独自の教育方針の下、文明社会と隔絶された山奥の森で風変わりなサバイバル生活を送っていた父親と6人の子どもたちが、亡くなった母親の願いを叶えるために初めての都会へと旅に出るロード・ムービー。道中で様々な出会いや経験を重ねる中で芽生える子どもたちの戸惑いや父親の葛藤の行方をほろ苦くも心温まるタッチで綴る。主演は「ヒストリー・オブ・バイオレンス」「イースタン・プロミス」のヴィゴ・モーテンセン。共演にフランク・ランジェラ、キャスリン・ハーン、スティーヴ・ザーン。監督は俳優として活躍し、本作が長編監督2作目のマット・ロス。
<感想>厳格な父ベン(ビゴ・モーテンセン)の独特な教育方針のもと、世間と切り離されたワシントン州の森林で育った三男三女のキャッシュ一家。風変わりで個性的、どこかヘンテコな彼らが、長く入院していた母親の葬儀に出席するため、ニュー・メキシコ州までの2400キロのバス旅に出発する。
キャッシュ一家の普通と違う生活習慣、そして旅の途中、初めて接する世間とのギャップがおかしすぎる。果たして、ヘンテコ一家を待つ驚きの運命はいかに!?
例えば、日課の林間ランニング! 鍛え上げられた子どもたちの体力は運動選手なみ!そして、強く生き抜くためには、頭脳だけではなくて体力も重要。毎日のスケジュールにはしっかりと「体育」も組み込まれている。だがその中身は……断崖絶壁を素手で登るロック・クライミングと、本気で戦う実践格闘術!だが、そのロック・クライミングで、次男が落下して手に怪我をしてしてしまう。その時も、父親は自力で家族の元へと昇って来いと厳しく指導。病院へは連れて行かないで、もちろん父親が手当てをする。
長男のボウドヴァン(左)はハーバード大、イエール大他、名門大学の数々にラクラク合格していた。義務教育は不要、だって、森で勉強すればハーバード大学だって受かちゃうんだから。少し違うんですね、長男は母親に相談して、街の図書館へ通って猛勉強して、大学受験をします。ですが、父親に大学へ行きたいなんてことは、言えない。実は母親は、父親と出会う前には、弁護士をしていたのだから、長男が頭がいいのは当たり前。
もちろん、電気やガス、携帯の電波なんて届かない森林で暮らしているからって、勉強なんてできないと考えるのは偏見もいいところ。子どもたちは古典文学から哲学、そして宇宙理論までマスターし、数か国語を話せる子供たち。
「自給自足」が一家の基本。自分たちが食べるものは、自分で育てて自分で捕まえる。それは小さな子どもだって例外じゃない。プレゼントはかわいいぬいぐるみじゃなくて、なんとナイフ!? 11歳の息子に誕生日のプレゼントに、本物のサバイバルナイフをプレゼントすると、息子は「パパ、ありがとう最高だよ」と喜ぶ。
長男が森の中で、弓矢とサバイバルナイフで大きな鹿を射止めるシーンから始まる。「これでお前も男になれた」と喜ぶ父親。そして、家族でサバイバルナイフでその鹿を解体始めるシーンとか、その鹿肉や家庭菜園で採れた野菜、山の木の実などを、村の店へを卸して現金化する父親。それに、街のスーパーへ買い物へ行くと、父親はサバイバルナイフとか必要な物をカートに詰めて、その前で心臓発作を起こし倒れる。これは嘘で仮病を使い、おろおろする店員たちを尻目に、長男がさっさとカートを押して、お金を支払いもせずに車に積み、父親が薬を飲み治ったと言いながら退散する。つまり、盗んだのだ。教育上宜しくないと思う。
しかし、山の中くらいに小さな山小屋を建て、テントを作り生活をするとは、自分の金で、この山の土地を買ったというのだが、それにしてもサバイバル生活をする家族の風景を描く作品に、どこか違和感を感じてしまった。
子供たちは6人兄弟で、生まれてこの方、両親のいう通りに毎日生活し、それが足り前だと勘違いしている。普通は、7歳になると義務教育を受けなければならないのに。この両親は、自分たちのヒッピー的な自然な環境で子育てをしたいと、学校も行かせないで、友達とも交わらない。父親の独学で子供たちは毎日教育される。だから、非常にまずいことになっている。
