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フォックスキャッチャー ★★★

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デュポン財閥の御曹司ジョン・デュポンが起こした殺人事件を映画化した実録ドラマ。ジョン・デュポンが結成したレスリングチームに引き抜かれた五輪メダリストの兄弟が、彼の知られざる姿を知った果てに悲劇に見舞われる。監督は『カポーティ』などのベネット・ミラー。『31年目の夫婦げんか』などのスティーヴ・カレルをはじめ、チャニング・テイタムやマーク・ラファロら実力派が共演する。彼らの鬼気迫る演技に圧倒される。
あらすじ:大学のレスリングコーチを務めていたオリンピックメダリストのマーク(チャニング・テイタム)は、給料が払えないと告げられて学校を解雇される。失意に暮れる中、デュポン財閥の御曹司である大富豪ジョン・デュポン(スティーヴ・カレル)から、ソウルオリンピックに向けたレスリングチーム結成プロジェクトに勧誘される。同じくメダリストである兄デイヴ(マーク・ラファロ)と共にソウルオリンピックを目指して張り切るが、次第にデュポンの秘めた狂気を目にするようになる。

<感想>実際にあった五輪金メダリスト殺人事件を描く実録もので、主人公のマーク・シュルツは1986年のロス五輪で、兄デイヴと共に金メダルを獲得したのだが、当時はスポーツ用品のスポンサーをつけることもアマチュア精神に反していると言われた時代で、収入がない。
安アパートで毎日インスタントラーメンを喰って暮らしている生活。このままでは、1088年おソウル五輪に行ける見込みもない。
しかし、世間は兄のデイヴばかり注目する。兄貴の方は身体が小さいけれど、関節技が得意なテクニシャンである。弟のマークには、チャニング・テイタムが、兄のデイヴにはマーク・ラファロが演じて、身体作りもばっちしで筋肉マンである。

落ち込んでいたマークのところへ、ジョン・デュポンという大富豪の屋敷に招待される。アメリカの化学工業コングロマリット。南北戦争の時代に火薬を製造して儲け、いわゆる「死の商人」全米有数の巨大企業に成長したデュポン財閥。分かりやすく言うとテフロン加工のフライパンでおなじみのデュポン社。
その大企業の御曹司のジョン・デュポンは、かつてキツネ狩りに使った「フォックスキャッチャー」という巨大な敷地を持っていて、そこでソウル五輪出場のためのレスラーを育成するから来てくれと言われる。敷地内には家もあり、家賃はタダだし、食費も全部出すから引っ越して来いと言われる。
冒頭で、その「フォックスキャッチャー」という巨大な敷地でのキツネ狩りが行われるシーンが映し出される。イギリス貴族や王室での娯楽ともいうべき贅沢な遊び。

とにかく、幼い頃から優雅な暮らしが身に付いて、ワガママ放題のお坊ちゃん。相続した財産で暮らし、戦車や機関銃にミサイルまで購入。広大な敷地には射撃場まであり、警察の人たちが射撃の訓練に来ている。もち自分も練習。ですが、慈善家でもあり、レスリングに並々ならぬ愛情を注ぐ野心家でもある。その背景には、頑固者で厳しい母親に認められたいという願望があった。

そんな大金持ちにスポンサーになるから屋敷の練習場を使えと言われると、貧乏人のマークは年棒2万5000ドルに心を動かされ大喜びをして、アパートを引き払いデュポンの屋敷へと引っ越してしまう。
最高の設備でトレーニングをして、自家用機で試合に行って、高い酒を御馳走され、コカインまで吸い、贅沢三昧。これでは、身体がデブって体重オーバーに。
ところが、デュポンが言うには、「子供の頃に友達がいなかった。運転手の息子で仲良くなり、親友が出来たと思ったら、彼は自分の母親からお金で雇われていた」と言うのだ。マークに君が初めての友達だよ、と言ってくれるのだが。

だが、マークはそこにいる条件に、毎晩デュポンのスパーリングの相手をしなければならない。深夜の豪邸で、バックを取り合う2人の男の荒い息遣いが聞こえる。
どうみても、いい歳している金持ちなのに、女っけが全然なくどうやら同性愛のことは暗示する程度だが、女に興味がないように見えた。母親は、レスリングを野蛮なスポーツだと毛嫌いして、息子に敷地内の「フォックスキャッチャー」を、レスリングの練習場に使用しているのが気に入らない。

母親は、乗馬が趣味で毎日のように敷地を乗り回している。試合にも出場し、品評会のトロフィーがたくさん飾られている。それに厩舎には名馬が数頭おり、競走馬もいるのだ。母親との趣味が合わず、息子は馬が大嫌いなのだ。年を取っても母親の呪縛から逃れられない彼は、自分が好きなレスレリングで金メダルをとり、自分の価値観を認めて貰おうとしたのだろう。

デュポン役には、スティーヴ・カレルというコメディ出身で、人の良い役ばかりだった彼が、特殊メイクで顔を変えて、性的に曖昧な大人子供の老人デュポンを怪演している。デュポンは、徹底的に無表情で、死んだ顔のようでもあり、心の均衡が壊れた時には、何が起こるのか得体のしれない人間でもある。
甘やかされて、外の現実を何も知らないまま育った男。独裁者であり、何でも自分の支配下に置きたいのだ。自分が思った通りに他人が動かなかった時に、怒りを爆発させ、言うことを聞かない人間は、屋敷を追い出すか、または銃殺ということもある。

マークを屋敷に呼び込んだのには、訳があったのですね。兄のデイヴを呼ぶために始めは弟をダシに使うという。兄は妻や子供のこともあり、この屋敷には来ないというマークだが、金と権力で今まで誰しもを服従させてきた男が、絶対に出来ないことはないと自負しているのに。

ところが、兄のデイヴも妻と子供を連れて、デュポンの屋敷にやってくる。そして、特訓が始まる。ですが、今まで自分の屋敷内での特訓は、選手たちがデュポンに気をつかってのことで、デイヴが来てからは彼の指導の方がずば抜けてオリンピックへのメダルを獲得する近道だと確信して、デュポンの指導を受けなくなる。それに気づいたデュポンは、次第にデイヴをやっかいもののようになり始める。
しかし、弟のマークは兄のデイヴに対して劣等感を抱き、兄から逃げて来たのに、また兄がコーチとしてあれこれと指図するのに嫌気がさしてくる。それに、デュポンの奇行にも苛立ちが。そして、屋敷から逃げ出すマーク。もちろん、ソウル五輪では敗退する。
だが、屋敷内で優雅に暮らすデイヴには、デュポンの暗い心までは読めていなかったようだ。作品の結末で、実際に起こった事件が起こるべくして起きたのだ。これは、誰が悪いということではない。デイヴがもっと早めに彼の気分や性格を見抜いていたら、こんなことにはならなかったのでは。
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