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毛皮のヴィーナス ★★★★

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その名が「マゾヒズム」の語源にもなったことで知られる、19世紀オーストリアの小説家レオポルド・フォン・ザッヘル=マゾッホの自伝的小説「毛皮を着たヴィーナス」をもとにした戯曲を、「戦場のピアニスト」「おとなのけんか」の鬼才ロマン・ポランスキー監督が映画化。
自信家で傲慢な演出家のトマは、オーディションに遅刻してきた無名の女優ワンダに押し切られ、渋々彼女の演技を見ることになる。がさつで厚かましく、知性の欠片も感じさせないワンダだったが、演技を始めてみると、役への理解もセリフも完璧だった。最初はワンダを見下していたトマも次第にひきつけられ、やがて2人の立場は逆転。トマはワンダに支配されることに酔いしれていく。ポランスキー監督の妻でもある女優エマニュエル・セニエがワンダ役を務め、トマ役には「潜水服は蝶の夢を見る」のマチュー・アマルリックが扮した。

<感想>80歳の監督ロマン・ポランスキー、さすがは料理の腕前が違う。サドと呼べば自動的にマゾと答える。SMプレイの趣味にも磨きがかかる。ヒロインのエマニュエル・セニエは、「赤い航路」を経てロマン・ポランスキー夫人になり、今じゃ貫録十分なアラフィフ美熟女である。
オーデションに遅刻してきた、ガサツでふてぶてしい無名の女優を絶妙に演じて、我儘極まる演出家のマチュー・アマルリックとのかけひき、二人芝居をスリリングに魅せている。クラシックなコスチュームと、黒いレザーのセクシーファッションと、

若い頃のポランスキーにそっくりなマチュー・アマルリック演じる舞台演出家は、マゾッホを原作に選らんだものの、自分がまさか女優とマゾの関係に陥るとは思わなかっただろう。オーディションを受けに来たエマニュエル・セニエには、知性のかけらもなく、下卑な女だったからである。それが次第に高慢な貴婦人に見えていくところが、サスペンスフルでいい。
このカップルが凄い。セットは劇場のみ。にもかかわらずこの映画はとても贅沢な作品だと思う。演出家と女優という「主従関係」は何時の間にやら二転三転、あろうことか男と女も逆転し、先の展開が読めないスリリングな舞台劇が展開します。

そして、お芝居と本気がごっちゃになって演出家トマを演じているのか、劇中の人物クシェムスキー博士なのか、それともマチュー本人なのか見分けがつかなくなってくるのだ。
つまりは演劇と実人生、現実と虚実の境界さだからぬ感じが、ファンタジーと現実が交錯し、境界線がぼやけていくところ。ポランスキーの根元にあるカルト的感性以外のものでは、撮られていないこの映像美は、サド・マゾ的反転のうちに、映画の中に演劇をとらえ返し、さらには演劇によって映画を艶めかしく息づかせている。
同時に、スタッフ&キャストの高度な技術なしには到底到達できないであろう。この二人のキャリァによって獲得できる境地を痛感しました。

舞台劇を映画化した傑作がまた一つ誕生した。その元は何でも、映画を創る決めたら、ひたすら続ける映画道を、と言われているようなそんな映画です。
ポランスキーが書いた脚本が皮肉たっぷりで、時にブラックユーモアに溢れていて秀悦。エマニュエル・セニエもマチュー・アマルリックも、それに応えての会心の演技に惚れ惚れする。終盤、アマルリックがポランスキー本人と二重写しとなり、そして観客はそこにセニエとポランスキー夫妻の関係を垣間見るようで微笑ましかった。
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