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獣は月夜に夢を見る ★★★

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北欧の小さな漁村を舞台に、恐ろしい獣に変貌してしまう恐怖と葛藤する少女の切ない純愛の行方を、ミステリアスかつ詩情溢れる筆致で描いたミステリー・ホラー。主演はこれがスクリーン・デビューのソニア・スール。共演にラース・ミケルセン、ヤーコブ・オフテブロ。監督は長編デビューとなるヨナス・アレクサンダー・アーンビー。
あらすじ:デンマークの美しい海岸沿いの小さな村で両親と暮らす少女マリー(ソニア・スール)。母(ソニア・リクター)はある病気を抱えていたが、父(ラース・ミケルセン)はそのことについて何も教えてくれない。村人たちは車椅子の母を恐れ、マリーへは腫れものに触るような目を向けるが、なぜそんな仕打ちを受けるのかもマリーは理解できずにいた。
ある日、マリーは職場で知り合った青年ダニエル(ヤーコブ・オフテブロ)と恋に落ちるが、同時に身体に異変を感じるようになる。感覚が鋭敏になり、突然衝動が湧き上がってしまう。その感覚は次第にコントロールできなくなっていく。不安を抱えたマリーは、自分の身体や母の病気について調べ始めるが、そこには決して避けることのできない悲しい秘密が待ち受けていた。そして、過去には村で凄惨な殺人事件が起こっていたことが分かる……。

<感想>このところ北欧作品としては西部劇からホラーまで、ジャンル映画の異色作が続々と登場してくる。この映画もその一つで、ヒロインが吸血鬼とは似つかわしくない美しい少女で、魚解体の仕事を黙々としている。こんな村では働き口など他にないのだろう。

魚の内臓の処理とか、床に落ちた魚の血とか、発酵魚の工場であり、それは魚特有の生臭さが画面から漂ってくるようでもある。
しかしながら、映像がドキュメンタリー・タッチなので、あっけにとられていると、そのリアルさが徐々に効果を生み出し始めるのだ。福祉国家のイメージが強い北欧のダークサイドや、閉ざされた共同体での差別や阻害を描くことは、目新しい試みではないと思う。

以前に「ぼくのエリ 200歳の少女」というヴァンパイアものが有名ですが、こちらは人オオカミの物語。呪われた血筋から少女の身体に現れる異変を、思春期の女性の肉体に起こる変化のメタファーとして語るにも、19歳という年齢設定は高めに思えるのだが。父親と医師が娘を抑え込み、何かの注射(筋弛緩剤)を打とうとするも、母親と同じように動けないようにして、車椅子生活を送らせようとしている。ですが、母親が狂ったように、まるで獣のように医師に襲いかかり噛み殺してしまう。

それでも主人公のヒロインを演じたソニア・スールの感情表現に乏しく危うい存在感は、ミステリーを煽る。新人女優とは思えないほど存在感があった。父親のラース・ミケルセンは、売れっ子俳優のマッツ・ミケルセンの兄だという。

そんな中でダニエルと出会い恋に落ちて、彼がソニアのことを理解してくれて、一緒に逃げることに同意するのも良かった。何故なら村の男たちに、ソニアは廃船に拉致されてしまい乱暴され、殺されそうになる。
ですが、追い詰められたソニアは「人オオカミ」へと完全に覚醒して男たちへと次々と襲い掛かる。男たちの喉元を喰いちぎり血祭にしていく。

ラース・フォン・トリアーの美術スタッフ出身だけあってか、画面は鋭角的で全編、北国独特のクリアだが鬱屈とした空気をとらえた海や、光の映像美は際立っていると思う。
ミステリーとしては意外性がなく、ホラーとしては平凡である。女性の内的な獣性を描いた象徴的な通過儀礼と捉えるならば、いくらか見どころはあるようだ。ただし、現実と幻覚の境目の曖昧さといい、陰鬱な村の環境描写も適当であり、映画としての自由な解釈に偏ってしまう。そんな雰囲気にとどまっているようなところも惜しい気がした。
2016年劇場鑑賞作品・・・166映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

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