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ストレージ24  ★★★.5

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シチュエーション・スリラーサバイバル・アクションクリーチャー、極上アトラクション・ムービー誕生!
監督:ヨハネス・ロバーツ(「アルティメット・プレデター」)
原案:ノエル・クラーク
脚本:ノエル・クラーク、ヨハネス・ロバーツ、デイヴィ・フェアバンクス、マーク・スモール
CAST:ノエル・クラーク「センチュリオン」
コリン・オドナヒュー「ザ・ライト -エクソシストの真実-」
ネッド・デネヒー「ブリッツ」
ローラ・ハドック
アントニア・キャンベル=ヒューズ「アルバート氏の人生」
STORY:ロンドン市街にて軍用貨物機が墜落し大破。
輸送中の極秘兵器がぶち撒けられたことによって、街は未曾有の混乱状態に陥る。時を同じくして、貸し倉庫【ストレージ24】を訪れていたカップル、チャーリーとシェリー、そして友達のマークは、突如起こった停電により倉庫内に閉じ込められてしまう。
彼らは同じように閉じ込められてしまった人々と、何とか脱出を試みようと、迷路のような倉庫で出口を求めてさまよい始めるが、事態は一向に好転しない。
すると突如、人間ではない“何か"の襲撃を受け、彼らは1人また1人と無残に命を奪われてゆく・・・。果たして、彼らは生きて【ストレージ24】から脱出することができるのか! ?

<感想>シチュエーション・スリラーに、サバイバル・アクションを組み合わせた緊迫感120%のアトラクション・ムービー。緊迫感と興奮度マックス、そして死ぬかもしれないという恐怖の連続に痺れます。この映画は未公開じゃないんですね。
始めは、チャーリーが友達のマークを連れて彼女シェリーのマンションへと行きます。チャーリーは、彼女のシェリーと同棲して付き合っていたのに、彼女に男ができて別れを言い渡され、自分の荷物を取りに彼女のマンションの地下にある貸倉庫へと行くのですが、その当日、そのマンションに軍用貨物機が墜落して、貨物機に積んであった極秘兵器が箱の中から外へ出たようなのです。

のんびりと、ブツブツ言いながら地下倉庫へ行くと、彼女シェリーと女友達がいて、おまけにシェリーが付き合い始めた男が友達のマークだったと判明。これはヒドイですよね、チャーリーにしてみれば踏んだり蹴ったりで、親友と思っていたマークに彼女を寝取られてしまうんですから。
そんな時に、何やら不気味な物音が聞こえて、男2人が調べに行くのですが、チャーリーを演じた黒人俳優の一人舞台というか、活躍ですね。マークはカッコつけてばかりで全然ダメ。それに地下の倉庫内という狭い空間で、恐ろしい巨大怪物クリーチャーに襲われる恐怖も凄いです。カギ爪でトタンの扉とか、壁を破る破壊力の凄まじさ、2本脚のエイリアンみたいな風貌でよだれがダラダラと気持ち悪いです。それに、でかいから滅法強いときた。

地下倉庫内で暮らす爺さんもいました。妻から慰謝料請求されるのが嫌で隠れているらしいです。この爺さんも怪物にやられてしまいます。
チャーリーが、武器を捜すのですが鉄棒とか、犬のぬいぐるみとか、花火、この犬のぬいぐるみに異常な反応を示し驚くクリーチャー。その犬のぬいぐるみに花火を背負わせて、一瞬たじろぐクリーチャー、その隙を狙って大きいくぎ抜きがブスっと、・・・これは拍手もんでした。

普通ならケータイで助けを呼ぶのに、何故か一人で戦う男。巨大な怪物相手に頑張るチャーリーが素敵に見えました。だが、外へ無事に出た女2人にチャーリーが目にしたのは、空に浮く巨大な円盤が、・・・ということはお分かりですね。「スカイライン〜征服〜」でお馴染みですね。まぁまぁ、観られるB級もんですが、クリーチャーが良く出来てましたよ。ラストのオチは、観る人によっていろいろでしょう。
2013年DVD鑑賞作品・・・33 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキングへ

アンコール!!  ★★★★

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『コレクター』のテレンス・スタンプ、『ジュリア』のオスカー女優ヴァネッサ・レッドグレーヴと、イギリスが誇る名優が共演したドラマ。病身の妻の代わりに合唱団に参加した気難しい初老の男が、さまざまな出来事を通して人生の新たなスタートを切る姿を映し出す。監督は、テレビシリーズや短編を手掛けてきたほか、俳優業や脚本もこなす新鋭、ポール・アンドリュー・ウィリアムズ。涙あり笑いありの人情味あふれる物語に加え、劇中で合唱団が歌うシンディ・ローパーやビリー・ジョエルといった有名アーティストのヒット曲も大きな魅力。
あらすじ:寡黙でとっつきにくい性格が災いし、周囲から筋金入りの頑固おじさんとして扱われ、息子とも溝ができてしまっているアーサー(テレンス・スタンプ)。そんな彼が愛してやまない、性格の明るい妻マリオン(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)のガンが再発してしまう。そんな中、彼女が在籍するロックやポップスの名曲を歌う合唱団「年金ズ」が国際コンクールの選考大会に出場することに。治療などで練習に参加できないマリオンの代理で「年金ズ」のメンバーになるアーサーだが、個性豊かなメンバーや慣れない合唱に面食らってしまう。

<感想>これまた老いの話である。重いことを重く描くのは厳しい作業だが、重いことを軽いように描くのはさらにハードなことだと思う。いわば老夫婦のラブストーリーとでもいおうか。いささか甘い気もするけれど、喪失感と孤独の影は如実に出ている。
しかし、何と言っても、イギリスの誇る名優二人、主人公のマリオン役のヴァネッサ・レッドグレーヴと、アーサーのテレンス・スタンプの老夫婦が素晴らしい。大柄な体に迫力のある顔立ちのマリオンが、病で弱っていくギャップ。
寡黙で感情表現の下手な夫のアーサーもさりげなくていい。

寝室のベットで、老妻の肩にそっともたれる頼りない後頭部が切なく、イーストウッドの頑固老人とはまた違った渋さが滲み出ている。二人の演技のコンビは絶妙で、渋い光沢を放って観客を魅了する。
老人たちの合唱団「年金ズ」で、夫に向けた愛の歌「トゥルー・カラー」を捧げる妻。初めは嫌々ながら妻の車いすを押しながら出かけるアーサー。窓の下でそっと、合唱に耳を傾けるアーサーの姿もいい。そして心を通い合わせることのできない父と息子との葛藤。

私の父親もそうだったが、短気で頑固親父の標本のような怒った顔。笑い顔を見た記憶がないのだ。子供の学校の参観日とか学芸会、入学式、卒業式などは、全部母親まかせであった。
それでも、一番に家族のことを思い、子供の躾けとかには厳しく礼儀作法や目上の人に対しての敬いなど。よく怒鳴られ、ご飯抜きとか、物置に閉じ込められたりした記憶があります。学校の先生よりも父親に叱られる方が恐かった。

この映画の父親も、息子との間に深い溝のようなわだかまりがあり、頑固な父親は自分が悪くても一度も謝ったことがないのだ。お互いに親子なのだから、心を開いて話し合えば、許し合えば、意外に打ち解けるはずなのに。ラストで父と息子が許し合い、仲良くなるのも感動しました。孫娘の応援があったからこそでしょう。
妻のマリオンが亡くなってからは、彼はベッドでは寝ないでソファで寝る。いつも一緒にいて、隣で寝息を立て寝入っていた妻が恋しいのだろう。墓参りも一人で毎日のように行き、妻を懐かしむ。息子だって同じ気持ちなので、母親の墓の前ですれ違う。

合唱団の先生には、「プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂」のジェマ・アータートンが好演。合唱団の人たちは70歳以上の老人ばかりなのですが、個性豊かでみんな元気いっぱい、踊りながら歌っているのが印象的でしたね。

先生に説得され、妻の為に歌うことになるのだが、合唱団のなかで一人浮いているアーサー。物語はサスペンス豊かに展開されていきます。
そのバランスを生むのは、歌の持つ力なのだろう。微妙にルール違反を重ねながら、期待を少し超えた地点で国際コンクールでは、第三位に輝くという喜ばしい限りである。これも、みんなはスーツ姿で歌もクラシック、方や「年金ズ」は、ロックやポップス系の歌を披露する。それが規定外ということで、出場停止になるのだが、アーサーが「ここまで来てそれはないだろう」と、壇上に上がって歌いだすのです。天国の妻に届くように、愛を込めて!
ベタベタな設定だが、時にコミカルさの中に、シリアスな中心を持ち込み、ハートウォーミングな余韻を残す。これはお涙頂戴の映画ではもちろんないのだが、自然に涙がこぼれてどうしようもなかった。
2013年劇場鑑賞作品・・・221  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

インポッシブル ★★★★

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ナオミ・ワッツとユアン・マクレガーが主演を務め、スマトラ島沖地震後に発生した津波に遭遇した一家の実話を基に描く感動の人間ドラマ。突如襲った災害により一時は離散してしまうも、諦めることなく生き抜いた家族の絆を描き出す。監督を務めるのはデビュー作『永遠のこどもたち』も好評だったスペインの新鋭フアン・アントニオ・バヨナ。危機的状況の中、サバイバルする人々の姿をパワフルな映像と胸打つ物語でつづるバヨナ監督の手腕にうなる。

あらすじ:2004年末、マリア(ナオミ・ワッツ)とヘンリー(ユアン・マクレガー)は、3人の息子と共にタイにやって来る。トロピカルムードあふれる南国で休暇を過ごすはずだったが、クリスマスの次の日、彼らは未曾有の天災に巻き込まれる。一瞬にして津波にのみ込まれ、散り散りになった家族はそれぞれの無事を祈りつつ再会への第一歩を踏み出す。

<感想>死者三十万人ともいわれるスマトラ沖地震による津波の惨状実にリアルに再現している。この災害で離れ離れになった家族に奇跡が起きた実話を映画化したもので、実話だから凄い。もしまったくのフィクションだったらブーイングものである。こんな偶然があるもんか、とでもこれは実話なんだからしょうがない。こんな奇跡が本当に起きたんだと感動で涙が出て、ぼろぼろに泣いてしまった。
でも、考えてみると日本人もようやく津波の映画を直視できるようになった。いや、まだまだ現地の東北の人々の“震災”は終わってはいない。復興税を徴収され、その税金が他の県のゴミ処理に使われていたり、津波で破壊された家のガワだけが残っている場所もまだまだある。

この映画の中の津波のシーンの威力、壮絶さは、2年前の3.11の震災のTV映像でいやというほど見せられた。それまで客観的に津波見ていたが、それをCGではあるが主観で観た感想は目を覆うばかり。確かによくよく考えれば分かりそうなものだが、津波に飲み込まれるとただ流されるだけでなく、瓦礫とか、様々な突起物が浮遊していたり、人間は流されながら瓦礫が体に当たり、時には突起物が体に突き刺さることもある。中には体を引きちぎられてしまった人もいる。

しかし実態は、本当の津波に巻き込まれた人たちの声では、どす黒い海水の中で悶えながら苦しむ。必死に何かに掴まり水面に浮き上がる。そして、いつ来るか分からない救援を待つ心細さと恐怖。この恐怖、それを教えてくれるだけでも価値がある。
映画の中では、クリスマス休暇で遊びにやってきた家族の物語になっている。前の晩のタイの風習、紙風船に火をともして夜空へ飛ばす。それは本当に綺麗で家族も思い出になったことでしょう。だが、次の日地震がありその後に起こる未曾有の大津波が大惨事を起こす。

