狗飼恭子の小説を『夜のピクニック』などの長澤雅彦監督が映画化したミステリードラマ。交通事故の影響で過去10年の記憶をなくしてしまった女性が、失われた記憶をたどっていく中、自身の残酷な過去と向き合う姿を、透明感あふれる映像で描き出す。主演は、『花子の日記』などの倉科カナ。『ツレがうつになりまして。』の中野裕太、人気芸人の徳井義実ら多彩な顔ぶれが共演。『ニューヨーク、アイラブユー』などで国際的に活動を続けている岩井俊二監督が、自作以外で初めて長編劇場映画の音楽を手掛けている。
あらすじ:交通事故の後遺症によって、10年分の記憶を失った志村朔美(倉科カナ)。実年齢は27歳でも、17歳までの記憶しかない朔美は、自分を取り巻く変化に困惑しながらも現状を受け入れ生活していたが、空白の10年間の出来事が気になって仕方がない。付き合っているらしい男(中野裕太)や高校時代の同級生(伽奈)らの助けを借りて、喪失した記憶をたどろうとする朔美だったが……。
<感想>画面は美しい蓮の花が映る池、舞台は秋田の夏の風景を背景にして、事故で記憶を失った女が、17歳の心のまま明るく振る舞いながら10年間の記憶をたどるミステリー劇である。
お馴染みの難病ものでも、回想シーンを禁じた透明感ある映像には惹かれます。しかし、10年分の記憶喪失をタイムスリップのように描く粗雑な描き方には引っかかる。大きな後遺症を抱える娘に無関心な母親、作劇の小道具にしか使われない聴覚障害の義理の妹など、血肉の通わない人物ばかりでがっかりする。
母親も再婚して、クリーニング店を営んでいる男性と一緒になっている。実の父親はどうなってるとかは、描いてません。母親には岡田奈々さん、目が大きくて綺麗な女優さん。でもこんな娘を持って、精神病院へ入院させるとか考えてないのよね。聴覚障害の義理の妹に清水くるみさんが、ほとんど耳が聞こえているように見えました。
退院してから、自分が働いていた職場へ行くも、自分が退職願いを出していたとは知らなかった。「1年ちょっとで2回も交通事故に遭う人って、そうは滅多にないでしょう。」と、主人公の元の職場の人に言われる。これも主人公朔美の10年間の伏線なのだろう。
そうか、設定に突っ込みを入れられないように、事前にフォローしてるってワケか。
もちろん主演のカナちゃんを悪く言うことなどできない。事故で記憶を失い17歳に戻った朔美を健気に明るく演じている。セーラー服も似合うし、事故の時着ていた白いワンピースも素敵です。
これって、最初に誰かが事故の真相を教えてあげればすむ話ではないでしょうか。それがホントの優しさでは、・・・周りの近親者たちは、朔美に腫れ物にでも触る感じで何も教えてあげない。17歳のままの素直な明るい朔美に、同級生達は冷たい視線である。それに、朔美が事故のことを辿っていくうちに、ある男性のことがだんだんと明るみになる。その男の人には奥さんがいる。その女性に、「何であんたが生きてるの、死んでしまえばよかったのに」ときつい言葉を浴びせられる。でも、朔美には何も身に覚えがない。記憶がないのだから。残酷ですよね、自分で調べるからこそ再出発ができるという理屈ではあるのですがね。
いつもべったりと傍にいる性同一性障害の友人の存在。この女性はずるい。朔美の事故によって得た保険を自分のホルモン注射の代金に使っている。そのことも後で知ることとなる。
家の自分の部屋にある写真を見て、同級生の細見という男と一緒に映っている場所へ行ってみる。遊園地が跡形もなくただ風車が回っていた。河原でキャンプ、昔の仲間は誰も来ない。焚火をする。でも、記憶は戻らない。来てくれたのは細見だけ。だが細見が今の恋人だというのだが、彼女には実感がわかないのだ。
赤い毛糸の帽子とクリスマスカード、それと赤いキーホルダーの付いた鍵。これがすっぽりと記憶の中から消えているのだ。だからって訳でもないが、夏なのにいつも毛糸の帽子を被っている。それが一番彼女にとって大切な人で、本当に愛していて、好きでどうにもならなくて、一緒に車に乗って事故を起こして自分は助かった。
それから、そのことを悔やみ、自分も彼の所へ行きたいと何度も手首を切り自殺未遂をする。最後には、あの世にいる彼に会えるだろうと自分から車に向かっていき事故に遭い、記憶喪失となる。2回目の事故では運転していた人が重体で、意識障害の植物人間となる。
にしても、交通事故による記憶喪失を、ここまで薄っぺらに美化して描く作り手たちは何を考えてのことなのだろう。10年間の記憶をたどると、愛してはいけない切ない恋の物語があったとは、誰が知るだろう。劇中に出てくる「永遠の片思い」という言葉。私にも初恋の人とは、いつまでも自分の想いも伝えず、一方通行で成就しない「永遠の片思い」でいいと思ってますね。
