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箱入り息子の恋 ★★★.5

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俳優、音楽家、文筆家と幅広く活躍する星野 源が、映画初主演を果たした恋愛ドラマ。監督は市井昌秀。ヒロインは夏帆にその両親が黒木瞳と大杉漣。そして健太郎の両親には森山良子に平泉成、他脇役多数出演。
あらすじ:市役所勤務の星野 源扮する健太郎は、彼女いない歴=年齢のサエない主人公。起伏のない毎日を送っていたが、その人生を一変させる恋の相手が現れる。ある日、親同士が婚活する“代理見合い”を通じて出会った夏帆演じるところの今井奈穂子に、一気に心奪われてしまう。初めて恋を知った健太郎は周囲を巻き込み、滑稽な暴走を繰り広げる。その姿はぶざまだが、胸が熱くなる。

<感想>ヒロインの今井奈穂子は目のハンディを背負っているものの、市井監督はそれ自体をテーマにはしていない。あくまでメインは、恋によって覚醒した男女が未知の領域へと踏み込んでいく物語になっている。だからなのか、オクテの童貞男子と盲目の美少女(趣味はピアノ)の叶わぬ恋、っていうガチガチのメロドラマ設定にもかかわらず、脚本のディテールと主演2人の清純さで古さを感じさせない。
健太郎は大学生の時に話しかけてくれた同級生の女の子と仲良くなって告白しようとするも、相手の眼中になかった、という辛い過去がトラウマになっているんですね。以来、誰に対しても恋心など抱かないと決めつけている。

一方では、奈穂子は失恋すら経験してない分、初めて知ることに対する興味がすごく強いわけ。実際、奈穂子の心が先に動いて、健太郎にもう一度会いたいと思ったことから2人の恋模様が展開していく。
奈穂子は目にハンディを持つことを受け入れた上で、その先へ行こうとする行動力のある女性。病気によって視力を失っているという設定は、確かにデリケートな要素ですが、そのことを真摯に受け止めて、恋することで生まれた活力によって自分たちの殻を破っていく男女の物語ですね。
独身を貫く覚悟も準備もあり、運命の女性と出会えば相手の抱える障害など屁でもない主人公。そんな彼が対峙するのが、子離れ出来ていない双方の親というのも面白いし、今っぽいですね。で、七転八倒するわけだが、その際に流す汗の匂い、涙の塩味が何だかツンとこないのもまた今っぽいのだ。

特に二度も出て来る「吉野家」のシーンには、どちらもグッときてしまった。西日がガンガンな「吉野家」まさにつゆだくで、主人公カップルの想いが昇華し、愛の光が差し込む空間にしてしまうセンスは抜群でした。

といっても、ユーモアのある作品で核となる部分には、笑いのエッセンスが散りばめられている。全体的にシリアスな、どことなくユーモラスなシーンが幾つか出てきますし、基本的には登場人物たちの気持ちや感情の流れを途切れることなくシリアスに見せている。しかし、狙っているという感じはなく、あくまでもさりげなく足すというニュアンスでしょうか。

さらには子を持つ親としての目線も加わって、物語をいっそう深みが増した印象を受ける。劇中では、健太郎と奈穂子の両親ともに自分の子供に対して甘い親として描いているが、それは子供の気持ちになって「経験をさせる」ということを分かってもらいたい、というメッセージの裏返しでもある。
あと、人間が感情を剥き出しにする姿、本当に理屈じゃない部分。文字では表現しきれないもどかしさを、要所要所で感じたりもしましたが、映像だからこそ見せられる理屈じゃないパワーを感じさせる。
2013年劇場鑑賞作品・・・216  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

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