前半のメインとなるのは、母親のナオミ・ワッツと長男のルーカスとのサバイバル。現場が熱帯ビーチだけに、流されていく人々は水着や軽装の肌を露出した状態で、無防備な肉体を襲う津波の爪痕が容赦なく痛々しく映る。剥き出しの大腿部を刃物で削ぎ落としたような傷跡からの出血が痛々しい。

2人が再会してからまもなく聞こえる「助けて」の声が、人助けなんてしている場合じゃないのに、尻ごみする長男に叱咤激励して幼い男の子を助ける。大惨事のなかでも教育を忘れない、かなりの重傷なのにタフな母親ぶりが感動的に映し出される。
そして、動けない母親の代わりに、病院の中を被害者の家族を捜すために奔走する、長男役のトム・ホランドの真に迫った演技が上手い。この映画自体が地震前から地震後までの、彼の成長の記録と言ってもいいくらいだ。


ちなみに後半では、父親と二人の弟が無事なことが分かり、実家に電話をして嗚咽したり、ちょっと弱気な父親ぶりを見せるユアン・マクレガー。それから気を取り直して、妻と長男を捜しに行くという、感動の再会劇が待っている。
しかし、これは単なる再現ドラマではない。映画が強い照明を当てるのは家族の絆である。サバイバルという中心のテーマに加えて、自然の脅威、命の大切さ、助け合いの精神などを訴えていると思う。
2013年劇場鑑賞作品・・・222  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ワイルド・スピード EURO MISSION ★★★★

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人気カーアクション「ワイルド・スピード」シリーズ第6作。リオの犯罪王から大金を強奪し、逃亡生活を送っていたドミニクの前に、FBI特別捜査官ホブスが現れ、高度な運転技術を用いて世界各国で犯罪を繰り返す巨大組織を壊滅させるため、ドミニクとそのチームに協力を要請。ドミニクは、死んだはずの元恋人レティが、その組織を率いる元エリート軍人のショウに協力していると聞かされ、その真偽を確かめるためにもホブスの依頼を引き受ける。相棒のブライアンら仲間のドライバーたちを招集し、ショウ一味を追跡するドミニクだったが……。監督は、シリーズ第3作からメガホンをとっているジャスティン・リン。

<感想>スケールアップを続ける人気カー・アクションのシリーズ第6弾。これが4連投となるジャスティン・リン監督のド派手なアクション演出の下、ビン・ディーゼルら主要キャストが再々結集した本作。ミシェル・ロドリゲスがシリーズ復帰する展開に加え、これがファンの期待を裏切らない、怒涛のエンタテインメントとなっている。
凄腕のドライバーにして強盗団のカリスマ的首領ドミニクと彼のチームが本作で挑むのは、ヨーロッパを根城にする国際的な犯罪者集団。元英国軍人ショウが率いるこの敵は、圧倒的な武装を誇るばかりか、世界各地の犯罪組織とパイプを持ち、情報戦でもFBIやインターポールを圧倒する。

さらに悪いことに、この極悪チームにドミニクの元恋人で、死んだと思われていた女傑レティが加担しているのだから、波乱は容易に予想できる。ドミニクはこの巨大な敵とどう闘うのか?・・・世界的なテロに発展する可能性を秘めたショウの目的に加え、レティが敵に加担した経緯にまつわる秘密が明かされるストーリー。

ロンドンのストリート・レースでドミニクとレティが再会し、レーサーに言葉は必要ないとばかりに、タイマン勝負を挑む。ロンドン市街を猛スピードで駆け抜けるレースの行方は?・・・何故かドミニクに敵意いしか見せないレティの心を取り戻すことができるのだろうか。これがびっくりで、レティは事故で瀕死の重傷を負い、記憶喪失症でドミニクのことも他のメンバーのこともすべて忘れていて、ドミニクを拳銃で撃ってしまう。軽い肩の傷だったが、それでもショックですよ。
事件の背後にあの男が、第4作の敵で、獄中にいる麻薬王ブラガが再登場。レティがショウと手を組んだ理由を知る唯一の人物だ。彼から情報を得るため、ブライアンが囚人として刑務所へ潜入する。

今回もシリーズお馴染みのカーアクションは全開!。目玉となるのが、元エリート兵士のショウが率いる凶悪な“フリップ・カー”。低い車体と前面のスロープを使って他者を次々と弾き飛ばし、走行不能にさせる。
悪役ショウには、ルーク・エヴァンスと細めの男。しかし、こちらは何とハゲにFBIのハゲの筋肉マン。ポール・ウォーカーがやけにか弱く見えたが、パパになったんよね。

市街地やハイウェイでのカーチェイスはもちろん、同じ車でも絶対に歯が立たない“戦車”が登場し、ドミニクたちに牙をむく!そしてクライマックスでは、滑走路を離陸寸前の飛行機内外で、繰り広げられる航空機VS車という前代未聞の過激チェイスも展開する。逃亡を企てる敵の軍用機の離陸を食い止めようと、ドミニク仲間が疾走し、機内に飛び込んだドミニクらは肉弾戦を展開。

その間にも、仲間たちは車を疾走させながらワイヤーを打ち込んで機体の離陸を食い止めようとし、それぞれが命がけの爆走を繰り広げるシーンには、まさに手に汗握る見せ場の連続に圧倒されます。このシーンで、ジゼルがハンを救うために死亡する悲しい場面も。

戦いのドラマも歯ごたえ充分で、相手の弱みを付いてくるショウの戦法をチームプレイで崩しにかかるドミニクと仲間たちの奔走にドキドキさせられっぱなし。追い込まれたと思ったら、逆に攻め込み再び劣勢に立たされる。そんな一進一退の攻防から目が離せません。

規格外の敵を相手に、チームワークとドライビングセンスでどこまで切り抜けられるかが見せ場ですね。そして、「ジェイソン・ボーン」を彷彿とさせるスリリングな追走劇に、レティとホブスの部下、ライリーとの女同士のガチバトルも必見ですぞ。ライリー役には、「エージェント・マロリー」のジーナ・カラーノが、格闘技を披露します。
さらに本編終了後には、度肝を抜くサプライズが用意されているのでお見逃しなく。っていうことは、来年にはシリーズ第7弾があるっていうことなの。
2013年劇場鑑賞作品・・・223   映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

モンスターズ・ユニバーシティ ★★★.5

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ピクサー・アニメーションの人気作「モンスターズ・インク」(2001)の12年ぶりとなるシリーズ第2作。学生時代のサリーとマイクがいかにして出会い、怖がらせ屋のコンビを結成することになったのかを描く。幼い頃から怖がらせ屋になることを夢見ていたマイクは、努力の果てに難関を突破し、モンスターズ・ユニバーシティ怖がらせ学部に入学。しかし、怖がらせ屋になるには、見た目がかわいすぎるという致命的な欠点に悩まされる日々を送る。そんなある時、マイクは、名家の出身で怖がらせの才能にあふれたサリーと出会う。マイクはサリーをライバル視するが、自信に充ち溢れたサリーはマイクを見向きもしない。夢をあきらめないマイクは、「最恐の怖がらせ屋」を決める怖がらせ大会に出場するが……。

<感想>人間を怖がらせることを仕事にするモンスターと、人間の少女に芽生える絆を描いて涙と笑いを誘い、世界中でヒットした「モンスターズ・インク」。12年ぶりの第2作は、一つ目モンスターのマイクと、青毛ふさふさの牛の角を持つ巨体サリーの、最恐コンビの誕生を描く青春ドラマです。
タイトルどおり、舞台は彼らの学生時代。名門モンスターズ・ユニバーシティの“怖がらせ学部”に入学したマイクとサリーは、第一印象が最悪の出会いとモンスター界を揺るがす大事件を経て、深い友情で結ばれていく話。
監督は前作のピート・ドクターから、「カーズ」他の脚本に参加し本作が長編アニメ・デビュー作となるダン・スキャンロンに交代。お馴染みのキャラの若いころの造形も可愛らしく、前作同様アクション・シーンもたっぷりと盛り込まれている。
前作を見たのは12年前、すっかり内容も忘れてしまっていた。モンスター大学「怖がらせ学部」の1年生、マイクの悩みは体が小さいこともあって誰も怖がってくれない点。そうそう、彼を使ったマクドナルドのポスター、かわいかったっけ。

彼に限らずモンスター学生はみんなどこかキュートで、正直な話、怖いのなんかいない。彼らに出会った子供たちの悲鳴が、モンスターたちのエネルギー源になるらしいが、近頃のスレた子供が恐がるかなぁ。
大学の設立は十四世紀、つまりヨーロッパ系で、百万名近い卒業生を誇るのだそうだ。ちなみに工学部や経営学部、理学部もある。授業内容が知りたいですよね。下半身がムカデの女性学長はなかなかの迫力で、こういう先生に叱られたら相当怖いだろうと思った。吹き替え版で観たので、この学長の声はヘレン・ミレンだそうです。

前回に続いてマイクは「爆笑問題」の田中裕二が、サリーは「ホンジャマカ」の石塚英彦と、演出も演技も慣れたもので安心して聴いてられる。逃げるブタを追い掛けてサリーがマイクの部屋で暴れたのが二人の出会いだった。サリーはその才能を見込まれ、選ばれたエリートだけが入れる学生クラブ“ROR”の一員になる。スパルタアなナイト教授の期末試験で騒ぎを起こしたサリーとマイクは、ハードスクラブル学長の逆鱗に触れ、転部させられることに。2人は“怖がらせ”大会で優勝すれば怖がらせ学部へ復帰、負ければ退学という約束をするのである。サークル対抗戦で行われる怖がらせ大会に出場するため、落ちこぼれサークルOKに渋々入部する2人。

だが、この大会が遠因となって、やがて2人はもっとも危険な場所、“人間界”に足を踏み入れることになる。
前作とのリンク・ネタのばっちりで、大学で人気者になりたがるメガネのランディは、前作で2人で邪魔したランドール。また、モンスターズ・インクに見学に行った幼いマイクの前に、“怖がらせ屋”がカッコよく現れるシーンも前作そっくりです。7月14日テレビで上映するので見ておくのもいいですね。

複数のスーツケースを引きずって希望に溢れ入学してくるマイク。エリートモンスター、一族のプライドもろとも自信過剰をひけらかしてやって来たサリー。対照的な二人は当然反発し合い、それがやがて親友になるまでの構成の巧さは、アメリカ映画伝統の得意ワザ。日本は劇映画もアニメも、このあたりのテクニックに弱いんですよね。

CGアニメ技術は日に日に進化しているので、毛並がフサフサの上、ブルーの中に部分的に紫が混じるかなり面倒そうなサリーのキャラクター・デザインなども、それを敢えて表現してみせるのが文字通り見せ所なのだろう。手描きではとても出来ない至難の技。
同時上映の短編は、青と赤の傘が恋に落ちる「ブルー・アンブレラ」は、モノトーンの雨の街角にひらく傘の恋。小粒な、愛らしい短編です。ディズニー伝統の中にはこういう人間でも動物でもないキャラクターが、・・・クルマだの家だのを主役にしたジャンルがあるのも素敵ですね。
2013年劇場鑑賞作品・・・224  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

