ナオミ・ワッツとロビン・ライトという演技派女優を主演に迎え、ドリス・レッシング原作の「グランド・マザーズ」を映画化した禁断の愛の物語。親友同士がお互いの息子と恋に落ち、一線を越えてしまったことから思いがけない運命を招くさまを映し出す。監督は、『ココ・アヴァン・シャネル』などのアンヌ・フォンテーヌ。女性の隠れた渇望を浮き彫りにする、背徳的で甘美なラブストーリーに酔いしれる。
あらすじ:オーストラリア東部の海辺の町で、ロズ(ロビン・ライト)とリル(ナオミ・ワッツ)は幼いころから姉妹のように育ってきた。現在は二人とも結婚して家庭を持ち、お互いの息子トム(ジェームズ・フレッシュヴィル)とイアン(ゼイヴィア・サミュエル)も母親たち同様親友同士だった。早くに父親を亡くしたイアンは、ロズを2人目の母親として慕っていたが……。
<感想>原作がノーベル賞作家のドリス・レッシングで、監督も女性のアンヌ・フォンテーヌだというので、期待して観に行ったのだが、一言でいうと、お洒落な女性雑誌のカラー・グラビアを見ているような映画だった。つまり綺麗だが、底が浅いのだ。物語は基本的に都合のいい展開なのだから。
舞台がオーストラリアの入り江、いやでも眼に焼き付ける壮麗な景観の美をスクリーンに映し出す。ビーチへと続く細い坂道を、手に手を取って駆け下りた金髪の少女たち。降り注ぐ陽の光、打ち寄せる波、せせこましい現実の時の刻みを寄せ付けない自然の美と一体化するように。
双子のように育った美しい親友は、かけがえのないパートナーであった。つやつやと滑らかな肌と金髪と、贅肉のない肢体を眩しく誇らしげに自らの「作品」として完璧な息子たちの肉体に見惚れる二人の母親。「レズビアンではない」とことあるごとに茶化しながら、そうすることで案外、恋に近そうな真の想いに自意識過剰の知らんぷりを決めている女たち。そう、ここでは母親であるよりも女として見えるから。
でも、性的に彼女とは結ばれない時、彼女の美しい息子ならば論理的には問題なく、親友と恋人の両方を手に入れることができる。「一線を越えた」と真顔で、事の重大さの深刻さに狼狽えた母親たちが、でも「いい気持ち」と、あっけらかんと女の顔を輝かせ欲望をきわめつくす。
確かにそうした成り行きに失笑を禁じ得ない人も少なくはないだろう。けれども、女たちのこの迷いのなさ、葛藤のなさには、どこか見過ごしにできない奇妙な心の奥にひっかりが残るのだ。
しかし、「それがタブーではあっても、観客がヒロインたちの行いにある種の羨ましさを感じる」と言う、意外な事実を逆手に取るように“絵空事“めいた設定のリアルのありかを。アンヌ・フォンテーヌが撮ってきたいくつかの”危ない映画“の核心をも射抜いてはいないだろうか。
かたや全ての男性は根本的にマザコンと聞くが、実の母親と関係するのは、これまたタブーだけれど、母親のような女性が相手ならば許される。この四角関係は、崩壊どころか、パズルを完成させる究極のワンピースなのだろう。
母親世代がロビン・ライトとナオミ・ワッツだからこそ、絵的に成立するのは大前提として。ファッショナブルな風俗映画の域を出ていないのだ。そういう作りをするなら、せめて二人の女性、ロビン・ライトとナオミ・ワッツを、ともにブロンドにしない方がよかったのではないかとも思った。
ロビン・ライトの夫はシドニーへ転勤することになり、妻と息子と一緒に行くことを望んだが、妻はこの地を離れることを拒み、結局は離婚することになり、夫はシドニーで若い女と結婚をする。となりのハゲ男は、事故で夫を亡くしたナオミ・ワッツにしつこくつけ纏い、その間に入ったロビンが、きっぱりと二人はレズだと言わんばかりに追い返す様が笑える。
美しい母親と成長した息子二組。図式的な展開を少しも外れずに進んでいきます。背徳の欠けらもない健康的なショットで、特にナオミ・ワッツの艶めかしい熟女の姿態たるや、年上の魅力に抵抗できそうもない。久々にお目見えしたロビン・ライトも、その辺の美魔女どころではない美しさ。これなら息子たちが欲情するのも無理はないか。
よって、やがては若い男は離れていくという苦悩に説得力がないのだ。確かに息子たちは、若い女性に恋をして、関係を持ち妊娠して結婚する。そして、お互いに女の子が誕生して、故郷の入り江のある家に遊びに来る。その夜、トムがイアンの母親の部屋へ行き、ナオミ・ワッツとまたよりを戻すという構図。そのことが、二人の花嫁たちにバレてしまい、呆気なく離婚となる。
問題は息子二人の繊細さに欠いた演技である。父親への憎しみや、母親への思慕が屈折して、というような日本的なシチュエーションで陰影を見せてくれればと思ったのだが、そういう映画ではなかった。
それでも変わりなく自分たちだけの入り江の楽園を守り通す。楽園への幸せが続いてしまうことへの不幸、沖に浮かぶ飛び込み台に横たわり、目を閉じて柔らかな波に抱かれて漂うまま平穏を装う4人。“美しい絵”は、壊れも崩れもしないまま、より完璧な虚しさを完遂するように終幕する。
