。バイアグラ&○○コ、ネタで盛り上がり、昔馴染みの娼館に繰り出すのが嬉しい。その後、昔の勢いはないがそれを彷彿とさせる荒仕事に手を染め「昔みたいだな」、「いや昔以上さ、今は一瞬一瞬が貴重だからな」というやりとりは、パチーノ&ウォーケンならではの味わいですよね。ミニ・ワイルドパンチ的な終盤も男泣かせな感じでいい。だが、やっぱしヨレヨレな感じも受けるのは致し方ないのだろう。
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中でも、登場する女性たちがみな素晴らしい。確か娼館の女主人が言う台詞「自分がいかなる状況に置かれても、そこで最善を尽くせ」と母親から教わり、そのとおりに今も生きている、とウォーケンに語るシーン。まったくなんの実感もわかない、という表情で彼はその言葉を受け止める。このシーンが何ともいえなく最高なような気がする。
最善を尽くすも、へったくれもなくこれしかないのでそうして来た。という人生だったウォーケン。明日の朝10時までに、パチーノをウォーケンに殺させるのは、28年待った息子の敵討ちなのだ。
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28年の刑、という設定は巧みであり、40代半ばで刑務所へ入ったとして、出所したパチーノは実年齢でいけるし、ウォーケンもそのままでいい年齢になっている。
こうでしかあり得ない、という人生を送って来た男二人の前方に待っているのは、こうでしかないという結末である。親友を殺すわけにはいかない。そうであれば、残された道は、元締めの男をこの世から消す、という果敢な試みだけ。
次の日の朝10時まで、二人の男たちが夜の街で過ごす時間は、象徴としておそらく自分たちへの弔いだろう。
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それに、仲間はもう一人いて、癌でもうすぐあの世ゆき間近。その男を演じているのがアラン・アーキンで、彼は女性に対してのサービスが抜群で、娼館でもモテモテなのだ。そのアランの車の運転が巧いのなんの、彼が最後の見せ場を作り、車の運転席で急死する。アランの遺体を墓地に埋葬し、パチーノが弔辞を語るシーンが、周到に用意されているではないか。
男性と女性の対比が、なかば隠されたもう一つの主題になっていると思った。最後に登場する女性が、地元のごろつき男相手に、「くるみ割り人形」を野球のバットで行うシーン。割られる男たちの悲鳴が音声のみ画面の奥から聞こえてくる。
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どうにもならない、どうもがいても、どう生きようとも、夜明けは必ずやって来るから。何だか、最後のシーンにもう少し勝算があってもよかったのではなかろうか。パチーノとウォーケンの撃つ拳銃の弾丸が、上へ上へとそれていく描写に、きっと敵からのショットガンの銃弾で被弾したのだろう。その切なさが虚しく画面に映し出される。
3人の爺さんたち、「エクスペンダブルズ」や「RED/レッド」に出演してもいいと思うのだが、どんな役でもいい楽しみに期待したいものだ。
2014年DVD鑑賞作品・・・17 Image may be NSFW.
