インド洋で遭難してしまいたった一人で孤独や命の危険との闘いを強いられた男を、名優ロバート・レッドフォードが演じるヒューマンドラマ。自家製ヨットでの気ままな航海の旅が事故により一転、大自然の猛威にさらされる中で、それでも生きようとする人間の強さを感動的に描く。メガホンを取るのは長編デビュー作『マージン・コール』で注目を浴び、本作が長編2作目の監督作となる新鋭J・C・チャンダー。全編水上でのロケで唯一の登場人物を演じる、大ベテランのロバートの熱演は必見。
<感想>77歳になるロバート・レッドフォードの、体当たりの名演が絶賛を呼んでいるようで、今週で終わりだということで鑑賞。スマトラ沖で、豪華ヨットで海の旅を一人楽しんでいたロバート。ある日目が覚めると、巨大輸送コンテナが船の側面に激突してきた。慌てて無線で救出を呼ぼうとするが繋がらない。ナビもぶっ壊れた。船体が破損し、その後に嵐でヨットが沈没。
ロバートは救命用ゴムボートで難を逃れて、水や食料も不足し、嵐や高波など大自然の猛威に死苦八苦しながら、海図を頼りに海上航路での救助を目指すのだが、これがまた至難を極めることに。
この間、息をもつかせぬ展開で、ほとんど海上サバイバル・ドラマかという描写が続くのだが、登場人物はロバートのみ。キャラクターの名前もないし、台詞も冒頭のモノローグのみ。一人芝居は舞台ではよくあるが、映画では珍しいし、ここまでのリアリティを打ち出してくるところがこの作品の見所でもあるんですよね。これを見せば遭難時に相当に役に立つかもしれないが、それ以上に、ヨットに乗る気にならなくなるのは請け合いだろう。
こういうシンプルな構成のチャレンジングな作品というと、バレーボールは登場しないトム・ハンクスの「キャスト・アウェイ」、もしくは虎が出てこない「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」と言えなくもないが、本作はそこまでドラマチックでもカラフルでもない。革命的映像体験ができるわけでもない、超低予算である。
ピンチ到来とくればなんとかサバイブし、と思ったらまたもやピンチの繰り返しで、観ていて想定内の出来事ばかりで、驚きもスリルも不足している。残念ながらプロットはないようなものなので、間がもたないのだ。脚本はたったの31ページで、「台詞の不在を体当たり演技で埋めてやるぜ」と熱演する老人の生きようとする意志と経験のもたらす知恵だけ。77歳のロバートの気合いと頑張りは伝わってくるのだが、それも前半だけ。
後半になり、我らの男にいよいよもって死の影が迫ってくる。主人公が乗った救命ボートを水中から見上げるようなショットが少しずつ増えていく。そして、徐々に集まってくる魚、その魚を捕食する大型の魚、そしてサメたちと、主人公の視点ではなく、“餌”として主人公を捉える視点が、巧みに導入されていく。
製作費が850万ドル(約9億)の多くはレッドフォードのギャラなのだろう。それでも、映画は映像で見せるものという「原則」をとことん突き詰めた作品なのだから、見事というほかない。ですが、遭難者を撮るキャメラの存在が気になって、遭難者が本当に遭難しているように思えないのだ。それでも、首まで海水に浸りながら、沈没寸前のヨットから必要な品を探す姿は感涙もの。
主人公のキャラ設定には、ひたすら悪態をつき続けるタイプと、本作のような寡黙型、超真面目タイプの2つがあっただろうが、この主人公ロバートには後者が最適だし、そのために冒頭で紹介される今際の手紙の内容も重く響いてくるのだ。
手紙で主人公は、自分の無力を詫びるが、実際には考え付く限りの手立てを果敢に試みているからなのだ。ラストは、観る者がその解釈をめぐって究極の選択を迫られ、実は冒頭の手紙を果たして受け取る相手がいたのかどうかも分からないという手の込んだ作りになっているのだ。それでも、妙にアメリカン・ニュー・シネマを彷彿とさせる斬新さと、孤独感が魅力的でした。
2014年劇場鑑賞作品・・・232 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
<感想>77歳になるロバート・レッドフォードの、体当たりの名演が絶賛を呼んでいるようで、今週で終わりだということで鑑賞。スマトラ沖で、豪華ヨットで海の旅を一人楽しんでいたロバート。ある日目が覚めると、巨大輸送コンテナが船の側面に激突してきた。慌てて無線で救出を呼ぼうとするが繋がらない。ナビもぶっ壊れた。船体が破損し、その後に嵐でヨットが沈没。
ロバートは救命用ゴムボートで難を逃れて、水や食料も不足し、嵐や高波など大自然の猛威に死苦八苦しながら、海図を頼りに海上航路での救助を目指すのだが、これがまた至難を極めることに。
この間、息をもつかせぬ展開で、ほとんど海上サバイバル・ドラマかという描写が続くのだが、登場人物はロバートのみ。キャラクターの名前もないし、台詞も冒頭のモノローグのみ。一人芝居は舞台ではよくあるが、映画では珍しいし、ここまでのリアリティを打ち出してくるところがこの作品の見所でもあるんですよね。これを見せば遭難時に相当に役に立つかもしれないが、それ以上に、ヨットに乗る気にならなくなるのは請け合いだろう。
こういうシンプルな構成のチャレンジングな作品というと、バレーボールは登場しないトム・ハンクスの「キャスト・アウェイ」、もしくは虎が出てこない「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」と言えなくもないが、本作はそこまでドラマチックでもカラフルでもない。革命的映像体験ができるわけでもない、超低予算である。
ピンチ到来とくればなんとかサバイブし、と思ったらまたもやピンチの繰り返しで、観ていて想定内の出来事ばかりで、驚きもスリルも不足している。残念ながらプロットはないようなものなので、間がもたないのだ。脚本はたったの31ページで、「台詞の不在を体当たり演技で埋めてやるぜ」と熱演する老人の生きようとする意志と経験のもたらす知恵だけ。77歳のロバートの気合いと頑張りは伝わってくるのだが、それも前半だけ。
後半になり、我らの男にいよいよもって死の影が迫ってくる。主人公が乗った救命ボートを水中から見上げるようなショットが少しずつ増えていく。そして、徐々に集まってくる魚、その魚を捕食する大型の魚、そしてサメたちと、主人公の視点ではなく、“餌”として主人公を捉える視点が、巧みに導入されていく。
製作費が850万ドル(約9億)の多くはレッドフォードのギャラなのだろう。それでも、映画は映像で見せるものという「原則」をとことん突き詰めた作品なのだから、見事というほかない。ですが、遭難者を撮るキャメラの存在が気になって、遭難者が本当に遭難しているように思えないのだ。それでも、首まで海水に浸りながら、沈没寸前のヨットから必要な品を探す姿は感涙もの。
主人公のキャラ設定には、ひたすら悪態をつき続けるタイプと、本作のような寡黙型、超真面目タイプの2つがあっただろうが、この主人公ロバートには後者が最適だし、そのために冒頭で紹介される今際の手紙の内容も重く響いてくるのだ。
手紙で主人公は、自分の無力を詫びるが、実際には考え付く限りの手立てを果敢に試みているからなのだ。ラストは、観る者がその解釈をめぐって究極の選択を迫られ、実は冒頭の手紙を果たして受け取る相手がいたのかどうかも分からないという手の込んだ作りになっているのだ。それでも、妙にアメリカン・ニュー・シネマを彷彿とさせる斬新さと、孤独感が魅力的でした。
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