1970年代後半のアメリカを揺るがした政治家などの収賄スキャンダル、アブスキャム事件を題材にしたサスペンスドラマ。自由と引き換えに、FBIが仕掛ける悪徳政治家検挙を狙ったおとり捜査に協力させられる詐欺師たちの姿を、スリリングに映し出していく。メガホンを取るのは、『世界にひとつのプレイブック』などのデヴィッド・O・ラッセル。『ザ・ファイター』などのクリスチャン・ベイルを筆頭に、ブラッドリー・クーパー、エイミー・アダムス、ジェニファー・ローレンスら、実力派スターが結集してクセのある登場人物たちを熱演する。
<感想>騙す側よりも騙される方がいい。映画に求める究極のところはそれだけだと言っていいでしょう。気持ちよく騙して欲しいのだ。冒頭での1978年4月28日のニューヨーク・プラザ。クリスチャン・ベイル演じる詐欺師アーヴィンが、鏡の前でウィッグを付けて丹念に髪を19分けに撫でつけているのが可笑しくて笑ってしまう。愛人シドニーに扮しているエイミー・アダムスがFBI捜査官のリッチーに扮しているブラッドリー・クーパーとやってくる。
リッチーがアーヴィンの頭に触って髪形を乱すと、シドニーが叫ぶのだ。「それだけはダメ、すごく時間がかかるの」と、この何てことない冒頭からして異様におかしいのだ。まさに漫才トリオよろしく絶妙な間合いで、この変な髪形をいじり倒す。この人誰?って、よく見るとクリスチャン・ベイルなのだ。中年太りで腹が出ているし、ハゲ隠しのウィッグといやはや、この俳優さんは「ザ・ファイター」でも髪の毛も歯も抜いてげっそりと体重落としたのに、完璧な成りきり演技をしないとダメなのね。
逮捕された2人なのだが、結局はFBI捜査官リッチーの提案で、盗品や贋作で引っ掛ける詐欺師のアーヴィンとシドニーを、「詐欺師仲間を売れば無罪放免にしてやる」と、取引を持ち掛けてきた。逃亡しようと言うシドニーを振り切って、囮捜査に協力させることになる。
それがとんでもない計画で、実在しないアラブの大富豪をエサにしたアーヴィンの計略にまんまと引っかかる詐欺師たち。だが詐欺師の一人が、カムデン市長のカーマインがアトランティック・シティにカジノを建設するための裏金を必要としているとの情報を得て、FBI捜査官のリッチーは作戦を変更して「カーマインとカジノ利権に群がる議員を全員逮捕してやる」と暴走するのである。
ターゲットはカジノ利権に群がるカーマイン市長ら政治家たち。これが最近良く出て来るジェレミー・レナーが、髪の毛をリーゼントにセットして、街にカジノ建設をとやっきとなる。
一方、アーヴィンは詐欺目的で近づいた市長と意気投合してしまう。それに、アーヴィンの浮気を知って作戦をぶち壊そうとする本妻のロザリン。アーヴィンの妻は、デヴィッド・O・ラッセル監督と前作の『世界にひとつのプレイブック』でも組んだジェニファー・ローレンスである。これがまた、ウィングスの曲で踊り狂うシーンなど、ネジの外れた怪演を見せてくれる。エイミーとジェニファー二人の女優魂に火がついたような、妖艶な色気たっぷりなドレス姿で競って楽しいです。
カジノの会場となる歴史のある場所では、ロバート・デ・ニーロがイタリア、マフィアの親分の役で貫録十分です。ラストが本当の見どころなんですね。マフィアの親分にFBIのリッチーを会わせるために弁護士事務所へ行く。ところが本人が用事があって来られないと、弁護士が私が全権を任せられているからといい、FBI捜査官のリッチーが200万ドルをマフィアの親分の口座に送金するようにと、これは上手く騙されましたね。FBIから送金されたお金って、税金ですよね。さすがの天才詐欺師アーヴィンとシドニーの2人に、今回はFBIも上手にやられましたね。
1979年に上院議員と下院議員7人が有罪判決を受けてアメリカを揺るがした「アブスキャム事件」を基にした本作では、詐欺師がFBIの作戦の陣頭指揮を取るという、前代未聞のこのミッション。「俺は騙される側より、騙す方でいたい」と豪語するアーヴィンたちの騙し合いが描かれている。
監督は、作戦そのものよりも人間の感情を人為的に操作する「詐欺」という行為に興味を抱いたのだろう。その結果、愛や憎しみ、友情といった感情に振り回される登場人物を描いた人間ドラマになっているようだ。