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リディック:ギャラクシー・バトル★★★★

ヴィン・ディーゼル主演によるSFアクションの第3弾。圧倒的戦闘能力を誇る極悪人リディックが、凶暴なモンスターがひしめく惑星から脱出を図る姿を賞金稼ぎたちとの戦いを交えて活写する。監督と脚本は前2作も手掛けた、『パーフェクト・ゲッタウェイ』などのデヴィッド・トゥーヒー。『スター・トレック』シリーズなどカール・アーバン、『コロンビアーナ』などのジョルディ・モリャら、実力派が共演する。モンスターや賞金稼ぎが入り乱れるバトル描写に加え、リディックの過去が絡む物語も見ものだ。
あらすじ:ネクロモンガー族の最高位に就くも、司令官ヴァーコ(カール・アーバン)の策略によって見知らぬ惑星に置き去りにされたリディック(ヴィン・ディーゼル)。灼熱(しゃくねつ)の大地がどこまでも広がり、凶暴な水棲(すいせい)エイリアンが牙をむく、この星からの脱出を決意した彼は無人のシェルターで発見した非常用無線を発信。それに釣られてお尋ね者である自分を捕らえようと惑星に降り立った賞金稼ぎたちの宇宙船を奪おうとする。激しい攻防を繰り広げる賞金稼ぎ軍団とリディックだが……。
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<感想>極悪犯罪者で脱獄囚、「リディック」の、ヴィン・ディーゼル主演によるSFアクションの第3弾。誰にも束縛されず、自身の能力と知力で道を切り開いてきた肉体派アウトロー。演じているヴィン・ディーゼルのルックスそのままのイメージを引きずっているように見えるが、決して好き好んで危険な状況に身を置くわけではなく、賞金のかかったお尋ね者である点や、彼の宿命がそうさせているのだ。
周囲に巻き込まれていくうちに、戦いの修羅場に担ぎ出されるのがリディックというわけ。1作目の「ビッチ・ブラック」では、宇宙船で護送される途中でアクシデントに見舞われ、昆虫型宇宙生物の群れと闘うサバイバル・アクションを披露している。2作目では、凶悪な屍者の帝国ネクロモンガーの侵攻に巻き込まれ、古代ローマ風味で、スペース・オペラ調の作品の英雄に成り上がるまでを描いていた。
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そして、今回はネクロモンガーの王になったリディックが、重臣の裏切りにあい、辺境惑星に置き去りにされるところから始まる。この冒頭でカール“ドレッド”アーバンがちょこっとの出番で顔を見せている。
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本シリーズの特徴である舞台となった惑星の、大気や生態系の描写は1作目の惑星と似ており、出て来る狂暴なモンスターもやや似ているのだ。その中でも荒野を彷徨うリディックが、ハイエナのような獣を助けたことで、彼を慕ってくる。さながら「マッドマックス2」の野良犬のような関係、その獣と共に行動しながら自身を見つめ直す。
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灼熱の大地に覆われた惑星の奇妙な現象と、荒野の地下で静かに潜む醜悪なモンスター群の布石をうちながら、リディックに迫る2つの集団。無法者の賞金稼ぎたちと重火器を備えた宇宙刑事連合らと熾烈な戦いを描いている。やがては、2つの集団がリディックを捕獲するために結託して、リディックとの対決が始まる。さながらSFウェスタンの風情でもあり、1作目との関連性をも盛り込んでいて、思わず嬉しくなった。
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リベンジャーたちの1人には、「バトルスター・ギャラクティカ」で人気者になったケイティー・サッコフが扮しており、男勝りのマッチョぶりで凄みをきかせ、シャワーシーンもありおっぱいまでサービスショットで見せている。彼女がリディックに、馬用の麻酔弾を3発撃ち込むのですが、ケロッとしているのにびっくり、でも4発目を打ち込まれたらやっぱり倒れたわ。彼女、強い男に興味があるようで、何となくリディックに好意を持っているようにも見えた。
