イ・ビョンホン主演で、落ちぶれた元プロボクサーの兄と天才的なピアノの腕を持つサバン症候群の弟が織り成す兄弟の絆を描いたヒューマンドラマ。イ・ビョンホンが、寡黙で粗暴だが人情に厚い兄ジョハを演じた。弟ジンテ役は「太陽を撃て」のパク・ジョンミン。「王の涙 イ・サンの決断」の脚本家チェ・ソンヒョンが、自ら執筆した脚本でメガホンをとり、初監督を務めた。「国際市場で逢いましょう」の監督ユン・ジェギュンが製作を担当。
あらすじ:ボクサーとしてかつてはアジアチャンピオンにまで上り詰めたが、40歳を過ぎたいまは落ちぶれ、その日暮らしをしているジョハ。幼い頃から両親と離れ、孤独の中で拳を頼りに生きてきたジョハだったが、ある日、17年ぶりに別れた母と再会。サバン症候群の弟ジンテの存在を初めて知る。天才的なピアノの腕を持つジンテがコンテストに出られるよう、面倒を見てやってほしいと母から頼まれたジョハは、弟の面倒を見始めるのだが……。
<感想>WOWOWにて。イ・ビョンホン演じるところのやさぐれボクサーが大変よかった。それに弟の、サバン症候群のジンテを演じたパク・ジョンミンの素晴らしい演技に拍手を送りたい。母親のベテラン女優ユン・ヨジョンの素晴らしさ。自然な演技が実に名演技で、自分が余命いくばくかの癌で釜山に働きに行くと嘘をつき、入院をしている。全体的に無理のない老巧な演技力に脱帽です。何と言っても本作は、この三人のアンサンブルが見事に絡み合い、完成度の高い作品に仕上がっっているのがよかった。
ジンテがピアノの演奏をスマホで聞き、それを確実に記憶して演奏するという、サバン症候群という難病の演技。金持ちの女性ピアニストが、交通事故で足を無くし、腕も指もその時の後遺症でピアノを弾けなくなったというジレンマとの闘い。それを、自分の演奏をスマホで聞き、自分の演奏を忠実に確実に弾きこなすというジンテに、今までピアノに手も触れなかったのが、自分も弾きたいという衝動にかられて、ジンテと一緒に連弾をするシーンも良かった。
兄貴のイ・ビョンホンは、母親に捨てられた記憶がこびりつき、今でも憎み許すことができない。暴力亭主の父親が、刑務所に入っているのを面会するイ・ビョンホン。いつまでたっても、反省していないロクデナシの父親に、親子の縁を切ると熱弁をふるう息子。
母親の願いはジンテをピアノコンクールに出すことで、イ・ビョンホンは、弟のピアノの演奏を公演で聞き、人々が大勢集まりジンテの演奏に聞きほれ、お金を置いていくのに目をつけて、ジンテにピアノを弾かせてお金を稼がせるのだ。それと、街角でのチラシ配りも。
それでも、ジンテのピアノ演奏を兄貴として認めて、コンクールに出るように取り計らう。だが、コンクールといっても、お金持ちの子供が音楽学校に通い、その中から上手い人を選出するという。審査員たちの、裏でのやりとりを見て、もの凄く巧くピアノを演奏するジンテを、審査の対象外とするのだ。そのことに対して、金持ち娘が、母親にお願いして何とかジンテを優勝させるように懇願するのだが、願いは聞き入れられなかった。母親は、コンクール主催の会長。
兄のイ・ビョンホンが、車に撥ねられるのだが、その車を運転していたのが、金持ちのお嬢さんで、有名なピアニストだった。それで、コンクールで優勝できなかったジンテを、どうしても、個人でリサイタルをしてくれるように頼む兄貴の姿があった。自分は、コンクールの優勝金を当てにして、カナダのボクシングジムへ入ることを考えていたのに。それは、余命幾ばくかの母親にジンテのリサイタルを見せるためなのだ。
しかし、イ・ビョンホンが母親の病気を知り、心を入れ替えて弟の将来の世話をみることと、母親の病院の支払いも全部自分が支払って、葬式まで上げてやるという、親孝行な息子になっていたのが、この作品の良さだろう。
物語は、韓国の金持ちとの貧富の差を感じながらも、血の繋がりとそれに憎しみあっていても親子の絆、ショパンのピアノ曲の演奏にそれらを全て超越してゆくところが見事でありました。
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