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旅のおわり世界のはじまり★★★

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「岸辺の旅」「散歩する侵略者」の黒沢清監督が「もらとりあむタマ子」「イニシエーション・ラブ」の前田敦子を主演に迎え、ウズベキスタンで撮り上げた日本・ウズベキスタン合作映画。テレビ番組のロケでウズベキスタンを訪れたレポーターのヒロインが、異国の地で孤独に苛まれ、迷子になりながら繰り広げる心の旅路を、ウズベキスタンの美しい風景とともに綴る。共演は加瀬亮、染谷将太、柄本時生。

あらすじ:ウズベキスタンの湖に棲むという幻の怪魚を求めて番組クルーとやって来たテレビリポーターの葉子。本当は歌を歌いたいと思いながらも、レポーターの仕事をこなしていく葉子だったが、なかなか思い通りにロケは進まず、スタッフは苛立ちを募らせていく。そんな中、ふらりと一人で街に出た彼女は、いつしか美しい劇場へと迷い込んでしまうのだったが…。

<感想>私の心は迷子になった。ドキュメンタリーみたいな撮影をしていながら、それを映画が撮っている。本当のクルーと一緒に旅をしたことが、そのまま映し出されていて、前田敦子にしか成し得ない何かが映っていた。バラエティ番組撮影のため、超小編成のクルーと共にウズベキスタンを訪れたリポーターの葉子。

本作での前田敦子が素敵なのは、主人公が自分の「初めて」に出逢う瞬間が記録されているからだと思う。戸惑いも危険も、それが初めてである限り、感動を呼ぶのだということ。

葉子が街中に放り出された時、その差異が作品の中で一体化するのか不安だったという前田敦子。小さなバスに乗り、市場へと行くも、身振り手振りでやり通す葉子の図太さに感心した。市場で果物と水を買うも、お金のレートを知っているのか、適当に払っているようにみえた。

ところが、そのシーンでも、自分で勝手に考えてやってみるということが出来ず、監督の意図に全部引っ張られて撮影、だが、それが自然体で良かったと思う。始終、不愛想であるが監督に不愛想でいて欲しいと言われ、ドキュメンタリー的なシークエンスが主軸にあるとはいえ、映っているのは前田敦子の素ではないと語る。まぁ、こういう場面では不愛想でもいいと思うので。

そして、彼女がハンディカメラを持って、一人で街の中を散策するシーンもある。そこでは、街の中で迷ってしまい、警察が立っていて、カメラを撮ってはいけない場所で、見つかってしまい警官に追いかけられるシーンもある。

汚い遊園地でのグルグルと回る回転遊戯に一人で乗るシーンでは、本当に大丈夫なの?と思うくらいに激しい回転の仕方であり、現地人の係の人が、前田敦子を見て、背が低いし痩せているしで、まるで10歳くらいの子供だと認識して、「こんな遊戯に子供を乗せるんじゃない、脳が危険だ、破裂したら少女は死ぬ」と言って注意をするところもある。プロデューサーに染谷くんが扮していて、現地の人に「大人の女優ですから大丈夫です」と笑いながら言う。彼女も歯を食いしばって乗ってましたね。

それに、アイダール湖で魚を獲るシーンも、胸まで水につかって魚を獲るのだが中々獲れないのだ。現地の人が言うのは、湖のボートには女性が乗ってはダメだという決まりがあると言っていたのに。魚を獲るまでロケを止めない。

すると葉子が、山羊が囲われていて可哀そうだから、山に放してあげるのを撮影してみてはと提案する。それはいいと、山羊の持ち主へ金を払い、トラックに乗せて山へと行き、草原の草むらに山羊を放してやるという撮影をする。

ここでは、その山羊の飼い主が車で来て、山羊を野放しにしたら捕まえて帰るというのだ。そこで染谷プロデューサーが、金を払えば自由にさせてもいいのだろうと交渉する。この辺は、何でも金、金、金ですね。

そうそう、ウズベキスタンの地元の食事プロフを葉子が披露するシーンでは、米が生で硬くて食べられないし、野菜も肉も味付けが合わないのかマズイと言う。それを我慢して口に入れて食べ、「美味しい」とレポートする女優の意地の見せ方。

後で、食堂のおばさんが、その食事を柔らかく煮込んで持ってきて、それはプロデューサーたちが食べたのだ。カメラマンには加瀬さんが扮してた。

一番素敵だったのが、かつてシベリアに抑留された日本人捕虜たちが、太平洋戦争終了後、ウズベキスタンに送られて、「ナヴォイ劇場」の建築と劇場内部の装飾に携わり、苦労の末に見事に終わらせたというお話。

それを、葉子が放浪の果てに、道に迷いこみ「ナヴォイ劇場」に辿り着くという話になり、その劇場で、歌手を夢見た葉子がオーケストラの演奏で、「愛の賛歌」を歌い上げるシーンもある。オペラ歌手が歌う劇場なので、前田敦子が声を張り上げて歌っても、シャンソンの「愛の賛歌」は、軽々しく歌ってはダメだと思う。だが、監督が選んだ曲だから、頑張って前田敦子が歌ってくれた。このシーンは葉子が歌手志望ということで、一瞬の間夢を見たという設定だったというのだから。

しかし、結構本気で練習をしたというから、それは前田敦子の声量で歌い上げるというものでした。東京にいる恋人が消防隊で、TVで東京湾の火災に出ているので心配する葉子。携帯電話をしても繋がらないし、安否を気遣う葉子。

最後にもう一度山の上で、恋人を想いながら歌う「愛の賛歌」は良かったですね。もちろん、葉子が放牧をした山羊もいましたね。

いったいこの旅はどこに辿り着こうとしているのか、スクリーンから目が離せなかった。前田敦子が山の斜面を駆け上がり、草原を疾走し、凶暴な遊園地の機械に振り回され、疲れ果てて大の字に横たわる。遠く離れた恋人を想って涙し、そして愛の歌を歌う。これまで観てきたスクリーンのどの表情とも違う、彼女の顔がそこにあった。成熟でもなく、集大成でもなく、経験を積み重ねて新たな映画へ向けての旅のはじまりでもあったのだ。

 

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