じんじん ★★★

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『ミンボーの女』『恋するトマト』などの名バイプレイヤー、大地康雄が企画と主演を務めた心温まるヒューマンドラマ。絵本の里として知られる北海道上川郡剣淵町をメインの舞台に、最近希薄になりつつある人との出会いの素晴らしさや家族の絆を映し出す。佐藤B作や中井貴恵、板尾創路や手塚理美らベテラン俳優たちが豪華共演。多くの時間を割き丁寧に映画を作り上げるスローシネマという方式を取った、人の優しさや善良さに触れる物語に心癒やされる。
あらすじ:大道芸人の銀三郎(大地康雄)は、宮城県松島町を拠点に「ガマの油売り」の口上などの芸で身を立てている。彼の約束事といえば、北海道で暮らす幼なじみの庄太(佐藤B作)の農場を年に一度手伝うことだけ。かつての妻(手塚理美)と娘とは離婚してから一度も顔を合わせておらず、銀三郎は気ままなシングル生活を送っており……。

<感想>この映画は宮城県の観光名所、松島が舞台で、私の住んでいる仙台市から30分くらいで行ける場所。冒頭で「ガマの油売り」の口上を述べて大道芸人をしている大地康雄が主人公で、銀三郎の住んでいるところなんですね。

見ていると何だか「男はつらいよ」のフーテンの寅さんを演じた渥美清さんを思い出します。本当にそんな感じで、人のいい、人情味があり、美人に弱いところなんてそっくりです。銀三郎の子供時代が映され、炭焼きをして貧しい生活していた父親と一緒に、転々と住居を移した辛い悲しい子供時代が映し出されます。
それでも一応、結婚をして娘をもうけ家族仲良く暮らしてきたのに、原因は銀三郎の失業だったのでしょうか。それでも、父親として娘を可愛がり自分が作った絵本を読み聞かしていた。
離婚をしてからは、妻は東京のクリーニング店主と再婚をして、舅の世話と店の切り盛りなど大変な苦労をしたみたいです。しかし、娘はそんな母親の苦労も知らず反抗をし、養父とは口も利きません。娘には小松美咲さんが、養父には板尾創路、母親に手塚理美が演じてました。

娘は離婚した父親を慕って、田植えの時期に、北海道の農家へ研修生としてやってきます。父親の銀三郎も幼なじみの佐藤B作の農場へと手伝いにやってくるわけ。そこで親子のご対面なんですが、銀三郎は自分の娘、彩香の顔をすっかり忘れてしまって、感動の再会ということにはなりませんでした。それも、友人の佐藤B作から自分の娘が研修にきていることを聞かされて驚きます。
何年も会っていなかったので、成長した娘彩香と、気が付かなかった銀三郎。彩香は口もきかずに、どうして離婚をしたのか、今でも父親のことを許してはいないのだ。遠くから娘のことを眺めて、どうにか仲直りをしようと思うのですが、そうはたやすく二人の心は通い合うことはなかった。

そこで銀三郎が考えたのが、幼いころに読み聞かせた「クロコダイルとイルカ」のお話。クロコダイルのワニが子供のイルカを食べようと襲ってくる話で、イルカがクロコダイルに言うのだ。私はまだ小さいから大きくなったら食べてと、必ず大きくなったら戻ってくるから。という物語で、離婚をすることになり、途中で話の続きをしないまま別れてしまったのだ。その話の続きをなんとか娘に聞かせてあげようと、銀三郎は奮闘するのです。
その間にも、松島の大家さんのおばさんとの縁談話が、その美人の娘がいかにも自分に気のあるそぶりをするので、勘違いをしてしまう銀三郎。こんなところは「男はつらいよ」の、寅さんそっくりですね。その大家の娘は、若い時は売れっ子の女優さんだったという、若村麻由美が演じていました。彼女は今でも綺麗ですね。

「絵本の里」北海道上川郡剣淵町、とても綺麗な町ですね。実際に子供たちに読み聞かせをしているシーンもあります。年に1回ある絵本コンクールへ向けて、銀三郎は娘との約束した「クロコダイルとイルカ」の話を完成させるのです。年月は過ぎても親子の情愛は変わりません。
娘への愛情いっぱいの絵本がコンクールに間に合わなくて、それは別れた妻が電話をしてきて、「もうかかわり合わないこと、娘とも会わないで」と言われて出鼻を挫かれてしまう。でも、コンクールには出さなかったけれど、娘だけへ読み聞かせる絵本として完成してたのです。
これは泣けますから、銀ちゃんが娘を思う父親として、そして育ての父親への感謝の気持ちを教えてくれる、いい父親を演じていました。ラストで、育ての父親が娘の卒業式に参列するシーンでしたが、これは感動もんでした。そのころ銀三郎はモロッコで、「がまの油売り」の大道芸人をしてました。
剣淵市の町おこしもさることながら、親子の情愛をしみじみと本当に心に「じんじん」と伝わってくるいいお話ですね。
2013年劇場鑑賞作品・・・225  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

サイレントヒル:リベレーション ★★★

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世界中で人気のアドベンチャーゲームを、大ヒット作『バイオハザード』シリーズの製作陣が集結し映画化したホラー。突如姿を消した父親を捜すと同時に、自らの出生の秘密を解き明かすために呪われた場所へと立ち入る少女の恐怖体験を描き出す。『ヴァンパイア』のアデレイド・クレメンスがヒロインを演じ、父親を『白雪姫と鏡の女王』のショーン・ビーンが好演。最新技術を駆使した迫力の映像に目がくぎ付け。

あらすじ:18歳の誕生日を間近に控えたヘザー(アデレイド・クレメンス)には幼少時の記憶がなく、父親(ショーン・ビーン)と共にほうぼうを渡り歩く生活を送っている。彼女は毎晩サイレントヒルという見知らぬ街で、恐ろしいモンスターたちに追われる悪夢にうなされていた。そんなある日、突然父親が自分の前からいなくなってしまい、やむを得ずヘザーはサイレントヒルを目指す。

<感想>今回は3D上映もありましたが、時間の都合で2Dで鑑賞。主人公の設定、災厄をもたらす少女アリッサの存在、遊園地が舞台など、本作では初代の「サイレントヒル」と連続する続編ゲームの「サイレントヒル3」をベースにしているそうです。
白く霧に閉ざされた「表の世界」と血と錆にまみれた「裏の世界」の2つの顔を持つ街、サイレントヒルの世界観は健在でした。入り口には、デボラ・カーラ・アンガー扮するダリアが出迎えてくれ、闇の世界へといざなう。

廃墟と化した病院の中には、顔をえぐられているため音によって反応をし、手術用具で襲い掛かってくる看護婦の群れ。前作とおなじデカパイのお姉さんたちが、まるでダンスでも踊っているような、全然怖くありませんから。つまり、「だるまさんがころんだ」の遊びで、こちらが動くと看護婦たちが襲ってくるという遊びですね。

マネキンのパーツが合体した蜘蛛型モンスターなど、不気味なクリーチャーも多数現れます。しかし、前作が新鮮でかつ恐ろしく恐怖感を煽る設定と展開だっただけに、今回は前作を見ている方には物足りなさを感じますね。

そして、シリーズの人気者、赤い三角兜をかぶった巨人、レッド・ピラミッドも登場する。前作よりも多い出番で、どうやらヘザーの守護神のような存在でした。
病院の地下では、収容患者の檻の外に伸ばされた無数の手を、スバスバと大刀で切り落とすなど大活躍である。そこに、教団のメダルを持っているマルコム・マクダウェル扮するレナード・ウルフが、閉じ込められていた。彼は目が見えなく、ヘザーにそのメダルを手渡してくれという。

いや、檻の中の囚人(患者)といいレナードといい、地下の薄暗い鉄格子のなかでこんなに太っているのはあり得ないでしょう。マルコム爺さんなんて、モスグリーンの毛糸で編んだスケスケのセーターを着て、怪物を演じているのだから。メダルが2つ合わさると、相手の人格が見えるというのだ。レナードに捕まってしまうヘザーだが、お腹に光るメダルを抜き取り、持っていた拳銃で撃つ。
3D効果で見えるのは、サイレントヒルでの灰が降りそそぐところや、切り刻まれた指が宙を舞い、ガスマスクの男たちが襲ってくるので、そのマスクのレンズ越しにナイフが刺さるシーンとか、三角レッド・ピラミッドの大刀の振り落とされる迫力とかでしょうか。2Dでも十分迫力ありましたよ。

教団のキャリー=アン・モス扮するボス、クローディアが、へザーの持っているメダルで本性を表す姿で、ヘザーを襲ってくるが、三角ピラミッドが助けに来てくれてクローディアの首をちょんぎるシーンとかも。

そして、自分の分身というアレッサとの戦いは、互いに抱き合いヘザーの顔色が焼かれていくような醜くなっていく。だが、メダルを持っているヘザーが勝という、これでこの物語は終わりなのだろうが、ゲームはまだ続いているのだ。

しかしながら、今作では学生ヴィンセントとの登場は、教団からヘザーをサイレントヒルへ連れてくるように仕向けられたと、初めっから分かってしまう。ラストでは、ヴィンセントと恋も芽生えたようなそんな雰囲気でした。父親のショーン・ビーンは、教団に捕らわれて身動きができないので、活躍はありません。最後も一緒に帰ろうと言ったのに、ママのローズを捜すと言って残ってしまった。主役のヘザーを演じたアデレイド・クレメンスは、どこかミシュエル・ウィリアムス似の顔立ちなんだけど、それに、「華麗なるギャツビー」(12)に出てたらしいが、記憶にない。

それでも、謎めいた2大巨頭、キャリー=アン・モスとデボラ・カーラ・アンガーが出演し、カルト教団の元指導者として大御所のマルコム・マクダウェルも登場と、如何わしさも満点です。
2013年劇場鑑賞作品・・・226 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ベルリンファイル ★★★★

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ハ・ジョンウ、ハン・ソッキュ、チョン・ジヒョンら韓国実力派が共演を果たしたサスペンス・アクション。神出鬼没で出自不明な北朝鮮諜報員と韓国国家情報院の優秀なエージェントが、ベルリンを舞台に繰り広げる激闘の行方を活写していく。メガホンを取るのは、『生き残るための3つの取引』のリュ・スンワン。CIA、イスラエル諜報(ちょうほう)特務庁、中東、ドイツ政府の思惑も絡み合う濃密にして予想不可能な展開から、ひと時も目が離せない。
あらすじ:韓国国家情報院のすご腕エージェントであるジンス(ハン・ソッキュ)は、ベルリン市内で行われるアラブ系組織と北朝鮮諜報(ちょうほう)員ジョンソン(ハ・ジョンウ)の武器取引の情報をキャッチ。ジョンソンはホテルから脱出して難を逃れるものの、韓国側に情報が漏れていることに不安を抱く。さらに、北朝鮮大使館の通訳官を務める妻ジョンヒ(チョン・ジヒョン)の二重スパイ疑惑を知らされてがく然とする。韓国国家情報院の追撃を懸命にかわす中、ジョンソンは自分と妻、さらには宿敵ジンスまでもが巨大な陰謀に飲み込まれていることに気付く。

<感想>最近、よく韓流映画を観るようになった。というか、シネコンでもたくさん上映されるので、つい目玉の作品1本見るついでにといいますかね。だから出演している俳優さんの顔もだいぶ分かるようになりました。どちらかというと、ラブストリーが好きなんですが、こういうスパイ・アクション系も好きです。北と南の秘密諜報部員たちの国家の存亡をかけての攻防を描いた本作。ベルリンの北朝鮮大使館を舞台に、新型ミサイル輸出を企む北朝鮮と、それを阻止すべく韓国スパイとの駆け引きを主軸に、アメリカ、ロシア、イスラム諸国、シスラエルなど“世界の今”が絡み合ってくるという壮大なストーリー展開と、圧倒的なスピード感で魅せるアクションが見どころですね。
物語自体が、現在進行形の世相も反映されていて、知らないところで本当に起こっているんじゃないの?・・・という錯覚に陥りそうなリアリティを感じます。
始まって間もなく、ハ・ジョンウが鏡の前で傷の手当てをするシーンが、隠れ屋に戻り冷蔵庫から冷凍した魚を取りだし、洗面台で水をかけ手早く解凍し、魚のはらからビニール包装されたアンプルを取りだし自分に注射する。きっと傷口が膿まないように抗生物質の薬品だろう。傷だらけの背中は、何者かのリークによってアラブ連盟との武器商談が水の泡となり、無念な結果の彼の心情が読み取れる。

