「海角七号/君想う、国境の南」のウェイ・ダーション監督が、日本統治下の台湾で勃発した、原住民族“セデック族”による大規模な抗日暴動“霧社事件”を、壮絶なバイオレンス・アクションで完全映画化した歴史超大作。日本公開に際しては、海外向けの短縮バージョンではなく、第一部&第二部連続上映による全276分の完全版(台湾ドメスティックバージョン)での上映が実現。本作はその第二部「虹の橋」編。
あらすじ:霧社公学校を襲撃したセデック族は、日本人であれば女子供の区別なく容赦なくその手にかけ、多くの命を奪っていった。直ちに報復を開始した日本軍だったが、セデックは地の利を活かした戦いで日本軍を苦しめていく。それでも日本軍の圧倒的な武力の前に、次第に追い詰められていくセデック族だったが…。
<感想>10分間の休憩の後に、第二部を鑑賞。興奮冷めやらぬ思いでどうなることなのかと、・・・。山中に身を潜めたセデックと日本軍の壮絶な死闘が展開する。しかし、セデック族は山岳地帯を素早く動き、神出鬼没の活躍を見せるのだ。この映画は抗日アクション映画でもなく、イデオロギーに凝り固まったプロパガンダ映画でもない。異文化同士の衝突という観点から戦争を描き切った革新的な傑作です。首狩りや信仰も含めてセデック独自の文化、風習をつぶさに描いて、それが他の文化に抑圧されることで惨事を過程を丹念に描いている一方で、日本人も単なる悪役として一面的には描いてはいない。
中には、セデックと親交を深め、彼らを理解しようと努める小島巡査に安藤政信が、あるいはセデック出身のエリートとして高等教育を受けた、日本人へ恩義を捨てることが出来ない花岡一郎・二郎など、それぞれのコミュニティの中で、葛藤する者たちの内面をも映し出している。
そして、蜂起後に抗日セデックの多くが、女子供を含めて自殺した事実も、彼らの祖霊信仰に根ざしたものとして描かれている。観客はその悲痛な光景を目にして、なぜこんな事態になったのか?・・・という思いめぐらさずにはいられない。それは、なぜ戦争は起きるのか、どうすれば人はその悲劇を避けられるのだろうか。というメッセージも込められている。
それでも、圧倒的なスケールと迫力に満ちた、血わき肉踊るアクション活劇の大作でもある。主な武器は、セデック族の蕃刀(大きなナタ)と猟銃、槍に弓矢など、そして己の肉体のみという彼らの戦士たちが、険しい山岳地帯を裸足で自在に駆け巡り、日本軍の近代兵器で武装した1000人の軍隊を血祭りに上げていくのである。その勇壮な活躍は、日本人としての感情など通り越してひたすら痛快に映っている。
足場の悪い山肌、渓流の岩場、断崖絶壁などで繰り広げられる。その彼らの体を張った立ち回りは命がけだ。同じくらいにカメラワークも命がけ感がみなぎり、度肝を抜く仕上がりになっている。
断崖絶壁に架けられた吊り橋を切り落とし、日本軍はその断崖絶壁に細い道を恐る恐る歩くと、上から大きな石が落とされ銃撃がと、ひとたまりもなく死んでゆく。
第二部の後半で、日本軍に最後の突撃を仕掛ける大迫力の戦闘スペクタルでは、日本軍が容赦ない追い込みをかけるが、戦士たちは怯えることなく銃弾や砲弾の飛び交う戦場を、裸足で爆走する。
山奥でゲリラ戦をするセデックに対して、日本軍は榴弾砲を撃ったり、飛行機で毒ガス弾を撒いたりする。それでも彼らは屈することなく、倒すことができない。だからセデック族と敵対している山岳民を雇い、彼らの首を狙わせる。男は300円、女は200円、子供は100円とかお金を支払うのだ。もともと山岳民は部族同士が絶えず戦闘してきたから、それを利用される。戦いは密林でのゲリラ戦から真っ向勝負の最終決戦へと突入していく。
まるで「アポカリプト」のような、狩猟民族は、生き物は死んでも魂は死なないと信じているから、殺す罪悪感も死ぬ恐怖もあまり感じないらしい。だからなのか、ゲリラ戦になると、セデックの女子供たちは食料不足を見越して足手まといになると、自分たちで首をくくって集団自決するシーンもあります。
実際に290人も自決したらしいです。このシーンでセデック族の女たちも、男たちもみな虹が死後との世界を結ぶ橋だと信じて、虹の橋のたもとで待っているからと言いながら死んでいく。きっと日本軍に辱められ殺さられよりも、その土地の部族の掟とプライドなのだろう。
何だか、イスラムの自爆テロもそうだけど、死後の幸せを約束されると信じて平気で死ねる気持ちは理解できない。中でも日本化教育の優等生で、警察官になった二人のセデックの男。彼らは民族のためには近代化しかないと思って、日本人として花岡一郎・二郎と名前ももらい、生きるのだが結局最後は、妻と赤ん坊と一緒に自決するのである。
最後に、どうにもこうにも心に残ったのは、ラスト近くで、セデック族を鎮圧すべく日本から送り込まれた鎌田陸軍少尉が、彼らと面と向かって戦った果てに、逆にセデック族の内面に、日本人に勝るとも劣らぬ大和魂を見出して、ぽつりと言う言葉である。それは、この映画のテーマである、どうすれば人々の心の中にある憎しみ、恨みを解き放ち平和をもたらすことができるのか、ということなんですね。
