Quantcast
Channel: パピとママ映画のblog
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2328

コーヒーが冷めないうちに★★★

$
0
0

本屋大賞にノミネートされた川口俊和の同名ベストセラーをTV「ひよっこ」「ナラタージュ」の有村架純主演で映画化したハートフル・ファンタジー・ドラマ。望んだ過去に戻れる不思議な喫茶店を舞台に、それぞれの事情を抱え、過去に戻りたいと願う登場人物たちが繰り広げる切ない人間模様をオムニバス・タッチで綴る。共演は薬師丸ひろ子、波瑠、吉田羊、松重豊、石田ゆり子。監督は数々のTVドラマを手がけ、本作が映画監督デビューとなる塚原あゆ子。

あらすじ:時田数が働く喫茶店“フニクリフニクラ”には、不思議な都市伝説があった。それは、店内のある席に座ってコーヒーを注文すると、望んだ時間に戻ることができるというもの。ただし、過去に戻っても現実は変わらない、過去に戻れるのはコーヒーが冷めるまでの間で、コーヒーは冷めないうちに飲み干さなければならない、などの細かいルールがあった。そんな噂を聞きつけ、幼なじみとケンカ別れしてしまった独身女性や若年性アルツハイマーの妻と優しいその夫など、店には過去に戻りたいと願う客たちが訪れていた。しかし肝心の席には、いつも同じ女性が座っているのだったが…。

<感想>有村架純が瞳の奥に憂いのある女の子を演じている。原作は未読ですが、その女の子の数が従兄とともに営む不思議な喫茶店が舞台であり、店内には過去に戻れる席があって、数はお客たちが過去に戻り新たな一歩を踏み出す姿を見守りながら、自身に訪れた人生の転機をきっかけに、抱えつづけてきた自らの痛みと対峙することとなる。

数の閉じ込めていた想いが決壊する時、その切実な表現に胸が震えてきて、そして数のことが愛おしくてたまらなくなるのであった。主人公を有村架純が演じるからこそ、一層に魅力が増すという数という女の子。

過去に戻ってもその過去を塗り替えることはできないけれど、自分の行動や考え方次第で、未来はいくらでも変えれるよっていうメッセージが込められていて、後全体が4つのエピソードに分れていて、それぞれ別の気持ちで感情移入できるのがよかったですね。

ですが、そのエピソードが断片的に進んでいくわけじゃなくて、お話全体に数という人物が、軸としてしっかりとあって、最後には数の物語に結びつく。すごく巧く出来ているなと思いました。

喫茶店のある席には、謎の女=石田ゆり子が座っていて本を読んでいる。店に来た客は、何とかその席に座って過去に戻りたいと思っている。その謎の女=石田ゆり子は幽霊だと言うのだ。そんな風には見えないけれどね。過去に戻れるのはコーヒーが冷め切るまでで、冷め切ってしまう前にその残りのコーヒーを飲み干さないと現在に戻れなくなってしまう。つまりは、石田ゆり子みたいに幽霊になるってことなのだ。

運のいい客は、その女性がトイレに立った時がチャンスなわけで、座れてコーヒーを頼み、あっという間に水の中へどんどん落ちてゆく。最初に恋人と仲直りをしたいという、波瑠がチャレンジします。恋人がイギリスへ転勤になると言う、自分も付いて行けばいいのに、そのことを言えずに別れてしまう。心残りが募り、喫茶店の過去に戻る席に座って、もう一回チャンスをと、プライドを捨てて彼女は彼の胸に飛び込んでいくことを決心するわけ。事実は変わらなくても、未来は変わりますからね。やり直せることが出来るんですよ。

そして、長年連れ添ったご夫婦のこと。妻が認知症になってしまい、夫のことを忘れてしまっている。だから夫は看護師の資格を取り、妻の看護師として毎日一緒に過ごすのですが、夫はそれでもまだ物足りない。

それで、過去へ戻り、もう一度、妻と話し合いたいと願う。妻は、夫に手紙を残していた。そして、過去を戻り、夫婦の会話が弾んでいき、「大丈夫、大丈夫」としか言えない夫。その時、妻の顔を見ながら涙が止まらない夫。手紙の内容は夫に対してのことなので、現在に戻り、夫は看護師ではなく、実際に夫であることをそのまま伝えて、夫であり続けることにする。

これは泣けましたね、こんなにも愛してくれる夫がいるなんて、認知症になった妻なんか、介護施設に入れて知らん顔する夫もいることでしょうにね。

お隣でスナックを経営している吉田羊なんかは、今は亡くなった妹に逢いたいと、その席に座っている女の肩に手をかけて、いきなり席を代わってと言い出すしまつ。それを数が優しくうながして、また次の機会にでもと言うのだ。

店で待っているうちに、トイレへと席を立つ女。その席へ急いで座る吉田洋、妹が久しぶりに会いに来たのに、用事があるといい会わなかったのだ。その時に戻り、自分が親と喧嘩をして、田舎を捨てて東京へ来て苦労をしてスナックを開く。もう田舎なんかへは絶対に帰らないと意気りまくっている姉。だが、妹は優しく微笑みながら、姉と一緒に田舎(仙台)にある旅館を切り盛りしたいと願っている。その願いも叶わぬままに、妹は事故死してしまう。

だから、妹に事故に遭わないようにと、必死に言いくるめる姉。でも結局は、自分が独りよがりで意地っ張りで、全部自分が悪かったことを詫び、仙台へ帰って旅館の女将をすることになるとはね。

最後が喫茶店の数の話であり、数が子供の頃、母親が亡き父に逢いに行ったまま戻らなかったと言う。その時に母にコーヒーを入れたのは、まだ幼かった数であり、代々、店の跡継ぎの女がコーヒーを淹れないと効果がないのだ。どうして戻らなかったのか、コーヒーを飲み干してさえいれば。

どうして数が、過去に戻れたの?・・・それが数が結婚をして産んだ娘が、未来で数にコーヒーを入れてくれたから。母は、父親に会っていたのではなく、自分が病弱で余命わずかな時に、未来の自分が産んだ数に会っていたのだ。子供の数は、母親に帰らないでと頼み、放さなかったのだ。母も数のことを想い、じゃぁ、この席で一生、数のことを見守ってあげようと、コーヒーを飲まなかったわけ。

心温まるエピソードも、最後の数の物語でなかば白けた感じになってしまった。彼女は自分の娘が淹れたコーヒーを飲んで、過去に戻ったというのだが、生まれてもいない娘を、未来から呼び出すためのコーヒーは、誰が淹れたのか?が知りたいですね。

ファンタジーというよりも、ゲーム的な感触が強い。最初は味気のない印象であったが、喜劇的な趣向を組み込んであり、設定自体が笑う雰囲気が強調されていた。

それでも寓話と現実との配分も申し分なく、泣きを過剰に見せない演出とも調和がとれている。吉田羊が縦横無尽に動き、舞台となる喫茶店の狭い空間を制するのも良かった。ですが、この脚本でアニメ化した方が、ずっと相応しいような気もした。

 

2018年劇場鑑賞作品・・・192  アクション・アドベンチャーランキング

 

 「映画に夢中

 トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ

トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/30079862

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2328

Trending Articles