日本による台湾統治時代に発生した、先住民による大規模な抗日運動「霧社事件」を映画化した歴史大作の前編。文化や風習を否定され、野蛮人として扱われたセデック族が、部族の誇りを懸けて武装蜂起するまでを描く。監督は、『海角七号/君想う、国境の南』のウェイ・ダーション。主人公の部族の頭目を、映画に初めて出演するリン・チンタイが熱演するほか、安藤政信、木村祐一など日本人キャストも出演。戦闘シーンの過激さに驚くとともに、彼らのさまざまな苦悩が観る者の心に突き刺さる。
あらすじ:昔から台湾の山岳地帯で生活している狩猟民族、セデック族。日本の統治下でセデック族の人々は野蛮人とさげすまれる一方、日本人化を推し進める教育などを受けることを余儀なくされた。統治開始から35年がたったある日、日本人警察官とセデック族が衝突したことをきっかけに、ついにセデック族は戦うことを決意。セデック族の頭目、モーナ(リン・チンタイ)を中心に、日本人を襲撃するが……。
<感想>今から80年前、日本統治下の台湾で長年の服従を強いられてきた原住民たちが一斉蜂起し、その双方が多大な犠牲を強いられた、歴史上知られざる悲劇があった__。この異文化衝突を血ヘドを吐くような苛烈なドラマと恐ろしくも強烈な皆殺しバイオレンス・アクションで綴った、一大抒情詩である本作。
舞台は1930年の台湾、日本統治時代。中国人が移住してくる前から台湾に暮らしているセデック族という原住民と日本軍の戦いの映画なのだが、言葉もセデック語と日本語だけ。中国語はない。セデック・バレとは、真実の勇者。通過儀礼を終えた一人前の男という意味で、成人すると顔に入れ墨(額と顎)をし、人間の首を狩る。狩猟採取民族だから、映画は1895年に日本軍が入ってくるところから始まる。険しい山奥のジャングルを、半裸で猟銃や槍、弓矢を持ったセデック族が裸足でまるで猿のように軽々と跳んで鹿狩りをするシーンから始まる。
この山にはいろいろな鉱物があるので、それを目当てに日本軍が侵攻して来る。それに対して、セデック族は得意のゲリラ戦で抵抗する。日本兵は道を一列に並んで歩いて山を登ってくるから、待ち伏せして彼らの射的の的になってしまう。
しかし、日本軍は村の女子供を人質にして、やっとセデック族を討ち鎮める。それから何十年か経った1930年、セデック族は日本の管理下で林業をして暮らしていたのだが、大切な銃は駐在所に管理されて、好きなように狩猟はできないのだ。
日本語を押し付けられ、小学校ではセデック語を話すと教師にビンタされるのである。日本は、琉球や朝鮮でも同じことをやっていたけれど、アメリカだってインディアンに英語とキリスト教を押し付けていた。その他の国でもみな同じようなことをしていたのだ。
確かに歴史で習ったことはあるが、映画を観るまではこれほど過酷な事が起こっていたとは。安藤政信演じる警官みたいに、彼らの文化に魅力を感じて深く研究した日本人も多かったそうです。彼らセデック族は、アイヌや琉球人と同じようで、肌が浅黒くて、顔の彫が深くて、目が大きくまつ毛が濃い。それに動作が活発で勇敢である。中国人とは全然違って、みんな山岳民の血を引いている。だから演じている人たちもみな台湾の山岳民で、とにかく面構えの良すぎる出演者ばかり。主人公モーナ・ルダオ役のリン・チンタイさんを初め、彼の住む部落にいる若者たち騒動員。
発端は、セデックの首長モーナの長男が駐在に酒を勧めたら殴られる。それはその酒というのは、穀物や果物を口で噛んで、唾液でアルコールにしたものなんですね。だから日本人にしてみたら、「そんな汚いもの飲めるか」って怒ったわけ。それが、逆にセデック族にしてみれば失礼だと。その駐在を袋叩きにしてしまう。このままだと部族は日本軍に処罰されて、民族の誇りを奪われ、また権利が奪われる。そこでやられる前にやれと、逆に武装蜂起を決意する。
