スペインのアカデミー賞にあたるゴヤ賞で作品賞を含む最多5部門を獲得した感動のヒューマン・ドラマ。病のために残りわずかな人生となり、身辺整理を始めた主人公が、古い友人の突然の訪問に戸惑いつつも、2人で愛犬の里親探しをしながら過ごす特別な4日間を、切なくもハートウォーミングに綴る。主演は「瞳の奥の秘密」のリカルド・ダリンと「トーク・トゥ・ハー」のハビエル・カマラ。監督は、これが日本初紹介のセスク・ガイ。
あらすじ:スペインで俳優として活躍するフリアン。妻とは離婚し、大学生の息子とも離ればなれで、一緒に暮らしているのは愛犬のトルーマンだけ。ある日、そんな彼の自宅に、カナダから昔の親友トマスが突然やってきた。フリアンのいとこから彼の具合がよくないと聞いたからだった。実はフリアンは既に自らの運命を受け入れ、身辺整理を始めていた。そんな中、トマスは突然の訪問に困惑するフリアンにお構いなしに、勝手に4日間滞在すると決めてしまう。そしてフリアンの唯一の気がかりであるトルーマンの里親探しを手伝うトマスだったが…。
<感想>末期ガンのスペイン俳優の終活を辿る、悲哀こもごもの始末記であり、オーソドックスな作りの中に人間賛歌が滲み出ていて、またその滲み具合に気品が漂って良かった。本作の原題が「トルーマン」という愛犬の名前なのに、邦題がいかにもな、日本人が好むように付けられていたのが残念である。
カナダから駆けつける親友のトマス役のハビエル・カマラが上手かった。久しぶりの男の映画であり、それもアクションとかノワールとかヤクザじゃなくて、難病ものというのが意外でしたね。
余命幾ばくもないフリアン、医者が抗がん剤の治療をしても治らないと言うのだ。だったら、友人とか今一緒に住んでいる愛犬のトルーマンのこととか、オランダの大学へ行っている息子にも知らせたいし、葬儀のことも、棺選びとか、土葬か火葬か、とか、その二人の淡々としたやりとり。
涙を流さない友人、考えを改めるように説得しながらも、彼の身辺整理の数日間に寄り添うのだ。
だけど互いの想いが観ていて、視線や言葉の端々で、ひしひしと伝わってくるのだ。フリアンが飼っている老犬がよきアクセントとなり、別れた妻が絡んだり、妹が来て、親友のトマスとは元恋人だったこともあり、二人は懐かしさと、フリアンの死と、その辛さを何故に最期の方でセックスで片づけてしまうのか理解不能。この二人は、まだ愛していたのかもね。
面白いのが、愛犬の里親探しから始まり、昔寝た女優の夫への謝罪やら、ありきたりなシーンの積み重ねなのに、そのシーンに込めたユーモアも甘味し、涙を誘う絶妙なセリフ回しも良かった。尊厳死に近いテーマなのに、映画全体がマドリードの街並みの喧騒に包まれていて、彼らの死についての会話も観念的じゃなく、日常風景の中に溶け込んだ味わいで描かれていた。
とにかく、主人公は後1カ月くらいしか生きられない。最後は苦しむのが嫌だとばかりに、毒薬を呑むと言うのだ。それに、金銭面がルーズな男で、その金銭面を全部この親友にどっぷりと頼ってしまい、任せてしまうことに。葬儀とか、借金とか、お金がかかることであり、その金も残していない男。そのことも、全部ひっくるめて面倒をみてくれと言っている。よほどの信用がない男でないと、引き受けられないのに、気弱なのか、人が善すぎるのか、友人が滞在している4日間だけでも、トマスはフリアンにかなりの大金を支払っているのだ。昔この二人は、もしかして同棲をしていて、恋愛関係の仲だったのかもしれない。現在は、別々に女性と結婚をして子供もいる。
ラストに空港で、フリアンが一番大事な問題である、愛犬トルーマンをトマスに押し付ける。つまり、カナダへ連れて行き、最後まで面倒を見てくれというのだ。これも図々しいくらいに、押し付けまがしく「嫌だという時間を与えずに」。彼は一安心したような顔をして、一見落着とばかりに見送るのだ。
死に向き合うことは、悲しくも恐ろしくもあるが、人間愛を深めるのかもしれない。しかしながら、終活を親友に託すとは、よほど親しいか、心底自分のことを知り尽くしているのか、身内や肉親よりも他人の友人を選ぶことに、この映画は大きな決断を迫られているとみた。男性だからなのか、女性だったらこうはいかないだろうに。