北朝鮮の特殊要員のハ・ジョンウと妻のチョン・ジヒョン。そして韓国人エージェントのハン・ソッキュの3人を中心に物語は進行する。スパイであるがゆえの性なのか、疑心暗鬼の果てに繰り広げられる人間模様を、細やかな心の動きを汲み取るというような繊細な展開はない。ダイナミックな肉弾戦でレクチャーという、まるで「ジェイソン・ボーン」を見ているかのような、画面からビシビシと痛みが伝わってくるのだ。
ハ・ジョンウと言えば「哀しき獣」に出てましたね、ハン・ソッキュは「白夜行/白い闇の中を歩く」で刑事役をしていた俳優さん。
ハ・ジョンウと北朝鮮大使の通訳美女チョン・ジヒョンが夫婦であるという設定が、首謀者の正体以上にもっとも意表をつくものではないか。独身者が主人公というこの種のジャンルで、本作は中盤以降、夫婦のメロドラマの物語へと展開していく。特に妻が南かアメリカのスパイじゃないか、という疑惑が妻を尾行する夫。ところが、妻は妊娠をしていてアメリカ大使館の近くの病院へ行っていたことが分かる。

そのことを、韓国エージェントのハン・ソッキュ話すと、「お前の子供じゃないだろう?」と言われる。それは夫婦しか分からないことなのだが、妻が大使の命令で客の慰安婦として扱われているシーンもあるのだ。しかし、妻は二重スパイの容疑を掛けられ北の仲間やアラブの殺し屋から狙われ、ベルリンのホテルでの攻防戦で、窓の外を伝って逃げるシーンもある。そして、最大の見せ場となるジョンウの、アクロバティックな次から次から電線が絡みつく落下シーンに、口があんぐり。
これでもかと言う、ハ・ジョンウの人間兵器っぷりに痺れます。電話線でも缶詰でも目に付く物はなんでも武器にしてしまう。特殊スキルに男の血が沸々とたぎり、場面によっては「これってマジで入ってるんじゃ」という、本気モードたっぷりの剥き出しの戦闘力にジャイソン・ボーンも真っ青ですわ。
この夫婦は互いに愛しており、前の落下シーンで負傷した夫を、無言で手当てする妻のチョン・ジヒョン。キスも抱擁も交わすことのない二人の視線が、洗面台のガラス越しにここでほんの一瞬、交差する。

韓国エージェントで反共産主義者のハン・ソッキュが、北朝鮮のハ・ジョンウと最後に共に闘うのも、この夫婦愛ゆえに他ならない。適役の北の暴君の息子を演じたリュ・スンポムは、監督の実弟だそうです。
しかし、何だか韓国映画らしくないのだ。背景がベルリン、欧州ということもあるが、善くも悪くも韓国映画っぽい容赦なさ、くどさ、必ず侵入ギャグというか人間臭っさいユーモアがなかったのが残念。
2013年劇場鑑賞作品・・・227 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

遠くでずっとそばにいる ★★★

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狗飼恭子の小説を『夜のピクニック』などの長澤雅彦監督が映画化したミステリードラマ。交通事故の影響で過去10年の記憶をなくしてしまった女性が、失われた記憶をたどっていく中、自身の残酷な過去と向き合う姿を、透明感あふれる映像で描き出す。主演は、『花子の日記』などの倉科カナ。『ツレがうつになりまして。』の中野裕太、人気芸人の徳井義実ら多彩な顔ぶれが共演。『ニューヨーク、アイラブユー』などで国際的に活動を続けている岩井俊二監督が、自作以外で初めて長編劇場映画の音楽を手掛けている。
あらすじ:交通事故の後遺症によって、10年分の記憶を失った志村朔美(倉科カナ)。実年齢は27歳でも、17歳までの記憶しかない朔美は、自分を取り巻く変化に困惑しながらも現状を受け入れ生活していたが、空白の10年間の出来事が気になって仕方がない。付き合っているらしい男(中野裕太)や高校時代の同級生(伽奈)らの助けを借りて、喪失した記憶をたどろうとする朔美だったが……。

<感想>画面は美しい蓮の花が映る池、舞台は秋田の夏の風景を背景にして、事故で記憶を失った女が、17歳の心のまま明るく振る舞いながら10年間の記憶をたどるミステリー劇である。
お馴染みの難病ものでも、回想シーンを禁じた透明感ある映像には惹かれます。しかし、10年分の記憶喪失をタイムスリップのように描く粗雑な描き方には引っかかる。大きな後遺症を抱える娘に無関心な母親、作劇の小道具にしか使われない聴覚障害の義理の妹など、血肉の通わない人物ばかりでがっかりする。

母親も再婚して、クリーニング店を営んでいる男性と一緒になっている。実の父親はどうなってるとかは、描いてません。母親には岡田奈々さん、目が大きくて綺麗な女優さん。でもこんな娘を持って、精神病院へ入院させるとか考えてないのよね。聴覚障害の義理の妹に清水くるみさんが、ほとんど耳が聞こえているように見えました。
退院してから、自分が働いていた職場へ行くも、自分が退職願いを出していたとは知らなかった。「1年ちょっとで2回も交通事故に遭う人って、そうは滅多にないでしょう。」と、主人公の元の職場の人に言われる。これも主人公朔美の10年間の伏線なのだろう。
そうか、設定に突っ込みを入れられないように、事前にフォローしてるってワケか。
もちろん主演のカナちゃんを悪く言うことなどできない。事故で記憶を失い17歳に戻った朔美を健気に明るく演じている。セーラー服も似合うし、事故の時着ていた白いワンピースも素敵です。

これって、最初に誰かが事故の真相を教えてあげればすむ話ではないでしょうか。それがホントの優しさでは、・・・周りの近親者たちは、朔美に腫れ物にでも触る感じで何も教えてあげない。17歳のままの素直な明るい朔美に、同級生達は冷たい視線である。それに、朔美が事故のことを辿っていくうちに、ある男性のことがだんだんと明るみになる。その男の人には奥さんがいる。その女性に、「何であんたが生きてるの、死んでしまえばよかったのに」ときつい言葉を浴びせられる。でも、朔美には何も身に覚えがない。記憶がないのだから。残酷ですよね、自分で調べるからこそ再出発ができるという理屈ではあるのですがね。
いつもべったりと傍にいる性同一性障害の友人の存在。この女性はずるい。朔美の事故によって得た保険を自分のホルモン注射の代金に使っている。そのことも後で知ることとなる。

家の自分の部屋にある写真を見て、同級生の細見という男と一緒に映っている場所へ行ってみる。遊園地が跡形もなくただ風車が回っていた。河原でキャンプ、昔の仲間は誰も来ない。焚火をする。でも、記憶は戻らない。来てくれたのは細見だけ。だが細見が今の恋人だというのだが、彼女には実感がわかないのだ。
赤い毛糸の帽子とクリスマスカード、それと赤いキーホルダーの付いた鍵。これがすっぽりと記憶の中から消えているのだ。だからって訳でもないが、夏なのにいつも毛糸の帽子を被っている。それが一番彼女にとって大切な人で、本当に愛していて、好きでどうにもならなくて、一緒に車に乗って事故を起こして自分は助かった。
それから、そのことを悔やみ、自分も彼の所へ行きたいと何度も手首を切り自殺未遂をする。最後には、あの世にいる彼に会えるだろうと自分から車に向かっていき事故に遭い、記憶喪失となる。2回目の事故では運転していた人が重体で、意識障害の植物人間となる。
にしても、交通事故による記憶喪失を、ここまで薄っぺらに美化して描く作り手たちは何を考えてのことなのだろう。10年間の記憶をたどると、愛してはいけない切ない恋の物語があったとは、誰が知るだろう。劇中に出てくる「永遠の片思い」という言葉。私にも初恋の人とは、いつまでも自分の想いも伝えず、一方通行で成就しない「永遠の片思い」でいいと思ってますね。
2013年劇場鑑賞作品・・・228  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

17歳のエンディングノート ★★.5

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不治の病で余命9か月の少女が、残りの人生でしてみたい事柄を実行していく中で予定外の恋に落ち、生きる意味を見いだしていく人間ドラマ。監督は、『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』の脚本家オル・パーカー。限られた人生を謳歌(おうか)しようとするヒロインを、天才子役としてキャリアを重ねてきたダコタ・ファニングが熱演。共演には『戦火の馬』のジェレミー・アーヴァイン、『思秋期』で監督デビューを果たしたパディ・コンシダインら実力派が顔をそろえる。
あらすじ:大人になるまで生きられないと医者に、白血病で余命宣告を受けたテッサ(ダコタ・ファニング)は引きこもる日々を過ごしていたが、17歳になり死期が迫っていることを悟る。残りの人生を精いっぱい生きるべく、彼女は死ぬまでにしてみたい事柄のTO DOリストを作る。作成したリストの内容を実行していく中で、隣に引っ越してきた青年アダム(ジェレミー・アーヴァイン)に恋してしまい……。

<感想>最近では「トワイライト」シリーズでヴァンパイアを演じているダコタ・ファニングが、この映画を撮影していた時は18歳かな。余命宣告された17歳の少女を等身大で演じているのに違和感がない。ベリーショートヘアーが可愛いダコタちゃん、けっこうムッチリしてきたダコタのお尻にも万感の思いがして、彼氏のバイクに2人乗りして馬の群れと並走するなど、ロマンティックが止まらないシーンが平然とあったりする。

子供、動物、難病と3大苦手なお題の一つ。それもめくるめく正統難病もので、観ている方もがんじがらめだ。「泣け!、感動しろ!」とばかりに、ダコタちゃんの名演技を全編に渡って映し出すスクリーンにいささか疲れが出て来てしまうのもホンネかな。
だが、甘すぎず、過剰に涙を求めない、原題である「Now is Good」=今が最高をきちんと謳った難病ロマンスに仕上がっていると思う。日本のお涙頂戴映画に比べれば節度があるので、不愉快にならずに観られるとは言え、冒頭から家族全員が主人公の死を受け入れる態勢が整っているので、死をめぐる家族間の葛藤や決断は存在しない。

主人公が、化学療法を拒否するに至った過程も、母親との別居に至る描写もなければ、やけっぱちで犯罪まがいの行動を起こす主人公に、父親が感情を剥き出してぶつかることもない。ことごとくドラマになる要素が排除されているわけだ。
それにしても、「死ぬ前にしたいこと○箇条」なんて設定は、「最高の人生の見つけ方」や、他でも何度も見せられ、また同じことをと呆れかえるばかりだ。
万引きや、ATM機でのカード引ったくり強盗まがいには、いくら若いからといっても節度がある。まかり間違えば、少年院行きになりかねない。「私は癌で余命幾ばくですから」ではすまされないでしょう。
それに、まだ処女だからといって、パーティへ行き男漁りをするのもやけっぱちとしか思えない。乱暴されて、かえって心にしこりが残ることもある。

