俳優の斎藤工が「齊藤工」名義でメガホンを取った長編監督デビュー作。放送作家のはしもとこうじの実話を基にした家族の物語が描かれる。父親が失踪した主人公を高橋一生、主人公の彼女役を松岡茉優、失踪した父親役をリリー・フランキー、母親役を神野三鈴がそれぞれ演じ、斎藤も主人公の兄役で出演。
あらすじ:ギャンブルに溺れて多額の借金を作った末に失踪した父が13年ぶりに見つかる。塗炭の苦しみを味わった母と兄は余命3ヵ月という父を許すことができず、見舞いを拒否し、弟のコウジだけが病院を訪ねる。やがて父はこの世を去り、葬儀には数少ない友人たちが参列して、遺された家族の前で、故人との思い出を語っていくのだったが…。
<感想>俳優の斎藤工さんの初監督作品ということで、それに高橋一生の大ファンなもんで鑑賞しました。ギャンブル好きで借金に追われ、蒸発した父親が失踪して13年、連絡があって行ってみれば、癌で余命3か月というのだ。
母親も長男も、父親に対して恨み辛みがあるので、絶対に病院へは行かないし、葬儀もやらないなんて初めはいっていたのに、結局は簡素な葬式をあげた。そのわびしい葬儀の席で、子供たちが知らなかった父親の意外な面が明らかになるという物語に格別新しいということはなかった。
だが、家族の中で弟コウジを演じた高橋一生さんは、幼いころに父親とキャッチボールをした記憶があるため、父親の病床を見舞うのですが、病院の屋上で父親と言葉を交わす場面の、父との再会で屋上に行くシーンでも、あえて距離をとることで、手放しで喜ぶことができない微妙な心境を映し出したり。そこで一瞬映る携帯ストラップがその後の伏線にもなってたり、これは、オカマちゃんとお揃いの携帯のストラップで一緒に住んでいたことがある。
屋上での息子と父親の、二人の間の距離の取り方などに、監督のセンスがいかされていたと思うのだが。中々良かったです。それに、葬儀に参列した人びとが語る家族の知らなかった父親のエピソードの数々によって、父と家族の13年間の空白が埋まっていく様子が描かれていく。
前半の過去の経過をシリアスに、中盤でタイトルを入れたりと、後半部分の葬儀の式次第では、コメディチックに分けたりとガラッと変える構成が良かった。父親の死という重たくなってしまうテーマを、70分という短い時間の中でバランスよく描いた作りも良かった。
ダメ親父の葬儀に来てくれるキャストも豪華だし、対比てきに描かれるもう一つの立派な葬式のオチ(泣き女が雇われている)のおかげで、それも苗字が同じなので参列者がよく間違えるのも、面白く観られたものの、話自体は結構薄かった気がする。兄が話す「葬式って人生の価値が分かる」という言葉の意味が、重くのしかかる。
主人公松田コウジを演じるのが、「嘘を愛する女」が絶賛公開中の高橋一生。コウジの彼女、西田サオリを演じるのは、こじらせ女子の心的成長を描いた「勝手にふるえてろ」の松岡茉優が、妊娠3か月という役で出演。
その他の葬儀に参列した客には、コウジの兄、松田ヨシユキ役に、今作の監督であり、「去年の冬、君と別れ」が公開している斎藤工。コウジの母、松田洋子役に、舞台女優として活躍する、「日本のいちばん長い日」、「武曲」、「光」の神野三鈴。そして、父親の松田雅人役には、「凶悪」、「ぐるりのこと」、2月に「サニー32」のリリー・フランキー。
葬儀の弔問客に佐藤二郎、村上淳、伊藤沙莉、くっきー(野生爆弾)、神戸浩、織本順吉、福士誠治、ミラクルひかる、波岡一喜、金子ノブアキ、蛭子能収など、監督の人徳による役者陣が共演している。
2018年劇場鑑賞作品・・・48アクション・アドベンチャーランキング
「映画に夢中」
トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ
トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/29653667