2017年劇場鑑賞作品・・・186アクション・アドベンチャーランキング
あらすじ:スペインで俳優として活躍するフリアン。妻とは離婚し、大学生の息子とも離ればなれで、一緒に暮らしているのは愛犬のトルーマンだけ。ある日、そんな彼の自宅に、カナダから昔の親友トマスが突然やってきた。フリアンのいとこから彼の具合がよくないと聞いたからだった。実はフリアンは既に自らの運命を受け入れ、身辺整理を始めていた。そんな中、トマスは突然の訪問に困惑するフリアンにお構いなしに、勝手に4日間滞在すると決めてしまう。そしてフリアンの唯一の気がかりであるトルーマンの里親探しを手伝うトマスだったが…。
<感想>末期ガンのスペイン俳優の終活を辿る、悲哀こもごもの始末記であり、オーソドックスな作りの中に人間賛歌が滲み出ていて、またその滲み具合に気品が漂って良かった。本作の原題が「トルーマン」という愛犬の名前なのに、邦題がいかにもな、日本人が好むように付けられていたのが残念である。
カナダから駆けつける親友のトマス役のハビエル・カマラが上手かった。久しぶりの男の映画であり、それもアクションとかノワールとかヤクザじゃなくて、難病ものというのが意外でしたね。
余命幾ばくもないフリアン、医者が抗がん剤の治療をしても治らないと言うのだ。だったら、友人とか今一緒に住んでいる愛犬のトルーマンのこととか、オランダの大学へ行っている息子にも知らせたいし、葬儀のことも、棺選びとか、土葬か火葬か、とか、その二人の淡々としたやりとり。
涙を流さない友人、考えを改めるように説得しながらも、彼の身辺整理の数日間に寄り添うのだ。
だけど互いの想いが観ていて、視線や言葉の端々で、ひしひしと伝わってくるのだ。フリアンが飼っている老犬がよきアクセントとなり、別れた妻が絡んだり、妹が来て、親友のトマスとは元恋人だったこともあり、二人は懐かしさと、フリアンの死と、その辛さを何故に最期の方でセックスで片づけてしまうのか理解不能。この二人は、まだ愛していたのかもね。
面白いのが、愛犬の里親探しから始まり、昔寝た女優の夫への謝罪やら、ありきたりなシーンの積み重ねなのに、そのシーンに込めたユーモアも甘味し、涙を誘う絶妙なセリフ回しも良かった。尊厳死に近いテーマなのに、映画全体がマドリードの街並みの喧騒に包まれていて、彼らの死についての会話も観念的じゃなく、日常風景の中に溶け込んだ味わいで描かれていた。
とにかく、主人公は後1カ月くらいしか生きられない。最後は苦しむのが嫌だとばかりに、毒薬を呑むと言うのだ。それに、金銭面がルーズな男で、その金銭面を全部この親友にどっぷりと頼ってしまい、任せてしまうことに。葬儀とか、借金とか、お金がかかることであり、その金も残していない男。そのことも、全部ひっくるめて面倒をみてくれと言っている。よほどの信用がない男でないと、引き受けられないのに、気弱なのか、人が善すぎるのか、友人が滞在している4日間だけでも、トマスはフリアンにかなりの大金を支払っているのだ。昔この二人は、もしかして同棲をしていて、恋愛関係の仲だったのかもしれない。現在は、別々に女性と結婚をして子供もいる。
ラストに空港で、フリアンが一番大事な問題である、愛犬トルーマンをトマスに押し付ける。つまり、カナダへ連れて行き、最後まで面倒を見てくれというのだ。これも図々しいくらいに、押し付けまがしく「嫌だという時間を与えずに」。彼は一安心したような顔をして、一見落着とばかりに見送るのだ。
死に向き合うことは、悲しくも恐ろしくもあるが、人間愛を深めるのかもしれない。しかしながら、終活を親友に託すとは、よほど親しいか、心底自分のことを知り尽くしているのか、身内や肉親よりも他人の友人を選ぶことに、この映画は大きな決断を迫られているとみた。男性だからなのか、女性だったらこうはいかないだろうに。
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