2011年の東日本大震災をテーマにしたヒューマンドラマ。震災後すれ違う家族が、韓国人青年との再会を機に変化していく。メガホンを取るのは、『捨てがたき人々』『アリーキャット』などで監督としても活躍する俳優の榊英雄。数多くの出演作を持つ夏木マリ、ロックバンド「CNBLUE」のギター&ボーカル担当のイ・ジョンヒョンらが出演。
あらすじ:漁師の夫、娘の香苗、息子の哲也と一緒に、自身が生まれ育った海沿いの町に暮らす佐藤千恵子(夏木マリ)は、2011年3月11日に起こった東日本大震災で夫を失ってしまう。避難所生活を強いられた彼女は、別荘を借りて民泊の営業に奮闘する。一方、香苗は震災のトラウマによって子供を持つことをためらい、哲也は震災を理由に人生から逃げていた。ある日、以前同じ町に暮らしていた韓国人青年のドヒョン(イ・ジョンヒョン)がやってくる。
<感想>華やかな芸能人という印象が強い夏木マリさんが、地元育ちの普通の中年女性を、ちょっとがに股歩きで演じている。東北の方言もかなり上手で、化粧っけがなくても眉などは、芸能人のそれだし、貫禄が滲み出ていて良かったです。
あの東北大震災で、夫が津波で流され、土台だけが残って建物がそっくり津波に持っていかれた。小高い丘の上に小さな民宿を営んでいる、そんな彼女をメインとした、地元密着型のヒューマンドラマであり、大きな事件やトラブルは起きないが、そのささやかな日常はいい感じに映っている。とにかくよく働く東北の漁師の妻を演じていた。
娘は震災でボランティアで来ていた名古屋の人と結婚をし、それで今は名古屋で暮らしている。そこで、夫が子供を作ろうと妻に言うも、まだ心の傷が癒されていない妻には、将来のことを考えると子供を産むことを拒んでしまう。しかし、まだ若いから、時を重ねて行くうちに、絶対に忘れることは出来ないけれど、自分たちの生活に子供を家族として迎えることはあると思います。
老いた姿をつくり、それを積極的にさらして演じる夏木まりさんの存在感が力強く感じましたね。過酷な状況を自力で生き抜く強さを印象つけるのは、夏木まりさんが自転車で漕ぎ、押す姿を何度も何度も挿入する展開にあると思った。
何度も映し出される自転車での往復や、一人でいる時の孤独な影、その彼女のもとにみんなが集まる。あの引き寄せられ方とその幸福感は映画らしくていいし、そうそう終盤の彼女の食事の食べっぷりがいいのに嬉しくなった。
韓国の青年ドヒョンが、亡くなった父親の手紙を持ってくる。まだ亡くなったと言う実感がわかない妻には、それは悲しみと大事な夫からの手紙なのだ。くよくよしてたって、時はどんどんと過ぎてゆく。毎日のことを元気に、すぐに辛いことを思い出しても、涙をぬぐって海の地平線を見て誓う生き抜くことを。
この映画では、人と人との触れ合いの在り方が、様々な視点で描かれている。例えば、「コミュニケーションが上手くゆかない理由は、言葉に起因するものではない」と、表現するため、外国人の言葉はあえて字幕によって伝えても良かったのではなかろうかと。
東日本大震災を劇化することも、映画に課せられた使命だと思います。取材、仮構、やがて映画として現れる、本当に居る人たちの代理のキャラクターと物語。本作が対象としているのは、もはや震災の直接的な被害よりも、7年経ったところでも消えないトラウマや、生きあぐねであり、そういう現在性にもなるほどと思わせられました。
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