主人公の友人のゾーイは、破天荒で薬中で妊娠しているし、お腹の子は誰の子共か分からない。一度は中絶しようと考えるも、親友テッサの生まれ変わりとして産むことにする勇気。しかし、17歳でシングルマザーって、自分が考えているほど甘くはない。世間の風は冷たいよ。
それでも、運よくお隣さんにイケメン兄ちゃんが越してきた。彼と残された日々を精一杯楽しもうとお願いする。彼にしてみれば、父親が事故で亡くなり、母親がその喪失感から立ち直れない。その母親を看護するため大学も休学していた。そして、難病のテッサと、彼にしてみれば心が重く感じてしまうに違いない。それでも、彼は彼女の願い事の一つ、「世界中に私の名前を知らせたい、有名人になること」彼氏のアダムが、町中の見える所にスプレーで“テッサ“の名前を描いてあったのには、これには驚きましたね。

とはいえ、若い2人の瑞々しい演技に魅せられるシーンもあったりして退屈はしない。ダコタちゃんの水着シーンもありますが、幼児体型だけど肌の色が白いのが気になります。
また、主人公カップルが作り上げる世界を描くことだけに始終せず、遺される側、送らねばならない側である家族と友人の心境を、無視していないのも悪くないが、それにしてもいつもながらみんないい人ばかりで嘘っぽく感じた。一番良かったのは、テッサの弟の何気ない最後の言葉かなぁ。
口当たりのいい寓話性を適度に含んだ物語を、好む方にはどうぞとしかいいようがない。
2013年劇場鑑賞作品・・・229   映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮 ★★★

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18世紀のデンマーク王室で起きたスキャンダラスな史実を基に、国王と王妃、そして侍医の三角関係を描いた壮大なラブ・ストーリー。国王を意のままに操り、王妃と禁断の恋に落ちたドイツ人医師を、『007/カジノ・ロワイヤル』などのマッツ・ミケルセンが熱演。『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』の共同脚本を手掛けたニコライ・アーセルがメガホンを取り、デンマークの鬼才ラース・フォン・トリアーが製作総指揮として名を連ねる。華麗な世界の裏でうごめくドラマチックな駆け引きから目が離せない。
あらすじ:18世紀後半のデンマーク。ドイツ人医師のストルーエンセ(マッツ・ミケルセン)は、精神的な病を患っている国王クリスチャン7世(ミケル・ボー・フォルスガード)の侍医となる。国王の信頼を得たストルーエンセは、一方で王妃カロリーネ(アリシア・ヴィキャンデル)と惹(ひ)かれ合うように。しかし事実上の摂政として手腕を振るうようになったストルーエンセを、保守派貴族たちは快く思わず……。

<感想>デンマーク王室で実際に起こった一大スキャンダル、初めて知りました。どこの国でも王室の事情は内々に極秘にして、外部には漏れないようにしているようですね。それが、まさかデンマークでもと思うと、その時代の計り知れない国の改革や、欲望渦巻く宮廷の権力争いの行方、そして、侍医と王妃の許されざる愛の結末とは、デンマークでは誰もが知る実話をもとに、王と王妃、そして侍医の運命的な三角関係を描く壮大なるラブストーリーであります。
カリスマ性のあるマッツ・ミケルセンが存在していることによって、成立した映画であるように思われる。ミステリアスな目、ひっきりなしに優しく微笑んでいる神経質な口元。逆三角形で筋肉質の体型。この世の誰も信用してないような雰囲気など。
しかし、彼は「偽りなき者」の方がはるかによかった。この映画で演じた侍医、ストルーエンセは、何だか演出がしっかり描き切れていないように感じた。この医師が、王妃との密通をどう思っていたのか?・・・といったあたりも不明瞭で、物語映画として脚本の描き込みが不足していたと思われる。

しかし、デンマーク王を演じる新人ミケル・ボー・フォルスガードの演技が凄い。単なるバカかと思ってたら、実はいろいろわかっていた。でも、やっぱり結構分かっていないところもある。どっちなんだこれは。こんな演技は見たことがない。王妃を迎えに出た最初の出会いの奇声から、馬車の中での奇妙な距離感といい、まったく読めない。閣議での唐突な言動の何という爽快さ、演出ではないのだ。その証拠に、王妃と医者の不倫に至る描写は凡庸な気がする。
デンマーク王は、もうちょっとですごく面白くなるキャラクターだったと思うのだが、これも描写にもどかしさを感じる。だからなのか、マッツ・ミケルセンの怪物性が出てこない。この物語の侍医の役回りでは仕方がないのだろう。それでも圧政に苦しんでいる農民たちを救うべく運動をするのですが、貴族院たちの反対で自分の立場も危うくなる。

だが、ストルーエンセが国王のお気に入りともなれば、ドイツの友人が金の無心に来るし、宮廷の仕事も世話しろと言ってくる。しかし、いいこともある。当時天然痘が流行して子供たちが死に至る。そこでストルーエンセは、無料で国内の子供たちに天然痘のワクチンを注射しようと案を推進するのだが、保守派の貴族たちの猛反対でダメになる。

王妃との燃えるような恋愛事情も、隠れてするからこそであり、結果として王妃はストルーエンセの子供を宿して、王室の娘として認知される。
そうそう、王室には皇太后の息子がいて、皇太后は次の政権をその息子に継がせるべく取り計らうシーンもありましたね。でも、精神病を患っていたとはいえ、結婚してすぐにできた皇太子がその後、皇太后の息子を城から追い出して政権を取り、立派に国を治めるところで終わります。

王妃と侍医のストルーエンセのスキャンダルも見どころの一つですが、やはりデンマークの宮廷ファッションや、舞踏会の華やかなシーンも豪華で素敵でした。
2013年劇場鑑賞作品・・・230   映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

きっと、うまくいく ★★★★

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インドで製作された、真の友情や幸せな生き方や競争社会への風刺を描いたヒューマン・ストーリー。入学したインドのエリート大学で友人たちと青春を謳歌(おうか)していた主人公が突然姿を消した謎と理由を、10年という年月を交錯させながら解き明かしていく。主演は、ボリウッド映画の大スターであるアーミル・カーン。『ラ・ワン』のカリーナー・カプールがヒロインを務める。抱腹絶倒のユーモアとストレートな感動を味わうことができる。
あらすじ:行方不明だったランチョー(アーミル・カーン)が街に戻ってくると聞き、ファルハーン(マドハヴァン)とラージュー(シャルマン・ジョシ)は母校に向かう。10年前、三人は名門大学の学生だった。真っすぐなランチョーは異議があれば学長にすら物申し、好きなことに打ち込んでいた。しかし、ランチョーと学長の娘・ピア(カリーナー・カプール)が接近したことから、3人は卒業目前で退学を言い渡されてしまう。

<感想>いかに観客を心ゆくまで楽しませるか、ストーリーの面白さ、俳優たちのはじけるようなパワー、映像表現の巧みさとダイナミズム、どの点をとっても今、インド映画が世界一躍動感に満ちていると思う。どんなに長尺でも、終りは常にハッピーエンドでも、物語の途中で突如男女が歌い踊り出す。
登場人物全員が踊り出しても、ダレたり、飽きたりすることはまったくないと言ったら嘘になるかも。

しかし、いつだって途中に歌や踊りが必ずあるから、どうしても時間が3時間はゆうにかかるのだ。初めて観る人には嬉しいだろうが、インド映画を何度も観ている人にとっては、あの歌と踊りは1、2回くらいにして欲しいと思う。まぁ、それがインド映画の魅力といってしまえばそれまでだが。

どうしても、全シーンにわたって観客を喜ばせるか、そのことだけに心血を注ぎ、切磋琢磨して日夜映画作りに励んでいるからだろう。現場を見なくても、映画を観れば一目瞭然。インドの人たちは、映画の中での歌や踊りを見ると、観客も一緒に歌い踊り出すというから、それこそがインド映画の活力になっているようにもとれる。
それにしても本作は、これまでの伝統的なポリウッド映画からは少しばかりジャンルを異にした、大学生を主要人物にした学園コメディであり、笑いと涙と感動の青春グラフィティーになっている。未だ身分差別が存在し、極貧にあえぐ庶民が少なくないとされるインドだが、一方では急速にIT産業の最先端国家となり、高いコンピューター技術を持った新しい世代が、世界に進出しているというグローバルな状況でもあるのだ。

まさに本作はそうした経済優先のインド社会を舞台に、超難関の名門工学大学に集う学生3人の姿を明るく爽やかに捉えていると共に、その対比として社会へと巣立っていく彼らの10年後の状況を、巧みな回想形式とサスペンスに富んだカットバックで映し出していく。
だが、大学生にしては少々薹のたった感のある人気俳優が、学内の“3バカトリオ”と言われる問題児に扮して、詰め込み教育にうんざりしながらも、ご多分に漏れず、学歴競争社会の矛盾点や成績偏重の弊害などを、チクリと風刺したりして、とりあえず学園生活を楽しんでいる。

しかしながら、その一方では、日夜猛勉強に励み、試験でいい点をとり。高レベルで卒業して社会に解け込み、出世して高収入を得、生活を安定させることこそが男の本懐と生きる目的と思っている分けで、その点では、勉学の意欲を失い、学力低下が急速に進んでいる日本の大学生とはかなり差があるようだ。
だが、彼らの中にもこの厳しい現実主義の大学に馴染まず、特に成績のみを重視する権威主義の塊である学長には、徹底的に毛嫌いされ、カンニングと恋愛問題も絡んで、3人ともに卒業目前で退学処分を言い渡されてしまう。
ところが、彼らが大学を去ろうとした夜に大雨が降り、学長の娘が産気づくという劇的な出来事が突発する。救急車は間に合わず、大学の中で彼ら3人と学生たちで、力を合わせ彼らの創造力(掃除機で赤ん坊を吸引)と献身的な努力で無事赤ん坊を取り上げるのだ。

しかしながら、型破りな自由人で聡明な主人公が、愛する人や親友たちに別れも告げずに学校からひっそりと姿を消し、行先知れずになってしまう。これには、重大な秘密が隠されていたのです。
この映画の優れた点は、そのストーリー運びであり、構成と伏線の張り方の巧さにある。つまり、明るく楽しい学園コメディが、ある時点から謎を提示してミステリアスに進行、やがては終盤に向かって圧倒的な感激のラストへと向かっていく。
さらには、ギャグも型破りでベタ過ぎて下ネタはもちろん、仮病を使って離陸寸前の飛行機を停止させたり、ヨボヨボの老人を主人公が背負ってバイクで病院へ運ぶなんて。そんな馬鹿なと、あり得ないような常識外れのズッコケお騒がせシーンが満載で、まさに「きっと、うま〜くい〜く」さとばかりに、インド人もびっくりの奇想天外エピソードである。
2013年劇場鑑賞作品・・・231  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

風立ちぬ   ★★★★★

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宮崎駿監督がゼロ戦の設計者・堀越二郎と作家の堀辰雄をモデルに、1930年代の日本で飛行機作りに情熱を傾けた青年の姿を描くアニメ。美しい飛行機を製作したいという夢を抱く青年が成し遂げたゼロ戦の誕生、そして青年と少女との出会いと別れをつづる。主人公の声には『エヴァンゲリオン』シリーズなどの庵野秀明監督を抜てき。ほかに、瀧本美織や西島秀俊、野村萬斎などが声優として参加する。希代の飛行機を作った青年の生きざまと共に、大正から昭和の社会の様子や日本の原風景にも注目。
あらすじ:大正から昭和にかけての日本。戦争や大震災、世界恐慌による不景気により、世間は閉塞感に覆われていた。航空機の設計者である堀越二郎はイタリア人飛行機製作者カプローニを尊敬し、いつか美しい飛行機を作り上げたいという野心を抱いていた。関東大震災のさなか汽車で出会った菜穂子とある日再会。二人は恋に落ちるが、菜穂子が結核にかかってしまう。

