名優ダスティン・ホフマンが初めてメガホンをとった監督作。引退した音楽家たちが暮らす「ビーチャム・ハウス」で穏やかに余生を送るレジー、シシー、ウィルフのもとに、昔のカルテットメンバーでありながら、野心とエゴで皆を傷つけ去っていったジーンがやってくる。近く開かれるコンサートが成功しなければハウス閉鎖という危機を迎え、誰もが伝説のカルテット復活に期待を寄せるが……。「戦場のピアニスト」「潜水服は蝶の夢を見る」などで知られる脚本家のロナルド・ハーウッドによる戯曲を映画化した。
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<感想>稀代の名優が70代にしてかねてからの念願だった初監督を果たした、ダスティン・ホフマン。本作はイギリスの劇作家ロナルド・ハーウッドの同名劇を映画化した作品。リタイアした音楽家専用老人ホームが舞台となる作品だけに、登場人物たちの年齢層も高く、俳優陣はベテランぞろいだ。
同じく七十代の主要キャストたちは、いずれも名だたる映画・演劇賞の栄誉に輝いた大ベテランであり、むろん大英帝国勲章の受勲者であることは言うまでもない。そのめったに見られない揃い踏みとあって、この映画、「ヴェルディ生誕二百年記念」を謳わずとも、まるで歌舞伎の新春顔見世でも見たような気分でもある。
出演者の生かし方がうまいのは、ホフマン監督の俳優としての蓄積が生きているからに違いない。その眼差しは温かい。それにしても、彼らが余生を過ごすホームの何と立派なことか。わが日本の芸術家たちにも、このようなホームがあるといいのに、とつくづく思う。
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主役の4人、トム・コートネイは気品のある紳士のように、ビリー・コノリーはスケベ親父としていい味わいを出している。それに、認知症が入ってきた役を演じるポーリーン・コリンズは、無邪気に笑顔を振り撒き始終笑いを取るのもいい。
一番の見ものは、マギー・スミスである。奔放な男性遍歴を重ねたあげくに、施設に辿り着いた元プリマドンナという役どころ。かつてのオペラ歌手という設定が貫録を見せつけるマギー・スミスの老い方がいい。自分はこんな所に入りたくなかったのに、とダダをこねているも、やっぱり年には勝てないわとばかりにポンポンと口から毒舌を吐く。
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4人以外は本物の音楽家で固めた配役が見事である。それなりの体裁に整ってはいるが、しかし、これによって主役には歌わせられないというアクロバットを、映画は演じることになる。どうやってこの不自然さを悟られずに切り抜けられるのかが勝負というわけ。
それに、4人のリハーサルはサイレントだし。だが、施設の存続のためには、このメンバーでカルテットを組むことが必須なのだという。出演者には80歳代中盤以上の方々も多く、同世代にあてた応援メッセージとして作られている気配が濃厚なので、原則としてはコメディは遠慮がなければないほど笑えると言うことは言える。
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体の不具合をネタにするウィルフ爺さんや、アルツハイマー進行中のシシーのギャグは、掛け値なしに笑えるが、カマトトぶったジーンの言い方はキツイですよね。
ですが、この映画における感動は、ひとえに美しいものへの奉仕の姿勢の中にある。彼らが音楽を聴く時、奏でるとき、歌う時の、謙虚で敬虔な表情にあるのだ。誰でも老いてゆく。声はかすれて伸びも悪く高音も出てこない。歌詞も忘れ、それでも誰もが、報われようと報われまいと、かくして幕は上がるのだ。
2013年劇場鑑賞作品・・・217 Image may be NSFW.
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<感想>稀代の名優が70代にしてかねてからの念願だった初監督を果たした、ダスティン・ホフマン。本作はイギリスの劇作家ロナルド・ハーウッドの同名劇を映画化した作品。リタイアした音楽家専用老人ホームが舞台となる作品だけに、登場人物たちの年齢層も高く、俳優陣はベテランぞろいだ。
同じく七十代の主要キャストたちは、いずれも名だたる映画・演劇賞の栄誉に輝いた大ベテランであり、むろん大英帝国勲章の受勲者であることは言うまでもない。そのめったに見られない揃い踏みとあって、この映画、「ヴェルディ生誕二百年記念」を謳わずとも、まるで歌舞伎の新春顔見世でも見たような気分でもある。
出演者の生かし方がうまいのは、ホフマン監督の俳優としての蓄積が生きているからに違いない。その眼差しは温かい。それにしても、彼らが余生を過ごすホームの何と立派なことか。わが日本の芸術家たちにも、このようなホームがあるといいのに、とつくづく思う。
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主役の4人、トム・コートネイは気品のある紳士のように、ビリー・コノリーはスケベ親父としていい味わいを出している。それに、認知症が入ってきた役を演じるポーリーン・コリンズは、無邪気に笑顔を振り撒き始終笑いを取るのもいい。
一番の見ものは、マギー・スミスである。奔放な男性遍歴を重ねたあげくに、施設に辿り着いた元プリマドンナという役どころ。かつてのオペラ歌手という設定が貫録を見せつけるマギー・スミスの老い方がいい。自分はこんな所に入りたくなかったのに、とダダをこねているも、やっぱり年には勝てないわとばかりにポンポンと口から毒舌を吐く。
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4人以外は本物の音楽家で固めた配役が見事である。それなりの体裁に整ってはいるが、しかし、これによって主役には歌わせられないというアクロバットを、映画は演じることになる。どうやってこの不自然さを悟られずに切り抜けられるのかが勝負というわけ。
それに、4人のリハーサルはサイレントだし。だが、施設の存続のためには、このメンバーでカルテットを組むことが必須なのだという。出演者には80歳代中盤以上の方々も多く、同世代にあてた応援メッセージとして作られている気配が濃厚なので、原則としてはコメディは遠慮がなければないほど笑えると言うことは言える。
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体の不具合をネタにするウィルフ爺さんや、アルツハイマー進行中のシシーのギャグは、掛け値なしに笑えるが、カマトトぶったジーンの言い方はキツイですよね。
ですが、この映画における感動は、ひとえに美しいものへの奉仕の姿勢の中にある。彼らが音楽を聴く時、奏でるとき、歌う時の、謙虚で敬虔な表情にあるのだ。誰でも老いてゆく。声はかすれて伸びも悪く高音も出てこない。歌詞も忘れ、それでも誰もが、報われようと報われまいと、かくして幕は上がるのだ。
2013年劇場鑑賞作品・・・217 Image may be NSFW.
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