2002年より連続テレビドラマとしてオンエアされて人気を博す刑事ドラマ「相棒」のおよそ3年半ぶりとなる劇場版。太平洋に位置する孤島を舞台に、水谷豊演じる警視庁特命係の刑事・杉下右京とその相棒で成宮寛貴演じる甲斐享が、実業家が所有し、元自衛隊員が訓練をする謎の島の真相を探るべく捜査に乗り出す。六角精児や川原和久らレギュラー陣のほか、伊原剛志や釈由美子、そしてかつての相棒である及川光博などが共演。防衛省や国の権力者の暗躍、ジャングルや岩礁での捜査など、劇場版ならではのスケールに期待が膨らむ。
<感想>絶海の孤島で、杉下右京の名推理が冴えわたる「相棒 劇場版」シリーズの第3弾。個人の私有地である東京から約300キロ離れた島・鳳凰島で、一人の青年が馬に蹴られて死亡するという事故が発生。
警視庁特命係の杉下右京(水谷豊)と甲斐享(成宮寛貴)は、不思議なうわさのある島の実態を調査することに。その島は実業家(宅麻伸)が所有し、元自衛隊員OBによって構成された民兵によって支配されており、官僚からの横やりを受けながらも、訓練をしている。右京は男性の死亡理由が事故ではなく殺人であると確信。島には特命係、捜査一課、鑑識課が集結するが、彼らを何者かが襲撃し……。
「相棒」ファンとしては嬉しい劇場版、2代目相棒の及川光博のカムバックなのだが、ほんの少ししか出番なし、それでも右京に重要情報を提供するキーマンとして活躍している。さらに特命係りと陸上自衛隊の特殊部隊が激突する劇場版ならではの緊迫シーンも用意されている。というか、この島で起きたことに対して、警察は邪魔者であり、即刻この島から出て行けとばかりに、強引に拉致監禁されてヘリで東京に帰されてしまう。ですが、これで引き下がる右京さんではない。
南海の密林だろうが、スーツ姿にネクタイ締めて、密林の河で紅茶を飲む右京さんは、とことん優雅に見えました。しかし、その紅茶茶碗は東京から持ってきたの?・・・それに紅茶も。そして、こんかいの相棒は、父親が警視庁次官(石坂浩二)の息子である成宮寛貴くん。
それに、右京に呼び出された鑑識課の六角さんに、川原和久、大谷亮介、山中崇史らレギュラー陣の人たちの賑やかなこと。鑑識課の米沢は、バックの中で鳴った衛星電話を取り出し、「ご依頼のブツです」と、右京に電話をわたす。この島では普通の携帯電話は電波が通じないのだ。
劇場版第3弾ということで、今回のテーマは、ズバリ「国防」である。作品の冒頭で久々に警視庁特命係りに足を踏み入れた及川光博の神戸さん、ある孤島で起こった、ある死亡事故の捜査を口実に、警視庁次官からの密命を特命係りの2人に託すわけ。
そして物語は、並外れた洞察力の右京と、特命係りの捜査によって実は“事件”であることが明らかになっていくその死亡事故と、島の民兵組織が隠蔽している“国防”に関わる機密事項を、その2つの謎が同時進行で展開していく。事故のあった馬房から馬蹄が一つ消えていることに疑念を抱く右京。
そして、事故死と見られたその現場に落ちていたベルト通し、加害の馬(大和)の向かいの使ってない馬房にあった馬の糞、そして数の足りない馬蹄、などの疑惑から右京の灰色の頭脳が動き出す。馬蹄の指紋などを逆手にとって、いかにも右京さんらしいワナに嵌める手が、紅一点の志摩子に向けられたりする。そして、島から非合法兵器を運び出すことに着眼を得、そのことをずばり気づく右京さんの洞察力には、この辺の本格ミステリー謎解きぶりも相変わらずの「相棒」タッチでしょう。
だが、防衛省官僚から捜査を打ち切るよう圧力がかかるわけで、この馬蹄が殺人用具だということで、殺された人間は、実は実業家から差し向けられたスパイで、この島で「天然痘」のウィルスを秘密に実験制作していることを探り、そのことが公にされないように口封じされて殺されたのだ。