2013年劇場鑑賞作品・・・228 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:交通事故の後遺症によって、10年分の記憶を失った志村朔美(倉科カナ)。実年齢は27歳でも、17歳までの記憶しかない朔美は、自分を取り巻く変化に困惑しながらも現状を受け入れ生活していたが、空白の10年間の出来事が気になって仕方がない。付き合っているらしい男(中野裕太)や高校時代の同級生(伽奈)らの助けを借りて、喪失した記憶をたどろうとする朔美だったが……。
<感想>画面は美しい蓮の花が映る池、舞台は秋田の夏の風景を背景にして、事故で記憶を失った女が、17歳の心のまま明るく振る舞いながら10年間の記憶をたどるミステリー劇である。
お馴染みの難病ものでも、回想シーンを禁じた透明感ある映像には惹かれます。しかし、10年分の記憶喪失をタイムスリップのように描く粗雑な描き方には引っかかる。大きな後遺症を抱える娘に無関心な母親、作劇の小道具にしか使われない聴覚障害の義理の妹など、血肉の通わない人物ばかりでがっかりする。
母親も再婚して、クリーニング店を営んでいる男性と一緒になっている。実の父親はどうなってるとかは、描いてません。母親には岡田奈々さん、目が大きくて綺麗な女優さん。でもこんな娘を持って、精神病院へ入院させるとか考えてないのよね。聴覚障害の義理の妹に清水くるみさんが、ほとんど耳が聞こえているように見えました。
退院してから、自分が働いていた職場へ行くも、自分が退職願いを出していたとは知らなかった。「1年ちょっとで2回も交通事故に遭う人って、そうは滅多にないでしょう。」と、主人公の元の職場の人に言われる。これも主人公朔美の10年間の伏線なのだろう。
そうか、設定に突っ込みを入れられないように、事前にフォローしてるってワケか。
もちろん主演のカナちゃんを悪く言うことなどできない。事故で記憶を失い17歳に戻った朔美を健気に明るく演じている。セーラー服も似合うし、事故の時着ていた白いワンピースも素敵です。
これって、最初に誰かが事故の真相を教えてあげればすむ話ではないでしょうか。それがホントの優しさでは、・・・周りの近親者たちは、朔美に腫れ物にでも触る感じで何も教えてあげない。17歳のままの素直な明るい朔美に、同級生達は冷たい視線である。それに、朔美が事故のことを辿っていくうちに、ある男性のことがだんだんと明るみになる。その男の人には奥さんがいる。その女性に、「何であんたが生きてるの、死んでしまえばよかったのに」ときつい言葉を浴びせられる。でも、朔美には何も身に覚えがない。記憶がないのだから。残酷ですよね、自分で調べるからこそ再出発ができるという理屈ではあるのですがね。
いつもべったりと傍にいる性同一性障害の友人の存在。この女性はずるい。朔美の事故によって得た保険を自分のホルモン注射の代金に使っている。そのことも後で知ることとなる。
家の自分の部屋にある写真を見て、同級生の細見という男と一緒に映っている場所へ行ってみる。遊園地が跡形もなくただ風車が回っていた。河原でキャンプ、昔の仲間は誰も来ない。焚火をする。でも、記憶は戻らない。来てくれたのは細見だけ。だが細見が今の恋人だというのだが、彼女には実感がわかないのだ。
赤い毛糸の帽子とクリスマスカード、それと赤いキーホルダーの付いた鍵。これがすっぽりと記憶の中から消えているのだ。だからって訳でもないが、夏なのにいつも毛糸の帽子を被っている。それが一番彼女にとって大切な人で、本当に愛していて、好きでどうにもならなくて、一緒に車に乗って事故を起こして自分は助かった。
それから、そのことを悔やみ、自分も彼の所へ行きたいと何度も手首を切り自殺未遂をする。最後には、あの世にいる彼に会えるだろうと自分から車に向かっていき事故に遭い、記憶喪失となる。2回目の事故では運転していた人が重体で、意識障害の植物人間となる。
にしても、交通事故による記憶喪失を、ここまで薄っぺらに美化して描く作り手たちは何を考えてのことなのだろう。10年間の記憶をたどると、愛してはいけない切ない恋の物語があったとは、誰が知るだろう。劇中に出てくる「永遠の片思い」という言葉。私にも初恋の人とは、いつまでも自分の想いも伝えず、一方通行で成就しない「永遠の片思い」でいいと思ってますね。
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