<感想>「堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて」__宮崎駿監督の5年ぶりの新作を、当時世界最高峰の戦闘機ゼロ戦の設計者と、肺結核を患いながら創作活動をつづけた作家に捧げたアニメ映画である。タイトルの「風立ちぬ」はもちろん、堀辰雄の同名小説からとられている。主人公の二郎が憧れるイタリアの設計士ジャンニ・カプローニは、たびたび彼の夢に現れてきては訪ねる。
「風は、吹いているかね?」その言葉どおりカプローニの立つ草原には、いつでも風で波立っている。二郎の帽子を菜穂子へ、菜穂子のパラソルを二郎へ、そして二人の間には紙飛行機を飛ばしたのと同じ、あの風が吹いている。
そして、ラストでは生死を超え、その草原に吹く風は、美しくも儚く、だから今、私たちの胸を打つのだろう。
(本特集の庵野秀明、松任谷由美とのトークで、宮崎駿監督はこう語っている。)
「さわやかなだけじゃない。ごうごうと放射線を含んだ風も世界の一部なのだと思うと、そういうことですね。風というのは。この世界ということだと思います」

今回の映画の中では、前半の見せ場として関東大震災も戦争の描写もありました。それは、2年前の東日本大震災を連想させる惨状がリアルに再現されている。二郎と菜穂子は、この大震災で運命的な出会いをするのですが、2人のラブファンタジーに同時代の作家、堀辰雄の文学がマッチしているようには見えない。主人公は夢と現実とを往還する。というよりも、むしろ普段から夢の中を歩いているような存在ではあるが、・・・。だが、夢の中でぐらい自由に飛べばいいものの、彼が夢で見る飛行機たちはひっきりなしに墜落する。それは現実においても同じであり、生み出された戦闘機たちは、誰もが知るとおり一機も帰ってこないのだから。

ですが戦争の戦闘シーンや戦場のシーンは描いていません。戦後生まれの私たちにとっては、このような悲しい、痛ましい惨劇を見るのは、映画やTVドキュメントでしか見る事ができません。しかしながら、わが日本の誇るゼロ戦闘機を造った人、堀越二郎の物語は初めてです。宮崎監督の描く日本の飛行機、そして戦争用に作られた戦闘機やゼロ戦など、アニメとはいえさすがに精巧に描かれていて、その飛行機の設計者と恋人菜穂子との、儚くも燃え上がるような恋の物語にくぎ付けになりました。

それでも、美しい夢の草原から始まった映画は、宮崎監督の妄執の一つであった飛行機の墓場をついに画面に登場させることになる。夢を抱き、それを実現していくことの素晴らしさは理解できるが、エリートの二郎と病弱な菜穂子に託した監督の戦争観や死生観についての描写が不十分なような気がしてならない。それは、あの時代に生まれた人間が過ごした一日一日が、家族も恋人もいる、そんな情景が色濃く描かれているからだ。
宮崎監督のアニメ美質を考えると、今更だけど、柔らかな線と、なめらかな動き、巧みな構図、精妙な光と影。そして、写実的な表情豊かな雨と風、雪、それに雲。みんな独特の浮遊感に感動しました。特に二郎と菜穂子の婚礼の夜の美しさは、今でも印象に残っております。
2013年劇場鑑賞作品・・・232 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

百年の時計 ★★★★

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『20世紀少年』シリーズの木南晴夏と『ロボジー』のミッキー・カーチスが共演を果たした人間ドラマ。回顧展を前に創作意欲を失ってしまった芸術家が、自らの過去と向き合うことにより成長する姿や、家族との固い結束を再確認するさまを描く。共演の螢雪次朗、木下ほうか、井上順ら実力派のキャスト陣が、物語に厚みを持たせている。物語を彩る、2011年に路線開業100周年を迎えた「ことでん」こと高松琴平電気鉄道特有のクラシカルな雰囲気も見逃せない。

<感想>本作もまさに、四国は香川の「ご当地映画」として企画され、創業百年を迎える地元の「ことでん」こと高松琴平電気鉄道を舞台にして撮影された。個性的な映画を生み出すことがいよいよ困難になっている昨今、地方の町おこしに映画製作の端緒を見つけるケースは珍しくはないが、その多くは「ご当地PR映画」の枠に縮小化されてしまう。
しかし、この作品の中には、「ご当地映画」としての使命を果たしながら、琴電開業と同じ年に、大阪の職人によって作られた精巧な懐中時計の数奇な運命。物語の中に100年前に作られた懐中時計という、ノスタルジックな主人公の安藤行人の青春の恋愛事情をタイムトラベルしているのにも魅せられた。

物語の初めに、高松の美術館学芸員の金高涼香が、心酔する地元出身のアーティスト。安藤行人を海外から招待して回顧展を催す企画が通り、張り切っていた。だが、故郷に戻って来た奇行の老人、行人はやる気を喪失して投げやりで、涼香を落胆させてしまう。
行人は古い懐中時計を涼香に渡して、それを半世紀前に自分に手渡してくれた女性を探し出してくれたら、自分の創作意欲が奮い立つかもしれないというのだ。果たして無茶な宿題を授かった涼香は、その謎の女性の身許と行方を探り出すのだが、やがて琴平電鉄と沿線の町を舞台にした悲恋が蘇る。

これらの過程を実に自然なかたちで地元の風光を活かしながら、優しく綴っていく。それは、まだ若かった安藤行人(近江陽一郎)と人妻である由紀乃(中村ゆり)との許されぬ恋。電車の中での短い逢瀬、手作りの弁当、ピカソの画集、古い懐中時計、そして時代による二人の身分の違いによる恋と情熱。人妻役を演じた「ばかもの」(10)に出ていた中村ゆりの、静かなファム・ファタルぶりは圧巻であった。
今でも精巧に時を刻んでいる懐中時計に纏わる、悲恋物語。それにも増して、電車を使ったインスタレーション。琴電のレトロ電車による30年代の日本の情景が映し出され、実際に琴電に乗った気持ちになるから不思議である。

それに、何気ない場面でも惹かれるものがある。それは涼香が「ことでん」の車両工場を訪ねて、恋人の運転手や工場の職員(岩田さゆり)との微妙な三角関係を匂わせながら近所のうどんを食べに行くところ。ご存じ、香川県はうどん県なので、いつでもうどんを食べる習慣があるのだ。ごく何気ないシークエンスであるが、こうした箇所の工場やうどん屋の雰囲気が、映画の中でリアリティを伴って妙に心に残るんですね。
涼香を演じた木南晴夏、「20世紀少年」シリーズでは、カンナの同級生役で出ていたそうで、昔の山田五十鈴に似ているような古風な顔立ちで美人顔である。冒頭であの、自転車を漕いで“ケンちゃん待って〜”と叫んで、琴電の運転手の恋人、鈴木祐樹に声をかけるシーンでは、彼は本当に電車を走らせないで待っているのだ。

そして、なんといっても安藤行人という非凡なアーティストのミッキー・カーチスは、実に軽々と、飄々とその高いハードルを飛び越えての演技であった。確かに、「ロボジー」での存在感ぶりには驚いたが、本作ではふらりと現れただけでもオーロラがある。もはや天然記念物である。涼香の家に来て、父親の井上順と酒を飲み、意気投合してのギターのセッションもあるのだから。

この映画のラストは、まるでタイムトラベルしたかのような、車両をペイントして、時代の流れに合わせた衣装を着た役者が入れ替わり乗車して来て、100年間の歴史を人物と写真で見せていくのだが、まるで時空を超えて現れたかのような錯覚を覚えてしまう。
ラストでの、安藤行人が若き頃に出会い悲恋に終わった彼女との再会。その女性には水野久美さんが水色の和服姿で現れ、それは何十年もの間を遡る男と女の情愛で、いまでもお互いに思い焦がれて仲睦まじく連れ添う姿が印象的ですね。これは、監督の粋な計らいでしょうか、気に入りました。
2013年劇場鑑賞作品・・・233   映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

SHORT PEACE ★★★★★

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AKIRA』や『FREEDOM』の大友克洋を中心に、4人の気鋭のアニメーション作家が競作したオムニバス。江戸を舞台に、悲恋の情念から巻き起こる大火事を圧巻の映像で描く『火要鎮』のほか、『九十九』『GAMBO』『武器よさらば』の4編が日本をテーマに紡がれている。
スタッフには、『アニマトリックス』の森本晃司や『スマグラー おまえの未来を運べ』の石井克人なども名を連ねる。それぞれのが手掛けた独創的なビジュアルとストーリーを堪能できる。

冒頭では、『アニマトリックス』の森本晃司による、これから始まる魅惑の世界へと誘い込むオープニングアニメーション。どうやら東京の下町を舞台に、女の子が赤い鳥居の向こうへと、・・・まるで『不思議の国のアリス』をモチーフにしたような、少女が異界に迷い込み、宇宙空間に入り込んだような感じがした。デザインワーク・作画・監督:森本晃司 音楽:Minilogue

1作目は、望まぬ縁談を持ちかけられた江戸の町娘・お若は、思いを寄せる火消しの松吉と結ばれないことを嘆いてある行動をとるが、それが恐ろしい事態を引き起こしてしまう(「火要鎮」)。
脚本・監督:大友克洋 キャラクターデザイン・ビジュアルコンセプト:小原秀一 音楽:久保田麻琴

これは、歌舞伎や文楽の「八百屋お七」がモチーフとなっているようで、情感がものを言う物語がベースだけに、前半に遠景主体の絵巻物風の映像が素晴らしい。他にも伊勢物語等にある「筒井筒」。落語の「火事息子」等、多岐に渡ります。
幼いころから、隣の男の子と庭で遊び、大人になっても扇子遊びをしながら、隣の松吉に思いを寄せている。松吉は体に入れ墨をして親に勘当を言い渡され、町の火消しとなる。

そんな時、お若に縁談が持ち上がり婚礼の日取りも決まり、好きでもない男の所へ嫁に行くのを断ることも出来ない。部屋の行燈に火が付いて、それを消すことも騒ぐこともせず、家が火事になれば松吉に会える。きっと助けに来てくれると、・・・。ところが、火は瞬く間に風に煽られて燃え広がり、火消の松吉が駆け付けた時には、お若は婚礼の振袖をはおり、燃え盛る火の見櫓に上っていた。

前半では江戸の日常を丹念に描き、後半は業火が屋根瓦を走る対価には圧巻。大火事のスペクタクルとなって、静から動への二重構造で構成している。大部分は手描きで仕上げているとのことで、見事な着物の絵図柄と、松吉の入れ墨、黒瓦と炎のコントラスト、映像表現も物語も、作画とCGの混在を違和感無く表現しているので素晴らしい出来栄えですね。映像の娯楽性も芸術性も絶品です。

2作目は、18世紀、深い山中で道に迷った男は、雨宿りに入った小さな祠で、捨てられた傘や着物、道具などの怨念から生まれた物の怪(モノノケ)に遭遇。男は傘や着物を修繕し、怨念を鎮める(「九十九」)。
脚本・監督:森田修平 ストーリー原案・コンセプトデザイン:岸啓介
キャラクターデザイン:桟敷大祐

