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シンプル・シモン ★★★.5

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第84回アカデミー賞外国語映画賞のスウェーデン代表に選出されたラブコメディー。他者とのコミュニケーションがうまく取れないアスペルガー症候群の青年が、自分のせいで恋人に振られた兄に新たなパートナーを見つけようと奮闘する姿を追い掛ける。メガホンを取るのは、本作で長編映画デビューを飾った新鋭アンドレアス・エーマン。主演は、ステラン・スカルスガルドの息子ビル・スカルスガルド。ハートウオーミングなストーリーもさることながら、北欧ならではのかわいらしいファッションやインテリアも見もの。
あらすじ:気に触ることがあると、ロケットに見立てたドラム缶にこもって、宇宙へと飛び立つ想像にふけるシモンは、物理とSFが好きな18歳のアスペルガー症候群のシモン(ビル・スカルスガルド)。そんなシモンを理解する兄のサム(マルティン・ヴァルストロム)は、恋人フリーダ(ソフィ・ハミルトン)と暮らす新居に彼を迎え入れて共同生活を送ることに。しかし、遠慮せずに自分の生活ペースを事細かく守ろうとするシモンに嫌気が差したフリーダが出ていってしまう。落ち込むサムの姿に心を痛めたシモンは、彼にぴったりでパーフェクトな恋人を探し出そうとする。

<感想>シモンが抱える「アスペルガー症候群」という発達障害は、特定の興味や動作、収監、儀式に執着するのが特徴。彼の場合は、秒単位で行動し、食べる者は丸い形にこだわるなど自分のルール通りでないと不安になる。
劇中で、両親がパニックに陥り、宇宙船の形をしたドラム缶の中に引きこもる息子に向かって、さらにパニックを悪化させる大声を上げる描写がある。家族だけでやっていこうとすると、立ちいかなくなるのは常識で、シモンの依存する存在が兄しかいないのも気になりました。

これまで物語の主人公として描かれることが殆どなかった、アスペルガー症候群の人物を主人公に据えてという記述があった。なるほど、本作の主人公シモンは、「アスペルガー症候群です」というバッジを胸につけ、毎日通勤している。本人が自分の特性を理解して、それを第三者にカミングアウトしている姿をきちんと描写している点で、従来の映画に欠けていた視点と言えると思う。

この作品ではシモンが特製を抱えるがゆえに、日常で抱える困り果てる迷惑感が実に不器用に描かれているからである。本作には、シモン同様に発達障害を持つ同僚が出て来るが、彼らは雑音が遮断できず、その音が頭の中で反響し、ときにはひどい頭痛を起こすなど平常ではいられないはず。だから、彼らは雑音を遮断するヘッドホンが欠かせないのだ。
シモンは人に触られるのも苦手で、アスペルガー症候群には感覚過敏という特製があるが、これが過ぎると洋服の糸の縫い目も気になり、シャワーの水滴が針の刺す痛みに感じる人もいるというのだ。

物語は、シモンのパニックにお手上げ状態になった両親を見かねて、兄がシモンを引き取ることから始まる。しかし、シモンと同居することとなると、兄の恋人は頭で理解しようと思っても、気持ちでシモンを受け入れられない。身体が触れそうになると、露骨に避ける彼のジェスチャーに傷つき、分刻みのスケジュールで行動する規則正しさにも付いていけないのだ。
しかしだ、シモンの兄のフォローに追われるサムたちの視点ではなく、出来る限りシモンの視点からの語りに徹しようとしているのが、この映画のミソ。
他人に巻き込まれことこそが人を変えるのだと、つくづく思わされるチャーミングな御伽話のようでもある。

「変化が嫌い」なはずのシモンを、強力に巻き込んでいくヒロイン。イェニファーが凄く魅力的で、気軽に触れてはその度に突き飛ばされ、散々な目にあう彼女だが、そこで人格を否定したり怒ったり責めたりせず、常に笑い飛ばす姿がとても素敵です。同性から見ても理想の女性像かもしれませんね。
画面の色彩がとても可愛らしくて、常に目にも鮮やかな赤の服をまとい、儚げなスウェーデンの陽の光の中で、その色がヴィヴィッドに映えている。小物や文房具にも赤の色があふれ、北欧デザインが好きな人にとっても必見な映画かと思います。

シモンの赤に対して、自然体の兄は緑色の空間に住み、キャラクターの性格ごとに色分けされているのも目に楽しいですよね。ただし、主人公の造形を「アスペルガー症候群」的な設定にしているのだなぁと推測できる作品は、これまでにもあると思うし、そこで展開される「アスペルガー=天才最強説」に、何度か違和感を持ったことがある。
例えば、アスペルガーの特徴と言われる「人の感情が理解できない」「他人とコミュニケーションが取れない」「ある分野に於いて天才的な能力を発揮する」が組み合わさったのが、遠くの音が聞き分けられる聴覚過敏の人物として描かれていたのが、生田斗真が演じた「脳男」であり、ミア・ワシコウスカが演じた「イノセント・ガーデン」がそれだ。
それでも、スウェーデン映画らしい几帳面な整序の感覚に貫かれたコメディである。つまり、曖昧さや迷いは最初から想定されていないように見受けられる。この一種の病的な感覚は、作品の魅力ともなりアスペルガー症候群とスウェーデン的透明感が実にうまく結びついている映画とも言える。
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