映画専門学校「ENBUゼミナール」のワークショップ「シネマプロジェクト」の第7弾として製作された作品で、前半と後半で大きく赴きが異なる異色の構成や緻密な脚本、30分以上に及ぶ長回しなど、さまざまな挑戦に満ちた野心作。「37分ワンシーンワンカットのゾンビサバイバル映画」を撮った人々の姿を描く。監督はオムニバス映画「4/猫 ねこぶんのよん」などに参加してきた上田慎一郎。
あらすじ:とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画の撮影をしていたが、そこへ本物のゾンビが襲来。ディレクターの日暮は大喜びで撮影を続けるが、撮影隊の面々は次々とゾンビ化していき……。2017年11月に「シネマプロジェクト」第7弾作品の「きみはなにも悪くないよ」とともに劇場で上映されて好評を博し、18年6月に単独で劇場公開。当初は都内2館の上映だったが口コミで評判が広まり、同年8月からアスミック・エースが共同配給につき全国で拡大公開。
<感想>何となく気になったので観てみようと思ったのですが、朝1番の9時ので観ようと1時間前に家を出たのだが、ミニシアターなので、エスカレーターの前まで行列が続いていたのには驚いた。みんなはネットですでにチケットを予約済みの人たちばかり。のんびりと行った私みたいな観客には、チケット売り場で、21時50分のラストを予約して、チケットを購入した。
改めて、先入観でただの「ゾンビ」映画でインディズ作品かと思っていたら、前半部分はマジにそうだった。旧日本軍が不死身の兵士を作ろうとして、実験を繰り返していた、呪われた場所だった。そこに入り込んだ若いカップルが、青年の方がゾンビ化してしまい、彼女が襲われるという設定。愛する彼がゾンビ化してしまうと、自分もゾンビになってしまうのじゃないかとか、本当の敵はゾンビじゃなくて人間だったみたいな。
やっぱり肩透かしかとがっかりして観ていた。女優さんもスタイル抜群で、こういう襲われて最後まで生き残る女性は、強いんだと思わせるように、白のタンクトップに血糊をバッチシつけて、半ズボンに長い脚を出し、スニーカーで武器も持たずに始めは、キャーキャー言ってゾンビの彼氏が襲って来るのを怖がる表情もダメダメな演技で、もっと勉強しろとカツを入れたい気分にさせる。
最初のシーンで、いきなり監督の怒鳴り声と本人が登場させ、撮影風景と見せながら、表にはゾンビが出た辺りからは、スプラッター・ホラーに持ち込む手順は中々でした。
しかし、草むらでの追いかけシーンでは、監督が頭上にカメラを取り付けて走るので、ブレるので見続けていて酔います。これは撮影の失敗と見えるショットがあるし、追われるヒロイン役が屋上で泣き叫ぶショットなどは、長すぎるので飽きた。ラストは、ヒロインがゾンビの首を手に持っていた斧でぶった切る勇気と、廃墟のビルの屋上で万歳をして終わる。
ワンカットでゾンビ映画が展開する冒頭37分は、手法が言い訳になっておらず、多少の手ぶれ感があるも良しとするとして、中盤でのメイキングパートでは落ちると思っているとだ、カメラのレンズの血をぬぐう布が見えたので、後で何かあるのだと気付いた。これが、この映画を成立させるために不可欠な描写だったのかと気づかさられる。
でも、ここまで仕掛けが万歳だとは、さらに前後半でキャラが変わっちゃう人もいて、それがまた過剰なまでに合理的なのだ。そう、これは終わったところからまた始まる映画なのだ。ラストの30分間、冒頭の全てが計算尽くしだったとはね。
どうしてそうなるかは、観ていただくとしてだ、アクシデントとアドリブが、綿密なはずだった準備を、あっさりほったらかしにして、ドタバタな舞台喜劇ふうに、勝手に展開していく様はアッパレと言うべし。ですが、感受性の鈍い観客には理解できないかもしれません。
監督の奥さんが出ていて、襲われたら撃退法という護身術、「ポン」と大きな声で、両手を真上に挙げると、ゾンビがあと言う間に倒れる技に大笑い。
ゾンビ役の中年のおじさんは、アル中で離婚をして娘に会いたいばかりに酒を止めている。だが、打ち上げの日本酒を見て、我慢しきれずに全部飲み干して酔っ払い、ヘロヘロのゾンビ観が出て良かった。
主人公の秋山ゆずきさん、それなりに美人だし、ウソ泣き怖がりが下手くそで観てられなかった。それでも最後には、なにくそとゾンビに向かって斧を振り上げる強さが見えて、本人も狂った様子が成長した証だと思いますね。
それに、後半でのネタ晴らしである撮影秘話には、本当に不器用なヤツラが血だらけ汗だらけになって、一丸となって、何とか形にして行こうと頑張る、そのひたむきな姿を撮っている。だから大笑いの連続で、大いに受けました。ゾンビ映画で、これほどまでに笑えるなんて。
脚本があるのに、あらぬ方向に進んで伏線が回収しきれない作品も、わりとすきなんですがね、でも、これは張り巡らされた伏線が見事なまでにキレイさっぱりと回収されていた。
しかも前半では、「one cut of the dead」で怖がらせて、後半では謎を解明しつつ、笑いも生まれて爽やかな気持ちになれる、それに親子の絆も描いていて、生きる勇気が湧いて来て泣かせる終わりという、普通なんだけどもB級作品。しかし、インディペンデントであろうがなかろうが、面白いものは面白い。
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