安藤ゆきの人気少女漫画を「舟を編む」の石井裕也監督が、ともに映画初主演となる細田佳央太と関水渚を起用して実写映画化したハートフル青春ストーリー。何事にも不器用で地味でありがら、どこまでもピュアで善意に満ちた町田くんが、その無自覚な優しさで周囲を包み込んでいくさまと、町田くん自身の成長をハートウォーミングに綴る。共演は岩田剛典、高畑充希、前田敦子、太賀、池松壮亮、戸田恵梨香、佐藤浩市、北村有起哉、松嶋菜々子。
あらすじ:物静かでメガネの男子高校生・町田くんは、その見た目に反して勉強が苦手で、しかも見た目どおり運動はまるでダメ。自分ではまったく取り柄がないと思っている町田くんだったが、人が好きで誰に対しても心の底から優しくできるという最強の才能を持っていた。ある日、授業中にケガをした町田くんは、保健室でサボっていた猪原さんと出会う。“人が嫌い”と言い放つ猪原さんのことが気になり始める町田くん。一方の猪原さんも、いつしか町田くんに恋心を抱くようになるのだったが…。
<感想>この世界は悪意に満ちている。でも――町田くんがいる。「そもそも町田くんって誰?」、そう思う方もいるだろう。町田くんとは、安藤ゆき氏の人気コミックを「舟を編む」の石井裕也監督が映画化した本作の主人公。「全人類を家族だと思っている」ほどの超・親切さんで、困っている人を放っておけないお人好しな男子高校生だ。
この町田くん、“親切”のスケール&熱意が半端じゃない。その規格外の優しさで、出会う人全員を幸せにしてしまう「ヒーロー」なのだ! 「え!? 気になる」と思ったアナタは、以下に記載する体験者の“声”に耳を傾けてほしい!
“人を愛する才能”と“人から愛される才能”を持つ男子高校生・町田が、“人間嫌い”のクラスメイト・猪原奈々(関水渚)と出会い、生まれて初めての感情と向き合いながら、周囲を取り巻く人々の価値観までも変革していく姿を描いていく。オーディションで抜てきされた細田と関水が主演を務めているのも良かった。
みんなをトリコにする“とにかく今、気になる男”・町田くん。しかし本作の真の実力は、そこにとどまらない! “魅力的なキャラクター”に加え、“常識をぶっ壊す展開”が見た者の間で大きな反響を生み、これほどの“熱狂の渦”に成長しているのだ。
一番気になったのが、モテモテの高校生の氷室を演じた岩田剛典が、町田につかみかかるシーン。自身に好意を寄せる高嶋さくら(高畑充希)からのプレゼントを捨てる氷室に対し、町田は「君はもっと人の気持ちを大事にしなきゃだめだ。これはゴミなんかじゃない。君は自分の気持ちを考えないから、人の気持ちもわからないんだ、もっと自分を大事にしたほうがいい」と“町田語録”をぶつけていく。これって、勇気のいる行動ですよね。
町田につられヒートアップしていく氷室は「なんでおまえはいつも一生懸命なんだよ! そんなに必死こいて生きても意味ねえぞ!」と胸ぐらをつかむ。町田との出会いを通して氷室が変化していく瞬間を切り取った、重要なシーンになっている。
それに、町田くんの家族構成の、母親に松嶋菜々子が扮している。お腹が大きい妊婦役である。父親は北村有起哉が扮していて、家にはいつもいないし、仕事は学者のようだ。兄弟姉妹がたくさんいて、一が長男なので父親が不在の間は、弟や妹たちの面倒を良く観ているのだ。
それだけでも大変なのに、學校でも登校する間にも、みんなに親切にするのだから、こんな人間になってしまったのは、両親の教えか教育のせいなのかもしれませんね。
中でも、町田くんの心の代弁者で語り部的な役割をも担うのが、栄りら役の前田敦子であります。手のかかる主役カップルの成り行きに、いちいち口を添えるスケバン系キャラの怪演である。ひねくれ者の応援団であり、出番は多くないが、ジレったがっての一言が、話の軽い節目となり実に笑える。
もう一人、人物造形に深みを持たせた高畑充希の演技アプローチが秀逸でしたね。純粋でいることが、これほど困難な時代であるという事実に、絶望させられるがゆえに、町田くんの猪突猛進な姿は、みんなに希望を抱かせるのもいい。
善意の天使の町田くんと、人嫌いの女性徒との綱引きドラマは、さして珍しくはないが、緑と水辺のロケ地が、新人コンビの真っ直ぐな演技を、ビジュアル的に支えていて、この映画の余裕にもなっていた。
町田くんがお気にいりの川べりの場所で、ヒロインと追っかけあう遠景のカットとか、こういう画面としての遊びはかつてVシネマ時代の黒沢清映画で、しばしば見たように覚えているが、それが邦画の進歩かどうかは分らないが、変化ではあると思う。
週刊誌の記者、吉高洋平(池松壮亮)は世界に絶望していた。したくもない仕事に追われ、妻ともすれ違いの日々です。上司からは次のスクープを獲ってこいとせがまれ、書きたいものが書けなくなっていました。そんな彼の前に“劇的イイ人”な町田君が現れ、彼の心を大きく揺さぶります。町田くんの影響で、生き方をリセットする週刊誌の記者、池松壮亮が嘘っぽく見えた。
氷室に冷たくされ、町田くんに優しく慰められるさくらは、町田君に好意を持ち始める。積極的にさくらに好きだと言われる町田くんは、恋愛について初めて考えます。ただ、さくらの気持ちはまだ氷室のもとにあるのではと、感じています。
やがて、町田くんの心に変化が生じて、猪原という存在によって彼の心の中には、今までにない感情が芽生えていることに気付き、戸惑う彼ですが、その一方でいよいよ臨月を迎えた母親のことも心配で、いつになく頭がいっぱいです。
六人目の弟である六郎の誕生に合わせて、世界中を飛び回っている生物学者の父親が帰ってきます。一は父親に、自分の気持ちについて相談を持ち掛けるのですが、ついに、猪原のへの気持ちが恋だと確信しました。しかし、猪原は海外留学を決めてしまうのです。
空港に向かう電車の中で、猪原は週刊誌の記者・吉高に『町田くんの世界』というタイトルの原稿を渡される。そこには、世界には絶望で溢れている、しかし“町田くんの見る世界は美しいに違いない”と綴られていたのですね。
町田くんの初めての恋、必死になって猪原を追いかける姿に、彼のその背中を前田敦子や最初に恋の相談をした西野。そして、毎日のように彼からの善意を受け取った人たちが、町田くんの背中を押してくれのです。
空港では、『町田くんの世界』を読み終えた猪原が、町田くんに会いたくなったと感想を伝えます。その時、必死に追いかけてきた町田くんの手が、彼女の手を掴むのでした。もう離さない、これからはいつも一緒にね。
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