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エミアビのはじまりとはじまり★★・5

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『舟を編む』の脚本家としても知られる、『となり町戦争』『フレフレ少女』などの渡辺謙作監督による青春ドラマ。相方を自動車事故で失った漫才コンビの片割れが、同乗していたために命を落とした女性の兄との関わりを通して自身を見つめ直す。主人公の漫才師にふんする『ピース オブ ケイク』などの森岡龍を筆頭に、『ニュータウンの青春』などの前野朋哉、『アウトレイジ ビヨンド』などの新井浩文らが顔をそろえる。笑いと涙が詰まった物語に加え、森岡と前野が披露する漫才も見もの。
あらすじ:人気が出てきた若手漫才コンビ、エミアビの一人、海野(前野朋哉)が自動車事故で同乗者と共に命を落としてしまう。十年来の相棒を失くした実感を得られないまま、遺された実道(森岡龍)とマネージャーの夏海(黒木華)は、その同乗者・雛子(山地まり)の兄で自分たちの先輩でもあった黒沢(新井浩文)を訪ねる。エミアビのことが大好きだった雛子のためにもネタを披露してくれという黒沢の頼みを受けてピンネタを繰り出す実道だったが、元芸人の黒沢からダメ出しされてしまう。

<感想>これは漫才で始まり漫才で終わるが、森岡龍と前野朋哉から森岡龍と新井浩文へと、コンビが変わっているのだ。その過程を綴る映画であり、時制がしきりに前後しており、独特のリズムを刻んでいる。
森岡龍が相方の前野朋哉を交通事故で失った後、落ち込み、マネージャーの黒木華とともに立ち直る道を探すさまを軸に、画面は進んでいき森岡と前野コンビの成立。先輩芸人の新井浩文のそれへの関与や、前野と新井の妹である山地まりとの関係なども描いている。その数年間に及ぶ話の、進んでは戻り、また進み、という流れの中で諸人物が動くのである。

本作では人物たちを中心にした悲劇と笑いがシーソーのように、上がったり下がったりして、話が深刻になると茶々を入れるようなエピソードを用意し、唖然としながらもつい笑ってしまったり、ボケとツッコミに、更なるツッコミを入れた渡辺謙作監督の脚本が良かった。ちなみに気が付いたのが、死んだ海野を演じた前野くんって、CMで一寸法師の人だったんだよね。

この映画の特徴としては、あるシーンが始まった後、途中で空気が一変する場合が多いのだ。喪服姿の森岡が新井の家を訪れるシーンでは、前野と山地まりの事故死を弔ううち、二人はドタバタ騒ぎへと突入し、そこへ黒木華も加わる。
前野と山地まりが死の直前に、船上レストランで食事をするシーンでは、彼がそわそわとしていたかと思えば、強烈なブルースの歌い手に豹変する。
仕事を終えた森岡と黒木華が、駐車場へ戻るシーンでは、彼がぼやきながら彼女を宥めるうち、彼が彼女の持っていたコンビニ弁当を払い落としてしまい、それを黒木華が地面に散らばった弁当を物凄い勢いで食べ始まるのだ。
悲しさとおかしさ、冷たさと暖かさ、優しさと激しさ、あるいは静と動、そういったものが往復繰り返すのである。

しかも、それは時制が前後するあり方、進んでは戻り、また進むという流れに応えるというか、ぴったり同期する。そこに生み出されたのが、独特のリズムに他ならないからだ。
共通するのは、お笑い芸人なら笑わせてみろと言われた男が、必死に独り漫才をやることで、その結果も含めて素晴らしくおかしいのだ。本作の漫才コンビ、“エミアビ”が実際に「M1グランプリ」の1回戦を突破したことが報じられ、現時点では最終結果は出ていないが、映画の中の笑いが、いかなるものであるかは、現実の顛末が示してくれるに違いないとおもうから。
2016年劇場鑑賞作品・・・267映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

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