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とうもろこしの島 ★★★★

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旧ソ連のジョージア(グルジア)の紛争地域を舞台に、両軍がにらみ合う肥沃な大河の中洲でとうもろこし栽培を行う老人と孫娘を待ち受ける運命を寓話的に綴ったヒューマン・ドラマ。監督は、これが長編2作目のゲオルギ・オヴァシュヴィリ。
あらすじ:ジョージアと、ジョージアからの独立を目指すアブハジアが激しい軍事衝突を繰り返す中、両者の間にあるエングリ川には、春の雪解けとともにコーカサス山脈から運ばれた肥沃な土が中洲を作り上げる。両岸では兵士がにらみ合い、銃弾も飛び交う中、アブハジア人の老人は孫娘を伴い、今年もこの中洲に小屋を建て、とうもろこしの栽培を始める。そんなある日、2人は負傷したジョージア兵を発見するが…。

<感想>ジョージアとアブハジアの間を流れるエングリ川の中州に、毎年春になると小さな島で暮らす老人と孫娘の生活が描かれる。小屋を建て、魚を採り、とうもろこしの種を撒く。実際にこの川では、毎年春にできる小島でとうもろこしを育てる風習があったそうで、監督のゲオルギ・オヴァシュヴィリが描きたいテーマは、その小島そのものであったようです。

だからなのか、プロパガンダ的な匂いは皆無で、淡々と営まれる生活の迫力に引き込まれていきます。それに、セリフも少なく、35ミリで撮影された映像は透明感のある水彩画のように美しいのです。

前作の「みかんの丘」と同じように、負傷したグルジア兵士をとうもろこし畑で発見し、老人は小屋にその兵士を匿い、介抱します。孫娘は兵士に心を騒がせ、回復した兵士も娘と戯れる。そのことに、眉をひそめる老人の心情が見事です。

やがてアブハジア兵が探索にくるが、息を潜めて隠れていたグルジア兵は、その夜に何処かへ去って行ってしまう。

この作品の見どころはグルジア兵士を匿ったために、この作品にさざ波を起こすこと。島の両岸で敵同士が銃を向け合う中で、無垢な少女が醸し出すエロティシズムなどもありますが、このラストに向かっての場面に驚かされます。
それは、収穫を前にした秋に嵐と共に洪水が起こり、中州は流されて孫娘を助けようとした老人も、激流に呑まれてしまうのです。何という太刀打ちできない恐ろしい自然の脅威など、象徴的な場面が描かれていくのも素晴らしい。これには観ていて、呆気に取られてしまった。

季節が変わり、小島は消え、人間も消え、また新しい土壌が現れるラストシーン。人間の欲を満たすための無駄な戦争などしなくても、この世は諸行無常なのだという達観が見える傑作な映画でした。

2016年劇場鑑賞作品・・・236映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

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