日本人俳優で、木村祐一はあまり出番もなく直ぐに殺されてしまった。安藤政信演じる警官は、山岳民に理解があるのだが、妻や子供殺されてセデックを憎んでしまう。一番悲惨だったのが、霧の濃い朝だった運動会の日に、学校を襲撃して、学校ではセデックの子供たちが、それまで友達だった日本人の子供の首を狩る。
それは、学校では先生が、セデックの子供たちを蕃人(野蛮人)と差別待遇をするから。日本人の子供たちもセデックの子供に対して、野蛮人と蔑視の目を向けて辛くあたったからだろう。
1930年の10月27日の朝、霧社で運動会に集まった日本人134名が虐殺された。犠牲者の多くはセデックの風習に従って首を刎ねられ、そこには女子供も含まれていた。それはこの地に暮らす台湾原住民、セデック族による犯行だった。
ただちに日本軍と警察の合同部隊が結成され、討伐作戦を開始。山中で激しい戦闘が繰り広げられた。第1部のラストでは、300人のセデックの戦士たちが、日本人の集落を襲い、クライマックスとなる運動会襲撃シーンでは、分かっていてもショッキングな映像に、ただただ目を背けることはできません。
アクション監督は「オールド・ボーイ」(03)、「モンガに散る」のヤン・ギルヨンとジム・ジェウォン。それと、画面に見入るほどいい男ぞろいの、原住民キャストの熱演にも拍手したい。中でも決起のリーダーとなる、モーナ・ルダオ役を演じたリン・チンタイの神がかり的なかっこよさにはまいりましたです。映画初出演といいながら、威風堂々としているので普段は何をしているのだろうと。なんと牧師さんだそうです。
モーナを慕って戦いに加わる少年パワン役のリン・ユエンジエの活躍。同族でありながら日本軍に協力して宿敵モーナを追う、タイモ・ワリス役のマー・ジーシアンなど、印象に残る人たちばかり。そうそう、台湾女優のビビアン・スーがセデック族の妊婦役で、出演してました。
また日本人では小島巡査役の安藤政信を初め、討伐部隊の指揮官となる鎌田少尉役の河原さぶ、横暴な振る舞いで事件の原因を作る吉村巡査には、松本実ほか、日本人のキャストの好演も素晴らしかった。
未だ多くの謎を問いかける「霧社事件」の真実に迫る、1部、2部作、計4時間半の歴史アクション大作であります。
2013年劇場鑑賞作品・・・109 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:昔から台湾の山岳地帯で生活している狩猟民族、セデック族。日本の統治下でセデック族の人々は野蛮人とさげすまれる一方、日本人化を推し進める教育などを受けることを余儀なくされた。統治開始から35年がたったある日、日本人警察官とセデック族が衝突したことをきっかけに、ついにセデック族は戦うことを決意。セデック族の頭目、モーナ(リン・チンタイ)を中心に、日本人を襲撃するが……。
<感想>今から80年前、日本統治下の台湾で長年の服従を強いられてきた原住民たちが一斉蜂起し、その双方が多大な犠牲を強いられた、歴史上知られざる悲劇があった__。この異文化衝突を血ヘドを吐くような苛烈なドラマと恐ろしくも強烈な皆殺しバイオレンス・アクションで綴った、一大抒情詩である本作。
舞台は1930年の台湾、日本統治時代。中国人が移住してくる前から台湾に暮らしているセデック族という原住民と日本軍の戦いの映画なのだが、言葉もセデック語と日本語だけ。中国語はない。セデック・バレとは、真実の勇者。通過儀礼を終えた一人前の男という意味で、成人すると顔に入れ墨(額と顎)をし、人間の首を狩る。狩猟採取民族だから、映画は1895年に日本軍が入ってくるところから始まる。険しい山奥のジャングルを、半裸で猟銃や槍、弓矢を持ったセデック族が裸足でまるで猿のように軽々と跳んで鹿狩りをするシーンから始まる。
この山にはいろいろな鉱物があるので、それを目当てに日本軍が侵攻して来る。それに対して、セデック族は得意のゲリラ戦で抵抗する。日本兵は道を一列に並んで歩いて山を登ってくるから、待ち伏せして彼らの射的の的になってしまう。
