ピーター・キャメロンの原作のもとに、「眺めのいい部屋」のジェームズ・アイヴォリー監督が、ある一家の人々がそれぞれの愛と孤独の果てに辿り着いた“目的地”を静かに見つめた文芸ドラマ。出演は「ハワーズ・エンド」のアンソニー・ホプキンズ、「イカとクジラ」のローラ・リニー、シャルロット・ゲンスブール、オーマ・メトワリー、真田広之ら。
あらすじ:コロラド大学の大学院生オマーは、わずか一冊の著書を遺し自殺したラテンアメリカの作家ユルス・グントの伝記執筆を計画する。ところが遺族の許可が得られなかったため、オマーはウルグアイに行き直接交渉することに。
人里離れた屋敷に住み、まるで人生を諦観したかのようなユルスの遺族たち。ユルスの兄アダムはオマーの申し出をすんなりと認めた代わりにある提案を持ちかける。彼は長年連れ添ってきた恋人ピートを自由にしてやるために大金が必要だったのだ。
ユルスの未亡人キャロラインは断固として認可を拒否。その裏にはユルスの未刊の原稿の存在があった。
そして幼い娘を抱えて不安な日々を過ごすユルスの愛人アーデン。オマーの来訪は一家に大きな波紋を投げかけ、彼自身もまた一つの選択を迫られる。(作品資料より)
<感想>「上海の伯爵夫人」に続いて、真田広之がジェームズ・アイヴォリー作品に出演したことで話題になった文芸ドラマだが、やはり見どころはアンソニーや、ローラ・リニー、シャルロットを始めとする国際色豊かな演技陣のアンサンブルでしょう。
南米ウルグアイを舞台に、亡き作家の妻キャロラインは、芸術的なものを求めながらの田舎暮らしで我慢を強いられて、欲求不満の彼女には、若さと美貌が衰えていくことへの苛立ちがみえる。
作家の愛人と娘、18歳でグントにスペインから地の果てのようなこの地に連れてこられ、グントという強力な後ろ盾を失ってしまったアーデンは、臆病になっているけれど、彼女にはまだ若さと娘を守らねばという強い意志がある。
作家の兄とそのパートナー、最愛のパートナーであるピートを解き放ってやろうと考え、彼の自立のための資金を用意したいアダム。そこにあるのは老いへの弱気だけ。賢く誠実なピートには、二人で一緒に暮らしていける計画がちゃんとあると言うのに。
作家の伝記を執筆するために訪れた一人の青年、それらを知ったことでオマー自身もまた、今の自分が強引な恋人ディアドラの言うがままでしかなかったことに気が付く。彼は著作を一冊だけ遺して自殺したグントの伝記を執筆することで研究奨励金を得たい。それが彼の真の望みなのか、新たな出会いで生まれたアーデンへの断ち難い思いはどうするの。
ここでは誰もが愛を求め、それによって生きる力を得る喜びが語られる。最終目的地とは愛であり、孤独を脱して生きていくことなのだろう。
漂うように生きる人々の心情を緩やかに浮かびあがらせる。真田を含め、退廃と諦観を、情感かもしだす俳優たちの演技に心が惹かれます。恋愛劇であり、遺された人たちの故人に対する葛藤の物語とも読める、まさに現在84歳にして現役最高峰アイヴォリー監督の集大成といえよう。
彼の映画に登場する人々の多くは、誰もが孤独な心の奥を覗かれ、アイヴォリー特有のデリケートな表現で映像化されていく。でもそこには露骨な好奇心も意地の悪さもなく、知的で真っ直ぐな眼差しがあることによって、エレガントで文芸ロマンのような香りが漂ってくる。それが彼の映画の最大の魅力であり、ジェイムズの小説にも通じているから。
シャルロットが成熟した魅力を見せているのに加え、真田も国際俳優として名優ホプキンズと互角に渡り合っているのも凄いと思った。エピローグ的なエピソードが、この物語にさらなる余韻を与えているのも印象的ですね。きっと、見る者にとって人生の「最終目的地」でもあり、「大切な場所」、そのことを自分にも大切な人にも気付かせてくれる映画です。
