『ヤッターマン』の三池崇史監督と櫻井翔が再び組み、ベストセラー作家東野圭吾の小説を映画化した本格派ミステリー。連続して起きた奇妙な死亡事件をきっかけに、その調査を進める大学教授らが事件の真相をあぶり出す。『ちはやふる』シリーズなどの広瀬すずがヒロインを演じ、『ちょっと今から仕事やめてくる』などの福士蒼汰が共演。脚本を、テレビドラマ「半沢直樹」「下町ロケット」などの八津弘幸が担当している。
あらすじ:妻と温泉地を訪れた初老男性が硫化水素中毒で死亡する事件が発生した。捜査を担当する刑事・中岡は妻による遺産目当ての計画殺人を疑うが、事件現場の調査を行った地球化学専門家・青江修介は、気象条件の安定しない屋外で計画を実行するのは不可能として事件性を否定。しかし数日後、被害者男性の知人が別の地方都市で硫化水素中毒により死亡する事故が起きる。新たな事故現場の調査に当たる青江だったが、やはり事件性は見受けられない。もし2つの事故を連続殺人事件と仮定するのであれば、犯人はその場所で起こる自然現象を正確に予測していたことになる。行き詰まる青江の前に謎の女・羽原円華が現われ、これから起こる自然現象を見事に言い当てる。彼女は事件の秘密を知る青年・甘粕謙人を探しており、青江に協力を頼むが……。
<感想>ある温泉地で起こった硫化水素による死亡事故をきっかけに、櫻井翔君演じる地球化学の研究者である大学教授の青江が巻き込まれる。果たして自然現象を操って人を殺すことが可能なのか、についてのミステリー。
本作は、ミステリーであると同時に、人知を超えた能力を持ってしまった者たちと、それを取り巻く人間たちによる、切なくも新淵な人間ドラマであります。もちろんこの物語には、深いメッセージが込められていると思いますし、広瀬すずちゃん演じる不思議な力(予知能力)を持つまどかの父親(リリー・フランキー)の、あるセリフとその時の表情に国家機密の関係もあることを。
そして、公安に追いかけられるまどかと、事件の犯人でもある福士蒼汰扮する甘粕謙人の不思議な能力も。基本的にはサイエンスミステリーであって、自然現象を操れるのか云々の謎解きでもあります。
物語は、映画監督の甘粕の母親と娘が硫化水素を使って自殺をする。その巻き添えに息子の謙人が意識不明となり、植物人間状態になってしまう。それが、意識が戻ったような気配が感じられて、病院の脳外科医(リリー・フランキー)によって、手術をして成功し生き返るも、予知能力が備わった人間になってしまう。実験台として、脳外科医の娘である羽原円華(広瀬すず)も手術によって同じ予知能力者となり、国の公安に捕らえられてしまう。
一方では、警察の依頼で現場を調査した地球化学の専門家・青江修介教授は、妻による計画殺人を疑う中岡刑事に対し、屋外で意図的に致死量のガスを吸引させることは不可能と説明し、「あり得ません」と事故死と断定する。ところが数日後、別の場所でまたしても硫化水素による死亡事故が発生する。しかも被害者は前回の男性と顔見知りだった。それでも青江は、未来の自然現象を正確に予測できない限り、この犯行は実行不可能と改めて明言する。ガリレオでの教授は、必ずその事故現場に行き、風向きとかを考慮して実験するのに、この櫻井教授は、絶対に「そんなことはあり得ませんから」と宣言する。
謎の女の廣瀬すずちゃんは、「あんた馬鹿なの」とはっきり物事を言う女性で、それに教授に甘粕謙人を探す手伝いをさせる。
ラストでは、甘粕謙人が父親の映画監督である豊川悦司を殺そうとするシーンには、廃屋での自然現象である竜巻を使って父親を建物ごと殺そうとする場面など、それを阻止しようと大学教授の櫻井翔くんと、広瀬すずが車を使って実行する場面の物凄さが、視覚的な派手なシーンもあり、リアル感があって良かった。それと、満月にかかる虹の輪が綺麗でしたね。二度も見られるとは。
原作は読んでいませんが、理工系作家の東野圭吾らしい科学を延長した先の、超科学的な理屈のミステリーという、「ガリレオ」みたいな作品と似ていると思います。刑事役の玉木宏さんは、無精ひげみたいに顎髭をはやして、事件の推理をする。それに、佐藤江梨子が最初に温泉で事故死した妻を演じていた。
自然現象の竜巻で亡くなった広瀬すずの母親に、檀れいが、青江大学教授の助手に、志田未来が、公安の男には高嶋政伸が扮していた。
映画的に面白かったのは、広瀬すずが予測した光の反射を目つぶしに使った脱走シーン。だから、本作ではガラス窓や、ガラス戸などガラス越しの映像が多い。大学教授の櫻井翔がガラスの向こう側やこちら側にいることで、対人関係の在り方を示唆して見せている。
タイトルの「ラプラスの魔女」つまりラプラスの悪魔は現状からの未来予測が可能であることを意味するが、この映画の中で向こう側が見える、あるいは見えないこともまた、観客にとっての先行きの予測が可能なのか、否かを視覚的に表現しているようにも見えるのだ。
未来を感じことができる人間と偶然に出会うところの面白さ、自然現象を完全犯罪に結びつけるという発想と、それこそ予知不能の展開に、そして奥深い人間模様は、映画を観てから判断下さい。
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