賞金稼ぎを演じるのは、親分のサンタナにジョルディ・モリャ、「アイアン・フィスト」の最強キャラ、ブラスト・ボディ役のレスラーのデビッド・バウティスタ他。気になったのが、気弱なイケメン青年、ノーラン・ジェラード・ファンクであります。
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生存さえままならぬ過酷な環境の中、嵐が襲来する前に、惑星からの脱出をしなければならないタイムリミットまで盛り込み、1作目に原点回帰したような緊張感が高まって満身創痍となる。それに、リディックが王様という束縛から解放され、再び自身のために闘い、自由に生きることに目覚めるという3部作の完結編のようにも見えてくるのだ。
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見どころは、もちモンスターとの闘いシーン。巨大なサソリの尻尾のような毒を持つ地下生物。沼地のような中に潜み、獲物として襲ってくるので、その尻尾の毒牙にやられると死んでしまう。リディックがハイエナのような生き物を助けた時に、そのサソリの毒のような液を自分自身と獣に注射をして免疫を付けるという、サバイバルですな。だが、大型モンスターの戦いには、体力勝負ですね。
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それに、賞金稼ぎや宇宙刑事連合たちとの闘いは、先が読めているので彼らに勝ち目はない。自慢の殺人術と交渉術を駆使することで脱出は目前に、・・・。リディックがこの惑星から脱出するための宇宙船が必要であり、その宇宙船の燃料と思える物体を盗んで隠す。それをネタにして、宇宙船を奪おうと企むのだが、賞金稼ぎの男たちをモンスターの餌食にしたり、リディックの冴えわたる殺人術(曲がったナイフを巧みに使う)で、一人また一人と抹殺していく。
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途中で、リディックに迫る2つの集団が結託している間のシーンは、ダラダラとしていて眠くなります。リベンジャーの中に1作目で道中を共にした少年の父親という男が、リディックに対して息子を見捨てたことに腹を立てて殺そうとします。だが、少年がモルヒネ中毒で自分から死を選んだことを話すも、納得せず執拗に追いかけて隙を見ては殺そうとする。しかし、最後には、父親としてリディックの男らしい生き方を見て、救出に来るんですね。
2作目のような豪華な宮殿や、惑星のVFXの映像とかには劣りますが、異境の惑星を舞台にして、リディックのキャラを全面に出し生かした快作ではあります。個人的には満足な出来ですね。
2014年劇場鑑賞作品・・・56  Image may be NSFW.
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光のほうへ ★★★

悲劇的な少年時代を過ごし、別々の人生を送っていた兄弟が再び心を通わせ、どん底の人生から光を見出そうともがく姿を描くヒューマンドラマ。監督は、「セレブレーション」のトマス・ヴィンターベア。2010年ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品、2011年デンマーク・アカデミー賞助演男優賞など5部門受賞。
あらすじ:アルコール依存症の母親と暮らす兄弟にとって、唯一の希望は歳の離れた幼い弟だった。育児放棄した母親に代わり、2人は盗んだミルクを与え、タバコをふかしながら赤ん坊をあやし、電話帳からでたらめに名前を付け、洗礼の真似をした。しかし、赤ん坊は突然死んでしまう。
大人になった兄ニック(ヤコブ・セーダーグレン)は交際していたアナと別れ、自暴自棄になって人を殴り、最近まで刑務所に入っていた。現在は臨時宿泊施設で暮らしながら、酒と肉体を鍛えることで時間を埋めている。
ある日、アナの兄イヴァン(モーテン・ローセ)と街で偶然再会する。イヴァンはニックを、今は結婚して子供もいるアナのところへ案内する。アナと目が合うと、ニックは逃げるように立ち去る。その夜、ニックはイヴァンに、アナが自分たちの子供を妊娠したが中絶し、そのままいなくなったことを打ち明ける。