2013年劇場鑑賞作品・・・21 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキングへ
あらすじ:コロラド大学の大学院生オマーは、わずか一冊の著書を遺し自殺したラテンアメリカの作家ユルス・グントの伝記執筆を計画する。ところが遺族の許可が得られなかったため、オマーはウルグアイに行き直接交渉することに。
人里離れた屋敷に住み、まるで人生を諦観したかのようなユルスの遺族たち。ユルスの兄アダムはオマーの申し出をすんなりと認めた代わりにある提案を持ちかける。彼は長年連れ添ってきた恋人ピートを自由にしてやるために大金が必要だったのだ。
ユルスの未亡人キャロラインは断固として認可を拒否。その裏にはユルスの未刊の原稿の存在があった。
そして幼い娘を抱えて不安な日々を過ごすユルスの愛人アーデン。オマーの来訪は一家に大きな波紋を投げかけ、彼自身もまた一つの選択を迫られる。(作品資料より)
<感想>「上海の伯爵夫人」に続いて、真田広之がジェームズ・アイヴォリー作品に出演したことで話題になった文芸ドラマだが、やはり見どころはアンソニーや、ローラ・リニー、シャルロットを始めとする国際色豊かな演技陣のアンサンブルでしょう。
南米ウルグアイを舞台に、亡き作家の妻キャロラインは、芸術的なものを求めながらの田舎暮らしで我慢を強いられて、欲求不満の彼女には、若さと美貌が衰えていくことへの苛立ちがみえる。
作家の愛人と娘、18歳でグントにスペインから地の果てのようなこの地に連れてこられ、グントという強力な後ろ盾を失ってしまったアーデンは、臆病になっているけれど、彼女にはまだ若さと娘を守らねばという強い意志がある。
作家の兄とそのパートナー、最愛のパートナーであるピートを解き放ってやろうと考え、彼の自立のための資金を用意したいアダム。そこにあるのは老いへの弱気だけ。賢く誠実なピートには、二人で一緒に暮らしていける計画がちゃんとあると言うのに。
作家の伝記を執筆するために訪れた一人の青年、それらを知ったことでオマー自身もまた、今の自分が強引な恋人ディアドラの言うがままでしかなかったことに気が付く。彼は著作を一冊だけ遺して自殺したグントの伝記を執筆することで研究奨励金を得たい。それが彼の真の望みなのか、新たな出会いで生まれたアーデンへの断ち難い思いはどうするの。
ここでは誰もが愛を求め、それによって生きる力を得る喜びが語られる。最終目的地とは愛であり、孤独を脱して生きていくことなのだろう。
漂うように生きる人々の心情を緩やかに浮かびあがらせる。真田を含め、退廃と諦観を、情感かもしだす俳優たちの演技に心が惹かれます。恋愛劇であり、遺された人たちの故人に対する葛藤の物語とも読める、まさに現在84歳にして現役最高峰アイヴォリー監督の集大成といえよう。
彼の映画に登場する人々の多くは、誰もが孤独な心の奥を覗かれ、アイヴォリー特有のデリケートな表現で映像化されていく。でもそこには露骨な好奇心も意地の悪さもなく、知的で真っ直ぐな眼差しがあることによって、エレガントで文芸ロマンのような香りが漂ってくる。それが彼の映画の最大の魅力であり、ジェイムズの小説にも通じているから。
シャルロットが成熟した魅力を見せているのに加え、真田も国際俳優として名優ホプキンズと互角に渡り合っているのも凄いと思った。エピローグ的なエピソードが、この物語にさらなる余韻を与えているのも印象的ですね。きっと、見る者にとって人生の「最終目的地」でもあり、「大切な場所」、そのことを自分にも大切な人にも気付かせてくれる映画です。
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