ベネチア国際映画祭やシカゴ国際映画祭など、各国の映画祭で称賛された人間ドラマ。とある国の独裁者として君臨するもクーデターによって追われる身となった老いた男が、幼い孫を連れて逃亡した果てにたどる運命を描く。メガホンを取るのは、『キシュ島の物語』『カンダハール』などで知られるモフセン・マフマルバフ。ユーモアとスリルをちりばめながら平和を深く見つめた物語もさることながら、主人公の孫にふんしたダチ・オルウェラシュヴィリの愛くるしい姿にも注目。
あらすじ:年老いた独裁者(ミシャ・ゴミアシュヴィリ)による支配が続いていた国で、大規模なクーデターが勃発。幼い孫(ダチ・オルウェラシュヴィリ)と一緒に逃亡した独裁者だったが、政権維持を理由に無実の人々を手に掛けてきたことから激しく憎まれており、変装することを余儀なくされる。孫にも自分が誰であるかを決して口に出さぬよう厳しく注意し、追手などを警戒しながら海を目指す。さまざまな人間と出来事に出会う中、彼らは思いも寄らぬ光景を見ることになる。
<感想>イラン出身で2005年以来ヨーロッパに亡命しているモフセン・マフマルバフ監督の作品。冒頭でのヨハン・シュトラウスの曲が流れ、孫と二人で観ている街の夜景に惹きこまれてしまう。さすがに独裁者、夜景の灯りを電力会社にでも電話をしたのだろう。孫に自分の威厳と力を誇示するかのように、街の灯りを消したり点けたりと、自分勝手などこかの将軍様のようだ。
で、舞台は独裁政権下にある架空の国のこと。独裁者である大統領とその家族は、圧政によって国民から搾取した税金で贅沢三昧な暮らしを送っていた。彼は政権維持のために、多くの罪なき国民を投獄し、処刑してきた冷酷で無慈悲な男だった。
投獄され拷問を受けた男が家へ戻るシーンでは、村へ帰ると妻は別の男と結婚をして子供まで産み、それを見て自害をする男の姿に
ある晩クーデターが起こり、大統領以外の家族は国外へ避難するが、幼い孫は大統領と一緒に残ってしまう。この孫なのだが、爺様の大統領の血を引き継いでいるのか、大好きなバレエの女子マリアを連れて行くと言ってきかない頑固もの。
しかし、軍までが反旗をひるがえし始めたために、大統領も脱出を決意して海に向かおうとするのだ。それが、観ていてとても寒そうに映っている。贅沢な暮らしをしてきたのに、二人でダンボールに入って寝るシーンが印象的でした。
貧しい床屋から、ボロボロの服を奪って羊飼いを装ったり、炭坑夫の子供からギターを奪って旅芸人のふりをしたり、死体から赤いスカーフを奪い孫には、女の子にさせ見せかけたりしながら、時には案山子のふりをして何とか逃げ切ろうとする。
クーデターを起こした反政府側も、無関係な結婚したての花嫁を襲い、新婦に乱暴をする連中であったりする。だから、独裁者の有無にかかわらず民族や宗教の違いでの殺し合いが果てしなく続く、復讐の連鎖という過酷な現状になっていく。
旅芸人に扮して船のある海を目指し、国外に逃れようとする…。逃避行の中で大統領は、自らの圧政がもたらした悲惨な国内の状況を目にして、失われていた人間性を取り戻して行く。だから、孫の無邪気な質問にも答えを返すようになる。
だが、ようやく海辺に辿り着いた時に、砂浜に砂の城を作る大統領。その砂の城も波にさらわれ崩れ去ってしまう。ロードムービー的な展開で、ハプニングとサスペンスが上手く仕掛けられている。
だが、民衆から正体を暴かれてしまう。なんと、大統領には懸賞金100万ドルが懸けられていたのだ。首を刎ねて処刑しようとか、生きたまま連れていって懸賞金を貰おうとか、いや、こんなヤツはみんなで石で殴り殺してしまおう。なんて物騒なことになり、その中には、「復讐の連鎖を断ち切るしかない」と言う男が、孫は助けてやろうなんて言う人もいる。