一方、弟(ペーター・プラウボー)は妻を交通事故で亡くし、幼い息子マーティンをひとりで育てていた。ある日、息子をちゃんと育てられないなら引き離すとソーシャルワーカーに言われると、生活保護を断ってその場を飛び出す。
しかし彼は家に着くと息子をリビングに残して、バスルームで慣れた手つきでクスリを打つのだった。お互い辛い過去を封印するために関わらずに生きてきた兄弟は、母親の死をきっかけに教会で再会する。兄は母親の遺産を弟に譲ろうとするが、弟は慌てて、もうクスリはやっていないと答える。兄はマーティンが心配だと告げ、2人は別れる……。(作品資料より)
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<感想>悲しい過去を引きずり、社会に順応できない兄弟を描いた社会派ドラマ。映画製作運動、ドグマ95の創設メンバーのひとり、トマス・ビンターベア監督が、福祉国家デンマークの知られざる貧困層の実態に焦点を当てた物語。
アルコール依存症の母親に育児放棄された3人の兄弟。上の2人は協力しあって一番下の赤ん坊の弟を育てていたが、弟は突然死してしまう。見ていても、突然死というよりも、赤ん坊を小さな兄弟に任せて、母親は酒びたりの売春婦だ。だから兄弟は弟の赤ん坊にミルクやおむつ取り換えくらいで、他の知恵はない。赤ん坊が夜に泣きやみ静かにしているので安心したのだろう。朝には赤ん坊は死んでいたのだ。かなり兄弟はショックだったと思う。特に兄の方は自分の愚かなせいで死なせてしまったことを悔いる。
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大人になった長男のニックは、臨時宿泊所で誰にも心を開かず、体を鍛えることだけを趣味として暮らしていた。実は、暴力癖のある友人に売春婦の恋人を殺されてしまう。
一方、弟は重度の麻薬中毒に苦しみながら幼い息子マーティンを育てていたが、麻薬密売の罪で逮捕される。母親は2年前に事故で死亡。息子は孤児院へ入れられてしまう。息子の世話を兄貴に頼むが一度は断られる。
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兄弟は母親の葬式で再開を果たすも、兄貴は、子供のいる弟に母親の遺産を全部譲ることにする。お金が入って嬉しそうに弟は、息子と買い物をして自分は折角遺産の大金が入ったのに、全部覚せい剤につぎ込むのだ。そして若い青年を雇い薬を売りさばかせる。いつか警察に捕まるのか、その前に自分が薬漬けになって死んでしまうのだろう。
ところが、刑務所の中で兄弟が出会うのだ。弟は麻薬売買の罪と覚せい剤の中毒で、兄貴はあの頭の変な男に自分の女を紹介して、その男が女を殺してしまった罪を被ってるのだ。弟はその後、刑務所のトイレで自殺。
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兄貴は全てを話して釈放され、弟の息子マーティンを引き取りに行き、弟の葬式だ。自分が子供の頃に、赤ん坊の弟を死なせてしまったことを、もがき苦しみながら悩み引きずって来たのに。今自分が弟の子供を育てることになったことを決めた兄貴。血の繋がった甥っ子だ。これで今までの暗い過去から抜けだし、過去に失われた子供と、今愛する命を見出し、生きる希望を持てる最後に救われるます。まさに一筋の光が照らす、一人の男の再生の物語ですね。
2014年DVD鑑賞作品・・・18 Image may be NSFW.
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銀の匙 Silver Spoon ★★★.5

週刊少年サンデーで連載され人気を博しテレビアニメ化もされた荒川弘のコミックを、『麦子さんと』などの吉田恵輔監督が実写映画化した青春ドラマ。北海道の農業高校に入学した主人公が、酪農実習や部活に苦悩しながらも仲間たちと絆を深め、農業をめぐる理想と現実のはざまで葛藤しつつ命の大切さを学んでいく。主演は、アイドルグループSexy Zoneの中島健人。共演には広瀬アリス、市川知宏、黒木華、中村獅童など多彩なキャストがそろう。
あらすじ:受験失敗をきっかけに、北海道の大蝦夷農業高校へ入学した八軒勇吾(中島健人)は、同級生のアキ(広瀬アリス)や駒場(市川知宏)のように明確な将来の展望を抱けない自分に違和感を抱きつつも、酪農実習や部活に奮闘していた。北海道の大自然と動物たち、そして個性豊かな仲間に囲まれ、これまで経験したことのない生活を送る中で八軒は戸惑い、悩みながらも自分の進むべき道を見つけ始めるが……。
