Quantcast
Channel: パピとママ映画のblog
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2328

武曲 MUKOKU★★★・5

$
0
0
『日本で一番悪い奴ら』『怒り』などの綾野剛を主演に迎え、芥川賞作家・藤沢周の「武曲」を基に描く人間ドラマ。鎌倉を舞台に、境遇の違う2人の男が剣士として鍛錬を積み、本気でぶつかり合う姿を活写する。『私の男』や『ディアスポリス』シリーズなどの熊切和嘉が監督を務め、綾野と相対する高校生を、『2つ目の窓』などの村上虹郎が熱演。綾野の鍛え上げられた肉体も見どころ。
あらすじ:剣道5段の矢田部研吾(綾野剛)は、ある出来事により酒に溺れ、警備員をしながら何とか暮らしていた。彼の母親はすでに他界し、以前は“殺人剣の使い手”として名をはせた父親も入院中で植物状態だった。ある日、研吾はラップに夢中の高校生・羽田融(村上虹郎)と出会い、彼の中に父と同様の剣士としての素質を見いだす。

<感想>冒頭部分で、幼い頃より警察官の父親、小林薫による非情な剣道の教えで、一目置かれる存在となった矢田部研吾。成長した矢田部研吾の綾野剛が、警備員となって酒浸りの日を送っている。それには訳があり、父親の小林薫との親子関係が、かなり重く絡んで来る。つまり、父殺しの罪悪感をどう克服するかというところに、高校生、羽田融という若い好敵手が現れる話なのだが。

綾野剛と村上虹郎との対決が軸になっているのだが、熊切和嘉監督の作品は、映像効果があざといとして嫌う人もいるらしいが、今回では、その側面で、抑え気味であった。トラウマを抱えた若者二人の、剣道による対決がメインであります。

台風の洪水で溺死寸前の体験をしたチャラい若者、ラップに夢中の高校生・羽田融を演じる村上虹郎。そんな融の秘めたる剣の才能を見抜いた師匠、光邑師範は、研吾を立ち直らせるきっかけになるかもしれないと、彼のもとに融を送り込むのだったが…。

ですが、何といっても父親を植物人間にしてしまった、主人公の矢田部研吾の綾野剛が凄いのだ。悪いのは真剣勝負を強要する父親なのだが、虐待まがいの指導を受け剣道を教えられた研吾は、父親との確執の果てに罪を背負ってしまった。こういう無茶な身内を持つと子供は苦労をするという見本のようなもの。父親も自分の性格を見抜いて、息子にわざと負けて死んでやろうとでも思っていたのかどうか知らないが。それとも、剣道の達人となって強くなっている息子の腕の方が、父親よりも一歩上だったのだろうか。

剣を捨てて酒におぼれていく毎日を送り、病院へ父親の見舞いにいく息子。過去から逃げられずに苦しむ男。全身が傷口のような彼の生々しい色気に、息が詰まりながらも画面から目が離せなかった。彼女に前田敦ちゃんがちょい役で出演、酔っぱらった研吾にいいようにされている女の役で悲しい。

一番の見どころは、台風が接近してきたのか、夜の暴風雨の中での2人が対峙するところ。斜めに吹き付ける大雨の中、強烈な光が放つ綾野剛の顔である。

暗闇の中での二人の果し合いは、張り詰めた空気感の中で殺気を放つまるで殺しの現場のように見えた。トラウマに囚われた2人の男が、前に進むためでなく、その弱さゆえに体と剣を激しくぶつけ合うのだ。

ラストの後ろ向きに半身裸になり、背中の筋肉と腹筋の見事さの綾野剛の身体作りに感心した。それに、道場で剣道の防具を付ける所作は美しく、向き合う二人の清々しさに、これぞ剣道の教えなのではと思った。

他の出演者には、剣道の師匠である光邑師範の柄本明さんや、父親の小林薫さんの剣道の達人ぶりに驚いたし、北鎌倉の風景が鬱屈した空気が、逃げ場のない二人の苦悩を引き立てていた。

海岸の砂浜で竹刀を素振りする村上虹郎の凛々しさ、ホームレスのおじさんも出て来るし、矢田部研吾の父親の愛人だった小料理屋の女将の風吹じゅん、そしてそれぞれの母親たちもいい味を出していると思いました。

2017年劇場鑑賞作品・・・129映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング/

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2328

Trending Articles