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いしぶみ ★★★

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『海街diary』の是枝裕和監督と綾瀬はるかが再び手を組み、戦争の悲惨さを伝える「いしぶみ 広島二中一年生全滅の記録」を基につづる朗読劇。1969年、大女優・杉村春子による語りで広島テレビが制作した番組を基に、原子爆弾で命を落とした321名の生徒たちの残した言葉を語り継ぐ。広島出身の綾瀬が朗読を担当し、ジャーナリストの池上彰が遺族らへの取材を敢行。戦争の生々しい記憶が胸に響く。
あらすじ:太平洋戦争終了間近の広島市には、東京や大阪から疎開してきた大勢の子供たちが暮らしていた。労働力不足を少しでも解消しようと、中学生たちまでもが農作業などに従事させられる中、彼らは日本の勝利を信じ切っていた。そして1945年8月6日に原爆が投下され、建物解体作業中だった旧制広島県立広島第二中学校1年生321名全員が死亡する。

<感想>8月に入るとTVでは、太平洋戦争を題材にした映画がたくさん放映される。この映画では、本作のルーツである、松山善三・杉村春子版の「碑」は未見ですが、2015年に『碑』のリメイク版として制作し、2015年8月に放送されたドキュメンタリー番組の劇場版。
建物解体作業中だった旧制広島県立広島第二中学校の、1年生321名全員が死亡するという。ただ、321人という無機質な数ではない、一人一人、家族がいて友達や先生がいて、それぞれの人格を持っていた旧制の広島二中の子どもたち。再現ドラマも過去映像もないのが残念であります。

薄暗いスタジオに置かれたいくつもの木箱は、さしずめ棺の模型に見える。それにしても、原爆投下による阿鼻叫喚的なシーンは一切ないのに、このスタジオをベースにして紹介される一人ずつの遺影と名前。
綾瀬はるかの語り部によるささやかなエピソードは、粛然とするほどリアルに心に迫ります。

綾瀬はるかの淡々とした語りも、想像力を喚起させ、関係者への取材も余韻を残してよかった。ですが、綾瀬はるかは、「海ゆかば」のアクセントや、幾つかの語りの切り方が気になりますが、清潔さのイメージを持ち、この企画には相応しかったと思う。
本作では広島の原爆から生き残った人々の声も綴られてゆくのだが、彼らの多くは「何故に、自分だけが生き残ったのか?」という苦悩を抱えているのだ。ここには、不謹慎狩りに対する一つの答えがある。
我々は、世の不幸をすべて受け入れることは出来ないが、それでも生きてゆかねばならない。それゆえに、綾瀬はるかのバックグラウンドを鑑みて、彼女が朗読をする意味をも含めて何かを見出すに違いありません。

選挙番組では辛辣で定評のあるジャーナリストの池上彰が、本作で生存者に対する時のなんと柔和なことか。オバマ米大統領が広島訪問にあった表層化に抗う作品であり、その意図に賛同したいと思う。
これは過去の話として捉えるのではなく、現在でも起こりうることなんだということを。戦争を知らない世代の日本人が多い時代だからこそ、原子爆弾に関して、武器としては限度を超えていることを知らしめようではありませんか。
まだまだ世界の各地で宗教戦争とかで、内戦が勃発している昨今だからこそ、映像化する必要はありそうです。
2016年劇場鑑賞作品・・・165映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

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