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<感想>軽快な青春コメディにして、熱い社会派ドラマでもある心憎い逸品です。原作は1300万部突破の大ベストセラーとなり、テレビアニメ化されている同名コミック。
北海道にある農業高校酪農家に入学した都会派暮らしの男子生徒の目を通して、牛、豚、鶏といった経済動物が食肉になっていく過程を、隠すことなくきっちりと見せていく作品です。
主人公の八軒勇吾は、中学まで札幌の超名門校にいたが、受験レースに付いていけず挫折。父親の厳しい言葉や家にいずらくなり、帯広にある寮のある農業高校に進学。実家を出れれば何処でも良かったのだ。親が思うようには子供は育たないということも含めて、とても意義のある作品でした。
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動物の世話をするのは初めてで、毎日、早朝に起きなければならず、土日も関係ない。八軒の仲間たちは、殆どの生徒が実家が酪農関係者で、経済動物に過剰な愛情を注ぐと辛くなることを子供のころから理解していた。
だが、将来は実家を継ぐ級友たちに対し、八軒は具体的な夢はなかった。だからという分けでもないが、子豚の飼育に対しても名前を“豚丼”と付けて可愛がる。皆は、食肉に売られていく時に、絶対に心が折れそうなくらいに辛くなるからやめろと言いうが、初めての経験だしよく理解できない。
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しかし、秋になりその大好きな“豚丼”の出荷が決まり、どうしてもその“豚丼”を自分の手もとに置きたくて、夏休みにアルバイトしたお金で買いたいと申し出る。解体されてブロックにされた“豚丼”、それを燻製にしてみんなに振る舞う八軒の顔は清々しいく、少し大人になったような気がした。
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アキの胸元をさりげなく見せるショット、大好きなアキの誘いで、部活も馬術部に入り、朝練で4時起きに。馬のエサやり、馬房の掃除に、練習と八軒にはキツイ修行が待ってた。
牛の世話や搾乳はもちろんのこと、手を突っ込んでの“直腸検査”の実習を体験のシーンでは、中村獅童先生の教えのもとで初体験。それに、黒ずくめの美しくナイスなボディの吹石一恵先生には驚きです。綺麗だけじゃない、酪農というものを男先生顔負けで教育してくれる。
主人公の八軒を演じた中島健人君、それに駒場を演じた市川知宏くんとの対立にはハラハラし、駒場くんの家が倒産して地元を離れることになるとは、まるで現実みのある実話のようなお話でした。
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そして、大好きになってしまった同級生アキの広瀬アリス、その父親竹内力は強面だが娘想いで、夏休みにその父親がヘルニアの手術で入院することになり、家を手伝う八軒。その広瀬アリスの祖父には石橋蓮司が、叔父さんに哀川翔が演じて、この温かい家族の絆に自分の家庭のことを重ねて、次第に両親のことを許していく八軒の成長が見えてきます。
アキの家にいる馬“キング”を、エゾノーのばん場レースに出すことを決め、アキとあやめが勝負するシーンが圧巻です。あやめには、黒木華さんが扮していて、いかにもお嬢様な感じがして素敵でした。
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校長先生には上島竜兵が扮して、学校の食堂の壁に飾ってある「銀の匙」の意味を八軒に教えるところもいいですよね。とにかく、夢もなく入学した主人公が、個性的な仲間たちと酪農を学びながら、友情や恋、挫折を経験しながら成長していく姿を描いている。牛の出産シーンも感動的ですよ。とにかく酪農家は楽じゃない!食肉ができる行程を観られますから。この映画の中で、食べることのありがたみが感じられて幸せです。
2014年劇場鑑賞作品・・・57  Image may be NSFW.