そんな人間の浅ましさをえぐりながら、独裁、復讐、負の連鎖の本質に近づいていく。海辺で踊る孫の姿に、なんとなく救われた気がした。
2016年劇場鑑賞作品・・・41映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:年老いた独裁者(ミシャ・ゴミアシュヴィリ)による支配が続いていた国で、大規模なクーデターが勃発。幼い孫(ダチ・オルウェラシュヴィリ)と一緒に逃亡した独裁者だったが、政権維持を理由に無実の人々を手に掛けてきたことから激しく憎まれており、変装することを余儀なくされる。孫にも自分が誰であるかを決して口に出さぬよう厳しく注意し、追手などを警戒しながら海を目指す。さまざまな人間と出来事に出会う中、彼らは思いも寄らぬ光景を見ることになる。
<感想>イラン出身で2005年以来ヨーロッパに亡命しているモフセン・マフマルバフ監督の作品。冒頭でのヨハン・シュトラウスの曲が流れ、孫と二人で観ている街の夜景に惹きこまれてしまう。さすがに独裁者、夜景の灯りを電力会社にでも電話をしたのだろう。孫に自分の威厳と力を誇示するかのように、街の灯りを消したり点けたりと、自分勝手などこかの将軍様のようだ。
で、舞台は独裁政権下にある架空の国のこと。独裁者である大統領とその家族は、圧政によって国民から搾取した税金で贅沢三昧な暮らしを送っていた。彼は政権維持のために、多くの罪なき国民を投獄し、処刑してきた冷酷で無慈悲な男だった。
投獄され拷問を受けた男が家へ戻るシーンでは、村へ帰ると妻は別の男と結婚をして子供まで産み、それを見て自害をする男の姿に
ある晩クーデターが起こり、大統領以外の家族は国外へ避難するが、幼い孫は大統領と一緒に残ってしまう。この孫なのだが、爺様の大統領の血を引き継いでいるのか、大好きなバレエの女子マリアを連れて行くと言ってきかない頑固もの。
しかし、軍までが反旗をひるがえし始めたために、大統領も脱出を決意して海に向かおうとするのだ。それが、観ていてとても寒そうに映っている。贅沢な暮らしをしてきたのに、二人でダンボールに入って寝るシーンが印象的でした。
貧しい床屋から、ボロボロの服を奪って羊飼いを装ったり、炭坑夫の子供からギターを奪って旅芸人のふりをしたり、死体から赤いスカーフを奪い孫には、女の子にさせ見せかけたりしながら、時には案山子のふりをして何とか逃げ切ろうとする。
クーデターを起こした反政府側も、無関係な結婚したての花嫁を襲い、新婦に乱暴をする連中であったりする。だから、独裁者の有無にかかわらず民族や宗教の違いでの殺し合いが果てしなく続く、復讐の連鎖という過酷な現状になっていく。
旅芸人に扮して船のある海を目指し、国外に逃れようとする…。逃避行の中で大統領は、自らの圧政がもたらした悲惨な国内の状況を目にして、失われていた人間性を取り戻して行く。だから、孫の無邪気な質問にも答えを返すようになる。
だが、ようやく海辺に辿り着いた時に、砂浜に砂の城を作る大統領。その砂の城も波にさらわれ崩れ去ってしまう。ロードムービー的な展開で、ハプニングとサスペンスが上手く仕掛けられている。
だが、民衆から正体を暴かれてしまう。なんと、大統領には懸賞金100万ドルが懸けられていたのだ。首を刎ねて処刑しようとか、生きたまま連れていって懸賞金を貰おうとか、いや、こんなヤツはみんなで石で殴り殺してしまおう。なんて物騒なことになり、その中には、「復讐の連鎖を断ち切るしかない」と言う男が、孫は助けてやろうなんて言う人もいる。
そんな人間の浅ましさをえぐりながら、独裁、復讐、負の連鎖の本質に近づいていく。海辺で踊る孫の姿に、なんとなく救われた気がした。
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