貧困地域に生まれた孤独な黒人少年を主人公に、彼が自らのセクシャリティに悩み、自分のアイデンティティと居場所を探し求めてもがき苦しみながら成長していくさまを、少年期、青年期、成人期の3パートに分け、革新的な映像美とともに描き出したヒューマン・ドラマ。第89回アカデミー賞ではみごと作品賞を含む3冠に輝いた。監督は長編2作目の新鋭バリー・ジェンキンズ。
<感想>今年のアカデミー賞作品賞に輝き、マハーシャラ・アリが助演男優賞に輝いた本作品。製作総指揮はブラッド・ピット。企画、製作手腕には定評があり、「それでも夜は明ける」ではプロデューサーとしてオスカーを手にしている。ピット率いるプランBエンターテインメント。
さらに製作を支援したもう1社であるA24も、「ルーム」「エクス・マキナ」というアカデミー賞関連作を送り出した製作・配給会社なのだ。
主人公シャロンの人生が、幼少期、少年期、青年期の3つの時代で描かれる本作。主人公シャロンの三つの時代を、それぞれ少年ではアレックス・ヒバート、高校生ではアシュトン・サンダース、青年期にはトレバンテ・ローズという別々の人物だが、同じ内面を持つ、同じ1人の人物にしか見えないのが不思議であった。それほどに、実にスムーズに演じていたからなのだろう。
幼少時代では、内気な性格のシャロンが、学校でリトルというあだ名で虐められ、家では母親が麻薬中毒者で、いつも家には男を連れ込んでいて、息子を邪見にして外へ出ていろと命令するダメな母親。自分の居場所を求めてもがく黒人少年の心の成長を、少年時代、高校時代、青年時代の三章構成で描く愛の物語。
実に光を抜いたり色を足したりするカラーリストの技術が主役級に活かされた本作は、長編は2作目だというバリー・ジェンキンズ監督と原案のタレル・アルヴィン・マクレイニーが作り上げた物語でもある。そのまま彼らの人生の欠片を集めたものだと言う。
麻薬中毒の母親に、ネグレクトされた少年期。自覚のない時から“オカマ”と虐められるセクシャリティ。無秩序なスラム社会でサバイバルするために虚勢を張る必要性など、のどかなイメージのマイアミであっても黒人の生きる世界は生易しくはなかった。
例えば、マハーシャラ・アリが演じるフアンという優しいオジサン的な存在。窮地を救う、食べさせてくれ、泳ぎを教えてくれ、「自分の道は自分で決めろ」と生き方を指南する、パーフェクトでナイスな人物なのだ。それに、海辺で心を通わせた親友とのシーンは、まるで綺麗な青春のラブストーリーなのだ。
高校生の時、月明かりの浜辺でシャロンとケヴィンは、初めてお互いの心に触れる。だが、翌日、学校でドレッドヘアーのいじめっ子が、シャロンを連れて来てケヴィンに殴れを命令する。シャロンはケヴィンに殴られ、いじめっ子たちにも足蹴にされてケガをするも、教員たちは「誰がしたの、名前を言いなさい」と言うだけ。
名前を言ったらどうなる物でもないことを知っているシャロンは、ダンマリを決め込む。そして、翌日、学校へ行くといきなりそのいじめっ子のドレッドヘアーの男を、机やイスで頭を殴りつける。大騒ぎになり、警察も来て少年院送りになるシャロン。
タイトルの「ムーンライト」とは、“暗闇の中で輝く光“を暗示する言葉でもある。本当の自分を見せられずに生きてきた主人公の暗闇に、希望の光は指すのだろうか?
