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マン・ダウン 戦士の約束★★★★

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「トランスフォーマー」「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」のシャイア・ラブーフがアフガニスタンの過酷な戦場から帰還した海兵隊員を演じるサスペンス・アクション。復員兵の心の傷に焦点を当て、帰還した主人公を待ち受ける不条理な運命を斬新な構成で衝撃的に描き出す。共演はジェイ・コートニー、ケイト・マーラ、ゲイリー・オールドマン。監督は「陰謀の代償 N.Y.コンフィデンシャル」のディート・モンティエル。

<感想>アメリカ人の生活に憧れた時代も過ぎ去り、とりわけ9・11以後は、テロとの闘いという正義の名のもとに、イラクやアフガニスタンへ、兵士として送り出される者の周辺が辛い。

主人公が米軍帰還兵のPTSD(心的外傷後ストレス障害)問題については、これまで度々論じられたり映画化されたりしてきたが、古くはベトナム戦争の「ディア・ハンター」や「フルメタル・ジャケット」、最近ではイラク戦争の「アメリカン・スナイパー」などが上げられる。

そして、この作品で描かれているのは、アフガン戦争に派遣された海兵隊員の物語。演じるのは、「トランスフォーマー」で一躍スターダムにのし上がった個性派俳優のシャイア・ラブーフ。ヒーローは戦地から帰還し、PTSDを発症しホームレスとなり、かつて愛したものにも妄想を描くようになる。その描写が哀しく切なくて、主人公が目の当たりにする廃墟と化した故郷の街の造形が、DVDスルーのチープなディストピアSF映画のようで、少しだけ震えてしまった。

それに、家を探しあてて帰れば、愛する息子が幻覚を見ているような、敵に捕らわれているように見えてしまい、息子だけは絶対に守ると抱きかかえて逃げ惑う姿に、妻は正気を失った夫に戸惑い警察へ電話をして、結局は銃を持っていたので、撃たれてしまう。

時系列を複雑化させ、いくつかの謎の探究へと観客を駆り立てる展開。こういう構成は、下手にやると謎が解けた途端に、観客が興味を失ってしまう危険性があるようですが、一つ一つの画面の切り取り方が尋常ではなく素晴らしかった。視線の演出もきっちりとやっていて、クライマックスの盛り上がりはもはや力業である。

独創的で魅力的な色彩設計の意味も、謎解きの過程で分かって来る。シャイア・ラブーフが、彼の演技力と持ち味を完璧に活かして体当たり役で良かった。カウンセラー的役割を果たすゲイリー・オールドマンも渋くてこういう役が似合う。

タイトルの「マン・ダウン」という聞きなれない言葉の意味するところは何か。もともとは、軍隊用語で、仲間がけがをしたり倒れたりすることを意味する言葉だというが、ここでは最愛の息子との取り決めで、「愛している」という、もう一つの別の意味が込められているのだ。

その「マン・ダウン」という言葉で結ばれた父と息子の堅い絆が、帰国後の2人の間で、どのように変容していったのか、そのあたりをディート・モンティエル監督が、PTSDと絡めて執拗に、アフガニスタンでの海兵隊員の任務の過酷さもさることながら、ここで監督が力を込めて描くのは、PTSDというストレス障害の実態だろう。

戦場で起きた事故について大尉のゲイリー・オールドマンとの、面談が帰国後の奇怪な行動へとつながっていく恐ろしさ。主人公のシャイア・ラブーフとゲイリー・オールドマンが、本音で渡り合う息詰まる心理の攻防戦は、何とも言えない心に響く激しい戦闘シーンよりも、長く記憶に残る名シーンとなっていた。

2017年劇場鑑賞作品・・・102映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング/

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