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フランス組曲 ★★★.5

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1942年にアウシュヴィッツで亡くなったフランスの人気作家イレーヌ・ネミロフスキーが、極限状況下で書きつづった遺作が60年以上を経た2004年に出版され世界的ベストセラーとなった。本作はその小説を映画化したヒューマン・ドラマ。ドイツ占領下のフランスの田舎町を舞台に、夫の帰還を待つ身でありながら、駐留ドイツ軍中尉と禁断の恋に落ちたフランス人女性の運命を描く。主演は「ブルーバレンタイン」「マリリン 7日間の恋」のミシェル・ウィリアムズ、共演にクリスティン・スコット・トーマス、マティアス・スーナールツ。監督は「ある公爵夫人の生涯」のソウル・ディブ。
あらすじ:1940年6月。フランスはドイツの猛攻に屈服し、支配下に置かれる。フランス中部の田舎町ビュシーには、パリからの避難民が続々とやって来ていた。大きな屋敷に暮らすリュシルは、戦地に行った夫の帰りを待ちながら、厳格な義母と2人きりの息詰まる日々を送っていた。やがてドイツ軍の駐留が始まり、リュシルの屋敷にはドイツ軍中尉ブルーノが滞在することに。意外なことに彼はピアノを見つけると、未完だという自作の曲を毎日のように弾き始める。紳士的で音楽を愛するブルーノに、いつしか心惹かれていくリュシルだったが…。

<感想>ナチ占領下のフランス市民を描いた物でもあるが、ナチス将校とフランスの人妻リュシルとの忍び逢いはもとより、戦闘機による爆撃、レジスタンスの保護と逃亡援助、ユダヤ人母娘の行く末などなどと、スリリングな要素が散りばめられた中で、ラブロマンスが濃厚で二人の恋路を見つめたくなる。

本作のヒロインのミシェル・ウィリアムズは久しぶりだったので、相変わらず演技も上手く綺麗でしたね。

お相手のブルーノ中尉にはマティアス・スーナールツが、「ヴェルサイユの宮廷庭師」で、ケイト・ウィンスレットと恋仲になる物語。

嫁ぎ先で、夫は戦地へと、そして音楽を愛するリュシルと、元は作曲家だったドイツ軍中尉ブルーノは、許されない愛と知りながら徐々に惹かれ合い、リュシルとブルーノ中尉の禁断の恋は、果たしてどのような結末を迎えるのかが見どころでもあります。
男女の胸を焦がすような禁断の恋を描きつつ、しかしそれは、狭い世界に生きていた女性が、自立した自由な女性へと開眼していく姿でもあります。何だか重い作品かと思って観ていたが、意外にもハーレクイン・ロマンスに仕上がってましたね。

つまりは、占領軍を触媒として人々の悪意や、階級構造が露呈するさまは面白いのですが、基本的には戦争を背景に借りた悲恋ドラマでした。それに台詞が、フランス語ではなく英語なので、それでも、突然ドイツ軍人たちはドイツ語で台詞をという展開になっていました。
ナチス侵攻に乗じて村人たちの性根丸出しに、抱えている怨念。そして、人妻リュシルに対する嫉妬が浮き上がるのも怖いし、物語としては盛り上がっていると思います。

しかし、最もありえない人物、すなわち、厳格な義母が英雄的な決断を下す瞬間では、鬼婆にも慈悲があったと。しかも、小作人が自分の妻をドイツ兵に寝取られて怒り心頭の末、ドイツ軍の中尉を銃殺してしまう。その小作人の男ブノワを屋敷に匿い、挙句に嫁にパリまで車で送っていけと命令する。

注目のドイツ軍中尉に、トム・シリング「ピエロがお前を嘲笑う」に出ていた俳優さんが、村の人妻のマーゴット・ロビーを見初めてその家に居座るのだが、夫のサム・ライリーは手出しが出来ずにイライラが募り、とうとうクルト中尉を銃殺してしまう。
だが、厳格な義母、クリスティン・スコット・トーマスが、その夫に自分の戦地へ行った息子の姿とだぶったのだろう。小作人を屋敷に匿いながら、パリへと逃がしてやる計画を立てるのに、今までつらく当たっていた義母が助け舟を出して、嫁のリュシルとドイツ軍中尉を殺してしまった夫のサム・ライリーを車で逃がしてやる。

そこからが、すんなりとパリへ行けるかというと、検問が厳しくて通ることが出来ない。トランクを開けろという憲兵に、明けるとすかさず銃弾が飛び憲兵を殺し、もう一人の憲兵を殺そうとリュシルが義母から貰った拳銃を構えるも、そこへバイクであのドイツ軍中尉ブルーノが来て、憲兵を銃殺し、2人を逃がしてやるのだ。

その後は、屋敷に残った義母は、息子の愛人の子供と一緒に戦争を乗り切ったようだ。それでも、この作品を書き上げることもなく収容所で非業の死を遂げた、原作者への鎮魂でもあるのですね。ですが、てっきり重要なモチーフかと思ったピアノの曲の扱いには拍子抜けしました。しかしながら共通するのは、同時代を生きた者の深い哀しみと怒りなのだ。作品は大胆ではるものの、誠実な脚色で見事に原作の世界を再現しているのが感慨深い。

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