この作品は、物に魂が宿るというテーマだそうで、いかにも日本的な考え方ですよね。なんとなく「日本むかしばなし」みたいな、雨の中、森の中を彷徨った男が、雨宿りのために見つけた小さな祠。中へ入ってみるとガラクタばかりで埃だらけである。中でも穴のあいたボロボロの番傘、いかにも一本足の妖怪が出て来そうな気配がする。

だが、男はその番傘を貼り替えて見事な新品同様にしてしまう。一本足どころか、2本足のかえるが、小さな傘を被って嬉しそう。
すると、部屋の畳が見違えるように綺麗になって、次の間へと誘い込む。次の間にはボロキレのような反物がたくさん。それを器用に縫い仕立てる男。

物に何かが宿った存在とは、「つくもがみ」といい、「九十九」は、百の一歩手前の長い、多いという意味だそうです。物の表現として、着物や物体の質感や立体感に、音を実在感として表現したいという試みで、「チン、ガタコト、コトコト」っていう、音がキャラクターにするのだが、やはりいかにも妖怪が出て来そうな気配がしてならない。
最後に出て来るデカイ妖怪は、物の塊りでしょうね。凄いんですね、これが千代紙を貼り合わせた物だそうですから、その妖怪の顔にホクロがあるっていうんですが、えっ、顔をマジマジと観なかったので、見損なったです。しかしながら、センスもオチも文句なしに素晴らしかった。
3作目と4作目は、次のレビューにて記載します。
2013年劇場鑑賞作品・・・234   映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング


SHORT PEACE 「GAMBO」「武器よさらば」★★★★★

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「AKIRA」「スチームボーイ」の大友克洋監督を筆頭に、森田修平、安藤裕章、カトキハジメの4人の監督が、それぞれ「日本」をテーマに手がけた4つの短編と、森本晃司によるオープニングアニメーションで構成されるオムニバス。

3作目は、「GAMBO」戦国時代末期、東北地方の山中に恐ろしい鬼が出現し、近くの村の娘たちをさらっていく。最後に残された村の娘カオは、人の言葉を理解する白い熊のガンボに鬼を退治してくれと救いを求める。空から現れた鬼に似た化け物と神秘的な白熊が激突する。

監督:安藤裕章 原案・脚本・クリエイティブディレクター:石井克人
キャラクターデザイン原案:貞本義行 脚本:山本健介
キャラクターデザイン・作画監督:芳垣祐介

鬼VS白熊&侍が繰り広げるバトルなど、4作品中で最も荒々しいバイオレンウが展開する。「新世紀エヴァンゲリヲン」の貞本義行原案によるキャラが魅力的ですね。

何だか宮崎駿監督作品の「もののけ姫」に似ているような、少女と獣の交流、かつては敵同士であった白熊と人間が手を組み、宇宙からの化け物(赤鬼)と闘う展開には、神秘的というよりも血飛沫飛び散るプロレス決戦となり、見応え十分でした。

4作目は「武器よさらば」 近未来の廃墟と化した東京の町に、武装した5人の小隊がある任務を帯びてやってくる。しかし、戦車型無人兵器と遭遇したことから戦闘状態に突入し、小隊の運命は狂い始める。
脚本・監督:カトキハジメ 原作:大友克洋
キャラクターデザイン:田中達之 メカニカルデザイン:カトキハジメ、山根公利 CGI監督:若間 真 作画監督:堀内博之 美術監督:小倉宏昌
演出:森田修平

伝説のFSコミックが、さらに濃厚なメカ&アクション描写を加えて復活。現代的に洗練された様々な兵器のデザインも必見ですぞ!
この「武器をさらば」が描かれた81年では、まだSF・メカアニメがほとんどなく、「機動戦士ガンダム」でようやく始まったような時代。その時点で、すでに今と変わらないパワードスーツの表現を描いていた。だから、今のパワードスーツの表現の原点はこれだったのですよ。

登場人物が正規の軍人っぽくなく描かれていて、最近でいう軍事委託会社のように見えたり、「RPV」という無人偵察機を打ち上げているところは、まさに今の現実の戦争のよう。30年前の作品なのに、そういう先見性もあったのですね。
実際のロケットランチャーは、敵に気付かれないように煙は少な目でほぼ見えないという話を聞いて、アニメだとモクモクと発射した軌跡を描いた煙にするのに、再度アニメとして構築したそうです。

無人歩行戦車のゴンク、四つ足で床を動きながらパワードスーツを着た人間を認知して攻撃してくる。それに認識票のメダルも破壊する。こんなボロイ機械ごときに人間が殺されるとは思ってもみなかった。

最後がいかにも人間らしい戦い方で、素っ裸の兵士がミサイルを手に持ち、ゴンクに向かって走っていくところで終わります。舞台が未来の東京ということなので、富士山を噴火させ、灰がいっぱい積もった廃墟化した東京都市部が印象的でした。
さて、4本を見て一番印象に残った作品は、2作目の「九十九」です。物が豊富になった現代社会でも、こんな風に物を捨てては新しい物を買い求める人間たちに、民話の様式で子供たちにも知らしめるように、戒めのような制裁が下されることがあってもいいのではないかと思うのです。
2013年劇場鑑賞作品・・・235   映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

スモール・アパートメント ★★★

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小さな安アパートを舞台に巻き起こる世にも奇妙な珍騒動! 新旧豪華スター共演で贈るブラックユーモア満載の犯罪コメディ!
<感想>タイトルに「ワケアリ物件の隣人たち」と付いている、劇場未公開作品。主人公がぽっちゃりデブのニートのフランクリンには、「アリス・イン・ワンダーランド」で双子のデブを演じた英国出身のマット・ルーカスなんです。そして、火災調査員役のビリー・クリスタルにダメ刑事たち、大家にはピーター・ストーメアに、コンビニ店員には、D.J.クオールズなど。それに、啓発本の小説家にドルフ・ラングレンらが共演したブラックコメディ。
舞台はLA。スイスをこよなく愛するニートのフランクリンは、頭はスキンヘットでいつもパンツ一丁の変人。部屋にはラージサイズのペットボトルの炭酸飲料をがぶ飲みし、嫌なことがあるとアルペンホルンを吹きまくる。同居していた会計士の兄が精神を病んで療養施設に入ってしまった。アパートの家賃を滞納して久しかった彼の所へ、大家が家賃を請求に来て揉みあいになり、大家は弾みで転倒して打ちどころが悪く死んでしまう。
そこで、警察にでも電話をしていればよかったものの、慌てたフランクリンは証拠隠滅を図り、死体を大家の自宅へと車のトランクに入れて運ぶ。ガレージで、椅子に座らせて自殺に見せかけようと、拳銃で撃ち、彼の手にショットガンを握らせ、傍にあった油をかけて火をつけ、慌てて自分のかつらで火を消す。
そのままにしてフランクリンは家へ帰るのだが、通報で警察が来て他殺と判定する。そして犯人探しなんですが、カツラが被害者の股間に燃えて残っていたので、警察はその専門カツラを調べるという下ネタ満載のお粗末。
監督は、レディ・ガガやマドンナのPV監督として知られるジョナス・アカーランド。劇映画監督作としては、「SPUN/スパン」、「ホースメン」があるが、本作では吹き溜まりで生きる人間たちをコミカルに描いている。そのため、不衛生でぶっ壊れた生活ぶりが延々と映し出されのだが、ドタバタ群像劇なのに、どこかリリカルで憎めなく、しっかりと犯人が分かっているだけに、後の捜査とか犯人探しの面白さが印象的である。
フランクリンの両隣に住むクスリ漬けのコンビニ店員と偏屈爺さんを、それぞれジョニー・ノックスヴィルとジェームズ・カーンが演じているのを始め、この二人インパクトあり過ぎで、二人とも死んでしまうのが惜しい。
それと、向かいのビルに住んでいる女性を、ジュノ・テンプル、回想シーンのみで登場するフランクリンの兄貴にはジェームズ・マースデン、そして事件を追う火災調査員には、ビリー・クリスタル(かなりハゲていて爺さんになっていた)と、脇役に主演級の俳優ばかり。だから、それぞれのキャラにも美味しい見せ場が与えられて面白おかしく物語が展開していく。
そんな中でも際立っているのが、ドルフ・ラングレンだ。何故か自己啓発本のベストセラー作家を演じさせられている彼は、そのサイテーな人間ぶりで笑いをさらいまくるのだから。
結局、犯人はフランクリンだと分かっていても、彼もバカではない。自分の部屋へ警察が来ている事を知り逃亡するのだ。脳腫瘍で死んだ兄が残した遺産というのが、昔、会計士をしていたころに、蒸留酒を「天使の分け前」と言う名目で少しづつせしめて売り飛ばした金が、確か80万ドルだったような。大金を弟に残して死んだ兄貴はなんと素晴らしいんだろう。
そのお金が、スイス銀行にあるというし、自分もアルペンホルンを堂々と吹けるスイスの山へ行きたかったので好都合。飛行機の中で隣の席に、ドルフ・ラングレンが座ると言うオマケが付いて、これも愉快だった。
2013年DVD鑑賞作品・・・34 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキングへ

殺人の告白 ★★★★

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テレビドラマ「検事プリンセス」「王女の男」などで人気の俳優パク・シフが、初の映画主演をこなしたサスペンス。突然自らの罪を告白した美貌の連続殺人犯と彼を執拗(しつよう)に追う刑事、そして凶行によって愛する人を失った残された者たちの物語を丁寧に紡ぎ出す。タフな刑事を熱演するのは、『黒く濁る村』などのチョン・ジェヨン。犯人と刑事の緊迫感あふれる心理戦や、リアルで躍動感あふれるチェイスシーンに圧倒される。
あらすじ:時効の成立後、イ・ドゥソク(パク・シフ)という男が、自分は15年前に世間を騒がせた連続殺人事件の犯人だと告白する。その後、暴露本を出版した彼はそのルックスの良さも味方し、一躍時の人として世間にもてはやされる。一方、ずっと犯人を追い続けてきたチェ刑事(チョン・ジェヨン)は、本の中にまだ解決されていない事件の真相の記述がないことを不審に思い……。

<感想>韓流スターのイケメン俳優、パク・シフってあまり聞いたことがないのですが、ファンの人たちにはよだれがでるくらい筋肉マンのお坊ちゃん顔でした。ポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」のモデルともなった華城連続殺人事件をモチーフに、韓国からまたしても新手のスリラーが登場。東北では今日が初日の上映日で、オバサンファンがひしめき凄いなんてもんじゃない、補助椅子もでるくらいに満席でした。

かつて10人もの女性が惨殺された、犯人がまだ捕まらないまま時効成立を迎えた連続殺人事件。残忍な犯行でジメジメとした陰湿なドラマが展開するのかと思いきや、いきなり17年前の飲み屋での壮絶な格闘シーンから始まる。そのまま大迫力の追撃戦に突入し、今時、香港映画でもやらないような体を張ったカーチェイスまで盛り込んだ、呆れるくらいサービス過剰な娯楽作に出来上がっている。壮絶な追いかけっこは、犯人が華麗な回し蹴りしたり、建物から建物へとピョンピョン飛んだりして、「チョコレートファイター」みたいだった。

しかも、その追跡劇の舞台が、韓国の田舎町の路地裏で、雨降っていて夜で薄暗いし、これぞ韓国映画って感じ。ここで、チェ刑事は犯人を取り逃がしてしまうんですよ。
監督・脚本を手がけたチョン・ビョンギルは、命知らずの韓国スタントマンの生態に迫ったドキュメンタリー映画「俺たちはアクション俳優だ」(08)で注目された新鋭監督。どうりで無茶過ぎると思った。
メディアを利用して大々的に展開する鬼刑事VS殺人犯の息詰まる駆け引き、ひたすら本筋をかき回すスーパーな遺族たちの暗殺計画。そして終盤に待ち受けるどんでん返しの波状攻撃も見どころですね。

