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シシリアン・ゴースト・ストーリー★★★・5

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1993年にイタリアのシチリアで実際に起きたマフィア絡みの凄惨な誘拐監禁事件をモチーフに、社会の不条理に巻き込まれた一組の少年少女の切ない恋の行方を、幻想的な筆致を織り交ぜ描き出した異色の思春期ファンタジー。主演はユリア・イェドリコフスカとガエターノ・フェルナンデス。監督は「狼は暗闇の天使」のファビオ・グラッサドニアとアントニオ・ピアッツァ。

あらすじ:1993年にシチリア島で少年が誘拐された。警察と司法取引し情報提供を行っていたマフィアの一員サンティーノの息子で、当時12歳だったジュセッペ・ディ・マッテオが拉致されたのだ。父親サンティーノの口封じを目的にしたものだが、その後もサンティーノは告発を続け、その結果ジュゼッペは779日間の監禁の末絞殺され、遺体は酸で溶かされた。

シチリアの小さな村に暮らす13歳の少女ルナは、同級生の少年ジュゼッペと恋仲の関係。ところがある日、ジュゼッペはこつ然と姿を消してしまう。彼の行方を必死で捜し回るルナだったが、マフィアが絡んでいると知る大人たちの口は重い。そんな大人たちの不可解な態度に納得いかず、ジュゼッペの失踪をどうしても受け入れることができないルナだったが…。

<感想>実際の酷い誘拐事件を幻想的な映像で綴り、少年と少女のラブストーリーに昇華させたセンスはとても良かったです。思いを伝えた直後に姿を消したジュゼッペを、ヒロインのルナは実に辛抱強く探し続けるのだ。

大人たちの無視と沈黙への抵抗から青く染めた髪の毛のルナが、父親に丸坊主に刈られてから、やっとショートヘアに伸びるまでは。それは現実と幻想の境をさまよう思春期の心象風景そのものであり、撮影監督の腕による圧巻の映像美で魅せていた。

馬に乗って駆け抜けるジュゼッペ少年の美しい残像が刻み付ける痛ましい事件。ルナを演じたユリア・イェドリコフスカの、少女らしくなく低音の声が大人びて良かった。

解説や批評を読んでから、腑に落ちる映画でもある。本作を観終わって、何かが釈然としない心地が残ったままで解説を読み、これが実際にあった誘拐事件をモデルにした物語なのだと理解しました。

事件や事故で愛しい人を亡くしたとき、残された者は彼や彼女が心の中では幸せな最後を迎えたのだと信じたくなる。それが唯一の癒しの方法だと思うから。

と同様に、理不尽で救いようのない現実に対して映画に出来ることは、本作のように、すでに起きてしまった出来事を、想像力によって覆いかくすことぐらいではないかと感じた。

それにしても、ジュゼッペ少年の両親は金持ちなのに、どうしてマフィアに金を払わなかったのか、息子を誘拐したのは、金目当てではなかったのか、それとも、ジュゼッペ少年の父親に対しての報復のために息子を監禁して殺したのだろうか、それは定かではない。

この作品のカギは少年と少女の純な心であります。忽然と姿が消えた少年を探し、救いたい少女の必死の思いが、心象風景として幻想的な映像となっている。

誘拐されて地下室に拉致されたジュゼッペ少年は、毎日暗い穴倉の生活の中で、ルナからもらった手紙を何度も読み返しては、絶望の淵に立たされている自分に勇気と生きる力を得るのであった。

そして、奔走するルナの存在は、死の淵で生きたいと、せつに願う少年のリアルな希望なのだ。

結果、事件は現実を超えた視線を宿すファンタジーとなったが、しかしながら、少年の家族を含めた周囲の人たちの「知らないふり」には、マフィアがはびこる土地では、現実に何もしないという防衛手段なのだろう。それは不気味で恐ろしいことだ。警察は何をしているのかが不思議でした。

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