しかし、日本軍は村の女子供を人質にして、やっとセデック族を討ち鎮める。それから何十年か経った1930年、セデック族は日本の管理下で林業をして暮らしていたのだが、大切な銃は駐在所に管理されて、好きなように狩猟はできないのだ。
日本語を押し付けられ、小学校ではセデック語を話すと教師にビンタされるのである。日本は、琉球や朝鮮でも同じことをやっていたけれど、アメリカだってインディアンに英語とキリスト教を押し付けていた。その他の国でもみな同じようなことをしていたのだ。
確かに歴史で習ったことはあるが、映画を観るまではこれほど過酷な事が起こっていたとは。安藤政信演じる警官みたいに、彼らの文化に魅力を感じて深く研究した日本人も多かったそうです。彼らセデック族は、アイヌや琉球人と同じようで、肌が浅黒くて、顔の彫が深くて、目が大きくまつ毛が濃い。それに動作が活発で勇敢である。中国人とは全然違って、みんな山岳民の血を引いている。だから演じている人たちもみな台湾の山岳民で、とにかく面構えの良すぎる出演者ばかり。主人公モーナ・ルダオ役のリン・チンタイさんを初め、彼の住む部落にいる若者たち騒動員。
発端は、セデックの首長モーナの長男が駐在に酒を勧めたら殴られる。それはその酒というのは、穀物や果物を口で噛んで、唾液でアルコールにしたものなんですね。だから日本人にしてみたら、「そんな汚いもの飲めるか」って怒ったわけ。それが、逆にセデック族にしてみれば失礼だと。その駐在を袋叩きにしてしまう。このままだと部族は日本軍に処罰されて、民族の誇りを奪われ、また権利が奪われる。そこでやられる前にやれと、逆に武装蜂起を決意する。
日本人俳優で、木村祐一はあまり出番もなく直ぐに殺されてしまった。安藤政信演じる警官は、山岳民に理解があるのだが、妻や子供殺されてセデックを憎んでしまう。一番悲惨だったのが、霧の濃い朝だった運動会の日に、学校を襲撃して、学校ではセデックの子供たちが、それまで友達だった日本人の子供の首を狩る。
それは、学校では先生が、セデックの子供たちを蕃人(野蛮人)と差別待遇をするから。日本人の子供たちもセデックの子供に対して、野蛮人と蔑視の目を向けて辛くあたったからだろう。
1930年の10月27日の朝、霧社で運動会に集まった日本人134名が虐殺された。犠牲者の多くはセデックの風習に従って首を刎ねられ、そこには女子供も含まれていた。それはこの地に暮らす台湾原住民、セデック族による犯行だった。
ただちに日本軍と警察の合同部隊が結成され、討伐作戦を開始。山中で激しい戦闘が繰り広げられた。第1部のラストでは、300人のセデックの戦士たちが、日本人の集落を襲い、クライマックスとなる運動会襲撃シーンでは、分かっていてもショッキングな映像に、ただただ目を背けることはできません。
アクション監督は「オールド・ボーイ」(03)、「モンガに散る」のヤン・ギルヨンとジム・ジェウォン。それと、画面に見入るほどいい男ぞろいの、原住民キャストの熱演にも拍手したい。中でも決起のリーダーとなる、モーナ・ルダオ役を演じたリン・チンタイの神がかり的なかっこよさにはまいりましたです。映画初出演といいながら、威風堂々としているので普段は何をしているのだろうと。なんと牧師さんだそうです。
モーナを慕って戦いに加わる少年パワン役のリン・ユエンジエの活躍。同族でありながら日本軍に協力して宿敵モーナを追う、タイモ・ワリス役のマー・ジーシアンなど、印象に残る人たちばかり。そうそう、台湾女優のビビアン・スーがセデック族の妊婦役で、出演してました。
また日本人では小島巡査役の安藤政信を初め、討伐部隊の指揮官となる鎌田少尉役の河原さぶ、横暴な振る舞いで事件の原因を作る吉村巡査には、松本実ほか、日本人のキャストの好演も素晴らしかった。
未だ多くの謎を問いかける「霧社事件」の真実に迫る、1部、2部作、計4時間半の歴史アクション大作であります。
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