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ダラス・バイヤーズクラブ ★★★★★

1980年代当時無認可だったHIV代替治療薬を密輸販売し、アメリカのHIV患者が特効薬を手にできるよう奔走した実在のカウボーイの半生を映画化した人間ドラマ。HIV陽性と診断されたカウボーイを『マジック・マイク』などのマシュー・マコノヒーが演じ、21キロも減量しエイズ患者という難役に挑んだ。『チャプター27』などのジャレッド・レトー、『JUNO/ジュノ』などのジェニファー・ガーナーが共演。監督を『ヴィクトリア女王 世紀の愛』のジャン=マルク・ヴァレが務める。
<感想>実話を基にした今作の舞台は、1985年のテキサス。酒、タバコ、コカインにギャンブル、そして女に溺れる自堕落な生活を送っていたロン・ウッドルーフが、ある日突然倒れ、HIV陽性で30日の余命を宣告される。
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この当時は、まだエイズは同性愛者だけの病気と誤解されている時期。特効薬AZTはまだ試験中で、それに毒性も副作用も強かった。このまま死ぬしかないと、生き延びるために彼は、未承認だった治療薬を求めてメキシコへ行くが、すぐに多くのエイズ患者たちに需要があることを発見する。
その薬は効果も高く副作用も弱いが、まだアメリカでは認可されてないこれらの薬物を大量に仕入れて、“ダラス・バイヤーズクラブ”という会員制システムを作り、月400ドルの会費を取って薬をサバクことで、法の網をくぐり抜けようとする。
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ゲイ・コミュニストに人脈を持つ、やはりHIV陽性のトランスセクシャルのレイヨンを仲間に引き込み、モーテルの部屋を事務所に仕立てて、顧客は増える一方だった。その内に役所に目をつけられて、薬の供給を断たれそうになれば、世界中を飛びまわって、なんとか商売の薬を確保しようとする。
ロンが、その後7年間生きるが、彼と政府、製薬会社との闘いは、弱者が大きな権力に一人で立ち向かうという昔ながらのハリウッド映画の伝統を引き継いでいる。
何よりも脚本が素晴らしい。テンポのいい展開で観客をぐいぐいとドラマの中へ引き込んで行く。これまでにもエイズ患者を描いた映画はいくつかあったが、脆弱な身体になった主人公をこんなにも力強く描いた作品はなかったと思う。だからなおさら、感動的なのだろう。
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もちろんストーリーのその部分も面白いのだが、一番の見どころは、下品で、偏見に満ちたテキサス育ちの男に扮したマシューの迫真の演技といっていいだろう。
死相、それが演技と分かっていても、俳優の顔にそれが漂うのを目撃してしまった瞬間、心がざわつくただならぬ不穏さ。本作は実話に基づくが、マッチョで堕落した男がHIVに感染したことから、生きることへの異様な執着を見せる活力の物語でもある。
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死相と同時に旺盛な生命への熱量を見せるマコノヒーの、一筋縄ではいかない男の歪んだ魅力。病気の末期を具現化して逆痩せしたマコノヒーの熱演が強く心に残った。俳優もここまでやれば金メダル級のアスリートだろう。
そしてレイヨン役のジャレッド・レトーの可愛く、破滅的でありつつ死を恐怖する儚い美しさの対比。変貌した身体と顔つきには、まさに明日をもしれぬ男の戦いを描き、この人たちの壮絶な死にざまを思わせるような演技が凄すぎる。
ラストカットのストップモーションなど、編集も素晴らしい。
2014年劇場鑑賞作品・・・58  Image may be NSFW.
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偉大なる、しゅららぼん ★★.5

「鴨川ホルモー」「プリンセス トヨトミ」などの人気作家、万城目学の小説を原作にした異色作。琵琶湖周辺を舞台に、不思議な力を持つ一族の跡取り息子と彼のお供をする分家の息子が世界滅亡につながる大事件に挑んでいく。万城目原作の映画化作品に出演経験のある濱田岳と岡田将生がダブル主演を務め、主人公コンビを快演。摩訶(まか)不思議な物語に加えて、深田恭子、貫地谷しほり、佐野史郎ら、奇怪なキャラクターにふんした豪華共演陣が繰り出す怪演も見もの。
あらすじ:琵琶湖のすぐそばの町・石走で、先祖代々不思議な力を継承してきた日出一族。その跡取りで最強の力を誇るとされる淡十郎(濱田岳)は、高校生でありながら住民からあがめられる殿様のような生活を送っていた。そんな彼のもとへ、分家の涼介(岡田将生)が力の修行をするために訪れる。淡十郎と同じ高校に通うものの、彼とおそろいの真っ赤な特注制服を着せられ、従者のように扱われる涼介。そんな中、日出一族と対立する棗一族の広海(渡辺大)とのトラブルが勃発し、それが世界の運命を揺るがす事態に発展する。
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<感想>物語は、日出一族と千三百年にわたる対立が続く棗(なつめ)一族の跡取りが同じ高校へ入学する。俗世の目には映らない普通ではない能力の争いに、両者を追放せんとする校長の謀略が加わり、龍神の怒りも招いての一族存亡の危機へと発展していく。
まるで漫画のような、万城目学の奇想天外青春ファンタジー・コメディである。現存の日常風景に、神話的要素が紛れ込み、巧妙な伏線と絡み合って、非日常のスペクタクルを現出させる、万城目学テイストが炸裂しているではないか!