2013年劇場鑑賞作品・・・110 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:霧社公学校を襲撃したセデック族は、日本人であれば女子供の区別なく容赦なくその手にかけ、多くの命を奪っていった。直ちに報復を開始した日本軍だったが、セデックは地の利を活かした戦いで日本軍を苦しめていく。それでも日本軍の圧倒的な武力の前に、次第に追い詰められていくセデック族だったが…。
<感想>10分間の休憩の後に、第二部を鑑賞。興奮冷めやらぬ思いでどうなることなのかと、・・・。山中に身を潜めたセデックと日本軍の壮絶な死闘が展開する。しかし、セデック族は山岳地帯を素早く動き、神出鬼没の活躍を見せるのだ。この映画は抗日アクション映画でもなく、イデオロギーに凝り固まったプロパガンダ映画でもない。異文化同士の衝突という観点から戦争を描き切った革新的な傑作です。首狩りや信仰も含めてセデック独自の文化、風習をつぶさに描いて、それが他の文化に抑圧されることで惨事を過程を丹念に描いている一方で、日本人も単なる悪役として一面的には描いてはいない。
中には、セデックと親交を深め、彼らを理解しようと努める小島巡査に安藤政信が、あるいはセデック出身のエリートとして高等教育を受けた、日本人へ恩義を捨てることが出来ない花岡一郎・二郎など、それぞれのコミュニティの中で、葛藤する者たちの内面をも映し出している。
そして、蜂起後に抗日セデックの多くが、女子供を含めて自殺した事実も、彼らの祖霊信仰に根ざしたものとして描かれている。観客はその悲痛な光景を目にして、なぜこんな事態になったのか?・・・という思いめぐらさずにはいられない。それは、なぜ戦争は起きるのか、どうすれば人はその悲劇を避けられるのだろうか。というメッセージも込められている。
それでも、圧倒的なスケールと迫力に満ちた、血わき肉踊るアクション活劇の大作でもある。主な武器は、セデック族の蕃刀(大きなナタ)と猟銃、槍に弓矢など、そして己の肉体のみという彼らの戦士たちが、険しい山岳地帯を裸足で自在に駆け巡り、日本軍の近代兵器で武装した1000人の軍隊を血祭りに上げていくのである。その勇壮な活躍は、日本人としての感情など通り越してひたすら痛快に映っている。
足場の悪い山肌、渓流の岩場、断崖絶壁などで繰り広げられる。その彼らの体を張った立ち回りは命がけだ。同じくらいにカメラワークも命がけ感がみなぎり、度肝を抜く仕上がりになっている。
断崖絶壁に架けられた吊り橋を切り落とし、日本軍はその断崖絶壁に細い道を恐る恐る歩くと、上から大きな石が落とされ銃撃がと、ひとたまりもなく死んでゆく。
第二部の後半で、日本軍に最後の突撃を仕掛ける大迫力の戦闘スペクタルでは、日本軍が容赦ない追い込みをかけるが、戦士たちは怯えることなく銃弾や砲弾の飛び交う戦場を、裸足で爆走する。
山奥でゲリラ戦をするセデックに対して、日本軍は榴弾砲を撃ったり、飛行機で毒ガス弾を撒いたりする。それでも彼らは屈することなく、倒すことができない。だからセデック族と敵対している山岳民を雇い、彼らの首を狙わせる。男は300円、女は200円、子供は100円とかお金を支払うのだ。もともと山岳民は部族同士が絶えず戦闘してきたから、それを利用される。戦いは密林でのゲリラ戦から真っ向勝負の最終決戦へと突入していく。
まるで「アポカリプト」のような、狩猟民族は、生き物は死んでも魂は死なないと信じているから、殺す罪悪感も死ぬ恐怖もあまり感じないらしい。だからなのか、ゲリラ戦になると、セデックの女子供たちは食料不足を見越して足手まといになると、自分たちで首をくくって集団自決するシーンもあります。
実際に290人も自決したらしいです。このシーンでセデック族の女たちも、男たちもみな虹が死後との世界を結ぶ橋だと信じて、虹の橋のたもとで待っているからと言いながら死んでいく。きっと日本軍に辱められ殺さられよりも、その土地の部族の掟とプライドなのだろう。
何だか、イスラムの自爆テロもそうだけど、死後の幸せを約束されると信じて平気で死ねる気持ちは理解できない。中でも日本化教育の優等生で、警察官になった二人のセデックの男。彼らは民族のためには近代化しかないと思って、日本人として花岡一郎・二郎と名前ももらい、生きるのだが結局最後は、妻と赤ん坊と一緒に自決するのである。
最後に、どうにもこうにも心に残ったのは、ラスト近くで、セデック族を鎮圧すべく日本から送り込まれた鎌田陸軍少尉が、彼らと面と向かって戦った果てに、逆にセデック族の内面に、日本人に勝るとも劣らぬ大和魂を見出して、ぽつりと言う言葉である。それは、この映画のテーマである、どうすれば人々の心の中にある憎しみ、恨みを解き放ち平和をもたらすことができるのか、ということなんですね。
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