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みかんの丘 ★★★

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旧ソ連のジョージア(グルジア)を舞台に、地域間紛争に巻き込まれたみかん農家が、敵対する2人の負傷兵を一つ屋根の下で世話したことから巻き起こる不条理な人間模様を綴った戦争ドラマ。監督は、これが日本初紹介となるザザ・ウルシャゼ。
あらすじ:ジョージアのアブハジア自治共和国でみかん栽培をするエストニア人の集落。折しもジョージアとアブハジアの間に紛争が勃発し、ほとんどのエストニア人がこの地を離れる中、イヴォとマルゴスはなおも残って収穫に精を出す。次第に戦況が悪化する中、イヴォは負傷した両軍の兵士2人を自宅で看護する。やがて2人は互いに敵兵の存在を知り、殺意を剥き出しにする。しかしイヴォが“私の家で殺し合いは認めない”と宣言、2人もこれに従うのだったが…。 2015年5月~6月開催の<EUフィルムデーズ2015>にて本邦初上映後、2016年9月に劇場公開が実現。

<感想>グルジアとアブハジアの間の扮装をテーマに、戦争の不条理と人間の尊さを描く感動のドラマ。コーカサス地方で90年代前半に勃発したアフハジア扮装を背景としている。長い歴史の中、言語や宗教の違いを基に、自治共和国が多数生まれた地域だ。1991年のソ連崩壊の際に、領土問題を含め政治的意図で民族間の混乱を生じさせたものだと言われる。もとは風光明媚で穏やかな地続きの場所。

民族同士それなりに、バランスを保っていただろうに、ある日突然、「隣のやつは憎い敵」になり、殺し合い、たくさんの難民が生まれたのだ。恐ろしい不幸でもある。その歴史に翻弄された人々の様子を寓話的に見せる作品でもあります。

ザザ・ウルシャゼ監督のこの映画では、紛争真っただ中のアブハジアが舞台であり、みかん栽培で生計を立てているエストニア人の男二人が主人公である。彼らは安全な自国には帰らずに、みかんと共に飄々と暮らしている。

ある日のこと、彼らは瀕死状態の二人の兵士を連れかえり介抱するのだが、敵同士であったために、治癒していくと言えのなかに、一触即発の空気が流れはじめるのだ。それぞれ、親せきや仲間が殺され恨みを持っているから当然のことだろう。だが、今にも殺し合いそうな亮平氏の頑なな心は、中立である家主の人間味や、同じ釜の飯を食らう体験により、少しづつ変化していく。

話してみれば、相手の事情も分かり、増悪の理由が不確かであることに気づく。その感動たるや凄いに尽きる。人間がこれほど愛おしいと思える映画は珍しいともいえる。

みかん箱職人の家で傷を癒すジョージア兵士とチェチェン人兵士が呉越同舟の緊張感を漂わせつつ、複雑な背景が垣間見えてくる。この両者が共同して戦う相手がロシア軍だというところに、かの国のホンネが伺える。キッチリまとまった映画で見応えもあるが、むしろそのパターンを外した方が、より深くメッセージが伝わったのではないかと思うのだが。

自分の家の中では戦わせないと2人に言い放つ、老人の知、丁寧な生活の営みに小さな救いを感じる。手厚い看護に兵士たちは快方に向かい、敵兵に人間としての関心を持つようになっていく。

アブハジア兵たちがやってきた時には、グルジア兵のニカが敵兵であることを隠そうとする老人に、チェチェン人のアハメドも協力してくれた。数日後、事実上アブハジアを支援しているロシアの小隊が現れ、外にいたアハメドを敵兵と疑い射殺しようとする。そこへ、グルジア兵のニカがロシア兵を撃ち、激しい銃撃戦が始まる。

この映画には、ユーモアに満ちた映画的快楽がもたらされる。心が豊かになるようなお得感さえある。なぜなら、争いの歴史がもたらした残酷さ、人間の愚かさ、現在進行形である民族間の緊張状態など、センシティブで重い案件を扱っているからだ。
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