安藤昇ばりのスカーフェイス刑事役を、満身創痍で熱演するのは、「シルミド」、「黒く濁る村」の強欲な村長役でおなじみのバイプレイヤー、チョン・ジェヨン。
冒頭からひたすら走る、殴る、撃つ、ジャージャー麺を顔目がけてぶん投げるしで、フィジカルなアクションにも全力で取り組んでいる。一方で、愛する女性を救えなかった男の悔根と葛藤も魅力的に演じています。

対するイケメン殺人犯に扮するのは、TVドラマで人気を集める韓流スターのパク・シフ。そうなんですね、今年2月に強姦容疑で告訴された彼なんですよ。ちなみに強姦容疑をかけられた殺人犯役のパク・シフは、被害者女性が告訴を取り下げ、不起訴となったそうです。満を持しての映画デビュー作にして図らずも実録映画的なニュアンスが漂うことになってしまったが、端正なルックスを活かした自己顕示欲に溢れる「笑顔のカリスマ異常者」とでもいいますか、まさにハマリ役ですよね。ラストで明かされる真実に、っていうか、顔面をこんなにイケメン青年に整形手術するもんなのか、疑わしいですね。
被害者の遺族が、毒蛇をプールに放して、筋肉マンのパク・シフの身体を噛むシーンも気の毒に思いました。被害者の遺族の、母親のビンタを食らうチェ刑事も可哀相に。それに被害者の遺族たちも、あの手この手でパク・シフを殺そうと襲ってくるんです。

それで、人気者になったイ・ドゥソクと長年事件を追ってきたチェ刑事が、TVの討論番組に出演することになるんですね。そこへ「私が真犯人だ」と名乗るJという男から電話が入る。驚くわ!・・・「11人目の遺体を埋めた場所を知っている」と言い出す始末。これは見事にワナにハマった真犯人J!・・・。

何となく途中からパク・シフは11人目を殺してはいない。チェ刑事とイ・ドゥソクが真犯人を誘き出すための策略だったというわけ。11人目の女性は、チェ刑事の婚約者で、まだ遺体は見つかっていないのだ。
それでも、極悪非道の鬼畜Jが、番組を面白くするため白い仮面を被って登場する。そして、遺体を掘り出すTV中継もある。

そして、またもやJがまだ11人目の殺人の時効が成立していないことが分かり、Jが逃亡してカーチェイスが凄いのなんの、これでもかと言うくらいに、チェ刑事の車も横転して下敷きになったり、Jも車に這いつくばったり、とにかく生きているのが不思議なくらいトンデモカーチェイスなのだ。
本当に終りまで退屈しない、ラストは、いつもの韓国映画らしくお涙頂戴宜しく描かれていました。
2013年劇場鑑賞作品・・・236   映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

ペーパーボーイ 真夏の引力 ★★★.5

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数々の映画賞を席巻した『プレシャス』のリー・ダニエルズ監督が、ピート・デクスターのベストセラー小説を映画化したクライム・サスペンス。ある殺人事件を調査する兄弟が、事件の真相をめぐる複雑な人間関係に巻き込まれていく。主演は、『ハイスクール・ミュージカル』シリーズのザック・エフロン。彼をとりこにしてしまう謎めいた美女をオスカー女優ニコール・キッドマンがなまめかしく熱演するほか、マシュー・マコノヒー、ジョン・キューザックら実力派がそろう。

<感想>うだるような真夏に観るにはもってこいのような、炎天下の焼けつくような太陽と、ドロドロと地面に溶けたくなるような陰湿で残虐な作品です。主人公はフロリダに住む、ある問題によって大学を追われた青年ジャック(ザック・エフロン)と言う青年。ジャックの父は兄とそれぞれ、新聞=ペーパーに関連した職業についている。ジャックの父親は、地元新聞社の社主で、兄のウォード(マシュー・マコノヒー)は、地元を離れてマイアミ・タイムズの記者として働いていた。
郡保安官を殺害した罪で逮捕され、死刑判決をうけたヒラリー(ジョン・キューザック)という男に、これは冤罪ではないか、という疑惑が持ち上がる。

ジャックは、この事件を取材するため同僚と共に地元に戻って来た兄のウォードを、運転手として手伝うことになる。
ヒラリーには、投獄されてから文通で知り合ったシャーロット(ニコール・キッドマン)という婚約者がいた。ヒラリーの無罪を信じるシャーロットも、ウォードたちと行動を共にすることになる。
時代は、1960年の終り、舞台は人種差別、様々な偏見の色濃く残るフロリダ。この設定だけでも、かなり濃いめの空気が漂う映画だということは、察していただけるかと思うが、実際に映画を観て驚きました。監督は『プレシャス』で、虐待を受けて地獄のような日々を送る黒人少女を描いた、リー・ダニエルズ。
まずびっくりしたのが、ニコール・キッドマンが凄いのだ。女優魂に火が付いたとしか思えない、どぎつい化粧に、半ケツが見えそうなビチビチのワンピースを着て、周りからは「ビッチなバービー」つまり色情狂の40女と罵倒されまくるうえ、本当にその通りなバカ女キャラなのだ。公開待機作が、「Grace Monaco」では、モナコ王妃グレース・ケリーを麗しく演じるそうなニコールの、このふり幅の激しさは素晴らしい女優である。

また本作の殺人犯としてのジョン・キューザックは、誰も訪れない湿地帯の奥で、親族だけで暮らしているという完全に「悪魔のいけにえ」状態な男を演じているのだ。主な仕事は、ワニの皮剥ぎという、日本なら表現的にアウトなキャラを、不自然な髪形と壮絶な挙動不審さで演じきっている。

そして今、ノリにのっているマシュー・マコノヒーが、当然2人に劣るわけがない。有望で家族にも優しい記者が、ニコールたちのさらに上をいく破滅的な魂を抱えていることが次第に露わになっていく。いっさいの救済のないどん詰まり感は必見ですぞ。

この3人が初めて顔合わせをする刑務所の面会のシーンは、ただでさえ全員の顔面力や存在の重圧感が凄すぎて圧倒されるのに、ニコールの役者魂の炸裂もあって、とんでもない状態に発展していくので、ハイテンションな生き地獄に付きあわされた気分になります。子供が観る映画ではありませんから。

若いジャックが、美しくいかにも経験豊富そうな年上女のシャーロットに抱く想いはすぐに想像がつく。恵まれた環境で生きてきたとは思えない、彼女自身の境遇が、よるべない孤独な死刑因への、歪んだ同情を生む。同情はさらに愛情へと勘違いされて、彼女自身を引き返せない窮地へと追い詰めていく。

ジャックが、シャーロットに恋い焦がれるのは仕方がないこと。幼いころに母親は、兄弟を捨てて出て行ったのだ。だからという分けでもないが、年上の色気美人につい恋をしてしまったのさ。
そして、フロリダ南部の、虫や爬虫類が蠢く湿地帯へ一歩踏み込んだ後の、物理的にも精神的にも後戻りできなさ加減は、とくかくこの映画のハイライト、瀕死の絶望感で恐ろしくなり生きて帰れるのかと、最後は本当に「悪魔のいけにえ」状態になるんだろうと、ぞっと背筋が凍りつきます。
しかしながら、ラストのスリーショットが目に焼き付く悲しいボートでの構図は、何とも息苦しく胸を締め付けられる思いにさせられます。
2013年劇場鑑賞作品・・・237  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

桜並木の満開の下に ★★★

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フタバから遠く離れて』でも震災後の原発事故で避難生活を送る人々を描いた舩橋淳監督が、再び震災をテーマにつづる感動作。突然の事故で伴侶を失ってしまったヒロインと、事故を起こした青年の間に生まれる一種独特の関係をじっくりと描き出す。悲しみに暮れる妻を『鈴木先生』シリーズの臼田あさ美が体当たりで務め、その相手を『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』の三浦貴大が演じている。震災後の風景と共に、主人公たちの微妙な心理を映し出す舩橋監督の手腕にうなる。
あらすじ:東日本大震災後も、栞(臼田あさ美)は茨城県日立市のプレス工場で夫(高橋洋)と共に働きながら、平凡だが満ち足りた日々を送っていた。だが、ある日、最愛の夫が作業中の事故に巻き込まれ、帰らぬ人となってしまう。その原因を作った新人の工(三浦貴大)は、一人になった栞にどれだけ憎まれようとも、ただひたすら許しを乞い続け……。

<感想>震災以前に企画された本作は、不思議と震災を主題とした映画でもある。だからというわけでもないのだろうが、東日本大震災によって中断させられた本作。物語は、不慮の事故で夫を喪った女と、その事故を起こした男の関係を描いているのだが、不慮の事故とは震災の比喩とも見えるからなのだ。しかも、事故は誰が被害者/加害者になってもおかしくない紙一重の状況であり、責任の所在が極めて入り組んでいるからなのだ。
この設定は、原発が多額の補償と同時に最悪の被害をもたらした人々のことを連想させる。監督が前作で、原発を誘致しそのため町ごと移転せねばならなかった人々を描いていることは承知の事実だ。だから、本作は前作と地続きなのである。

本作が震災の地、茨城県日立市で撮影されているからではなく、震災と原発のその後を、いかに生きるかを問うているからこそ、本質的には震災映画だと思う。
だが、本作がメロドラマとして撮られているということは、思うに意外ではない。メロドラマは、男と女の関係を仮ながら、容易には解き得ない葛藤を描くものだから。しかし、ヒロインの視点で事件を見て、まずは事故を起こした男を憎む。
そうして、次第に事情を知るにつれ、一概には彼を憎むわけにはいかなくなってくる。この間、男はあまり感情を表さないのも、観客は男の内面を想像させている演出が上手いのだ。

ヒロインの心情的葛藤は、二人が恋愛に陥るという形で解消されるかのように見えるが、実質、解消不能な実態を取り敢えず宙に浮かしておくのだ。これも、今時のメロドラマという見方もあるだろうが、解消不能な問題として震災を描くにあたり、メロドラマという選択は間違ってはいないと思うのだが。
配偶者を亡くすのは極限まで追いつめられる苦痛に違いないが、映画では幾度も描かれたテーマであり、本作も愛する人の死と許されざる恋を、メロドラマとして新たに成立させているようでもある。

それに、作品を説得しているのが、男が差し出す慰謝料の封筒。それを、女がこんなものと何度も叩く、そのシーンの叩く乾いた音が哀しく響く。それに、事故を起こした当の会社に、下請け仕事の再開を依頼しに行き断られる場面の終りに、向こうの会社の社員2人が見すえる正面のシーン。人員整理を迫られる小さな町工場の厳しい現実。マスクをして表情の見えない男たちの不気味さに怖さを感じる。

印象的なロングショットでヒロインの心情を映し出す演出は、栞が走る被災地の瓦礫。夜の海、桜の蕾やライトアップされた満開の夜桜など。
さらには、海岸でヒロインが髪を束ねていたリボンをほどくシーン。その後、この二人が旅館へいき、肉体関係を結んでいるかのような、無意味に男の足を触る仕草も、そんな身振りが印象的でした。それに、クライマックスがタイトルの「桜並木の満開の下に」というとおりで、撮影された場所が、日本のさくら名所100選にも選ばれた平和通りの桜並木がライトアップされ、それは見事な夜桜が本当に美しかった。
2013年劇場鑑賞作品・・・238   映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

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