「ヘンリー五世」「から騒ぎ」「ハムレット」と、シェイクスピア作品を数多く手がけてきたケネス・ブラナーが、シェイクスピアの人生最後の3年間を描いた監督・主演作。シェイクスピア役をブラナーが演じるほか、オスカー女優のジュディ・デンチ、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのイアン・マッケランら豪華なキャストが顔をそろえる。
あらすじ:1613年6月、「ヘンリー八世」上演中のグローブ座が大火災により焼失した。断筆したウィリアム・シェイクスピアはロンドンを去り、家族が暮らす故郷のストラットフォード・アポン・エイボンへと戻った。20年以上の間、ほとんど顔を合わせることのなかった主人の戸津伝の帰還に、妻と娘たちは戸惑いを隠せなかった。8つ年上の妻アン(ジュディ・デンチ)と未婚の次女ジュディス(キャスリン・ワイルダー)、町医者に嫁いだ長女スザンナ(リディア・ウィルソン)は、驚きと戸惑いを隠せずにいた。そんな家族をよそに、シェイクスピアは17年前に幼くしてこの世を去った最愛の息子ハムネットの死に取り付かれ、一人息子を悼むために、庭を造ることを思い立つ。
<感想>コロナ騒ぎで映画館が閉館していたので、しばらくぶりに劇場へ行き映画鑑賞となった。以前から観たいと思っていたケネス・ブラナー監督の「シェイクスピアの庭」。何故に、シェイクスピアは断筆したのだろうか、最愛の息子の死、家族との確執、父親であり夫であった偉大なる天才作家の知られざる最期の日々。没後400年以上を経て、今もなお愛され続ける幾多の名作を世に送り出した、英国の偉大なる劇作家であり詩人でもあるウィリアム・シェイクスピア(1564~1616)。
彼の戯曲は現在でも世界各国で上演され、作品や功績は広く知られてはいるが、その生涯はベールに包まれている。芸術家として輝かしい栄光と遺産を築き上げたシェイクスピアは、一体どのような人生を送ったのだろうか?・・・断筆したシェイクスピアがロンドンを去り、故郷のストラット・アポン・エイボンフォードで過ごした人生最期の3年間を、ついに映画化。人間シェイクスピアを描いた心揺さぶる感動作がケネス・ブラナー監督の手によって映画化された。
もちろん、監督・シェイクスピア役には、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー出身で、10代のころからシェイクスピアに魅入られてきたケネス・ブラナーであります。才能にあふれたシェイクスピアが何故49歳の若さで引退したのだろうか。というケネス・ブラナーの抱いた疑問から本作は生まれたわけですね。
今まで「恋に落ちたシェイクスピア」で米アカデミー賞助演女優賞に輝き、映画、演劇、TVドラマなどでゴールデングローブ賞やトニー賞など、60以上の受賞歴をもつ名優イアン・マッケランが、シェイクスピアの「ソネット集」の美青年のモデルとなったサウサンプトン伯爵に扮して、デイム(ジュディ・デンチ)とサーの称号を持つ英国演劇界のレジェンド二人が、圧倒的な存在感で脇を固める。衣装デザインは「ある公爵夫人の生涯」で、米アカデミー賞を獲得したマイケル・オコナーが。音楽は「ハムレット」「いつか晴れた日に」で米アカデミー賞候補となったパトリック・ドイル。名だたる才能が集結して、シェイクスピアの晩年を描く、初めての映画を完成させた。
シェイクスピアは、ロンドンで執筆活動に勤しんでいた長い間、その中で生じた家族との溝は中々埋まらなかったのだ。気づかなかった家族の秘めた思いや、受け入れ難い事実が徐々に露わになっていく。妻にしても、夫が突然帰って来ても、寝床を一緒にすることを嫌い客人用の寝室をすすめるのだ。長女夫婦には子供が授からなかったこともあり、父親の遺産相続のことが気がかりで、次女にしては、まだ結婚相手さえ決まらず、町の遊び人の男と仲良くなり、父親に見せつけるように結婚を決める。
その男には臨月間近の女性がいて、もうすぐにでも子供が生まれそうな気配。次女はすぐにでも結婚式を挙げたいと父親に言うのだ。男の子を産み、父親の財産を狙おうという算段。まだ父親は40代なのに、子供たちは父親の財産を目当てにしている。毎日のように、庭作りのために雑草を取り、あれこれと庭の草花を植える計画に没頭する。
とにかく、この時代の灯りはローソク1本だけで、本当に暗い部屋の中での食事。それでも自宅はそれなりに大きい屋敷であり、家に帰らなくても、家族たちの生活費とかは仕送りしてきたわけで、大きな住む家と、調度品の豪華さとか、確かに庭には草花が咲いてはいなかった。妻のアンが、あまり庭に草花を植える趣味がなかったのだろう。庭の奥には、最愛の息子が亡くなった池があり、門から屋敷までは、かなり遠いのだ。
庭作りをしながら、今まで家族と疎遠になっていた自分を変えていこうと努力する。妻の誘いで教会に通ったり、隣近所との付き合いとか、いろいろと気遣いをしているシェイクシピアの努力がうかがえるのだった。この時代は、女は字が書けない、読めないという女性の教育がなっていない。男性は金のある家の子供は、学校へいくのに、女性が学校へ行くという風習がなかったのだろう。妻のアンが字が書けないということで、結婚届も出していない。次女の結婚式で、夫のシェイクスピアが妻に自分の名前をサインして、入籍をするという嬉しい計画があったのが良かった。
次女も強引に遊び人の男と結婚をし、直ぐに妊娠がわかり大喜びのシェイクスピアの家族たち。次女の夫の前の女は、出産で子供とともに難産で死んでしまう。なんだか、都合よく話が進んでいき、娘たちも父親のご機嫌をとり、遺産相続のこともスムーズにいきそう。亡き息子のための庭も、金があるのだから業者に頼めばすぐにでもできるのだろうに、自分で庭を造ろうと奮闘する父親の姿がある。娘たちのためにもと、遺言書を作成するシェイクスピア。あまりにも短い生涯に、心が痛む。
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