躁鬱病で病院に入院していた妻が、手首を切り亡くなってしまい、母親の葬儀へ出席するために、途中で妹の家に立ち寄るが、普通の一家との考え方の違いに驚かされる。文明社会のエゴと堕落を嫌うのが父ベンの主張。添加物たっぷりのお菓子やジュースは森では御法度なのだ。だから子どもたちはコーラを飲んだことも見たこともない。「なにそれ美味しいの?」という質問に、父親ベンはひと言「毒液だ」。
それに、TVゲームだって初めて見るもので、妹の息子2人がゲームに夢中なのに、それを子供たちが見ても羨ましいとか自分たちにはゲームは不要だと感じたのかしらないが、余りゲームをやりたいとは思わないようだ。
妹家族が振る舞ってくれるローストチキン、みんなが気になるのは「さばき方はどうするの?」興味津々であり、オバサンが言う「チキンは店でさばいて売っているのよ」と言う言葉にふぅ~んという子供たち。
誰もが温かい気持ちになるクリスマスだってこの一家には関係なし! 彼らがチョコレート・ケーキと歌で祝うのは、世界を代表するアメリカ現役の言語学者、社会哲学者であるノーム・チョムスキーに感謝を捧げる「チョムスキーの日」なのだから。だから、寝るのも家の外の庭で寝る家族たち。星空が綺麗だと言う理由から。
末っ子のナイ(左)と三女のサージ(右)。この子たちも外国語がペラペラ!
ベンの妹の家に立ち寄ると、同年代の従兄弟がいて、食事の際にはファッションの話に。「ナイキ」というキーワードに「ああ、ギリシャ神話の勝利の女神でしょ」と答える子どもたち。そう、スポーツメーカーだと知らない!
仏教徒だった妻の遺言で、火葬にしてトイレに流して、海に撒いて欲しいという願いを叶えてあげようと、一家は紛争する。妻の祖父母の家の近くの教会での葬式。そこへ現れる真っ赤なスーツや、派手派手の洋服を着た子供たち。つまりこの服装しか持ってないので、派手だが礼装なのだ。
驚く祖父母や親せきたち。警察に連絡したので、この場はそのままお墓に土葬されてしまう。その夜に、妻の実家へ行くも、豪邸で金持ちなのだ。長男は、本当は大学へ行きたいから、祖父母の家に引き取られて暮らしたい。祖父が、森の中での生活や、子供たちへの虐待を訴えて子供たちの親権を自分のものにすると言うのだ。祖父を演じているのが、フランク・ランジェラ。
ベンが祖父母の願いで、父親としての信念を揺さぶられ、重大な選択を迫られることになるとは。現代社会に背を向けて山奥に引き籠り、テクノロジーに依存しない自給自足のサバイバルライフを満喫してきたのに。
愛ゆえに極端な教育方針を貫く家長のベンは、人生経験豊かで多才、数か国語に堪能な主人公ビゴ・モーテンセンの当たり役なのだ。撮影の何週間も前にロケ現場に入り、アイディアを出したり、スタッフを手伝ったりして、見事な献身ぶりが功を奏し、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされている。
ベンは、自分のしていることが子供たちの将来にいいことなのかと、悩んでしまう。しかし、妻の遺言通りに火葬にしたい父親は、何とか祖父母を言いくるめて、子供たちとの話し合いがしたいとか、最後の生活をさせてくれとか言って、バスに皆を乗せて、妻の墓に行き墓堀をして亡骸をバスに乗せて、故郷へ向かう。
途中の海岸で火葬をして、遺灰を海に流し、残りは空港のトイレに遺灰を流すという。
ビゴ・モーテンセンをはじめ、生き生きとした子どもたちの姿から目が離せない。ですが、この映画では、はみ出し者や変わり者が、周囲の人々や家族との絆を育みながら成長していく過程を、描いていることだ。最後では、子供たちを学校へ通わせて、普通の生活をしているような感じがしたのに、ほっと一安心しました。
2017年劇場鑑賞作品・・・73アクション・アドベンチャーランキング
<感想>厳格な父ベン(ビゴ・モーテンセン)の独特な教育方針のもと、世間と切り離されたワシントン州の森林で育った三男三女のキャッシュ一家。風変わりで個性的、どこかヘンテコな彼らが、長く入院していた母親の葬儀に出席するため、ニュー・メキシコ州までの2400キロのバス旅に出発する。
キャッシュ一家の普通と違う生活習慣、そして旅の途中、初めて接する世間とのギャップがおかしすぎる。果たして、ヘンテコ一家を待つ驚きの運命はいかに!?