シャロンはアラスカの少年院に送られ、青年期の彼は、フアンと同じ道を辿り、その土地で麻薬ディーラーとなる。彼は体を鍛え、金歯を装着し、高級車をのり回す彼に、昔の面影はない。弱い自分から脱却し、心身を鍛え上げたのだ。
そんな彼に突然ケヴィンから電話が入る。それは「あの高校生の時の事件のことを謝りたい」というケヴィンの言葉に心を揺さぶられる。
ゲイと虐められていたシャロン、高校生の時に仲良くしてくれて、自分の心の中にあった女性を愛せない自分。ケヴィンに恋をした高校生時代を思い出して、久しぶりに会いにいく。シャロンの身体は鍛え上げられた筋肉マンになっており、どうみてもゲイだとは見えない。
それにしても、夜の海に映し出される色がありえないくらいに美しかった。アフリカ系の人たちの褐色の肌色が、フロリダの自然光を浴び、青や薄紫の陰影を滲ませる。「ムーンライト」というタイトルがまさにその通りだと感じた。
2017年劇場鑑賞作品・・・74アクション・アドベンチャーランキング
<感想>今年のアカデミー賞作品賞に輝き、マハーシャラ・アリが助演男優賞に輝いた本作品。製作総指揮はブラッド・ピット。企画、製作手腕には定評があり、「それでも夜は明ける」ではプロデューサーとしてオスカーを手にしている。ピット率いるプランBエンターテインメント。
さらに製作を支援したもう1社であるA24も、「ルーム」「エクス・マキナ」というアカデミー賞関連作を送り出した製作・配給会社なのだ。
主人公シャロンの人生が、幼少期、少年期、青年期の3つの時代で描かれる本作。主人公シャロンの三つの時代を、それぞれ少年ではアレックス・ヒバート、高校生ではアシュトン・サンダース、青年期にはトレバンテ・ローズという別々の人物だが、同じ内面を持つ、同じ1人の人物にしか見えないのが不思議であった。それほどに、実にスムーズに演じていたからなのだろう。
幼少時代では、内気な性格のシャロンが、学校でリトルというあだ名で虐められ、家では母親が麻薬中毒者で、いつも家には男を連れ込んでいて、息子を邪見にして外へ出ていろと命令するダメな母親。自分の居場所を求めてもがく黒人少年の心の成長を、少年時代、高校時代、青年時代の三章構成で描く愛の物語。
実に光を抜いたり色を足したりするカラーリストの技術が主役級に活かされた本作は、長編は2作目だというバリー・ジェンキンズ監督と原案のタレル・アルヴィン・マクレイニーが作り上げた物語でもある。そのまま彼らの人生の欠片を集めたものだと言う。
麻薬中毒の母親に、ネグレクトされた少年期。自覚のない時から“オカマ”と虐められるセクシャリティ。無秩序なスラム社会でサバイバルするために虚勢を張る必要性など、のどかなイメージのマイアミであっても黒人の生きる世界は生易しくはなかった。
例えば、マハーシャラ・アリが演じるフアンという優しいオジサン的な存在。窮地を救う、食べさせてくれ、泳ぎを教えてくれ、「自分の道は自分で決めろ」と生き方を指南する、パーフェクトでナイスな人物なのだ。それに、海辺で心を通わせた親友とのシーンは、まるで綺麗な青春のラブストーリーなのだ。
高校生の時、月明かりの浜辺でシャロンとケヴィンは、初めてお互いの心に触れる。だが、翌日、学校でドレッドヘアーのいじめっ子が、シャロンを連れて来てケヴィンに殴れを命令する。シャロンはケヴィンに殴られ、いじめっ子たちにも足蹴にされてケガをするも、教員たちは「誰がしたの、名前を言いなさい」と言うだけ。
名前を言ったらどうなる物でもないことを知っているシャロンは、ダンマリを決め込む。そして、翌日、学校へ行くといきなりそのいじめっ子のドレッドヘアーの男を、机やイスで頭を殴りつける。大騒ぎになり、警察も来て少年院送りになるシャロン。
タイトルの「ムーンライト」とは、“暗闇の中で輝く光“を暗示する言葉でもある。本当の自分を見せられずに生きてきた主人公の暗闇に、希望の光は指すのだろうか?
シャロンはアラスカの少年院に送られ、青年期の彼は、フアンと同じ道を辿り、その土地で麻薬ディーラーとなる。彼は体を鍛え、金歯を装着し、高級車をのり回す彼に、昔の面影はない。弱い自分から脱却し、心身を鍛え上げたのだ。
そんな彼に突然ケヴィンから電話が入る。それは「あの高校生の時の事件のことを謝りたい」というケヴィンの言葉に心を揺さぶられる。
ゲイと虐められていたシャロン、高校生の時に仲良くしてくれて、自分の心の中にあった女性を愛せない自分。ケヴィンに恋をした高校生時代を思い出して、久しぶりに会いにいく。シャロンの身体は鍛え上げられた筋肉マンになっており、どうみてもゲイだとは見えない。
それにしても、夜の海に映し出される色がありえないくらいに美しかった。アフリカ系の人たちの褐色の肌色が、フロリダの自然光を浴び、青や薄紫の陰影を滲ませる。「ムーンライト」というタイトルがまさにその通りだと感じた。
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