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アナザー・ハッピー・デイ ふぞろいな家族たち★★.5

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普段は疎遠であっても親類縁者が一堂に会するのが結婚式と葬式だ。そこでは様々なドラマが展開する。オーソドックスな着眼点を持ちつつ人物描写や会話の妙に長けた本作は、脚本も手がけた新人サム・レヴィンソンの監督デビュー作。26歳の若さでサンダンス映画祭脚本賞受賞の快挙を果たしている。

『レインマン』の名匠バリー・レヴィンソンを父に持つサラブレッドではあるが、繊細さとユーモアに溢れた作風はオリジナリティに富んでいる。主演のエレン・バーキンが脚本に惚れ込んでプロデュースを買って出たのも納得の出来だ。大御所エレン・バースティンから『少年は残酷な弓を射る』で注目のエズラ・ミラーまで配役も秀逸。
あらすじ:リン(エレン・バーキン)は長男ディラン(マイケル・ナルデリ)の結婚式のため、現在の家族を連れて久しぶりに実家に戻る。反りの合わない家族に再会するのは憂鬱だったが、おめでたい席でなら“家族”に対するわだかまりを忘れられるのではないかと期待していた。しかし、長男の父親である元夫ポール(トーマス・ヘイデン・チャーチ)や、その新しい妻パティ(デミ・ムーア)の嫌味三昧に、早速うんざりさせられる。

さらにリンにとってディランは実の子でありながら、ポールに引き取られたためなかなか会えずにいたことも彼女を苦しめていた。そんなリンを母親ドリス(エレン・バースティン)は諌めるが、彼女自身も認知症の夫ジョー(ジョージ・ケネディ)との生活に疲れ果て、リンを気に掛けるどころか、煩わしく思っていた。久々に集まったのに、お互いの悩みや問題をまったく受け入れようとせず、わがままで身勝手な家族たちの鬱屈した不満や苦悩は、結婚式当日に頂点に達し、祝いの席で大騒動を巻き起こす……。 (作品資料より)

<感想>現在27歳、本作の脚本を書いたのが24歳、撮影当時26歳という新進の作品で、良く練られた群像劇である。物語の主人公は、元夫に引き取られた息子の結婚式のために、現在の家族とともに久々の里帰りしたのだが、そんな彼女と元夫の再婚相手との確執と、あるいは、リストカッターの娘に、ヤク中の二男(エズラ・ミラー)、自閉症の末っ子といった主人公の子供たちが抱えるトラブルを通して、家族に根づいている闇を、思いっきりあぶり出し描いている。実は誰もが心の中ではそう、感じているのだが。

心底すごいなと思ったのは、夫の介護(心臓発作で認知症)に苛立っているグランマ世代の悩みから、情緒不安定な中年女性の憂鬱(更年期障害)、あるいは十代の脆い精神性まで、あらゆる世代、性別における“痛み”に、それぞれ文句なしのリアリティがあること。

別れた夫婦が実子の結婚のため、式で相見えるという波乱含みの設定。各キャラが問題のオンパレード。その連鎖によって何とか群像劇が成立してゆくという苦しい流れになっている。一番健全なのは結婚する二人だが、当然彼らにはほぼドラマは託されず、途中参加する自傷の傷も生々しいケイト・ボスワース演じるアリスが後半の華となる。さらに「家族をまとめるのは、愛よりも死だ」なんてセリフを伏線にして、彼なりの人生観を強烈に示してみたり、思想の部分においても実に肝がすわっている。

豪華なキャスティングで、しかも大ベテランから若手まで存分に演技させているのには感心する。しかしながら、この映画にはいまいち心が動かないのだ。結婚式を舞台にした群像劇とはまた、なんと陳腐なことよ。問題を抱えた家族を描くのはいいとして、それにしても一家全員を病的に仕立てるとは、度を超していないだろうか。「リトル・ミス・サンシャイン」的なユーモアに頼ることなく、大家族のシュールなまでの痛さを描き切ってしまっている。その洞察力の凄さは褒めてあげたい。
2013年劇場鑑賞作品・・・22 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキングへ
 

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