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レッドタートル ある島の物語 ★★★

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2000年に発表した短編「岸辺のふたり」でアカデミー短編アニメーション賞を受賞したオランダのマイケル・デュドク・ドゥ・ビット監督が、8年の歳月をかけて完成させた初長編作品で、第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で特別賞を受賞。スタジオジブリが、同社としては初となる海外作家の映画製作に参加し、高畑勲監督がアーティステックプロデューサーとして、シナリオや絵コンテ作りなどに関わっている。

あらすじ:嵐で荒れ狂う海に放り出された男が、九死に一生を得て無人島に漂着する。男は島からの脱出を試みるが、不思議な力で何度も島に引き戻されてしまう。そんな絶望状況の中、男の前にひとりの女が現れ……。

<感想>宮崎駿監督の引退宣言を経て、スタジオジブリが2年ぶりに放つのは、オランダ出身監督によるお伽噺であります。それは、この上なくシンプルな物語であり、温かみを感じさせるタッチと色使いの絵柄に、一切のセリフを排除して描かれている。それゆえに多様な読み解く力が必要なように作られているのだ。

無人島が舞台ということで、水の表現に目を奪われるが、島に生えている植林が竹というのも何だか日本らしい感じで目を引く。竹は生命力の強い植物であり、完全に根を絶やさない限り繁殖を続ける。途中で津波が押し寄せて来て、何もかもが流される圧倒的な水の力の後に、残ったその竹の子が芽を出している姿が頼もしく感じられた。

これは、日本のお伽噺にある「鶴の恩返し」ならぬ亀の恩返しともいうべきか、主人公は恩返しをされるようなことは何もしていないのに。むしろその反対なのに。何故だか、カメは何処までも彼に優しいのだ。

何度も無人島から脱出しようと、竹で筏を作り海へと漕ぎ出すも、直ぐに海の下からの力で筏が壊されてしまう。それが何度も続くのだが、不思議に思った男が筏の下を覗くとそこに真っ赤な亀がいた。

孤独に打ちひしがれ、絶望の淵に立たされた男が、浜辺に打ち上げられた大きな赤い亀をひっくり返して、そのままにしておく。そのままの状態では、いつの日か死んでしまうだろうに。彼は可愛そうに思ったのか、海水を汲んできては亀に与える。ある日突然に亀が脱皮するかのように、人間の手足が生えて来て、驚くことに目の前に姿を現わした一人の女と共に、二人で人生を紡いでいく姿を、セリフを排し、美しく詩的な映像と音楽のみで綴っていくのだ。

絶海に泳ぐ男、孤島に辿りつき、やがては女が現れ子供が生まれる。幾年月が過ぎ、大嵐が島を襲い津波が来る恐ろしさ。息子は、孤島を去り旅に出ることを選ぶ。
この作品の根本的な理解の仕方に違いがあると思うが、企画開始が東日本大震災以前に遡るそうで、冒頭の嵐のシーンよりもあの大きな津波のシーンが絶望感を表していると思う。

すべてモノクロに近い水墨画のようなタッチで描かれるので、その中でも亀の赤が映えるのだ。

しかし、スタジオジブリと言えば繊細な絵筆のタッチと色使い、それに竹を描くにしても、細かく竹の葉の色彩や、葉の一枚一枚を丁寧に描く技術が優れているのが当たり前なのにだ、これは高畑勲監督の筆使いなのか、余りにもお粗末な感じがしてならなかった。
物語の展開にしても、大仰な感情表現もないが、素朴で静かな感動が感じられるのは確かである。
2016年劇場鑑賞作品・・・201映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

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