「AKIRA」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」、「ストリートファイターII」をはじめ80年代の日米ポップ・カルチャーがふんだんに盛り込まれていることでも話題を集めたアーネスト・クラインのベストセラー『ゲームウォーズ』を、巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督が映画化したSFアドベンチャー大作。現実世界の荒廃が進む近未来を舞台に、あらゆる願望が実現する新世代VR(バーチャル・リアリティ)ワールド“オアシス”で繰り広げられる壮大なお宝争奪戦の行方を、驚きの有名キャラクターの数々と最新の映像技術を駆使した圧倒的臨場感で描き出す。主演は「MUD マッド」のタイ・シェリダン、共演にオリヴィア・クック、ベン・メンデルソーン、マーク・ライランス。また日本からも森崎ウィンが参加。
あらすじ:2045年の地球。街が荒廃する一方で、若者たちはVRワールド“オアシス”に夢中になっていた。そこでは誰もが好きなアバターに姿を変え、自分の思い描く通りの人生を生きることができた。そんなある日、オアシスの創設者ハリデーが亡くなり、彼の遺言が発表される。それは“アノラック・ゲーム”と呼ばれ、彼が仕掛けた3つの謎を解き、オアシスに隠されたイースターエッグを最初に見つけた者には莫大な遺産に加え、オアシスの後継者としてその全権を与えるというものだった。
この驚くべきニュースに世界中の人々が色めき立つ。現実世界に居場所がなくオアシスだけが心の拠り所の17歳の青年ウェイドもこの争奪ゲームに参加し、オアシスで出会った謎めいた美少女サマンサら大切な仲間たちと力を合わせて3つの謎に挑んでいく。そんな彼らの前に、恐るべき野望を秘め、邪悪な陰謀を張り巡らせる巨大企業IOIが立ちはだかるのだったが…。
<感想>70歳を過ぎてもなおのこと、精力的なペースで映画を撮り続けるスティーヴン・スピルバーグ監督。本作ではそんな彼が「VR(ヴァーチャル・リアリティ)世界」(仮想現実)の世界で繰り広げられる世紀の祭典を描く、SFアドベンチャー大作を制作した。
時代設定は近未来の2045年。物語では17歳のウェイドを始めとする若きゲーマーたちの「青春劇」と、エッグの隠し場所を巡る「謎解きアドベンチャー」がほどよくミックスされていて、快適なテンポで進行していく。
オモチャ箱をひっくり返したようなVRゲーム内のデザインにもポップな遊び心が溢れていて、71歳の監督が撮ったとは思えないくらい「目で楽しめる」し、脳を刺激して面白かった。
1980年代を中心とするポップカルチャーへのオマージュが盛り込まれており、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアン号や、
キングコング、恐竜、チャッキー人形、「AKIRA」のバイクに、「アイアン・ジャイアント」のロボットなど。
それに「機動戦士ガンダム」のモビルスーツと言った象徴的なモチーフ、キャラクターが多数登場するのにが驚きましたね。
そして、中でも驚いたのが「シャイニング」ネタに「キャリー」ネタで真っ赤な血の洪水など、スピルバーグのオタクな「キューブリック愛」が充満しており、ホラーなシーンなのに思わず笑いが込み上げて来るなど、なんとも言い難く素晴らしかった。
主人公パーシヴァル/ウェイド・ワッツには、「X-MEN:アポカリプス」のサイクロプス役などで知られるタイ・シェリダンが。それにヒロイン役のアルテミス/サマンサにはオリヴィア・クック。大富豪のアノラック/ジェームズ・ハリデーにマーク・ライランス。
その他、オグデン・モローにサイモン・ペグ、エイチ/ヘレン役にはリナ・ウェイスが。日英バイリンガルのプレイヤー。ウェイドと一緒に冒険に参加するダイトウ/トシロウには、森崎ウィンが。
ハリデーの遺産を狙う巨大企業IOI社のノーラン・ソレントには、ベン・メンデルソーンが共演している。
オアシスの世界は、格闘ゲームやカーレースなどのアトラクションが満載であり、まるでテーマパークのような理想郷オアシス。バーチャルとはいえ、触れたものの感触などはダイレクトに感じ取れますからね。
一番燃えたのは、ダイトウのガンダムに変身したのに対して、悪党ソレントの乗るメカゴジラとバトル対決ですかね。つい熱くなってしまった。
VRの世界で繰り広げられるのは、空前の規模の“宝探し”。その主人公は80年代文化に憧れるオタク少年のウェイドとその仲間たち。
荒廃しきったこの世界では、夢の希望もない。唯一の娯楽であるVRの世界を体験できる“オアシス”。家に居場所のないウェイドにとって、オアシスは生きていることを実感できるただ一つの場所だった。そこでは誰もがなりたい自分=アバターになれる。冒険のはじめを告げたのは、オアシスの開発者であるジェームズ・ハリデーだった。
遺言として、彼は全世界にメッセージを残す。それは56兆円もの価値があるお宝を“オアシス”の何処かに隠したこと。そして一番最初に見つけた者を、オアシスの後継者にしようと。
この言葉に導かれて、世界中のプレイヤーたちがオアシスに集結する。だがそこには、お宝を手に入れ、世界を支配しようと陰謀を企てている巨大組織の存在があった。全人類の運命をかけた空前のトレイジャー・ハンティング。現実とバーチャルの世界をまたにかけて、ウェイドの大冒険が始まる。
これまでの映画体験は物事を3次元的に眺めたり、遠近法的に観たりするのと同様、人が日常的に獲得してきた能力の一つだった。観客は映画を観ることによって世界を外側から見る技術を養い、直線的な時間軸上で鑑賞する方法を身に着けてきた。
しかしこの「レディ・プレイヤー1」では、観客は世界の内側で様々な役を演じることを求められる。ある状況下でどんな役割を果たし、どう立ち回り、いかなる行動をすべきか自分で決定しなくてはならず、しかもその役を、次々と変えながら生き延びてゆく術を身に付けなければならない。
二つの世界とは現実世界と仮想世界を指すが、実はそれだけではない。失業者や貧困が溢れる現実の荒廃した街の日常から、専用のキットを身に着けて、パーソナル・アバターとなり“オアシス”というVRの世界へ入れば、もう一人の自分となり別の人生を歩むことが出来る。
食べたり眠ったりトイレに行ったりする以外は、オアシスで過ごし、ポップアイコンで埋め尽くされたデジタルユニバースで憧れのヒーローになったり、好きなヴィクールを操ったり、スタイリッシュな恰好で無重力ダンスを踊ったりできるのだ。
夢のようなオアシスと過酷な現実を対峙させるため、現実シーンはフィルム撮影しており、仮想世界はデジタル撮影して、モーション・キャプチャーやコンピューター・アニメーションを重ね合わせてゆく。なんと、スピルバーグ監督はさらに、VR内監督として、自らゴーグルを被り、デジタルセットの360度視界の中で、演出を繰り返したというから凄いに尽きる。
この映画で、スピルバーグが言いたかったことは、最後で強調される。「現実だけがリアルなものだ」ということなのだ。確かにその結論は治りがいいし、映画も友情の絆や初恋や、他者が受け入れることの大切さへのオマージュに満ちた青春映画へと回収されてゆくのだから。
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