例えば、日課の林間ランニング! 鍛え上げられた子どもたちの体力は運動選手なみ!そして、強く生き抜くためには、頭脳だけではなくて体力も重要。毎日のスケジュールにはしっかりと「体育」も組み込まれている。だがその中身は……断崖絶壁を素手で登るロック・クライミングと、本気で戦う実践格闘術!だが、そのロック・クライミングで、次男が落下して手に怪我をしてしてしまう。その時も、父親は自力で家族の元へと昇って来いと厳しく指導。病院へは連れて行かないで、もちろん父親が手当てをする。
長男のボウドヴァン(左)はハーバード大、イエール大他、名門大学の数々にラクラク合格していた。義務教育は不要、だって、森で勉強すればハーバード大学だって受かちゃうんだから。少し違うんですね、長男は母親に相談して、街の図書館へ通って猛勉強して、大学受験をします。ですが、父親に大学へ行きたいなんてことは、言えない。実は母親は、父親と出会う前には、弁護士をしていたのだから、長男が頭がいいのは当たり前。
もちろん、電気やガス、携帯の電波なんて届かない森林で暮らしているからって、勉強なんてできないと考えるのは偏見もいいところ。子どもたちは古典文学から哲学、そして宇宙理論までマスターし、数か国語を話せる子供たち。
「自給自足」が一家の基本。自分たちが食べるものは、自分で育てて自分で捕まえる。それは小さな子どもだって例外じゃない。プレゼントはかわいいぬいぐるみじゃなくて、なんとナイフ!? 11歳の息子に誕生日のプレゼントに、本物のサバイバルナイフをプレゼントすると、息子は「パパ、ありがとう最高だよ」と喜ぶ。
長男が森の中で、弓矢とサバイバルナイフで大きな鹿を射止めるシーンから始まる。「これでお前も男になれた」と喜ぶ父親。そして、家族でサバイバルナイフでその鹿を解体始めるシーンとか、その鹿肉や家庭菜園で採れた野菜、山の木の実などを、村の店へを卸して現金化する父親。それに、街のスーパーへ買い物へ行くと、父親はサバイバルナイフとか必要な物をカートに詰めて、その前で心臓発作を起こし倒れる。これは嘘で仮病を使い、おろおろする店員たちを尻目に、長男がさっさとカートを押して、お金を支払いもせずに車に積み、父親が薬を飲み治ったと言いながら退散する。つまり、盗んだのだ。教育上宜しくないと思う。
しかし、山の中くらいに小さな山小屋を建て、テントを作り生活をするとは、自分の金で、この山の土地を買ったというのだが、それにしてもサバイバル生活をする家族の風景を描く作品に、どこか違和感を感じてしまった。
子供たちは6人兄弟で、生まれてこの方、両親のいう通りに毎日生活し、それが足り前だと勘違いしている。普通は、7歳になると義務教育を受けなければならないのに。この両親は、自分たちのヒッピー的な自然な環境で子育てをしたいと、学校も行かせないで、友達とも交わらない。父親の独学で子供たちは毎日教育される。だから、非常にまずいことになっている。
躁鬱病で病院に入院していた妻が、手首を切り亡くなってしまい、母親の葬儀へ出席するために、途中で妹の家に立ち寄るが、普通の一家との考え方の違いに驚かされる。文明社会のエゴと堕落を嫌うのが父ベンの主張。添加物たっぷりのお菓子やジュースは森では御法度なのだ。だから子どもたちはコーラを飲んだことも見たこともない。「なにそれ美味しいの?」という質問に、父親ベンはひと言「毒液だ」。
