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北の桜守★★★★

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終戦から始まる激動の時代を生き抜いた一人の女性とその息子の姿を描いた大河叙事詩。女優・吉永小百合の120作目となる映画出演作で、「北の零年」「北のカナリアたち」続く「北の三部作」の最終章に位置付けられるヒューマンドラマ。吉永小百合、共演に堺雅人、篠原涼子、阿部寛、佐藤浩市。監督は「おくりびと」の滝田洋二郎。また、劇中に挿入される演劇的シーンの舞台演出をケラリーノ・サンドロヴィッチが担当。

あらすじ:太平洋戦争末期の1945年5月。南樺太に暮らす江蓮てつは、大切に育てていた庭の桜が花開き、それを夫と息子たちと喜ぶ。しかし8月、終戦を目前に樺太はソ連軍の侵攻を受け、てつは同地に残る夫との再会を約束して2人の息子とともに北海道行きのフェリーへと乗り込む。1971年。アメリカへ渡り成功した次男の修二郎は妻・真理を伴い帰国すると、15年ぶりに網走の母と再会を果たす。そして年老いたてつのひとり暮らしに不安を覚え、彼女を引き取り、一緒に暮らし始めるのだったが…。

<感想>北の大地で懸命に生きた江蓮てつと息子の修二郎の再会と、失われた記憶を巡る2人の旅を、壮大なスケールで描いた感動作であります。1959年の映画初出演以来、119本もの作品への出演してきた大女優である吉永小百合さん。今なお果敢に新たなことに取り組む姿勢に脱帽します。今回も、これまでのイメージを覆す“強い母”としての演技や、二つの時代における一人の女性を繊細に表現している。さらには、樺太からの引き揚げの様子を再現する劇中劇では、女優人生で初となる舞台劇にも挑戦している。

そして、苦難を乗り越え成功する息子・修二郎役の堺雅人の存在感にも注目したい。吉永さんとは初共演ながらも、息の合った掛け合いを見せ、イメージどうりの“優しい母”だけではなく、息子を厳しく育てる強さも体現。

子役の兄弟を演じた子供たち、兄は引き揚げ船がソ連の攻撃で沈没し、母子が海の上で散り散りになり、弟が見つかり兄も見つかったのに、兄が目の前で船の瓦礫が落ちて死んでしまうという哀しみもある。

1945年8月15日に終戦を迎えたのに、樺太では戦争は終わっていなく、この映画では、残酷なソ連との樺太戦のエピソードは描いておりません。

しかし、母子は生きるために極寒の地でソリを引くシーンでは、吉永さんが猛吹雪の中で重いソリを引いて、息子が寒くて手がかじかみ、もう嫌だと泣き叫ぶのを叱って、我が子の手を息を吹きかけては温まらせ、自分も息子を抱きしめて泣き崩れるシーンもある。

それに、北海道での暮らしは、女一人で息子と暮らすのに、ヤミ米の仲買をしているトラックの運転手をしていた、佐藤浩一扮する男と出会い、ヤミ米を列車から落とされるのを背中に背負い、畑を歩く親子に、お腹がすいた息子が畑にあるジャガイモを取るのに、「泥棒はしてはいけない」と叱り飛ばし、でも、「道端に落ちているのを拾うのはいいのよ」といいながら、土のついたじゃがいもをかじる親子につい涙が零れ落ちました。

息子修二郎を、「ライオンの母のように崖の上から突き放す」母親てつの苦しみが幾ばくか。それでも、北海道で二人で飢え死にするよりは、息子だけでも東京へ出て働き食べて行けるようにと家から追い出すのだ。

ところが、アメリカへ渡った修二郎がハンバーグの会社で認められ、社長令嬢と結婚をして日本に帰って来る。しかし、日本ではまだまだ不景気が続いており、ハンバーグなどはお腹のたしにならないお菓子のようなものだと、売れないのだ。そして、修二郎はあの母親が白いご飯のおにぎりを作ってくれたことを思い出して、店先でおにぎりを売り出す。その他にも、いろんな物を並べて、現在のコンビニみたいな店に発展させるのだ。

そこへ、岸部一徳さん扮する網走の世話役が訪ねて来て、母親の様子が変だと言うのだ。迎えにいく修二郎が見た母は、かなり年老いており、少し認知症を患っているようだ。一緒に住もうという息子に、母は嫌だここにいると。お父さんが帰って来るからと。もう父親はシベリアで亡くなっているのに。

息子が東京へ行った後は、ヤミ米やの佐藤浩一の世話になり、小さな小料理屋を始めて暮らしていたのだ。息子は母親はきっと彼と結婚すると思っていたらしいが、彼が結婚の申し込みに行くと、母親は「白い喪服」をきて断ったと言うのだ。きっと、自分にはシベリアへ行って亡くなった夫だけと心の中に誓っていたのだろう。

苦労して育ててくれた母親に報いたいと、母を連れて旅に出るのだが、一人取り残された妻は、不機嫌になる。修二郎にしてみれば、老いた母に親孝行をしてやりたいばかりに、昔を思い出すようにと北海道をめぐりする。その途中で、海の中へと入っていく母親の姿が、驚いて助けに行く修二郎。

母は、そんな息子のことなどかまわずに、買ってくれた高価な洋服や靴にバックなどをあまり喜んでくれないのだ。母親の吉永さんと息子の堺雅人さんの息の合った演技で、二人だけが抱える悲惨な記憶を、親子の深い絆を見事に表現していましたね。

特に主人公を演じた吉永小百合さんは、相当な覚悟で江蓮てつを演じたと思う。この映画を観るために資料を見て知ったことは、過酷な樺太の戦火を逃げ延び、途中では地獄を見ただろうし、時には目を背けてきたこともあったに違いない人々。そして、自分が生き残ったことに、自責の念を抱いて、戦後を生き抜いてきたのだ。この人物に特定のモデルはいないそうですが、しかしながら、てつのような体験をしてきた人は過去に大勢いたでしょう。言葉少なく老いてもなお、吉永さんが、そのような人達の想いをくみ取り、背負いながら、てつという女性を演じたのに拍手を送りたい。

2018年劇場鑑賞作品・・・47アクション・アドベンチャーランキング

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