真犯人は核兵器に対して“貧者の核兵器”と呼ばれる生物兵器への不当な扱いへの義憤を表す。あるいは、お友達と称する大国は有事には、本当に日本を守ってくれると思うのか、との疑問を提示する。はたまた、日本人は平和ボケという病に冒されていると指摘する示申室司。これに対して右京は、いかにも彼らしい名言で返すのです。
鳳凰島の民兵を組織する示申室司に扮する伊原剛志は、拾い肩幅に長い脚でガッチリとした体格、厳めしい表情がいかにも軍人っぽい。訓練用の馬、大和を自在に乗りこなす姿は、かつて伊原が演じた「硫黄島からの手紙」のバロン西を彷彿とさせ、ハマリ役である。膝の骨が砕ける大怪我負ったことで自衛隊を退官し、常に杖は手放せない。そして、民兵の紅一点、高野を演じた釈由美子も、演じている時は口を真一文字に結んだ厳しい表情で美しい。
今回も話が進むにつれて意外な方向に導かれ、ただならぬ緊張感に支配されて心地よいです。「相棒」劇場版の3本の重要な共通部分は、一つ挙げるならキナ臭さか。もっと具体的に言うなら“テロルの匂い”か。
第1作目では、東京マラソンがテロの標的となり、第2作目では元刑事が警視庁内に籠城し、警察幹部を人質にして占拠する“自爆テロ”的なお話が展開したし、スピンオフ作の「相棒シリーズX DAY」もまたサイバーテロを描いていた。そして今回は、そんなキナ臭さが最も強烈であり、テロルの匂いもまた一番濃厚なのであります。
今作では、アクションも楽しいですが、腹の探り合いとかネチネチしたものが好きなんですね。スケール感は劇場版としては物足りなさを感じましたが、絶海の孤島というシリーズ初となる大々的なロケを敢行している。沖縄本島北部や座間味島で1ケ月以上に渡って長期撮影を行う。密林や岩礁といった大自然を舞台にした、特命係の活躍が見どころですかね。
2014年劇場鑑賞作品・・・101 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
<感想>絶海の孤島で、杉下右京の名推理が冴えわたる「相棒 劇場版」シリーズの第3弾。個人の私有地である東京から約300キロ離れた島・鳳凰島で、一人の青年が馬に蹴られて死亡するという事故が発生。
警視庁特命係の杉下右京(水谷豊)と甲斐享(成宮寛貴)は、不思議なうわさのある島の実態を調査することに。その島は実業家(宅麻伸)が所有し、元自衛隊員OBによって構成された民兵によって支配されており、官僚からの横やりを受けながらも、訓練をしている。右京は男性の死亡理由が事故ではなく殺人であると確信。島には特命係、捜査一課、鑑識課が集結するが、彼らを何者かが襲撃し……。
「相棒」ファンとしては嬉しい劇場版、2代目相棒の及川光博のカムバックなのだが、ほんの少ししか出番なし、それでも右京に重要情報を提供するキーマンとして活躍している。さらに特命係りと陸上自衛隊の特殊部隊が激突する劇場版ならではの緊迫シーンも用意されている。というか、この島で起きたことに対して、警察は邪魔者であり、即刻この島から出て行けとばかりに、強引に拉致監禁されてヘリで東京に帰されてしまう。ですが、これで引き下がる右京さんではない。
南海の密林だろうが、スーツ姿にネクタイ締めて、密林の河で紅茶を飲む右京さんは、とことん優雅に見えました。しかし、その紅茶茶碗は東京から持ってきたの?・・・それに紅茶も。そして、こんかいの相棒は、父親が警視庁次官(石坂浩二)の息子である成宮寛貴くん。