2014年劇場鑑賞作品・・・243 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:オーストラリア東部の海辺の町で、ロズ(ロビン・ライト)とリル(ナオミ・ワッツ)は幼いころから姉妹のように育ってきた。現在は二人とも結婚して家庭を持ち、お互いの息子トム(ジェームズ・フレッシュヴィル)とイアン(ゼイヴィア・サミュエル)も母親たち同様親友同士だった。早くに父親を亡くしたイアンは、ロズを2人目の母親として慕っていたが……。
<感想>原作がノーベル賞作家のドリス・レッシングで、監督も女性のアンヌ・フォンテーヌだというので、期待して観に行ったのだが、一言でいうと、お洒落な女性雑誌のカラー・グラビアを見ているような映画だった。つまり綺麗だが、底が浅いのだ。物語は基本的に都合のいい展開なのだから。
舞台がオーストラリアの入り江、いやでも眼に焼き付ける壮麗な景観の美をスクリーンに映し出す。ビーチへと続く細い坂道を、手に手を取って駆け下りた金髪の少女たち。降り注ぐ陽の光、打ち寄せる波、せせこましい現実の時の刻みを寄せ付けない自然の美と一体化するように。
双子のように育った美しい親友は、かけがえのないパートナーであった。つやつやと滑らかな肌と金髪と、贅肉のない肢体を眩しく誇らしげに自らの「作品」として完璧な息子たちの肉体に見惚れる二人の母親。「レズビアンではない」とことあるごとに茶化しながら、そうすることで案外、恋に近そうな真の想いに自意識過剰の知らんぷりを決めている女たち。そう、ここでは母親であるよりも女として見えるから。
でも、性的に彼女とは結ばれない時、彼女の美しい息子ならば論理的には問題なく、親友と恋人の両方を手に入れることができる。「一線を越えた」と真顔で、事の重大さの深刻さに狼狽えた母親たちが、でも「いい気持ち」と、あっけらかんと女の顔を輝かせ欲望をきわめつくす。
確かにそうした成り行きに失笑を禁じ得ない人も少なくはないだろう。けれども、女たちのこの迷いのなさ、葛藤のなさには、どこか見過ごしにできない奇妙な心の奥にひっかりが残るのだ。
しかし、「それがタブーではあっても、観客がヒロインたちの行いにある種の羨ましさを感じる」と言う、意外な事実を逆手に取るように“絵空事“めいた設定のリアルのありかを。アンヌ・フォンテーヌが撮ってきたいくつかの”危ない映画“の核心をも射抜いてはいないだろうか。
かたや全ての男性は根本的にマザコンと聞くが、実の母親と関係するのは、これまたタブーだけれど、母親のような女性が相手ならば許される。この四角関係は、崩壊どころか、パズルを完成させる究極のワンピースなのだろう。
母親世代がロビン・ライトとナオミ・ワッツだからこそ、絵的に成立するのは大前提として。ファッショナブルな風俗映画の域を出ていないのだ。そういう作りをするなら、せめて二人の女性、ロビン・ライトとナオミ・ワッツを、ともにブロンドにしない方がよかったのではないかとも思った。
ロビン・ライトの夫はシドニーへ転勤することになり、妻と息子と一緒に行くことを望んだが、妻はこの地を離れることを拒み、結局は離婚することになり、夫はシドニーで若い女と結婚をする。となりのハゲ男は、事故で夫を亡くしたナオミ・ワッツにしつこくつけ纏い、その間に入ったロビンが、きっぱりと二人はレズだと言わんばかりに追い返す様が笑える。
美しい母親と成長した息子二組。図式的な展開を少しも外れずに進んでいきます。背徳の欠けらもない健康的なショットで、特にナオミ・ワッツの艶めかしい熟女の姿態たるや、年上の魅力に抵抗できそうもない。久々にお目見えしたロビン・ライトも、その辺の美魔女どころではない美しさ。これなら息子たちが欲情するのも無理はないか。
よって、やがては若い男は離れていくという苦悩に説得力がないのだ。確かに息子たちは、若い女性に恋をして、関係を持ち妊娠して結婚する。そして、お互いに女の子が誕生して、故郷の入り江のある家に遊びに来る。その夜、トムがイアンの母親の部屋へ行き、ナオミ・ワッツとまたよりを戻すという構図。そのことが、二人の花嫁たちにバレてしまい、呆気なく離婚となる。
問題は息子二人の繊細さに欠いた演技である。父親への憎しみや、母親への思慕が屈折して、というような日本的なシチュエーションで陰影を見せてくれればと思ったのだが、そういう映画ではなかった。
それでも変わりなく自分たちだけの入り江の楽園を守り通す。楽園への幸せが続いてしまうことへの不幸、沖に浮かぶ飛び込み台に横たわり、目を閉じて柔らかな波に抱かれて漂うまま平穏を装う4人。“美しい絵”は、壊れも崩れもしないまま、より完璧な虚しさを完遂するように終幕する。
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