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この原作者の面白いところは、信じざるを得ない嘘で固められた独特のテイスト。周りには見えてないだけで、実は鬼を操っている人がいるんじゃないか、「プリンセス トヨトミ」では、大阪には今でも議事堂があるんじゃないか。なんてね、そう思えてしまう緻密な外堀の埋め方が魅力ですね。
主人公である、琵琶湖の湖東を統べる日出一族のお世継ぎにして、生まれながらの殿様気質、一族に伝わる不思議な力の最強伝承者でありながら、街を出て自分の人生を見つけたいと願う高校生の役に挑んでいるのが、濱田岳。赤い学ランを着て小舟で学校へ通うという、劇中でも際立つ個性を持つ淡十郎を演じている。
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そして、修行するために来た分家の涼介に岡田将生くん、本家の淡十郎の姉には深田恭子が、本家に修行中の従妹の貴地谷しほり、父親に佐野史郎、彼らを学校へ行くための小舟の船頭に笹野高史、校長に村上弘明、他にも祖父の津川雅彦、棗一族の息子、広海に渡辺大などが共演している。広海の渡辺大くん、高校生には見えなかったけれど、私的には印象的でした。
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高校で、校長の村上弘明が、なぜか日出一族に城の明け渡しを要求。さらに校長は、日出一族と棗一族だけが使える力を保持しており、彼らを翻弄するのである。しかし、跡取りで最強の力を誇るとされる淡十郎には力がない。何故って、パワーの源である御神水を飲んでないから。そこで姉の深田恭子が協力なパワーで、琵琶湖の水を真っ二つにして、これはまるで「十戒」のモーゼのような、恐るべし姉の深田恭子の力。他にも、人の考えていることを読み取る能力もある。
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その琵琶湖の底の奥にあるご神水を、涼介と広海が取って来て、淡十郎に呑ませる。すると、琵琶湖の龍神様が雷神を轟かせながら現れるではないか。実は、校長は、船頭の源治郎に操られていて、源治郎は秋田の八郎潟の守り神だったというわけ。今は開拓され姿を消した八郎潟、源治が追い出されて琵琶湖の日出一族に入って、何時の日かこの琵琶湖を牛耳ろうとしたようなお話。
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ケレンだけで出来ているような映画ながらも、熱き友情や青春の張り合う戦いが等身大で迫ってくる面白不思議な作品であります。なるほど、この主人公は、濱田岳にしかできなかったように思える。しかし、日出一族と対立する棗一族の争いが、二人の若者の戦いの場面がないのでつまらなかった。
エンドロールの最後に、濱田岳とお供の岡田将生くんが出て来て、タイトルの「しゅららぼん」とは、龍神様のげっぷとおならの音だと教える。なるほどね、それにしてもあり得ないような、洗面器の中の水を回して、中のあひるちゃんを吹っ飛ばす修行とか、彼らの念力を使う時の音響の凄まじさには煩くて参った。
2014年劇場鑑賞作品・・・59  Image may be NSFW.
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