『ブラック・スワン』などのナタリー・ポートマンと、ジョニー・デップとヴァネッサ・パラディの娘リリー=ローズ・メロディ・デップが姉妹を演じた異色ドラマ。パリを舞台に、死者と交信できる美貌のアメリカ人姉妹が次第にショービズ界に染まっていく様子をつややかな映像で描写する。メガホンを取るのは、『グランド・セントラル』などのレベッカ・ズロトヴスキ監督。『サンローラン』などのルイ・ガレル、『三重スパイ』などのエマニュエル・サランジェらが共演している。
あらすじ:1930年代後半、降霊術ツアーに出ていたアメリカ人姉妹ローラ(ナタリー・ポートマン)とケイト(リリー=ローズ・メロディ・デップ)は、パリを訪れる。霊感が強くて死者を呼び出せるケイトはある晩、フランスの有名な映画会社のプロデューサー・アンドレ(エマニュエル・サランジェ)と知り合う。実際に霊と遭遇した彼は姉妹の能力に心酔し、ゴースト映画を企画する。
<感想>美しい姉妹、美しい秘密、人の心を狂わすこの姉妹は、高名なスピリチュアリストなのか、世紀の詐欺師なのか―。「ブラック・スワン」のナタリー・ポートマンと「ザ・ダンサー」のリリー=ローズ・メロディ・デップが、美しい姉妹役で初共演したミステリアスなドラマである。
実在したスピリチュアリズムの先駆者、フォックス三姉妹と、フランス映画界の伝説のプロデューサー、ベルナール・ナタンという活躍した時代も場所も違うが、「見えないものを見せようとした」「詐欺師と呼ばれた」という共通点を持つこれらの人物をモデルにした物語を、「美しき棘」のレベッカ・ズロトヴスキ監督が、ロバン・カンピヨと共同で脚本を書き、三作目の監督を担当した。
共演には「王妃マルゴ」のエマニュエル・サランジェに、「灼熱の肌」のルイ・ガレル、「僕とカミンスキーの旅」のアミラ・カサール、ピエール・サルヴァドーリ、ダミアン・チャペルら。ローラとケイト姉妹の不思議な力で、世界初の心霊映画を作ろうとする製作者のコルベン。心に影を持ち、次第に狂気を帯びてゆくコルベン。
序盤に妖しく引っ張った降霊術ミステリーは、映画の後半ではどうでもよくなってしまう。そして、そのあやふやさを、美しき二人の女優はじめとして、圧倒的なキャスティングで、吹き飛ばしてしまうのである。
こんな映画の作り方もあるものだろうかと感心してしまった。映画に真の心霊を写すと言う妄想に取り憑かれたユダヤ系プロデューサー・コルベンの役を、エマニュエル・サランジェが演じているのが良かった。
降霊術を披露する美人姉妹、彼女たちに魅せられた映画プロデューサー。1930年代、トーキー映画期、道具仕立てはこちらの好みに満ち溢れており、ところが妹が呼び出した霊を映画に写し取ろうという試み。それと女優として売り出そうとする姉の話。この二つが上手く溶け合わないのだ。
そこにプロデューサーのユダヤ人差別まで絡ませては、映画は混乱するばかり。その材料の一つ一つが面白いだけに、この脚本設計の失敗はもったいないと思った。せっかく女優たちの魅力もこれでは発揮されずに、残念で仕方がない。
見えないものの捉え方によって、人生が変わるというのがテーマの本作。例えば、降霊術を信じるのか、映像の可能性を信じるのか。人々は様々な見えないものの力を信じ、きらびやかな街に隠された黒い欲望や嫉妬に翻弄されていく。
しかし、姉妹はその芯の強さで時代を駆け抜けるのであります。ポートマンとデップは、どちらも独自のポジションを築き、聡明でしなやかな女性の強さを感じさせている。彼女たちと姉妹は、そういった面でも似ているし、だからこそスピリチュアリストと言う浮世離れをした役柄であっても、具現化で来たのだと思う。
そして次世代の監督とも呼ばれるレベッカ・ズロトヴスキのミステリアスでファンタジーな映像美が、姉妹の現実離れした部分とリアルな感情に厚みを加えているようにも見えた。
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