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ビザンチウム ★★★.5

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「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」(1994)のニール・ジョーダン監督が再びバンパイアを題材に取り上げ、シアーシャ・ローナン主演で永遠の孤独を宿命づけられた吸血鬼の少女の姿を描く。原作は、脚本家で劇作家のモイラ・バフィーニが2007年に発表した舞台「A Vampire Story」。
あらすじ:人の血を吸い生きるバンパイアの少女エレノアは、たったひとりの肉親の女性クララとともに、見知らぬ街から街へと移り住みながら生きていた。ある時、海辺のさびれた保養地に建つゲストハウス「ビザンチウム」を訪れたエレノアは、難病のため余命わずかの青年フランクと出会い、恋に落ちてしまう。バンパイアの血の掟に背いたことで、クララとの絆も揺らぎ始めたその時、エレノアとクララを追う者の魔の手が迫り……。

<感想>前から観たいと思っていたのに、やっと地方でも上映された。それも1週間だけで。今時流行りのヴァンパイアものです。それに、主人公エレノアに今を時めくシアーシャ・ローナンが演じているのも魅力ですね。しかし、主人公たる吸血鬼の二人がともに女性。しかも実の母親と娘であることが異色ですよね。
「ポーの一族」を連想せずにいられない物語なのだが、本来吸血鬼文芸の主人公は男の独占場であったから。
この作品の中でも男の吸血鬼たちの文字通り「血」の同盟団が脈脈と二百年に渡って二人の女吸血鬼を抹殺しようと、追尾しているという。そんな盛りだくさんな内容なので、吸血鬼の2人の彼女らに心理的に同化できて、男どもの身勝手さに腹を立ててしまう珍しい体験をした。
舞台劇の「ア・ヴァンパイア・ストーリー」で当てた原作者のモイラ・バフィーニ自ら脚本にしたというこの作品。「ビザンチウム」と題名を替えたのは良かったと思う。女吸血鬼の母親クララに、娘エレノアの二人がしばし逗留するのが元ホテルで、今は老朽化のひどい下宿屋の名前が「ビザンチウム」である。

それに遡ること、4世紀から約10世紀間、十字軍の遠征の大混乱を抱えたビザンティン帝国の帝都。コンスタンティノーブルと呼ばれたこともある。
なにしろトルコ語名イスタンブールで、オリンピック招致のライバルとして近頃久しぶりに耳馴染みな都市になったところ。そして、東と西、オリエントとヨーロッパを繋ぐ国。その都ということで招致運動を推進した。

さて物語は、人間を秘密で吸血鬼の同盟に参入させる秘密の孤島には、船で行くも荒々しい海のうねりと岩の座礁が難航で、入り江から入って崖を登ると大きな滝が出て来る。その滝の脇に洞窟があり、その洞窟の中にはコウモリの巣で、もの凄い数のこうもりが潜んでいて、人間を襲い血祭りにする。
そして、洞窟の横の滝が血の滝となって真っ赤に染まって流れ落ちるという光景。
娘エレノアが、好きになった相手、フランクが白血病としり、自分の生い立ちを物語にして書き渡す。そして、吸血鬼同盟の掟を破って産んだ娘を、本当だったら殺さなければいけないのに、孤児院へ入れ、母親クララは命を張って娘を守り、最後は母子の関係さえ解き放って解放する。

何だか2010年に観た「ぼくのエリ200歳の少女」と類似しているような気もしたが、母親と一緒に旅を続けるという設定が違うのだが。正体は明かせず、200年間「16歳」のまま孤独を噛みしめながら、永遠の毎日を繰り返している。難病の青年との禁断の恋。血を求め、人を殺めてきた贖罪意識、200年もの歴史の起源の物語が押し寄せてくる。エレノアが人間の血を吸い取る時には、手の親指の爪が異常に尖がって来て、それで腕の静脈を切り吸い取るのだ。
最後が、白血病の青年、「アンチヴァイラル」の、いかにも虚弱な顔の俳優ケイレブ・ランドリー・ジョーンズを、あの人間を吸血鬼にする孤島に連れて行き、永遠の命を与えて終わる。
しかし、ここで特筆すべきは、シアーシャはシチュエーションごとにいくつもの困り顔のバリエーションを見せてくれる。これはさすがに、と思った。だから時空を超越しているヴァンパイア役だって、彼女にはお手の物なはず。
現在19歳の彼女。美少女だの若き天才女優だのと持ち上げられて、旬の時期はあっという間に過ぎてしまう。ですが、オッサン監督ばかりに起用され、しかも悪趣味な一風変わったジャンルの作品に呼ばれ、我が道を行くシアーシャは素晴らしい。
来年3月に公開される「ザ・ホスト」では、地球外生命体に寄生されながらも、それと闘うヒロインを演じているというのだ。前に観た「天使の処刑人 バイオレット&デイジー」は拳銃をぶっ放す殺し屋役だった。
ニール・ジョーダンだけが持つ特異な感受性と想像力が、かつての鋭さを失っているようだ。ところどころで、彼らしい独自の美意識の片鱗は見る事ができた。だが、それはジョーダンならば当然のことなのであり、全体として普通の吸血鬼物語に収まっているのが惜しい。
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