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風立ちぬ   ★★★★★

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宮崎駿監督がゼロ戦の設計者・堀越二郎と作家の堀辰雄をモデルに、1930年代の日本で飛行機作りに情熱を傾けた青年の姿を描くアニメ。美しい飛行機を製作したいという夢を抱く青年が成し遂げたゼロ戦の誕生、そして青年と少女との出会いと別れをつづる。主人公の声には『エヴァンゲリオン』シリーズなどの庵野秀明監督を抜てき。ほかに、瀧本美織や西島秀俊、野村萬斎などが声優として参加する。希代の飛行機を作った青年の生きざまと共に、大正から昭和の社会の様子や日本の原風景にも注目。
あらすじ:大正から昭和にかけての日本。戦争や大震災、世界恐慌による不景気により、世間は閉塞感に覆われていた。航空機の設計者である堀越二郎はイタリア人飛行機製作者カプローニを尊敬し、いつか美しい飛行機を作り上げたいという野心を抱いていた。関東大震災のさなか汽車で出会った菜穂子とある日再会。二人は恋に落ちるが、菜穂子が結核にかかってしまう。

<感想>「堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて」__宮崎駿監督の5年ぶりの新作を、当時世界最高峰の戦闘機ゼロ戦の設計者と、肺結核を患いながら創作活動をつづけた作家に捧げたアニメ映画である。タイトルの「風立ちぬ」はもちろん、堀辰雄の同名小説からとられている。主人公の二郎が憧れるイタリアの設計士ジャンニ・カプローニは、たびたび彼の夢に現れてきては訪ねる。
「風は、吹いているかね?」その言葉どおりカプローニの立つ草原には、いつでも風で波立っている。二郎の帽子を菜穂子へ、菜穂子のパラソルを二郎へ、そして二人の間には紙飛行機を飛ばしたのと同じ、あの風が吹いている。
そして、ラストでは生死を超え、その草原に吹く風は、美しくも儚く、だから今、私たちの胸を打つのだろう。
(本特集の庵野秀明、松任谷由美とのトークで、宮崎駿監督はこう語っている。)
「さわやかなだけじゃない。ごうごうと放射線を含んだ風も世界の一部なのだと思うと、そういうことですね。風というのは。この世界ということだと思います」

今回の映画の中では、前半の見せ場として関東大震災も戦争の描写もありました。それは、2年前の東日本大震災を連想させる惨状がリアルに再現されている。二郎と菜穂子は、この大震災で運命的な出会いをするのですが、2人のラブファンタジーに同時代の作家、堀辰雄の文学がマッチしているようには見えない。主人公は夢と現実とを往還する。というよりも、むしろ普段から夢の中を歩いているような存在ではあるが、・・・。だが、夢の中でぐらい自由に飛べばいいものの、彼が夢で見る飛行機たちはひっきりなしに墜落する。それは現実においても同じであり、生み出された戦闘機たちは、誰もが知るとおり一機も帰ってこないのだから。

ですが戦争の戦闘シーンや戦場のシーンは描いていません。戦後生まれの私たちにとっては、このような悲しい、痛ましい惨劇を見るのは、映画やTVドキュメントでしか見る事ができません。しかしながら、わが日本の誇るゼロ戦闘機を造った人、堀越二郎の物語は初めてです。宮崎監督の描く日本の飛行機、そして戦争用に作られた戦闘機やゼロ戦など、アニメとはいえさすがに精巧に描かれていて、その飛行機の設計者と恋人菜穂子との、儚くも燃え上がるような恋の物語にくぎ付けになりました。

それでも、美しい夢の草原から始まった映画は、宮崎監督の妄執の一つであった飛行機の墓場をついに画面に登場させることになる。夢を抱き、それを実現していくことの素晴らしさは理解できるが、エリートの二郎と病弱な菜穂子に託した監督の戦争観や死生観についての描写が不十分なような気がしてならない。それは、あの時代に生まれた人間が過ごした一日一日が、家族も恋人もいる、そんな情景が色濃く描かれているからだ。
宮崎監督のアニメ美質を考えると、今更だけど、柔らかな線と、なめらかな動き、巧みな構図、精妙な光と影。そして、写実的な表情豊かな雨と風、雪、それに雲。みんな独特の浮遊感に感動しました。特に二郎と菜穂子の婚礼の夜の美しさは、今でも印象に残っております。
2013年劇場鑑賞作品・・・232 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング


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