それに、右京に呼び出された鑑識課の六角さんに、川原和久、大谷亮介、山中崇史らレギュラー陣の人たちの賑やかなこと。鑑識課の米沢は、バックの中で鳴った衛星電話を取り出し、「ご依頼のブツです」と、右京に電話をわたす。この島では普通の携帯電話は電波が通じないのだ。
劇場版第3弾ということで、今回のテーマは、ズバリ「国防」である。作品の冒頭で久々に警視庁特命係りに足を踏み入れた及川光博の神戸さん、ある孤島で起こった、ある死亡事故の捜査を口実に、警視庁次官からの密命を特命係りの2人に託すわけ。
そして物語は、並外れた洞察力の右京と、特命係りの捜査によって実は“事件”であることが明らかになっていくその死亡事故と、島の民兵組織が隠蔽している“国防”に関わる機密事項を、その2つの謎が同時進行で展開していく。事故のあった馬房から馬蹄が一つ消えていることに疑念を抱く右京。
そして、事故死と見られたその現場に落ちていたベルト通し、加害の馬(大和)の向かいの使ってない馬房にあった馬の糞、そして数の足りない馬蹄、などの疑惑から右京の灰色の頭脳が動き出す。馬蹄の指紋などを逆手にとって、いかにも右京さんらしいワナに嵌める手が、紅一点の志摩子に向けられたりする。そして、島から非合法兵器を運び出すことに着眼を得、そのことをずばり気づく右京さんの洞察力には、この辺の本格ミステリー謎解きぶりも相変わらずの「相棒」タッチでしょう。
だが、防衛省官僚から捜査を打ち切るよう圧力がかかるわけで、この馬蹄が殺人用具だということで、殺された人間は、実は実業家から差し向けられたスパイで、この島で「天然痘」のウィルスを秘密に実験制作していることを探り、そのことが公にされないように口封じされて殺されたのだ。
真犯人は核兵器に対して“貧者の核兵器”と呼ばれる生物兵器への不当な扱いへの義憤を表す。あるいは、お友達と称する大国は有事には、本当に日本を守ってくれると思うのか、との疑問を提示する。はたまた、日本人は平和ボケという病に冒されていると指摘する示申室司。これに対して右京は、いかにも彼らしい名言で返すのです。
鳳凰島の民兵を組織する示申室司に扮する伊原剛志は、拾い肩幅に長い脚でガッチリとした体格、厳めしい表情がいかにも軍人っぽい。訓練用の馬、大和を自在に乗りこなす姿は、かつて伊原が演じた「硫黄島からの手紙」のバロン西を彷彿とさせ、ハマリ役である。膝の骨が砕ける大怪我負ったことで自衛隊を退官し、常に杖は手放せない。そして、民兵の紅一点、高野を演じた釈由美子も、演じている時は口を真一文字に結んだ厳しい表情で美しい。
今回も話が進むにつれて意外な方向に導かれ、ただならぬ緊張感に支配されて心地よいです。「相棒」劇場版の3本の重要な共通部分は、一つ挙げるならキナ臭さか。もっと具体的に言うなら“テロルの匂い”か。
第1作目では、東京マラソンがテロの標的となり、第2作目では元刑事が警視庁内に籠城し、警察幹部を人質にして占拠する“自爆テロ”的なお話が展開したし、スピンオフ作の「相棒シリーズX DAY」もまたサイバーテロを描いていた。そして今回は、そんなキナ臭さが最も強烈であり、テロルの匂いもまた一番濃厚なのであります。
今作では、アクションも楽しいですが、腹の探り合いとかネチネチしたものが好きなんですね。スケール感は劇場版としては物足りなさを感じましたが、絶海の孤島というシリーズ初となる大々的なロケを敢行している。沖縄本島北部や座間味島で1ケ月以上に渡って長期撮影を行う。密林や岩礁といった大自然を舞台にした、特命係の活躍が見どころですかね。
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