原作は、「パレード」や「悪人」など、著作が次々と映画化されている吉田修一の「横道世之介」。第23回柴田錬三郎賞、2010年本屋大賞3位を受賞した“青春小説の金字塔”と呼ばれる長編小説だ。
『南極料理人』、『キツツキと雨』の沖田修一監督が、不器用ながらも真っ直ぐに生きる世之介と周りの人たちを、優しさとユーモアに富んだ演出で包み込む。映画が幕を閉じても、観客全員にとって世之介は、思い出すたびにニヤニヤと微笑んでしまう大切で愛しい存在になっているだろう。監督:沖田修一主人公に高良健吾恋人の与謝野祥子に吉高由里子、世之介の友達に池松壮亮、綾野剛、朝倉あき、世之介の初恋の人に伊藤歩、その他祥子の父親に國村隼、世之介の両親にきたろうと余貴美子と脇役もベテラン揃い。
あらすじ:長崎県の港町で生まれた横道世之介(よこみちよのすけ)は、大学進学のために上京したばかりの18歳。嫌味のない図々しさ、頼み事を断れない人の良さ、底が浅いのか深いのか測りかねる言動が人を惹きつける。
本作で描かれるのは、お嬢様育ちのガールフレンド・与謝野祥子をはじめ、世之介と彼に関わる人たちの青春時代とその後の人生。そして、35歳になった世之介がある出来事でこの世を去ってしまった頃、その愛しい日々と優しい記憶の数々は鮮やかにそれぞれの心に響きだす……。(作品資料より)
<感想>日本に、一番人と物と金が溢れていた時代。その最後の輝きが映画の幕開けの87年であったと、今なら言える分けだが、当時はそんなこと知る由もなく。
80年代に学生時代を過ごした人々が17年後、愛すべき男「横道世之介」との出会いや、いささか個性的ではあるが、ごくごく平凡な一人の若者と、彼を取り巻く人々のありふれた日々を綴った群像劇である。
平穏な生活が揺らぐような大事件も天変地異も起きなければ、といって入学式で声をかけられた倉持と、アイプチが印象的な阿久津唯が恋人同士になり、彼女が妊娠して倉持が大学を中退する出来事とか、友達になった加藤がゲイだったということや、中でもサンバサークルでの派手な衣装に踊りが可笑しくも楽しそうだった。
17年後に横道世之介って名前聞いたことあると、つぶやくあたりから、これは普通の若者賛歌じゃなさそうだと観客は気付かされる。二つの過去がジグザグに進行して、ある事件の悲しい顛末を静かに物語っているのだ。
横道くんがとてもいい人なのはよく分かる。十分に分かったのに、あれやこれやのエピソードを更に上乗せして、いい人ぶりを強調する。これでは褒め殺しじゃないかと思っていると、やっぱり死ぬ。そうか死ぬ人だから、これだけいい人に描いたっていいのだろう。
そのような優しさや勇気を発揮した人ってどんなヤツなの、こんなふうだったのか。実際にあった忘れがたい事件から、人物像がフィクションとして立ち上がってきている、というお話のサプライズがある。それには結構唸らされたが、それが結論やオチではない。まさに横道世之介を彷徨わせるかのような、主人公の半生、ことの連なりはいいと思う。
時代の風俗や音楽など丁寧だし、特に街の風景や人物の衣装、メーク、フィルム撮影による画面の質感で、見事に時代を表現しているのには驚きました。それに、どのエピソードも、特に与謝野祥子との出会いで、二人が和気あいあいと、まるで高校生のような純な青春が初々しくて、くすぐったい感じがした。
良家のお嬢様を演じた吉高由美子、鼻にくる甲高い声ともすれば人から嫌われそうな役かもしれないけれど、吉高由美子が演じるとそれが自然ですごく好意的に映るという不思議なキャラクターでした。ですが160分の長いダラダラとした演出は、沖田監督のやりかたなのだろうが、ちと長すぎた気がする。
2013年劇場鑑賞作品・・・44 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキングへ
『南極料理人』、『キツツキと雨』の沖田修一監督が、不器用ながらも真っ直ぐに生きる世之介と周りの人たちを、優しさとユーモアに富んだ演出で包み込む。映画が幕を閉じても、観客全員にとって世之介は、思い出すたびにニヤニヤと微笑んでしまう大切で愛しい存在になっているだろう。監督:沖田修一主人公に高良健吾恋人の与謝野祥子に吉高由里子、世之介の友達に池松壮亮、綾野剛、朝倉あき、世之介の初恋の人に伊藤歩、その他祥子の父親に國村隼、世之介の両親にきたろうと余貴美子と脇役もベテラン揃い。
あらすじ:長崎県の港町で生まれた横道世之介(よこみちよのすけ)は、大学進学のために上京したばかりの18歳。嫌味のない図々しさ、頼み事を断れない人の良さ、底が浅いのか深いのか測りかねる言動が人を惹きつける。
本作で描かれるのは、お嬢様育ちのガールフレンド・与謝野祥子をはじめ、世之介と彼に関わる人たちの青春時代とその後の人生。そして、35歳になった世之介がある出来事でこの世を去ってしまった頃、その愛しい日々と優しい記憶の数々は鮮やかにそれぞれの心に響きだす……。(作品資料より)
<感想>日本に、一番人と物と金が溢れていた時代。その最後の輝きが映画の幕開けの87年であったと、今なら言える分けだが、当時はそんなこと知る由もなく。
80年代に学生時代を過ごした人々が17年後、愛すべき男「横道世之介」との出会いや、いささか個性的ではあるが、ごくごく平凡な一人の若者と、彼を取り巻く人々のありふれた日々を綴った群像劇である。
平穏な生活が揺らぐような大事件も天変地異も起きなければ、といって入学式で声をかけられた倉持と、アイプチが印象的な阿久津唯が恋人同士になり、彼女が妊娠して倉持が大学を中退する出来事とか、友達になった加藤がゲイだったということや、中でもサンバサークルでの派手な衣装に踊りが可笑しくも楽しそうだった。
17年後に横道世之介って名前聞いたことあると、つぶやくあたりから、これは普通の若者賛歌じゃなさそうだと観客は気付かされる。二つの過去がジグザグに進行して、ある事件の悲しい顛末を静かに物語っているのだ。
横道くんがとてもいい人なのはよく分かる。十分に分かったのに、あれやこれやのエピソードを更に上乗せして、いい人ぶりを強調する。これでは褒め殺しじゃないかと思っていると、やっぱり死ぬ。そうか死ぬ人だから、これだけいい人に描いたっていいのだろう。
そのような優しさや勇気を発揮した人ってどんなヤツなの、こんなふうだったのか。実際にあった忘れがたい事件から、人物像がフィクションとして立ち上がってきている、というお話のサプライズがある。それには結構唸らされたが、それが結論やオチではない。まさに横道世之介を彷徨わせるかのような、主人公の半生、ことの連なりはいいと思う。
時代の風俗や音楽など丁寧だし、特に街の風景や人物の衣装、メーク、フィルム撮影による画面の質感で、見事に時代を表現しているのには驚きました。それに、どのエピソードも、特に与謝野祥子との出会いで、二人が和気あいあいと、まるで高校生のような純な青春が初々しくて、くすぐったい感じがした。
良家のお嬢様を演じた吉高由美子、鼻にくる甲高い声ともすれば人から嫌われそうな役かもしれないけれど、吉高由美子が演じるとそれが自然ですごく好意的に映るという不思議なキャラクターでした。ですが160分の長いダラダラとした演出は、沖田監督のやりかたなのだろうが、ちと長すぎた気がする。
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