今回も70年代のヒットナンバーの絶妙な使い方に、ついニヤリとしてしまう。ビー・ジーズの「傷心の日々」、レッド・ツェッペリンの「グッド・タイムズ・バッド・タイムズ」など、ラッセル監督の選曲センスは完璧でした。
2014年劇場鑑賞作品・・・30 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
<感想>騙す側よりも騙される方がいい。映画に求める究極のところはそれだけだと言っていいでしょう。気持ちよく騙して欲しいのだ。冒頭での1978年4月28日のニューヨーク・プラザ。クリスチャン・ベイル演じる詐欺師アーヴィンが、鏡の前でウィッグを付けて丹念に髪を19分けに撫でつけているのが可笑しくて笑ってしまう。愛人シドニーに扮しているエイミー・アダムスがFBI捜査官のリッチーに扮しているブラッドリー・クーパーとやってくる。
リッチーがアーヴィンの頭に触って髪形を乱すと、シドニーが叫ぶのだ。「それだけはダメ、すごく時間がかかるの」と、この何てことない冒頭からして異様におかしいのだ。まさに漫才トリオよろしく絶妙な間合いで、この変な髪形をいじり倒す。この人誰?って、よく見るとクリスチャン・ベイルなのだ。中年太りで腹が出ているし、ハゲ隠しのウィッグといやはや、この俳優さんは「ザ・ファイター」でも髪の毛も歯も抜いてげっそりと体重落としたのに、完璧な成りきり演技をしないとダメなのね。
逮捕された2人なのだが、結局はFBI捜査官リッチーの提案で、盗品や贋作で引っ掛ける詐欺師のアーヴィンとシドニーを、「詐欺師仲間を売れば無罪放免にしてやる」と、取引を持ち掛けてきた。逃亡しようと言うシドニーを振り切って、囮捜査に協力させることになる。
それがとんでもない計画で、実在しないアラブの大富豪をエサにしたアーヴィンの計略にまんまと引っかかる詐欺師たち。だが詐欺師の一人が、カムデン市長のカーマインがアトランティック・シティにカジノを建設するための裏金を必要としているとの情報を得て、FBI捜査官のリッチーは作戦を変更して「カーマインとカジノ利権に群がる議員を全員逮捕してやる」と暴走するのである。
ターゲットはカジノ利権に群がるカーマイン市長ら政治家たち。これが最近良く出て来るジェレミー・レナーが、髪の毛をリーゼントにセットして、街にカジノ建設をとやっきとなる。
一方、アーヴィンは詐欺目的で近づいた市長と意気投合してしまう。それに、アーヴィンの浮気を知って作戦をぶち壊そうとする本妻のロザリン。アーヴィンの妻は、デヴィッド・O・ラッセル監督と前作の『世界にひとつのプレイブック』でも組んだジェニファー・ローレンスである。これがまた、ウィングスの曲で踊り狂うシーンなど、ネジの外れた怪演を見せてくれる。エイミーとジェニファー二人の女優魂に火がついたような、妖艶な色気たっぷりなドレス姿で競って楽しいです。
カジノの会場となる歴史のある場所では、ロバート・デ・ニーロがイタリア、マフィアの親分の役で貫録十分です。ラストが本当の見どころなんですね。マフィアの親分にFBIのリッチーを会わせるために弁護士事務所へ行く。ところが本人が用事があって来られないと、弁護士が私が全権を任せられているからといい、FBI捜査官のリッチーが200万ドルをマフィアの親分の口座に送金するようにと、これは上手く騙されましたね。FBIから送金されたお金って、税金ですよね。さすがの天才詐欺師アーヴィンとシドニーの2人に、今回はFBIも上手にやられましたね。
1979年に上院議員と下院議員7人が有罪判決を受けてアメリカを揺るがした「アブスキャム事件」を基にした本作では、詐欺師がFBIの作戦の陣頭指揮を取るという、前代未聞のこのミッション。「俺は騙される側より、騙す方でいたい」と豪語するアーヴィンたちの騙し合いが描かれている。
監督は、作戦そのものよりも人間の感情を人為的に操作する「詐欺」という行為に興味を抱いたのだろう。その結果、愛や憎しみ、友情といった感情に振り回される登場人物を描いた人間ドラマになっているようだ。
今回も70年代のヒットナンバーの絶妙な使い方に、ついニヤリとしてしまう。ビー・ジーズの「傷心の日々」、レッド・ツェッペリンの「グッド・タイムズ・バッド・タイムズ」など、ラッセル監督の選曲センスは完璧でした。
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