それに、TVゲームだって初めて見るもので、妹の息子2人がゲームに夢中なのに、それを子供たちが見ても羨ましいとか自分たちにはゲームは不要だと感じたのかしらないが、余りゲームをやりたいとは思わないようだ。
妹家族が振る舞ってくれるローストチキン、みんなが気になるのは「さばき方はどうするの?」興味津々であり、オバサンが言う「チキンは店でさばいて売っているのよ」と言う言葉にふぅ~んという子供たち。
誰もが温かい気持ちになるクリスマスだってこの一家には関係なし! 彼らがチョコレート・ケーキと歌で祝うのは、世界を代表するアメリカ現役の言語学者、社会哲学者であるノーム・チョムスキーに感謝を捧げる「チョムスキーの日」なのだから。だから、寝るのも家の外の庭で寝る家族たち。星空が綺麗だと言う理由から。
末っ子のナイ(左)と三女のサージ(右)。この子たちも外国語がペラペラ!
ベンの妹の家に立ち寄ると、同年代の従兄弟がいて、食事の際にはファッションの話に。「ナイキ」というキーワードに「ああ、ギリシャ神話の勝利の女神でしょ」と答える子どもたち。そう、スポーツメーカーだと知らない!
仏教徒だった妻の遺言で、火葬にしてトイレに流して、海に撒いて欲しいという願いを叶えてあげようと、一家は紛争する。妻の祖父母の家の近くの教会での葬式。そこへ現れる真っ赤なスーツや、派手派手の洋服を着た子供たち。つまりこの服装しか持ってないので、派手だが礼装なのだ。
驚く祖父母や親せきたち。警察に連絡したので、この場はそのままお墓に土葬されてしまう。その夜に、妻の実家へ行くも、豪邸で金持ちなのだ。長男は、本当は大学へ行きたいから、祖父母の家に引き取られて暮らしたい。祖父が、森の中での生活や、子供たちへの虐待を訴えて子供たちの親権を自分のものにすると言うのだ。祖父を演じているのが、フランク・ランジェラ。
ベンが祖父母の願いで、父親としての信念を揺さぶられ、重大な選択を迫られることになるとは。現代社会に背を向けて山奥に引き籠り、テクノロジーに依存しない自給自足のサバイバルライフを満喫してきたのに。
愛ゆえに極端な教育方針を貫く家長のベンは、人生経験豊かで多才、数か国語に堪能な主人公ビゴ・モーテンセンの当たり役なのだ。撮影の何週間も前にロケ現場に入り、アイディアを出したり、スタッフを手伝ったりして、見事な献身ぶりが功を奏し、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされている。
ベンは、自分のしていることが子供たちの将来にいいことなのかと、悩んでしまう。しかし、妻の遺言通りに火葬にしたい父親は、何とか祖父母を言いくるめて、子供たちとの話し合いがしたいとか、最後の生活をさせてくれとか言って、バスに皆を乗せて、妻の墓に行き墓堀をして亡骸をバスに乗せて、故郷へ向かう。
途中の海岸で火葬をして、遺灰を海に流し、残りは空港のトイレに遺灰を流すという。
ビゴ・モーテンセンをはじめ、生き生きとした子どもたちの姿から目が離せない。ですが、この映画では、はみ出し者や変わり者が、周囲の人々や家族との絆を育みながら成長していく過程を、描いていることだ。最後では、子供たちを学校へ通わせて、普通の生活をしているような感じがしたのに、ほっと一安心しました。
2017年劇場鑑賞作品・・・73アクション・アドベンチャーランキング